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Shiva Baby シヴァ・ベイビー|あらすじ感想評価。エマ・セリグマン監督がちょっと笑える光景にある“気まずさ”の正体を描き出す

  • Writer :
  • 桂伸也

2026年2月27日(金)より映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』は新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!

一人の女子大生がユダヤ教の葬儀に出席する中、恋人や元恋人と気まずい遭遇をする中で翻弄されていく姿を描いたコメディー『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』

本作は『ボトムス 最底で最強?な私たち』を手がけたエマ・セリグマン監督が、コロナ禍中にあった2020年に発表した長編作。

ユダヤ人家庭に生まれた監督ならではの視点がふんだんに生かされた物語は、「ユダヤ系社会」の縮図的な光景と風刺のきいたコメディーが楽しめる興味深い作品となっています。

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』の作品情報


(C)Felix Dickinson courtesy NEON(C)courtesy NEON

【日本公開】
2026年(アメリカ・カナダ合作映画)

【原題】
Shiva Baby

【監督・共同脚本】
エマ・セリグマン

【キャスト】
レイチェル・セノット、モリー・ゴードン、ポリー・ドレイパー、ダニー・デフェラーリ、フレッド・メラメッド、ダイアナ・アグロンほか

【作品概要】
自分の価値や将来に不安を抱く大学生が、親戚の葬式で不倫相手と遭遇したことをきっかけに、最悪の危機に直面する姿を描いたドラマ。

本作はカナダのエマ・セリグマン監督による長編デビュー作。作品はセリグマン監督がニューヨーク大学ティッシュ芸術学部の卒業制作として手がけた短編「Shiva Baby」を長編化したものです。

『BODIES BODIES BODIES/ ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』などのレイチェル・セノットが、短編版に引き続き主演を務めました。セノットは『ボトムス 最底で最強?な私たち』でもセリグマン監督と共同脚本と主演を務めています。

共演には『シアター・キャンプ』のモリー・ゴードン、テレビドラマ『glee グリー』のダイアナ・アグロン、『シリアスマン』のフレッド・メラメッドらが名を連ねています。

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』のあらすじ


(C)Felix Dickinson courtesy NEON(C)courtesy NEON

大学卒業を間近に控えた女子大生、ダニエル。彼女は、家族から誰が亡くなったのかも知らされないまま親戚のシヴァ(ユダヤ教の葬式)に連れていかれ、参列することになります。

故人の自宅で、彼女は大学での冴えない進路や容姿の変化についてに詮索され居心地の悪さを募らせます。さらに幼なじみで元恋人のマヤがロースクールに合格したことで賞賛されており、余計に落ち込んでしまいます。

そんな悲惨な状況に追い打ちをかけるように、式場では数時間前に会ったばかりの「パパ活相手」マックスと遭遇、家族に関係を知られてはまずいと、焦りを見せます。

一方で彼には容姿端麗な実業家の妻キムと赤ん坊がいることが発覚、ダニエルはますます混乱していくのでした。

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』感想と評価

ユダヤの伝統行事で暴走する、若さと秘密

本作は、主人公ダニエルにとって「最悪の一日」を、極端に限定された空間と時間の中で描き出す作品。

「シヴァ」とは、ユダヤ教における喪の習慣で、葬儀後の7日間、家族や親族が自宅に集い、死者を悼みながら過ごす期間を指します。

ダニエルはその場で経済的支援を受ける関係にある年上の男性と偶然鉢合わせ。家族や共同体の視線が常に張り巡らされた空間で、自らの立場や秘密を隠し通そうとするダニエルの振る舞いは、観る者に強烈な息苦しさを与えます。

若さは自由であると同時に、社会的に脆弱でもある。その対になる性質が、彼女の一挙手一投足から浮かび上がってきます。

物語は悲劇的な破綻へ向かうように見えながらも、ラストシーンは「人生は最悪ばかりではない」という、わずかな余白を感じさせて終わります。

強いメッセージを叫ぶのではなく、ただ現実をそのまま差し出すような語り口に、本作ならではのセンスが感じられます。

逃げ場ゼロの空間で描かれる、現代的すぎる人生コメディー

本作をユニークなものにしているのが、「シヴァ」というユダヤ独自の文化です。

死者を悼むための期間でありながら、実際の場では雑談や干渉、おせっかいが絶え間なく続というのが、このタイミングでよくある光景であると言われています。

誰もが距離感なく関わってくるその空気は、文化としては特殊でありつつも、感覚としてはどこか身に覚えのあるものです。

日本に暮らしていると、「ユダヤ」という言葉はどうしても歴史的な文脈で語られがちですが、本作では、より生活に密着した共同体の姿が描かれます。

そしてその中に置かれる主人公の立場は、伝統的な価値観と、きわめて現代的な生き方のあいだに板挟みにされたものとして映ります。

ここで興味深いのは、作品タイトルである『シヴァ・ベイビー』という言葉そのものです。

劇中で直接使われる表現ではないものの、主人公の置かれた状況は、監督がメディアのインタビューの中で「シュガーベイビー」、つまり「経済的な援助やプレゼントと引き換えに、年上のパトロン(シュガーダディ/マミー)と相互に利益のある関係を持つ人」という言葉で説明されています。

この二つの言葉は意味こそ異なりますが、音の響きがどこか重なり合います。そのため本作のタイトルは、伝統的で宗教的な「シヴァ」と、現代的で世俗的な関係を連想させる言葉が、さりげなく言葉遊びのように並置されているようにも見えてきます。

もちろん、これが明確に意図された掛詞であると断定することはできません。しかし結果として本作は、「古い文化」と「今を生きる若者の現実」が、同じ空間でぶつかり合う物語となっています。

そのズレや違和感は、特定の民族文化を超え、世代や国を問わず共有できる普遍的な感覚として、観る者に届いてきます。

まとめ

ユダヤ人であるエマ・セリグマン監督は、「シヴァ」という風習そのものに以前から強い関心を持っていたと語っています。

もともとは短編として構想された物語を長編化する過程で、ユダヤ文化を通してセクシュアリティや女性の生きづらさを描くというテーマが加えられました。

死者を悼む場でありながら、実際には生者たちの感情や欲望、不満が露わになる空間。その矛盾を監督は鋭く、しかしユーモラスに切り取ります。また物語の着想では、監督自身が在籍していたニューヨーク大学で「シュガーベイビー」が身近に存在していたという体験も反映されています。

自身のバックグラウンドに深く根ざしながらも、描かれる葛藤はきわめてグローバルで現代的です。

その意味では、個人的な物語がどこまで普遍性を獲得しうるのか、その一つの理想的な到達点を示す作品だと言えるでしょう。

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』は2026年2月27日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!





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