映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』は2023年9月8日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国公開
ナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの処刑の舞台裏を描いた映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』が2023年9月8日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国公開となります。
監督・脚本を務めるのはユダヤ人の父を持つ、『マッド・ガンズ』(2015)『デ・パルマ』(2017)などを手がけてきたジェイク・パルトロウ。
移民の少年、遺体焼却炉製作を請け負った町工場の人々、刑務官などエルサレムの市井の人々を通して、ユダヤ人大量虐殺に関与したアイヒマンの最期の6ヶ月を描きます。
火葬がおこなわれないはずのイスラエルで、アイヒマンが火葬されたという史実の裏にはどのような真実が隠されていたのでしょうか。
映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』の作品情報
【公開】
2023年(イスラエル・アメリカ合作映画)
【監督】
ジェイク・パルトロウ
【脚本】
トム・ショヴァル、ジェイク・パルトロウ
【出演】
ツァヒ・グラッド、ヨバブ・レビ、トム・ハジ、アミ・スモラチク、ジョイ・リーガー、ノアム・オヴァディア
【作品概要】
グウィネス・パルトロウの弟で、ユダヤ人の父を持つ『マッド・ガンズ』(2015)『デ・パルマ』(2017)のジェイク・パルトロウが監督・脚本を務めるヒューマンドラマ。
ナチス親衛隊中佐としてユダヤ人大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマンの処刑の舞台裏を描きます。
アイヒマンが火葬された史実に興味を持ち、綿密なリサーチを重ねたパルトロウ監督が、本作をヘブライ語で生み出すためにイスラエル出身のトム・ショヴァル監督を共同脚本に迎えて完成させました。
演技未経験の11歳の少年ノアム・オバディアをはじめ、ツァヒ・グラッドらイスラエル人俳優が出演。
映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』のあらすじ
1961年。ナチス・ドイツの戦争犯罪人、アドルフ・アイヒマンの裁判に、死刑の判決が下されました。
リビアから一家でイスラエルに移民してきたダヴィッドは、授業を中断してラジオに聞き入る先生と同級生たちの気持ちを理解できず、不思議そうに見つめていました。
放課後、ダヴィッドは父に連れられて町はずれの鉄工所を訪れました。ゼブコ社長が炉の掃除ができる小柄な少年を探していたからです。
ヘブライ語が苦手な父のためにダヴィッドは熱心に働きましたが、社長室の飾り棚にあった金の懐中時計をつい盗んでしまいます。
アイヒマンのことをよく知らなかったダヴィッドは、先生からひどく叱られてしまいました。居心地の悪い学校を抜け出し、ダヴィッドは鉄工所に入り浸るようになります。
左腕に囚人番号の刺青が残る板金工のヤネクや技術者のエズラ、鶏型のキャンディがトレードマークのココリコなど、工員たちはダヴィドをかわいがりました。ゼブコも、支払いのもめ事を解決した賢いダヴィッドを重宝するようになります。
ダヴィッドは社長室に入り込み、金時計をこっそり元の場所に戻そうとしますが、落として盤面を割ってしまいました。
そんな中、ゼブコと彼の戦友で刑務官のハイムが社長室に入ってきたため、慌ててダヴィッドは隠れます。
ハイムは極秘プロジェクトを持ち込んできました。彼が手にしていたのはアウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉の設計図で、アイヒマンの遺体を燃やすためのものでした。
盗み聞きしてしまったダヴィッドは逃げ出しますが、追ってきたゼブコに捕まってしまいます。
プロジェクトの話を聞かされた工員たちは動揺し…。
映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』の感想と評価
ユダヤ人を強制収容所で抹殺する計画を立案したナチス・ドイツのアドルフ・アイヒマンの処刑をめぐる真実を追った作品です。
宗教上の理由で火葬が禁止されているイスラエルで、遺族に遺体を引き渡さずに内密に火葬することが決定します。どのような過程を経てアイヒマンの処刑と火葬がおこなわれ、焼け残った灰がイスラエル海域外に撒かれることになったのか。
ユダヤ人の父と大戦やユダヤ人の歴史について語り合っていたというパルトロウ監督が、当時工場で働いていた人からも話を聞くなど綿密なリサーチを重ね本作を生み出しました。
物語の中心となるリビアから一家で移民してきた少年ダヴィッドを、演技未経験の11歳のノアム・オヴァディアが生き生きと演じています。
ホロコーストを経験しアイヒマンを憎悪するユダヤ人たちと、アラブ系移民の間には感情に温度差がありました。学校のみんなのようにアイヒマン処刑に熱を持って向き合えないダヴィッドは、居場所をなくしてしまいます。
そんななか、父に連れられて手伝いにいった工場で大人たちに受け入れられた少年は、アイヒマンの遺体の焼却炉を製作するプロジェクトに巻き込まれていきました。
焼却炉がアウシュビッツで使われたものと同じ型だったという事実はなんとも皮肉です。
好奇心旺盛で頭の回転のよいダヴィッド、戦争の英雄で野蛮なゼブコ社長、腕に囚人番号を彫られたヤネクら工場関係者、アイヒマンを監視する刑務官のハイム、ホロコーストの犠牲者だった捜査官のミハなどさまざまな人々が登場し、歴史に関わっていきます。
火葬へのプロセスを通して映し出されるのは、あまりにも長く深いユダヤ人らの苦しみの時間です。恐ろしい時代を生き延びた人たちの、残酷な歴史を決して忘れさせたくないという強い意志に圧倒されずにいられません。
ラストには「6月0日」の意味が明かされます。
まとめ
パルトロウ監督の情熱が静かに燃える、見ごたえのある史実ドラマ『6月0日 アイヒマンが処刑された日』。さまざまな人々の思いが交錯していくさまを見事に映し出す秀作です。
それぞれの立場から見える景色を通して、残虐な歴史や、史実の真実が浮かび上がります。
映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』は2023年9月8日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国公開です。