君が歌えば、ここは最高の世界。少年とワニの友情物語。
映画『シング・フォー・ミー、ライル』は、児童文学作家バーナード・ウェーバーの絵本『ワニのライル』の実写映画化です。『グレイテスト・ショーマン』(2017)の音楽スタッフが贈る奇跡と感動のファンタジー・ミュージカル。
ニューヨークの華やかなショービジネスの中で、くすぶり続けるショーマンのヘクター。ある日、ヘクターは立ち寄ったペットショップで、小さなワニのライルと出会います。
なんと、ライルは奇跡のような歌声を持つワニでした。ライルと一緒にステージで一儲けしようと企むヘクター。
しかし、いざステージに立ったライルは、多くの観客を前に歌うことが出来ませんでした。ステージ恐怖症です。ヘクターは、そんなライルを残し去っていってしまいました。
それから長い月日が過ぎ、ライルが隠れ住む家に新しい家族が引っ越してきます。少年ジョシュに見つかったライル。歌うことで次第に交流を深めていきます。
豪華キャストがおくる日本語吹替版にも注目。映画『シング・フォー・ミー、ライル』を紹介します。
映画『シング・フォー・ミー、ライル』の作品情報
【日本公開】
2023年公開(アメリカ映画)
【原作】
バーナード・ウェーバー
【監督】
ウィル・スペック/ジョシュ・ゴードン
【キャスト】
ハビエル・バルデム、コンスタンス・ウー、ショーン・メンデス、ウィンズロウ・フェグリー、スクート・マクネイリー、ブレット・ゲルマン
【作品概要】
アメリカで人気の絵本「ワニのライル」シリーズの実写映画化。監督は、『俺たちフィギアスケーター』(2007)や『クレイジー・パーティー』(2016)など、共同で手掛けてきたウィル・スペックとジョシュ・ゴードンの監督コンビ。
そして、楽曲を手掛けるのは、大ヒットミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016)『グレイテスト・ショーマン』(2017)のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当しています。
奇跡の歌声を持つワニのライル役には、2度のグラミー賞ノミネートを果たす、世界的シンガーのショーン・メンデスが登場。美しい歌声を披露しています。
ライルの育て親、ショーマンのヘクター役は、『ノーカントリー』(2008)のオスカー俳優、ハビエル・バルデムが演じています。ライルとの息の合ったステージショーは見ごたえ充分です。
日本語吹替版でライルを演じているのは、大泉洋。得意のしゃべりを封印し、歌だけで気持ちを表現するライル役に挑戦しています。
加えて、ヘクター役は、日本ミュージカル界のスター・石丸幹二。ジョシュの母親ミセス・プリム役は、大人気声優・水樹奈々と、豪華キャストが演じています。
映画『シング・フォー・ミー、ライル』のあらすじとネタバレ
ここは、ショービジネスの街・ニューヨーク。ショーマンとして成功を夢見るヘクターでしたが、今日のステージもいまいち、劇場から締め出されてしまいました。
帰り道、珍獣を扱うというペットショップの看板が目に入ります。そこでヘクターは、歌う小さなワニ“ライル”と出会うのでした。
ライルの歌声は、とても美しく澄んでいました。初めはプルプルと震えていた小さなライルも、ヘクターと一緒に歌い踊るうちに心を開いていきます。
体も大きく成長したライル。ヘクターとの息もぴったりです。いよいよ一緒にステージデビューが出来る。ヘクターは金儲けを考えていました。
しかし、ステージに立ったライルは、大勢の観客を前に固まってしまいます。その後、ヘクターは、ステージ恐怖症に陥ったライルを残し、家を出て行ってしまいました。
ライルは、ヘクターが置いていったカセットテープを聞きながら、ヘクターの帰りを待ちます。
それから18カ月後。ライルは、ますます大きく成長し、見た目は立派なクロコダイルです。ガヤガヤと人間が家に入り込んでくる音がします。
屋根裏部屋から様子を見に出るライル。どうやら新しい人間が引っ越してきたようです。プリム夫妻と少年ジョシュでした。
家の中をはしゃいで見て回るジョシュが、屋根裏部屋にやってきます。慌てて剥製のフリをするライル。息を止めるも苦しそうです。
どうにかやり過ごしたライルでしたが、あっけなく見つかります。「ぎゃーーッ」、クロコダイルの登場に驚くジョシュ。
ちょうど出くわした、下の階に住む気難しい住人ミスター・グランプスが溺愛している猫のロレッタも驚き、ライルに飛び掛かります。
慌てて開けたライルの大きな口の中に、ロレッタがすっぽりと吸い込まれていきます。「ごくん」逃げるライル。「猫をだして!」と追うジョシュ。
夜の街に飛び出したジョシュは、悪者に絡まれてしまいます。そこにライルが現れ、悪者を退治してくれました。「ゲプッ」ロレッタも無事吐き出されます。
「かっこいい!」。ジョシュは、すっかりライルが大好きになりました。ライルはしゃべることは出来ませんが、歌でコミュニケーションをとることが出来ます。
学校で友達もできない孤独なジョシュにとって、ライルは唯一の友達です。ゴミ箱ダイブや屋上パーティー、ライルが歌ってくれれば、ここは最高に楽しい世界でした。
ジョシュはライルのおかげで自分に自信が持てるようになります。気になっていた女の子とも友達になれました。
ある日、ライルはジョシュの母親ミセス・プリムが昔のアルバムを眺めながら、悲しそうに歌を口ずさんでいる姿を見ます。
ミセス・プリムは、ジョシュの本当の生みの親ではありませんでした。ジョシュが2歳の時、父が再婚した相手です。
ミセス・プリムは、本当の母親のようにジュシュを可愛がってくれましたが、度が過ぎました。食事にこだわり、学校へも付いてきます。いわゆる心配症です。
自分で何でも出来るようになるジョシュに、追いて行かれるような寂しさを感じていました。
「ぎゃーっ」ミセス・プリムにもあっけなく見つかるライル。あわてふためくライルとミセス・プリム。ジョシュがやってきて、一所懸命説明します。
「ライルは危険じゃない!僕の友達なんだ」。ライルは、ミセス・プリムが口ずさんでいた曲を歌い出します。ミセス・プリムの心にも響いたようです。
細かいことは気にしない、ジョシュとライルと歌って踊って、ミセス・プリムも毎日楽しそうです。新しい生活に不安だった妻も子供も、最近はなにやらとても楽しそう。ミスター・プリムは不思議に思っていました。
「そろそろ、パパにも言わなきゃね」。ライルと対面を果たしたパパは絶叫し、家族を連れて逃げようとします。
その時です。玄関のドア開き、ある人物が入ってきました。「ライルはいるか~!」。ライルを置き去りにしたヘクターでした。
映画『シング・フォー・ミー、ライル』の感想と評価
ニューヨークを舞台に、歌うワニ・ライルと少年・ジョシュとの交流を、素敵な歌と美しい映像でおくるミュージカル映画『シング・フォー・ミー、ライル』。
ワニのライルは、しゃべることは出来なくても、歌うことで気持ちを表現できるユニークなワニです。その歌声は、聞くものを癒し、楽しい気持ちにさせてくれます。
孤独だった少年ジョシュも、ライルと出会ったことで、自分を解放し自信を持てるようになりました。ジョシュだけではなく、ジョシュのママやパパもそうです。
こうでなければならないという自分で決めたルールに縛られ、心配してもしかたないことを気にして不安を抱える日々。
ライルの歌声は、自分に素直に、今を自由に楽しく生きること、人生は楽しいということを思い出させてくれました。
そんな、いつも明るいライルでしたが、育ての親・ヘクターにステージ恐怖症のせいで置いてきぼりにされたり、ワニを怖がる人々から身を隠し孤独に暮らしていました。
寂しい時も、ライルは歌を聞いて、歌って乗り越えてきました。喜びも悲しみも歌にして表現してきたライル。
初めは小さかったワニのライルが、あっという間に大きなクロコダイルに成長。周りの人に怖がられながらも、純粋な心を持ち続けられたのは、歌の力ではないでしょうか。
印象的なシーンのひとつに、ライルとジョシュが出会って街を冒険し、夜の屋上でパーティーをするシーンがあります。
何もかもが初めての体験に戸惑うジョシュが、ライルが歌う『Top of the World』に、心が奮い立ち勇気が湧いてきます。生き生きと輝き出す表情に、見ている方もテンションが上がります。
ライルが歌う曲は、どのシーンでも心情にマッチしていて心に染み入ります。ライルが踊る姿も可愛らしく、目でも楽しませてくれます。
またラストシーンで、ライルが家族みんなでバカンスに出掛ける車の中、かかっていた曲は『クロコダイル・ロック』。なんと粋な選曲。満足げに歌うライルの姿に、感動の涙が流れます。
日本語吹替版でライルを演じているのは、大泉洋。しゃべらず、歌だけで演じます。知らずに見る人には、ライルの声が大泉洋と聞いて驚く人もいることでしょう。
やんちゃな中にも優しさがにじみ出る歌声は、違和感がなく、ライルそのもの。台詞だと思って歌ったという役作りは、歌のようで台詞にも聞こえ、ライルの気持ちが見事に表現されています。
アメリカ版のライルは、大人気のシンガー、ショーン・メンデス。聞き比べてみるのも面白いと思います。
まとめ
ひとりぼっちのワニ・ライルと、ひとりぼっちの少年・ジョシュが出会い、友情を育んで行くミュージカル映画『シング・フォー・ミー、ライル』を紹介しました。
嬉しい時も悲しい時も、自分に正直に、気持ちを歌にのせ伝えるライルの姿に、勇気と感動をもらいます。
人生には何が大切なのか。ライルにとって一番大切なものは、お金や名誉ではなく、自分を大切にしてくれる人。家族の存在でした。
観たものをハッピーにしてくれるミュージカル映画『シング・フォー・ミー、ライル』。ぜひ、大音響の映画館でライルの歌声に酔いしれて下さい。