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映画『島守の塔』あらすじ感想と評価解説。キャストの萩原聖人が新境地と“結末の香川京子のセリフ”に刮目してほしい

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『島守の塔』は2022年7月22日(金)より全国ロードショー!

第二次大戦終結間近、沖縄に大きな被害を被った沖縄決戦の中、県民の命を救うべく奔走した人々の姿を描いた映画『島守の塔』。

終戦間近に沖縄県知事として赴任、激しい戦火の中人命を第一として自身の使命に向き合った人物・島田叡と荒井退造警察部長らを中心に、彼らを取り巻く人々が生き延びるための戦いに挑む姿を描きます。

タイトルにある『島守の塔』とは、沖縄県糸満市にある、沖縄戦で殉職した島田知事と荒井部長をはじめ、県民の命を救うべく行動した戦没県職員469柱を祀る慰霊塔の名前です。

映画『島守の塔』の作品情報


(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督・脚本】
五十嵐匠

【脚本】
柏田道夫

【出演】
萩原聖人、村上淳、吉岡里帆、池間夏海、香川京子

【作品概要】
第2次世界大戦終結直前に沖縄の大木の住民が犠牲となる中で行われた地上戦「沖縄戦」の最中に、沖縄県民の人命を守るべく奮闘した県知事と警察部長、そして戦争への盲信と現実とのはざまで翻弄された人々の複雑な心情を描きます。

監督は『地雷を踏んだらサヨウナラ』などを手掛けた五十嵐匠。また五十嵐監督が手掛けた『二宮金次郎』でもタッグを組んだ柏田道夫が共同脚本を担当しました。

主人公の沖縄県知事・島田役を『BOX 袴田事件 命とは』などの萩原聖人、警察部長・荒井役を『夕方のおともだち』などの村上淳が担当。ほかにも、吉岡里帆、池間夏海、香川京子らのベテラン、個性派、実力派など錚々たる面子が名を連ねています。

映画『島守の塔』のあらすじ


(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会

第2次世界大戦末期の1945年。戦争を続けていた日本軍は沖縄が戦場となる危機が迫っていることを認識し、決戦に向けて準備を進めていました。

一方、そのころ本土より任命され新たな沖縄県知事として現地に赴任した島田叡は、沖縄の自身の来島以前から県民の疎開を積極的に推し進めていた沖縄県警察部長の荒井退造(村上淳)と共に、沖縄での決戦に備え県民の安全確保の必要性を考え行動を起こしていました。

そして4月、アメリカ軍はいよいよ沖縄本島に上陸し、沖縄では日本軍と間で激しい戦闘を展開します。戦いが県民を巻き込んで激化していく中、島田は住民を追い詰める軍の指令に異議を唱えますが、まったく動じない軍に意気消沈します。

それでも自身の信念を貫くべく、荒井と共に県民の命を守るために死力を尽くしていく…。

映画『島守の塔』の感想と評価

本作は実在した人物、および史事をモチーフとした物語ですが、単にそのモデルを使い展開していく物語というよりは、明確なテーマを示しているようにも感じられます。

そのテーマとは、「『疑う』ことを忘れない」という点にあります。

もちろん作品の大きなテーマとしては、戦争という行為がもたらすリスク、すなわち直接その行為に関与しない人たちが犠牲になるという副作用に対して、反戦というテーマを深く描いています。

一方、本作の主人公である島田叡は、戦争で一般市民が犠牲になってはいけないという信念を持ちながらも、一般の市民よりさらに国側の立場に近い身としては軍の意向にすべて逆らうわけにもいかず、県民の命を守るべく奔走しながらも苦悩の表情を見せます。

そんな島田のそばに就くことになる島民の女性・比嘉凛は、当初日本は必ず戦争に勝つという根拠のない思いに駆られ、と戦争の犠牲になることもいとわない人間でしたが、周辺の人間が次々と亡くなっていく様や島田の思いなどに触れ、戦火を逃れながら自身に疑問を呈し思いを変えていきます。

そして戦火が途切れたクライマックスシーンへ。凄惨な光景が広がる沖縄の海辺で見せる、凛を演じた吉岡里帆の表情は、ラストで見られる同役・香川京子の表情とうまくオーバーラップし、心の中で芽生えた凛の胸の内を明確に描いています。

また劇中では、新聞メディアが日本軍の戦況を群から伝えられるままに報じることに疑問を持つ展開や、沖縄戦が展開する中で洞窟に逃げ込んだ一般市民を、日本軍が戦争優先だと恫喝する姿など、物語のあちこちに「疑問」を想起させるポイントが点在しています。

総じて見ると、果たしてこの戦争が結局何を生み出したのであろうか?もし日本軍が作戦を成功させていたところで、何が人々にもたらされていたのだろうか?と戦争という行為に対する様々な疑問が胸の内に残るでしょう。

他方、例えば近年ではロシアによるウクライナ侵攻が世界的な問題として物議を醸していますが、まさしくこの物語にダブってくるような印象もあり、物語で告げられているメッセージが決して過去のことではなく明日にでも起こり得ることであることを改めて思い知らされるところでもあります。

まとめ


(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会

主人公役を務めた萩原聖人は、どちらかというとシャープな面持ちをベースとした役柄をメインに演じていましたが、本作ではイガグリ頭で細目、そして眼鏡、さらに戦争という緊張下に置かれた人々の前で、大声で歌いリラックスさせるなど、まったくこれまでの傾向とは異なる役柄を披露しています。

性格的にもナイーヴな男性というよりは、大らかでも信念は曲げず強い意志を貫くその姿は、これまでの萩原の出演作に見慣れた人からすれば新鮮にも感じられることでしょう。

そんな萩原と警察部長・荒井役を演じた村上淳の共演シーンは、本作の大きな見どころの一つといえるでしょう。二人はかつて阪本順治監督作品の映画『この世の外へ クラブ進駐軍』でも同バンドのメンバー役として共演した経験もあります。

本作でも役の立場を変えながらも息の合った演技を見せています。この部分は残酷な史事の中で自身の戦いに挑んだ彼らの挑んだこと、貫いた信念の大切さを示し、ラストシーンでつぶやかれた香川京子のセリフとともに作品のメッセージとして深く表しています。

映画『島守の塔』は2022年7月7月22日(金)より全国ロードショー


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