映画『桜色の風が咲く』は2022年11月4日(金)よりシネスイッチ銀座、ユーロスペース他にて全国順次ロードショー
世界で初めて盲ろう者の大学教授となった、東京大学先端科学技術研究センター教授の福島智(ふくしまさとし)と母の軌跡を描く『桜色の風が咲く』が2022年11月4日(金)よりシネスイッチ銀座、ユーロスペース他で全国順次公開となります。
監督は『パーフェクト・レボリューション』(2017)の松本准平。
『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)の小雪が、母・令子役で12年ぶりに映画主演を務めます。青年期の智役には『朝が来る』(2020)の田中偉登。
真っ暗な世界に閉じ込められた青年が光を見つけだすまでの軌跡が温かなタッチで描かれます。
映画『桜色の風が咲く』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【脚本】
横幕智裕
【監督】
松本准平
【編集】
出野圭太
【出演】
小雪、田中偉登、吉沢悠、朝倉あき、リリー・フランキー
【作品概要】
9歳で失明し、18歳で聴力を失いながらも世界初の盲ろう者の大学教授となった福島智と、彼を支えた母・令子の実話を基に描くヒューマンドラマ。
監督は『パーフェクト・レボリューション』(2017)の松本准平。
智の母・令子を『ラストサムライ』(2003)『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)の小雪が好演。12年ぶりに映画主演を務めます。
青年期の智役を演じるのは『朝が来る』(2020)の田中偉登。
吉沢悠、朝倉あき、リリー・フランキーら実力派が脇を固めます。
映画『桜色の風が咲く』のあらすじ
教師の福島正美と令子の夫婦は3人の息子に恵まれ、幸せに暮らしていました。
正月にふたりは末っ子の智の両目が赤いことに気づきます。正月休みが終わり落ち着いてから眼科を受診すると、失明の恐れがあることがわかります。
検査の結果、その当日に手術を受けますが、右目の視力は戻らないことを告げられました。
智はすくすくやんちゃに元気に成長します。しかし9歳の時、見えている方の左目も見えづらくなり、治療が始まりました。
令子は病院で智に付きっきりとなります。家事と仕事の両立に疲れ果てた正美から、自宅にも少し戻るようにと言われた令子は、智の苦しみを見ている毎日の辛さや、上の息子への申し訳なさを抱えた苦しい胸の内を夫にぶつけます。
正美は令子の苦しみを理解し、寄り添うようになりました。
智の左目もやがて見えなくなることを告げられた夫婦は、見える間に少しでもいろいろなものを見せてやりたいという思いから、家族旅行に出かけます。花畑や海を見た智は喜びました。
その後、全盲となった智は変わらず陽気でやんちゃな性格のまま成長し、東京の寄宿制の盲学校に通うことになります。
お互いにお互いの人生を歩み始めた一家でしたが、やがて智は聴力も次第に失っていきました。
目も見えず耳も聞こえなくなった智。暗闇の中に取り残された彼に思いを伝えたい令子は、指先に点字と同じようにタッチする「指点字」を思いつき…。
映画『桜色の風が咲く』の感想と評価
光に向かって歩み続ける母と子の軌跡
東京大学先端科学技術研究センター教授の盲ろう者・福島智氏の半生を温かな視線で描き出した一作です。
3歳で右目を、9歳で両眼を失明した上、18歳で聴力も失った青年・智が、困難に負けることなく夢を追い続けた実話が描かれます。
智を支える母・令子を演じるのは、本作が12年ぶりの映画主演となる小雪です。実生活でも3人の子どもの母となった彼女が、ブランクを感じさせない変わらぬ美しさで円熟味ある演技を披露しています。
幼い息子の目に異常があるとわかってから、病状が判明するまでの苦悩はあまりにも深く、見ていて胸が締め付けられます。
失明の恐怖と戦いながら、痛い治療に泣く智。その姿をいつも傍で見ながら、こうなったのは自分のせいだと責めては胸をかきむしり、代わってやりたいといって泣く母の苦しみ。
しかしそんな中でも、抱えきれない悲しみとともに、「なんとしても私がこの子を守るんだ」という母の固い決意が感じられます。
見えるうちにいろいろ見せてあげたいという思いで行った最後の家族旅行。息子への母の必死な思いが伝わるシーンがあり、ホロリとなるでしょう。
智の苦しみと傍で見つめ続ける令子と、家事や上の息子たちの世話、そして教師としての仕事に疲弊する夫の正美との間にも危機的なすれ違いが生じました。
子どもじみたところのあった夫も、妻の胸の内の大きな苦しみを理解するようになってからは、「お前のせいじゃない」という一番大切な言葉を妻にかけて支えるようになります。
生来やんちゃで明るい性格の智は、家族と冗談を言い合いながら笑って成長します。人間にとってユーモアが何より大切なことを智に教えられます。
大きな困難を抱えながらも飄々としていつもユーモアを忘れない智を、映画・ドラマに活躍中の大阪出身の田中偉登が魅力的に演じています。
視力と共に聴力までも失うというさらなる悲劇に見舞われた智は、この苦しみは自分にしかわからないと言って母をはねつけます。
令子はそんな息子のためにとっさに「指点字」を思いつきました。母の息子へのあふれんばかりの愛情が生み出した奇跡の結晶だったと思わずにはいられません。
まとめ
盲ろう者として世界初の大学教授となる奇跡を起こした福島智の半生を描く感動の人間ドラマ『桜色の風が咲く』。
目が見えないから「見えない」、耳が聞こえないから「聞こえない」と考えるのは誤りであることがよくわかる作品です。
暗闇にいるからこそ見えるもの。そして、暗闇でしか見ることができないものが存在することを教えられます。
決して小さな世界で自分の人生を終わらせないという強い決意と、あくなきチャレンジ精神に圧倒され、この世に不可能なことはほんの一握りしかないのかもしれないと思わされるに違いありません。
今この瞬間から生き方を変えてみようという勇気をくれる作品『桜色の風が咲く』は、2022年11月4日(金)よりシネスイッチ銀座、ユーロスペース他で全国順次公開予定です。