Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】プライベート・ライアン|あらすじ感想と結末評価。ミラー大尉の手が震える理由とは?冒頭20分のリアルな描写に戦慄する戦争映画の秀作

  • Writer :
  • 谷川裕美子

一人の兵士を救う過酷なミッション

スティーヴン・スピルバーグ監督が、第2次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を題材に、極限状態の兵士たちの絆をリアルに描いた戦争ドラマ『プライベート・ライアン』。

1999年の第71回アカデミー賞で監督賞、撮影賞など5部門を受賞した傑作です。主演を『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)の名優トム・ハンクスが務めます。

ノルマンディーに上陸したミラー大尉一行が受けたのは、兵士ライアンを無事帰国させるという指令でした。

たった一人の兵士を助けるために、ほかの兵士たちの命を危険にさらすミッション。葛藤の末に、人間らしく生きる道を選ぶ兵士たちの姿に胸震える傑作です。

映画『プライベート・ライアン』の作品情報


(C)2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
1998年(アメリカ映画)

【監督】
スティーヴン・スピルバーグ

【脚本】
ロバート・ロダット

【編集】
マイケル・カーン

【キャスト】
トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ、ヴィン・ディーゼル、ジョヴァンニ・リビシ、ジェレミー・デイヴィス、テッド・ダンソン、デニス・ファリナ、ポール・ジアマッティ、デイル・ダイ、マット・デイモン、ハリソン・ヤング、シェーン・ジョンソン、リーランド・オーサー、マクシミリアン・マーティーニ、ネイサン・フィリオン、ディラン・ブルーノ、アンドリュー・スコット、ジョン・シャリアン、ライアン・ハースト、ハーヴ・プレスネル、キャスリーン・バイロン、ロブ・フリーマン、ブライアン・クランストン、ロルフ・サクソン、ジョーグ・スタドラー、イアン・ポーター、ゲリー・セフトン、デヴィッド・ヴェーグ、ニック・ブルックス、デヴィッド・ウォール、アマンダ・ボクサー

【作品概要】
「ジュラシック・パーク」シリーズや『E.T.』(1982)、『シンドラーのリスト』(1994)などの巨匠スティーヴン・スピルバーグが製作・監督を務めた戦争ドラマ。

実話にインスパイアされた脚本で、ノルマンディー上陸作戦後、一人の兵士ライアンを帰国させる任務のために前線へ向かう仲間たちの絆を描きます。

強烈な戦闘場面をリアルに描いた本作はアカデミー賞で11部門にノミネートされ、監督賞など5部門受賞しました。

主人公のミラー大尉を『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)、『ハドソン川の奇跡』(2016)の名優トム・ハンクスが演じます。

共演はトム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、ビン・ディーゼル。ライアン二等兵役を「オーシャンズ」シリーズのマット・デイモンが演じます。

映画『プライベート・ライアン』のあらすじとネタバレ


(C)2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

1944年。連合軍はフランスのノルマンディー海岸に上陸しますが、多くの兵士たちが命を落としました。

激戦を生き延びたミラー大尉は、最前線で行方不明になった落下傘兵ジェームズ・ライアン二等兵の救出を命じられます。

ライアン家は4人の息子のうち3人が相次いで戦死しており、軍上層部は末っ子のジェームズだけでも故郷の母親の元へ帰還させようと考えました。

ミラー大尉と彼が選んだ7人の兵士たちは、1人を救うために8人の命が危険にさらされることに疑問を抱きながらも戦場へと向かいます。

ネタバレ部分はこちらの記事参照 ↓

映画『プライベート・ライアン』の感想と評価


(C)2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

戦争の酷さを正面から描く傑作

巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督による傑作戦争映画です。

特に冒頭20分間に描かれる、残酷でリアルなノルマンディー上陸作戦の映像は映画史に残るシーンとして知られています。

その非情さに呆然とせずにはいられません。銃弾を受けて倒れていく兵士たち。手足も吹き飛び、腹は裂け、血で赤く染まった海に数えきれないほど大勢の死者が横たわります。

犠牲はやむなしの上で立てられたあまりにも非情な上陸作戦でした。人間をただの駒としてしか見ない戦争の酷さと愚かしさを正面から描ききっています

彼らは一体何のために戦ったのでしょうか。何のために死なねばならなかったのでしょうか。

目の前に敵が現われれば、何も考えずに互いに撃ち合うしかありません。しかし、普段の兵士たちは、どこにでもいる平凡な若者たちでした。

母の思い出を語り合い、ピアフの切ない歌声に静かに聴き入ります。いつしか強い絆で結ばれた仲間たちは、死んだカパーゾが残した家族宛の血まみれの手紙を丁寧に清書してやり、戦いに慣れていないアパムを全員でカバーして守ろうとします。

人を殺せなかった心優しい臆病なアパムが、最後に憎しみから銃で敵を撃ち殺してしまう場面には胸が痛みます

戦争では誰しもが無傷ではいられない事実を目の前に突きつけられ、戦争の罪深さを改めて感じずにはいられません

ミラー大尉の手が震える理由とは


(C)2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

物語のはじまりから、ミラー大尉の手はずっと震え続けています。その理由ははっきりとは明かされません。

なぜ震えているのか部下から問われたミラーは、イギリスを出た時から止まらないがなぜかはわからないと答えています

続いて彼は、昔いた部下ヴェッキオについての思い出を笑いながら話しますが、そこには失った部下に対する深い悔恨の思いがありました。

100人近くの部下を死なせてきた彼は、その何倍もの大勢の部下を救うためだったと必死で自分に言い聞かせて生きてきたのです。

しかし、頭ではそう思っていても、体は正直です。傷ついた彼の心は癒えることなく、彼の神経は逆立ったまま。止まらない手の震えは、押さえ込みきれない悲しみが引き起こすストレスとしか思えません。

自分の作戦に参加させた兵士ウエイドが死んだ時、ミラーは震える手を握りしめながらこっそり一人嗚咽します。ママと呼び続けながら死んでいったかわいそうなウエイド。それでもミラーは、ウエイドを撃った敵兵を逃がしてやります。

敵を逃がしたことによって仲間同士が険悪になる中、ミラーは以前教師をしていたことを話し出しました。彼が元々子供や若者を愛しており、彼ら導く人生を送ってきたことがわかります。

そんな彼だからこそ尚更、部下を次々に失う毎日に心をすり減らしてきたのでしょう。

たった1人の兵士ライアンのために何人もの部下の命を危険にさらす任務を前に、ミラーも葛藤していました。ライアンとはその価値が本当にある男なのか。ミラーは悩み続けます。

それでもミラーは兵士たちに向かい、ライアンを救えば胸を張って女房のところへ帰れると優しく語るのです。

人を殺すのではなく、助ける任務。残酷で汚れきった戦場において、それは人間として生きることを意味していました。

いつかライアンを救ったことが戦場での唯一の誇りだといえるようになる、人として誇れる美しい行いをしたい。兵士たちの心は一つになりました。

皆どれほど故郷に帰りたかったでしょう。だからこそライアンを必ず国に帰したかったのです。ライアンは彼らにとって希望の象徴でした。

死の間際、ライアンにジェームズと呼びかけ、しっかり生きろと笑顔で言ってから満ち足りた様子で逝くミラー大尉。

ミラーの手の震えは永遠に止まりました彼が天に召されたからだけではなく、ライアンを救ったという事実が彼の心を苦しみから解き放ったからに違いありません。

まとめ


(C)2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

戦争の残酷さをリアルに描きながら、人間の魂の美しさを追求した傑作『プライベート・ライアン』

トム・ハンクスをはじめ兵士役の演者たちは、厳しく過酷な訓練を受けてから撮影に挑みました。鬼気迫る演技に圧倒されます。

ライアンは自分だけ故郷に帰ろうとはせず、戦地に残って仲間と共に戦うことを選びました。ミラーたちは思いがけない展開に悩みながらも、ライアンが自分たちが命をかける価値のある立派な魂を持つ男だったことを喜んだに違いありません。だからこそ、ライアンと一緒に戦う道を選んだのです。

人間の心は単純なものではありません。複雑な思いが絡み合った末に、進むべき道が見えてくるものです。ミラーたちは苦悩の末に進んだ道の途中で命を落としますが、悔いよりもやりきった喜びの方が大きかったのではないでしょうか。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

『ザリガニの鳴くところ』映画原作小説ネタバレあらすじと結末の感想評価。真犯人は誰?‟湿地の少女”の人生と事件の顛末はいかに⁈

「本屋大賞」翻訳小説部門1位の小説『ザリガニの鳴くところ』が映画に! 小説家でもあり動物学者のディーリア・オーエンズの処女小説『ザリガニの鳴くところ』。2018年に発売されるなり、世界中でベストセラー …

ヒューマンドラマ映画

『億男』ネタバレ感想。映画と原作の違いを徹底解説。お金の意味と運用の金言書の紹介も

あなたは、お金とどう付き合っていますか? お金で買えるもの。お金じゃ買えないもの。分かっているようで分かっていないお金のこと。 『億男』の原作は、2014年に雑誌『BRUTUS』で連載された後、刊行さ …

ヒューマンドラマ映画

舞台版『アマデウス』を映画で鑑賞。ナショナル・シアター・ライブ2018は一見の価値あり

ナショナル・シアター・ライブ2018の『アマデウス』が、7月6日(金)より、TOHOシネマズ日本橋ほか公開。 モーツァルトに嫉妬心を抱いた宮廷音楽家サリエリは、果たしてモーツァルトを殺したのか? 映画 …

ヒューマンドラマ映画

ザ・ディフェンダーズ シーズン1|あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のレンタルと、『アントマン&ワスプ』(2018)の劇場公開が始まり、活気が収まることのないマーベルヒーローの世界。 実はNetflixで公開中のマ …

ヒューマンドラマ映画

映画『冬時間のパリ』あらすじネタバレ感想と考察評価。オリヴィエ・アサイヤス監督が新作で描いたのは大人たちの会話劇

オリヴィエ・アサイヤス監督が新境地に挑んだ映画『冬時間のパリ』。 二組の男女の不倫が絡む恋なんてよく聞く話。 どうにもならないことが多いのが恋愛だけれど、それでも恋することの喜びや、可笑しさを魅力的に …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学