第28回日本アカデミー賞外国作品賞受賞ほか数々の賞にノミネートされた傑作時代劇!
エドワード・ズウィックが脚本・監督を務めた、2003年製作のアメリカの叙事詩的時代劇アクション映画『ラストサムライ』。
明治維新後の日本を舞台に、西洋戦術を教えるために来日したかつての南北戦争の英雄と、侍の生き方を貫こうとする武将が出会い、絆を深めていく物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
渡辺謙や真田広之ら日本人俳優がハリウッドに進出する契機となった、武士道と日本固有の美に感銘を受けたアメリカ人将校の姿を描いた、叙事詩的時代劇アクション映画『ラストサムライ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『ラストサムライ』の作品情報
(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
【公開】
2003年(アメリカ映画)
【脚本】
ジョン・ローガン、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ
【監督】
エドワード・ズウィック
【キャスト】
トム・クルーズ、ティモシー・スポール、渡辺謙、ビリー・コノリー、トニー・ゴールドウィン、真田広之、小雪、小山田真、池松壮亮、中村七之助、菅田俊、福本清三、原田眞人、松崎悠希、湊葵、伊川東吾、スコット・ウィルソン、二階堂智、ジョン・コヤマ、ウィリアム・アザートン、チャド・リンドバーグ、尾崎英二郎、高良隆志、シェイン・コスギ
【作品概要】
『グローリー』(1989)や『トラフィック』(2000)、『アメリカン・アサシン』(2017)などを手掛けた、エドワード・ズウィックが脚本・監督を務めたアメリカの叙事詩的時代劇アクション作品です。
2005年第28回日本アカデミー賞外国作品賞を受賞し、2004年には第76回アカデミー賞助演男優賞や衣装デザイン賞ほか2部門、第61回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ)や最優秀助演男優賞(ドラマ)ほか1部門、それぞれノミネートされた作品でもあります。
『トップガン』(1986)や「ミッション:インポッシブル」シリーズなどに出演する、トム・クルーズが主演・製作を務め、本作での好演により第61回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ)にノミネートされました。
「トランスフォーマー」シリーズ(声の出演)や『硫黄島からの手紙』(2006)、「ゴジラ」シリーズなどに出演する渡辺謙が共演し、本作での好演により第76回アカデミー賞助演男優賞や第61回ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞(ドラマ)にノミネートされました。
映画『ラストサムライ』のあらすじとネタバレ
(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
日本は剣でつくられたといいます。古の神が剣を海に浸け、それを引き上げると四つの雫が滴り落ち、それが日本列島になったそうな……。
本当に日本をつくったのは、今や忘れられた「名誉」という言葉に命を捧げた、ほんのひと握りの男たち「侍」なのかもしれません。
1876年、アメリカ・サンフランシスコ。かつての南北戦争の英雄ネイサン・オールグレン大尉は、戦争の無意味さに疲弊し軍を除隊。
除隊後、彼はアル中生活を送りながら、アメリカ陸軍御用達の全米一の銃器メーカー「ウィンチェスター社」と契約し、戦争の英雄として広告塔を務めていました。
そんなある日、オールグレンは僚友のセブロン・ガント軍曹と、かつての上官ベンジャミン・バグリー大佐と再会。バグリーたちからある仕事を依頼されました。
それは近代国家に生まれ変わろうとしている明治維新の日本に行き、近代国家建設のために軍隊を養成する専門家としての仕事でした。
日本の実業家にして大臣の大村は渡米し、バグリーを介してその専門家を紹介して貰おうとしていました。
オールグレンは最初、ウィンチェスター社との契約を理由に断りましたが、大村から提示された今より倍以上の報酬額に魅了され、彼のオファーを受けることにしました。
オールグレンはガント、バグリーと共に、大村に連れられて日本の横浜港に到着。来日した彼が見た日本は、鉄砲や軍隊など、性急に西欧化することを望む天皇と、建国以来の剣を信じる侍たちが対立し分断された国でした。
1876年7月22日。オールグレンは軍人時代の3年分の報酬を貰い、銃など持ったことがない日本人を立派な兵士にするべく、銃の射撃訓練などをして教育していきました。
そしてオールグレンは、敵対する反乱軍のリーダーである勝元盛次について知るべく、かつて彼と共に天皇のために戦ったという軍隊の指揮官、長谷川大将に話を聞くことにしました。
そう、オールグレンが立派な兵士へと鍛え上げようとしている軍隊は、反乱軍を滅ぼすために組織された政府軍なのです。
長谷川から話を聞いて、ますます勝元たち侍という存在に興味を抱いたオールグレン。彼は通訳・写真家・著述家のサイモン・グレアムに、侍の戦術が書かれた書物の翻訳を急がせます。
請け負った仕事を全うしていく中、オールグレンは軍人時代のある出来事が悪夢として蘇り、眠れぬ日々を送っていました。
場面転換、オールグレンの回想。南北戦争時代、バグリー率いる北軍の第7騎兵隊に所属していたオールグレンは、彼の命令を受け、何の罪もない無抵抗なインディアンの部族を襲撃。
男も女も子供も関係なく、無差別に殺していく惨状を見て、オールグレンは彼らを殺した罪の意識に苛まれ、心身ともに疲弊し軍を除隊しました。
そんな悪夢に今も苦しめられているオールグレンに、大村とバグリーは「勝元が国の最優先事項である鉄道を襲った」と知らせ、いますぐに反乱軍の討伐に向かうよう命じました。
これに対しオールグレンは、「まだ銃の練度が低い軍隊だから戦えない」と反対しますが、大村たちは聞く耳を持ってくれません。
7月23日、出動するしかないオールグレンとガント、大村とバグリー率いる政府軍は、勝元たちがいる吉野国へ侵攻。開戦直前、長谷川は勝元と戦うことを拒みます。
そうこうしているうちに、鎧をまとい馬に誇った勝元たち反乱軍が出現。歴戦の猛者である侍たちの鬼気迫る勢いにのまれてしまった政府軍の軍人たちは、統率が取れないどころか訓練した銃をまともに撃てず、散り散りになって逃走します。
そんな中、オールグレンとガント、バグリーは侍たち相手に戦いましたが、戦意が衰えることのない侍たちに圧倒され、劣勢を強いられてしまいました。
バグリーと大村たち政府軍はやむを得ず撤退し、オールグレンと共に戦っていたガントは戦死。孤軍奮闘するオールグレンも、赤い鎧をまとった侍と一騎討ちで勝利したものの、勝元たちに捕まってしまいました。
その後、長谷川は勝元に介錯を頼み、自らの刀で切腹。勝元は長谷川を介錯し、反乱軍を率いて村へ帰還します。
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勝元の息子である信忠の村へ帰還後、勝元は捕虜にしたオールグレンを殺そうとはせず、「敵を知るため」と言って部下たちを説き伏せ、妹のたかに彼の手当てをさせました。
オールグレンは戦いで負った傷が癒え、歩けるようにまで回復するまでの間、ずっと南北戦争時代の悪夢に魘されていました。
回復後、オールグレンは老齢の侍に見張られながら、村を散策。そこで彼が目にしたのは、古き良き日本の生活と勝元の副官、氏尾が指揮を執る反乱軍の剣術訓練でした。
オールグレンは勝元に会いに行き、彼からこう言われました。「お前を殺さず生かしているのは、敵を知るため」
「お前が手当てした女性は、お前が最後に殺したわしの義理の弟、広太郎の妻のたかだ」
翌日、オールグレンはたかの息子、飛源と孫次郎が木刀でチャンバラをしているのを見て、剣術の真似事を始めます。
しかし、偶然通りかかった氏尾に目をつけられ、オールグレンは初めて手にする木刀で見様見真似で手合わせをすることになりました。
その結果、氏尾に手も足も出ず、オールグレンは完敗。けれどこれをきっかけに、オールグレンは侍が使う剣術に興味を抱きます。
それ以降、オールグレンは朝早くから自分の務めに全力で励み、常に自分に厳しい侍の武士道に魅せられていきました。
よそ者扱いされるオールグレンは、氏尾たちの訓練を見て剣術を学んでいきました。やがて村での生活を深めていくにつれて、オールグレンは広太郎の物であろう着物を着て、生活するようになりました。
自ら進んで侍が貫く武士道や、村の人たちと会話するための日本語を覚えていくオールグレン。そんな彼の姿を見て、飛源や信忠をはじめ、反乱軍と村の人々は彼に心を開いていきました。
ただ1人、夫を殺した仇であるオールグレンに、不信の目を向けるたかを除いて……。
オールグレンはそんなたかの心情を察したのか、覚えたての日本語で広太郎を殺してしまったことを謝罪しました。
これに対したかは、オールグレンにこう言いました。「私の夫は侍としての本懐を遂げました。あなたも、あなたのすべきことをしただけ。お気持ちだけ受け取っておきます」
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映画『ラストサムライ』の感想と評価
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オールグレンが見た侍の「武士道」
国のために戦う兵士であることは同じであるものの、オールグレンたちアメリカの軍人と勝元たち日本の侍は違う点があります。
己が仕える主君のために生涯をかけて忠義を尽くし、己の務めに全力で励んでいること。
そして元老院を牛耳った大村に逆らえず、性急に西欧化を進める気の弱い明治天皇への反乱は、勝元たちなりの主君への忠義だという、侍ならではの考え方です。
もとより最初に戦う前から、オールグレンは軍人とは考え方も戦い方も違う勝元たち、侍について興味津々でした。
捕虜となったオールグレンは、「敵を知るため」に自分を生かした勝元たちや、たかたち村の人々と交流を深めていくにつれて、日本固有の美と常に自分に厳しい侍の武士道に感銘を受けます。
オールグレンの視点で見る侍の「武士道」は、これまで歴史の教科書や、侍を描いた本や映画でしか知ることがなかった現代人も、勝元たちの生き方は格好良く思えることでしょう。
信頼関係を築いたオールグレンと勝元たち
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政府軍を養成する立場にあるオールグレンと、反乱軍のリーダーである勝元は最初、敵対関係にありました。
けれども勝元は、義理の弟である広太郎を殺したオールグレンを殺しません。それどころか、彼は「敵を知るため」だと言い、オールグレンの処刑を求める氏尾たちやたかを説得しました。
おそらく勝元は、敗走する政府軍の中で1人、孤軍奮闘するオールグレンの姿を見て、自分たち侍と通じる何かを感じたのでしょう。
オールグレンは勝元たちと同じ日本人ではないけれど、勝元たちと過ごす村での生活を経て、彼らと同じ強い信念を持った侍に生まれ変わりました。
いつしか勝元たちはオールグレンを反乱軍の一員と認め、一緒に剣術の訓練をしたり、手合わせをしたり、彼のための刀を作ったりするようになります。
敵対関係から同じ武士道を貫く仲間として信頼関係を築いていくオールグレンと勝元たちの姿は、ずっと観ていたくなるほど微笑ましいものです。
まとめ
(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
西洋戦術を教えるために来日したアメリカ人将校が、西欧化を拒み建国以来の剣を信じる侍と出会い、武士道と日本固有の美に感銘を受けるアメリカの叙事詩的時代劇アクション作品でした。
本作の見どころは、オールグレンと勝元たち侍の交流と、反乱軍と政府軍の激闘です。
本作の悪役である大村は、日本の将来を考えて西欧化を押し進めていきますが、その反面、自らの資産を飢えに苦しむ民に分け与えようとはしません。
気が弱く、大村に牛耳られた元老院に今まで従うほかなかった明治天皇に、大村が長年の企みを阻まれ説き伏せられた場面は、観ているこちらもスカッとした気持ちになれます。
勝元たち侍の戦いは無駄ではありません。彼らの生き様を見聞きした政府軍の軍人たちや天皇が、失っていた武士道と侍の魂を取り戻すきっかけとなりました。
明治維新以降の日本人と明治天皇、戦争の無意味さに疲弊したアメリカ人将校の心を変えた、勝元たち侍の「武士道」を描いた叙事詩的時代劇アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。