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Entry 2021/10/06
Update

『ラストサムライ』ネタバレあらすじ結末と感想考察。トムクルーズと渡辺謙の共演で描く明治維新の‟武士道”

  • Writer :
  • 秋國まゆ

第28回日本アカデミー賞外国作品賞受賞ほか数々の賞にノミネートされた傑作時代劇!

エドワード・ズウィックが脚本・監督を務めた、2003年製作のアメリカの叙事詩的時代劇アクション映画『ラストサムライ』。

明治維新後の日本を舞台に、西洋戦術を教えるために来日したかつての南北戦争の英雄と、侍の生き方を貫こうとする武将が出会い、絆を深めていく物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

渡辺謙や真田広之ら日本人俳優がハリウッドに進出する契機となった、武士道と日本固有の美に感銘を受けたアメリカ人将校の姿を描いた、叙事詩的時代劇アクション映画『ラストサムライ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

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映画『ラストサムライ』の作品情報


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

【公開】
2003年(アメリカ映画)

【脚本】
ジョン・ローガン、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ

【監督】
エドワード・ズウィック

【キャスト】
トム・クルーズ、ティモシー・スポール、渡辺謙、ビリー・コノリー、トニー・ゴールドウィン、真田広之、小雪、小山田真、池松壮亮、中村七之助、菅田俊、福本清三、原田眞人、松崎悠希、湊葵、伊川東吾、スコット・ウィルソン、二階堂智、ジョン・コヤマ、ウィリアム・アザートン、チャド・リンドバーグ、尾崎英二郎、高良隆志、シェイン・コスギ

【作品概要】
『グローリー』(1989)や『トラフィック』(2000)、『アメリカン・アサシン』(2017)などを手掛けた、エドワード・ズウィックが脚本・監督を務めたアメリカの叙事詩的時代劇アクション作品です。

2005年第28回日本アカデミー賞外国作品賞を受賞し、2004年には第76回アカデミー賞助演男優賞や衣装デザイン賞ほか2部門、第61回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ)や最優秀助演男優賞(ドラマ)ほか1部門、それぞれノミネートされた作品でもあります。

トップガン』(1986)や「ミッション:インポッシブル」シリーズなどに出演する、トム・クルーズが主演・製作を務め、本作での好演により第61回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ)にノミネートされました。

「トランスフォーマー」シリーズ(声の出演)や『硫黄島からの手紙』(2006)、「ゴジラ」シリーズなどに出演する渡辺謙が共演し、本作での好演により第76回アカデミー賞助演男優賞や第61回ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞(ドラマ)にノミネートされました。

映画『ラストサムライ』のあらすじとネタバレ


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

日本は剣でつくられたといいます。古の神が剣を海に浸け、それを引き上げると四つの雫が滴り落ち、それが日本列島になったそうな……。

本当に日本をつくったのは、今や忘れられた「名誉」という言葉に命を捧げた、ほんのひと握りの男たち「侍」なのかもしれません。

1876年、アメリカ・サンフランシスコ。かつての南北戦争の英雄ネイサン・オールグレン大尉は、戦争の無意味さに疲弊し軍を除隊。

除隊後、彼はアル中生活を送りながら、アメリカ陸軍御用達の全米一の銃器メーカー「ウィンチェスター社」と契約し、戦争の英雄として広告塔を務めていました。

そんなある日、オールグレンは僚友のセブロン・ガント軍曹と、かつての上官ベンジャミン・バグリー大佐と再会。バグリーたちからある仕事を依頼されました。

それは近代国家に生まれ変わろうとしている明治維新の日本に行き、近代国家建設のために軍隊を養成する専門家としての仕事でした。

日本の実業家にして大臣の大村は渡米し、バグリーを介してその専門家を紹介して貰おうとしていました。

オールグレンは最初、ウィンチェスター社との契約を理由に断りましたが、大村から提示された今より倍以上の報酬額に魅了され、彼のオファーを受けることにしました。

オールグレンはガント、バグリーと共に、大村に連れられて日本の横浜港に到着。来日した彼が見た日本は、鉄砲や軍隊など、性急に西欧化することを望む天皇と、建国以来の剣を信じる侍たちが対立し分断された国でした。

1876年7月22日。オールグレンは軍人時代の3年分の報酬を貰い、銃など持ったことがない日本人を立派な兵士にするべく、銃の射撃訓練などをして教育していきました。

そしてオールグレンは、敵対する反乱軍のリーダーである勝元盛次について知るべく、かつて彼と共に天皇のために戦ったという軍隊の指揮官、長谷川大将に話を聞くことにしました。

そう、オールグレンが立派な兵士へと鍛え上げようとしている軍隊は、反乱軍を滅ぼすために組織された政府軍なのです。

長谷川から話を聞いて、ますます勝元たち侍という存在に興味を抱いたオールグレン。彼は通訳・写真家・著述家のサイモン・グレアムに、侍の戦術が書かれた書物の翻訳を急がせます。

請け負った仕事を全うしていく中、オールグレンは軍人時代のある出来事が悪夢として蘇り、眠れぬ日々を送っていました。

場面転換、オールグレンの回想。南北戦争時代、バグリー率いる北軍の第7騎兵隊に所属していたオールグレンは、彼の命令を受け、何の罪もない無抵抗なインディアンの部族を襲撃。

男も女も子供も関係なく、無差別に殺していく惨状を見て、オールグレンは彼らを殺した罪の意識に苛まれ、心身ともに疲弊し軍を除隊しました。

そんな悪夢に今も苦しめられているオールグレンに、大村とバグリーは「勝元が国の最優先事項である鉄道を襲った」と知らせ、いますぐに反乱軍の討伐に向かうよう命じました。

これに対しオールグレンは、「まだ銃の練度が低い軍隊だから戦えない」と反対しますが、大村たちは聞く耳を持ってくれません。

7月23日、出動するしかないオールグレンとガント、大村とバグリー率いる政府軍は、勝元たちがいる吉野国へ侵攻。開戦直前、長谷川は勝元と戦うことを拒みます。

そうこうしているうちに、鎧をまとい馬に誇った勝元たち反乱軍が出現。歴戦の猛者である侍たちの鬼気迫る勢いにのまれてしまった政府軍の軍人たちは、統率が取れないどころか訓練した銃をまともに撃てず、散り散りになって逃走します。

そんな中、オールグレンとガント、バグリーは侍たち相手に戦いましたが、戦意が衰えることのない侍たちに圧倒され、劣勢を強いられてしまいました。

バグリーと大村たち政府軍はやむを得ず撤退し、オールグレンと共に戦っていたガントは戦死。孤軍奮闘するオールグレンも、赤い鎧をまとった侍と一騎討ちで勝利したものの、勝元たちに捕まってしまいました。

その後、長谷川は勝元に介錯を頼み、自らの刀で切腹。勝元は長谷川を介錯し、反乱軍を率いて村へ帰還します。


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

勝元の息子である信忠の村へ帰還後、勝元は捕虜にしたオールグレンを殺そうとはせず、「敵を知るため」と言って部下たちを説き伏せ、妹のたかに彼の手当てをさせました。

オールグレンは戦いで負った傷が癒え、歩けるようにまで回復するまでの間、ずっと南北戦争時代の悪夢に魘されていました。

回復後、オールグレンは老齢の侍に見張られながら、村を散策。そこで彼が目にしたのは、古き良き日本の生活と勝元の副官、氏尾が指揮を執る反乱軍の剣術訓練でした。

オールグレンは勝元に会いに行き、彼からこう言われました。「お前を殺さず生かしているのは、敵を知るため」

「お前が手当てした女性は、お前が最後に殺したわしの義理の弟、広太郎の妻のたかだ」

翌日、オールグレンはたかの息子、飛源と孫次郎が木刀でチャンバラをしているのを見て、剣術の真似事を始めます。

しかし、偶然通りかかった氏尾に目をつけられ、オールグレンは初めて手にする木刀で見様見真似で手合わせをすることになりました。

その結果、氏尾に手も足も出ず、オールグレンは完敗。けれどこれをきっかけに、オールグレンは侍が使う剣術に興味を抱きます。

それ以降、オールグレンは朝早くから自分の務めに全力で励み、常に自分に厳しい侍の武士道に魅せられていきました。

よそ者扱いされるオールグレンは、氏尾たちの訓練を見て剣術を学んでいきました。やがて村での生活を深めていくにつれて、オールグレンは広太郎の物であろう着物を着て、生活するようになりました。

自ら進んで侍が貫く武士道や、村の人たちと会話するための日本語を覚えていくオールグレン。そんな彼の姿を見て、飛源や信忠をはじめ、反乱軍と村の人々は彼に心を開いていきました。

ただ1人、夫を殺した仇であるオールグレンに、不信の目を向けるたかを除いて……。

オールグレンはそんなたかの心情を察したのか、覚えたての日本語で広太郎を殺してしまったことを謝罪しました。

これに対したかは、オールグレンにこう言いました。「私の夫は侍としての本懐を遂げました。あなたも、あなたのすべきことをしただけ。お気持ちだけ受け取っておきます」

以下、『ラストサムライ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ラストサムライ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

1877年の春。勝元たち侍の武士道と、日本固有の美に感銘を受けたオールグレンは、村での生活に馴染んでいくにつれて、久しぶりの安眠を得ることが出来ました。

反乱軍に加わって稽古するようになったオールグレンは、氏尾と改めて手合わせし、初めて彼と引き分けることが出来ました。

そんなある日の夜。勝元が道化を演じる舞台で賑わう村に、大村が差し向けた間諜が襲撃。オールグレンと勝元たちは心を一つにして戦い、間諜を返り討ちにしました。

その翌日。オールグレンは勝元の先祖が建てた寺に呼び出され、満開の桜が散る中、勝元にこう言われました。

「戦場に出た者は皆、己が忠義を貫くために死を恐れず戦う。だが戦場で色んなものを見るせいで、時に自ら死を望みたくなる」

それはオールグレンも同じ気持ちでした。そんな気持ちに襲われた時、勝元は必ずこの寺に来て、こう思い出すようにしているのです。

「人も桜もいつか散る。吐息の一つにも一杯の茶にも、一人の敵にも生命がある。それが侍の生き様“武士道”だ」

そのまた翌日。オールグレンはたかたちに感謝と別れを告げ、政府に呼び出された勝元たちと共に、東京へ向かいました。

到着後、オールグレンは天皇の元へ行く勝元たちと別れ、政府軍の訓練の様子を見に行きました。

オールグレンが目にした政府軍は、銃の練度が低く統率がとれていなかったあの頃とは違い、立派に訓練され、榴弾砲や回転式機関銃ガトリング砲など軍備も充実していました。

愕然とするオールグレンは、そこへ現れたバグリーに連れられ、大村が待つ部屋へ向かいます。大村はオールグレンに、新たな仕事という名目で彼を脅迫しました。

「昨年の戦いはバグリー大佐が誤った失態だったことを認めよう。だが軍備が充実した今は違う」

「このまま勝元に服する侍が増え続ければ、10年続く内乱へと発展してしまう。それは避けねばならない」

「今日元老院で勝元を抑えるか、それとも君が彼を武力で潰すか?」

当然、オールグレンは勝元たちを始末する新たな仕事を拒絶。これに対し、内心憤る大村は、オールグレンに刺客を差し向け、彼を殺そうとします。

街に出たオールグレンは、廃刀令に従わず腰に2本の刀を差している信忠が気に食わず、髷を斬り落とそうとする政府軍の軍人たちと遭遇。オールグレンは止めに入りましたが、信忠は髷を斬り落とされてしまいます。

一方勝元は、天皇に拝謁後、元老院に戻りました。元老院と共に勝元を待っていた大村は、腰に2本の刀を差したまま現れた彼に、廃刀令に従って刀を捨てるよう迫ります。

当然、勝元は大村の命令を拒否。元老院の後ろに控える天皇に判断を仰ぎましたが、気の弱い彼は勝元から目を背けてしまいます。

大村に牛耳られた元老院もまた、彼に逆らえず口もきけません。そんな元老院の姿に失望した勝元は、それでも刀を捨てなかったため、大村から東京での謹慎を言い渡されてしまいます。

その頃オールグレンは、もはや自分が出る幕はないと仕事に見切りをつけ、アメリカへ帰国しようと準備を進めていました。

そこへ現れたバグリーは、オールグレンに「捕らえられた勝元は今夜、大村が片付ける。彼が死ねば君がいなくとも、反乱軍の残党は我々だけでも始末できる」と言い、立ち去っていきました。

その日の夜、オールグレンは襲撃してきた刺客を退け、グレアムと共に謹慎中の勝元の救出へ向かいます。

そこへさらに氏尾や信忠たちも駆けつけ、勝元を連れて東京を脱出し、村へ帰還しようとしました。しかし、殿を務めた信忠が警備兵に撃たれ死亡。

自分を逃がすために息子が死んでしまったことへの責任と、生涯をかけて忠義を尽くしていた天皇に拒絶されたことへの恐怖に震える勝元は、村への帰路の途中、オールグレンに初めて弱音を吐きました。

「お上はわしを退いた。このままでは官軍が来て、武士道を貫いたわしのせいで、900年間祖先が守り続けてきた村が滅んでしまう。もう武士道は不要ではないのだ」「わしの命は刀が奪う。それは我が刀か、敵の刀か」

それに対し、オールグレンは勝元にこう言いました。「それでいいのか?生涯己が忠義を尽くす主に仕え、己を律し、民に情けをかけたのに?勝元たちが貫いてきた武士道こそ、何よりも必要なものだ」

「もし敵の刀で倒れるのであれば、共にあなたの声を天皇の耳に届かせよう」


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

村へ帰還後、オールグレンは飛源とたかに信忠の戦死を報告。その際、「オールグレンが戦場で死ぬのが怖い」と泣く飛源を抱きしめ、彼ら村の人々を守るために、反乱軍と共に政府軍と戦うと決心しました。

1877年5月25日。政府軍は2連隊1,000人単位で波状攻撃に出るべく、吉野国の村へ侵攻。対して反乱軍は500人しかおらず、榴弾砲や銃を使う敵に弓矢と刀で戦うしかありません。

小高い丘の上から敵の軍勢を見たオールグレンは、隣に立つ勝元に、昔スパルタを中心とするギリシア軍が300人の軍勢で、100万のペルシャ軍と戦った「テルモピュライの戦い」の話をしました。

2日間にわたって敵に大打撃を与え、退却させたギリシア軍の戦法に則り、オールグレンは銃があるからと過信している政府軍を誘き寄せ、接近戦に持ち込めば勝てると確信していました。

5月26日。政府軍を戦うと決めたオールグレンの姿を見て、たかは彼に、亡き夫が着ていた鎧を着るよう促します。

赤い鎧を身に纏ったオールグレンを見て、勝元たちは彼を反乱軍の一員と認め、この日のために仕立てた彼の刀を渡しました。

それから間もなく、出陣したオールグレンと勝元率いる反乱軍。邂逅したバグリーたちから、降伏するよう求められましたが、もちろん拒否しました。

それを合図に、反乱軍と政府軍による全面戦争が開幕。反乱軍は自陣に設置した藁の柵に火をつけ、あたかも榴弾砲で敗走したかのように見せて敵を誘き寄せます。

まんまとその罠に嵌った大村のせいで、政府軍の2連隊は後退する反乱軍を追跡し、総攻撃を仕掛けようとしました。

反乱軍はオールグレンの合図で、事前に仕掛けた油入りの藁に火矢を放ち引火。たちまち燃え盛る炎は政府軍の軍人たちをひだるまにし、2連隊を分断させます。

さらに反乱軍は容赦なく矢の雨を降らせ、退路を断たれた政府軍の1連隊を返り討ちにし、止めを刺すべく突撃。大勢の敵を討ち滅ぼす代わりに、大勢の仲間を失いました。

政府軍がさらに2連隊投入してくることを見越して、反乱軍は騎馬隊を投入し、何とか初戦を制しました。

撤退した政府軍を追い、反乱軍は騎馬による大突撃を敢行。オールグレンは因縁の相手バグリーを討ち取ったものの、氏尾をはじめとする勝元以外の反乱軍は、容赦なく降り注ぐ銃撃と榴弾砲、回転式機関銃ガトリング砲により戦死。


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致命傷を負った勝元は、「お前は失った名誉を取り戻した、わしにも名誉の死を」と言い、信頼するオールグレンに止めを刺すよう頼みました。

オールグレンに刀で腹を刺された勝元は、彼の背後に咲く満開の桜を見ながら、「すべてが見事だ」と言い残し息を引き取りました。

こうして、反乱軍はオールグレン1人を残して全滅。しかし彼ら侍の戦いは、決して無駄ではありませんでした。

その証拠に、大村以外の政府軍の軍人たちが皆、勝元の死に様を見て失っていた武士道と侍の魂を取り戻し、跪いて頭を垂れたのです。

戦いは終わり、生き残ったオールグレンは天皇に拝謁し、「勝元の刀を陛下にお納めいただき、武士の力を守りとされたし」と言い、勝元の刀を渡しました。

さらにオールグレンは、天皇に勝元からのメッセージを伝えました。「勝元はいまわの際に、“祖先が何のために戦い死んだかを、お忘れなきように”と言っていた」

天皇は勝元の刀を受け取り、彼の最期の助言を聞いて、「たとえ鉄道や大砲、西欧の衣服を手に入れたとしても、歴史や伝統を重んじる日本人であることを忘れてはならない」と決意を新たにしました。

天皇は凛としてアメリカから派遣されたスワンベック大使に、アメリカと結ぼうとしていた「軍隊の養成を請け負う代わりに、アメリカに武器の独占販売権を与える」という協定の破棄を言い渡します。

これに激怒する大村を、天皇は完全に説き伏せてから、オールグレンに勝元の死に様がどうだったか尋ねました。オールグレンは天皇に、勝元の死に様ではなく、彼の生き様を話しました。

こうして、侍の時代は終わりを告げました。国家には人と同様、運命があるといいます。

村へ帰還したオールグレンのその後を知る者は誰もいません。噂では、負傷が原因でこの世を去ったとか、故郷に戻ったとか……。

その噂を聞いたグレアムは、「消息を絶ったオールグレンはようやく、人が皆求めながらも、得ることの稀な心の安らぎを見出したのだと思いたい」と語っていました。

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映画『ラストサムライ』の感想と評価


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

オールグレンが見た侍の「武士道」

国のために戦う兵士であることは同じであるものの、オールグレンたちアメリカの軍人と勝元たち日本の侍は違う点があります。

己が仕える主君のために生涯をかけて忠義を尽くし、己の務めに全力で励んでいること

そして元老院を牛耳った大村に逆らえず、性急に西欧化を進める気の弱い明治天皇への反乱は、勝元たちなりの主君への忠義だという、侍ならではの考え方です。

もとより最初に戦う前から、オールグレンは軍人とは考え方も戦い方も違う勝元たち、侍について興味津々でした。

捕虜となったオールグレンは、「敵を知るため」に自分を生かした勝元たちや、たかたち村の人々と交流を深めていくにつれて、日本固有の美と常に自分に厳しい侍の武士道に感銘を受けます。

オールグレンの視点で見る侍の「武士道」は、これまで歴史の教科書や、侍を描いた本や映画でしか知ることがなかった現代人も、勝元たちの生き方は格好良く思えることでしょう。

信頼関係を築いたオールグレンと勝元たち


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政府軍を養成する立場にあるオールグレンと、反乱軍のリーダーである勝元は最初、敵対関係にありました。

けれども勝元は、義理の弟である広太郎を殺したオールグレンを殺しません。それどころか、彼は「敵を知るため」だと言い、オールグレンの処刑を求める氏尾たちやたかを説得しました。

おそらく勝元は、敗走する政府軍の中で1人、孤軍奮闘するオールグレンの姿を見て、自分たち侍と通じる何かを感じたのでしょう。

オールグレンは勝元たちと同じ日本人ではないけれど、勝元たちと過ごす村での生活を経て、彼らと同じ強い信念を持った侍に生まれ変わりました

いつしか勝元たちはオールグレンを反乱軍の一員と認め、一緒に剣術の訓練をしたり、手合わせをしたり、彼のための刀を作ったりするようになります。

敵対関係から同じ武士道を貫く仲間として信頼関係を築いていくオールグレンと勝元たちの姿は、ずっと観ていたくなるほど微笑ましいものです。

まとめ


(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

西洋戦術を教えるために来日したアメリカ人将校が、西欧化を拒み建国以来の剣を信じる侍と出会い、武士道と日本固有の美に感銘を受けるアメリカの叙事詩的時代劇アクション作品でした。

本作の見どころは、オールグレンと勝元たち侍の交流と、反乱軍と政府軍の激闘です。

本作の悪役である大村は、日本の将来を考えて西欧化を押し進めていきますが、その反面、自らの資産を飢えに苦しむ民に分け与えようとはしません。

気が弱く、大村に牛耳られた元老院に今まで従うほかなかった明治天皇に、大村が長年の企みを阻まれ説き伏せられた場面は、観ているこちらもスカッとした気持ちになれます。

勝元たち侍の戦いは無駄ではありません。彼らの生き様を見聞きした政府軍の軍人たちや天皇が、失っていた武士道と侍の魂を取り戻すきっかけとなりました

明治維新以降の日本人と明治天皇、戦争の無意味さに疲弊したアメリカ人将校の心を変えた、勝元たち侍の「武士道」を描いた叙事詩的時代劇アクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

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