Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2020/05/15
Update

映画『ペイン・アンド・グローリー』感想レビューと評価。ペドロアルモドバル監督が愛したスペインの矜持

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『ペイン・アンド・グローリー』は6月19日(金)TOHOシネマズシャンテ他ロードショー予定

映画『ペイン・アンド・グローリー』は、長年の体調不良もあり引退同然の状態だった映画監督が、自分の32年前の作品に触れることで、かつての輝きを取り戻すまでの姿を描いたペドロ・アルモドバル監督の作品です。

主演は長年タッグを組んで来たアントニオ・バンデラス。アカデミー賞女優のペネロペ・クルスが共演します。

ペドロ・アルモドバル監督は、この作品は、1987年の『欲望の法則』と2004年の『バッド・エデュケーション』に続く3部作になると語っています。

映画『ペイン・アンド・グローリー』劇中では32年前の映画が大きなカギとなりますが、偶然にも、現実世界でも『欲望の法則』から『ペイン・アンド・グローリー』までの間に32年の月日が経っています。

スポンサーリンク

映画『ペイン・アンド・グローリー』の作品情報

(C)El Deseo.

【日本公開】
2020年(スペイン映画)

【原題】
Delor y Gloria

【脚本・監督】
ペドロ・アルモドバル

【キャスト】
アントニオ・バンデラス、アシエル・エチュアンディア、レオナルド・スバラーリャ、ノラ・ナバス、フリエタ・セラーノ、セザール・ヴィセンテ、アシエル・フローレス、ペネロペ・クルス

【作品概要】
『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)『トーク・トゥー・ハー』(2003)のペドロ・アルモドバル監督の作品。第72回カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞し、第92回アカデミー賞でも2部門ノミネートされました。主演は長らくペドロ・アルモドバルとコンビを組み続けるアントニオ・バンデラス。本作でカンヌ映画祭主演男優賞を受賞、初めてのアカデミー賞ノミネートも受けました。共演にはアカデミー賞女優のペネロペ・クルスも。R15作品。

映画『ペイン・アンド・グローリー』のあらすじ

(C)El Deseo.

スペインを代表する映画監督のサルバドールは、引退同然の生活を送っていました。

背中の痛みに膝と肩の炎症、耳鳴りや頭痛などの体調不良を抱えているうえに、4年前の自分の母の死を乗り越えられずにいました。

そんなある日、32年前の作品『風味』が再上映されることなり、サルバドールは主演のアルベルトとティーチインをすることになります。

しかし、サルバドールとアルベルトは、その演技に巡って対立し、プレミア上映の後から絶縁関係にありました。サルバドールは何とか和解しようとアルベルトを訪ねます。

アルベルトは戸惑いを感じながらも彼を迎え入れます。サルバドールはアルベルトの家でヘロインを試し、抱えていた痛みが和らいでいくのを感じます。

サルバドールは幼い頃に母親と暮らし始めた頃のことを思い出していました。数日後、今度はアルベルトがサルバドールを訪ねてきます。

肝心のサルバドールはヘロインで朦朧としている状態です。その時偶然、PCの中にあった『中毒』というタイトルの脚本をみたアルベルトは、これを独り芝居で上演したいとサルバドールに訴えます。

しかし、サルバドールはかたくなに拒みます。ヘロインに溺れるようになったサルバドールは、ティーチイン当日も会場に訪れずにトラブルを起こしてしまいます。

後日、サルバドールはアルベルトへの謝罪の気持ちを込めて『中毒』の上演を認めます。『中毒』はサルバドールの自伝的な物語でした。

『中毒』は1981年の恋人たちのつらく悲しい別れの物語でした。上演された舞台を見ていた男が、サルバドールを訪ねてきます。男の名はフェデリコ。かつて、サルバドールが愛した人でした。

サルバドールとフェデリコは、フェデリコのヘロイン中毒が原因で別れてしまいました。フェデリコはその後、中毒を克服、偶然立ち寄った先でアルベルトの舞台を見ることになりました。

30年以上の時を経て再会するサルバドールとフェデリコ。フェデリコとの再会により、自分がなくした愛の“痛み”(=ペイン)と忘れていた“栄光”(=グローリー)を思い出します。

その後、改めて医師の治療を受けたサルバドールは、ヘロインと決別して新作の準備に入ります。

スポンサーリンク

映画『ペイン・アンド・グローリー』の感想と評価

(C)El Deseo.

映画『ペイン・アンド・グローリー』の主役はアントニオ・バンデラス。彼は、90年代から00年代では『エビータ』(1996)『マスク・オブ・ゾロ』(1998)「デスペラード」シリーズなどのハリウッドアクション・娯楽作品で主役を務めてきました。

ハリウッド作品が多い彼ですが、本作を見るとやはり彼が引き立つのはスペイン映画ではないでしょうか。

彼はペドロ・アルモドバル監督の作品には、ハリウッド進出する直前までに4作品、そして2010年代から3作品に出演しています。

その間に『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)や『トーク・トゥー・ハー』(2003)などで、ペドロ・アルモドバル監督は、一気に国際的な地位を掴みましたが、そこにはアントニオ・バンデラスは不在でした。

コンビ復活となったのはちょうどバンデラスが50代に入った頃で、それまでのギラギラ感がちょっと薄まって、いい具合に枯れてきた時期に重なります。

アルモドバル監督はバンデラスより10歳ほど年上ですが、ここ数作を見ると感性はそのままに円熟味が加わってきた感があります。

“枯れの魅力”が様になってきたアントニオ・バンデラスと円熟味が増してきたペドロ・アルモドバル。2人が本領を発揮するのはこれからかもしれません。

まとめ

(C)El Deseo.

映画監督を主人公にした作品は、たくさんあります。クラシックな名作フェデリコ・フェリーニの『81/2』(1965)やティウ・バートン監督の『エド・ウッド』(1995)、ウディ・アレンの『さよなら、さよならハリウッド』(2002)などなど。

ウディ・アレンでいえば『ミッドナイト・イン・パリ』(2012)は映画脚本家の話です。J・J・エイブラムスのスピルバーグへのラブレターともいえる『SUPER8/スーパー8』(2011)の主人公も8mmカメラを片手に持っています。

最近では故若松孝二監督と若松プロダクションを描いた『止められるか、俺たちを』(2018)がありました。大抵の場合、そこに登場する映画作家は映画監督の自信を投影した存在であることが多いです。

本作『ペイン・アンド・グローリー』の主人公サルバドールにも、ペドロ・アルモドバルの分身といえる部分があります。

そういう意味でも、ペドロ・アルモドバルが気心の知れたアントニオ・バンデラスに主人公を託したのは正解といえるでしょう。

そして、70歳を迎えたペドロ・アルモドバルは、今までの人生と激動のスペインを主人公サルバドールに投影することも忘れていません。

国際的な知名度をどれだけ高めようとも、スペインから離れないペドロ・アルモドバルの矜持を感じます。

映画『ペイン・アンド・グローリー』は6月19日(金)TOHOシネマズシャンテ他ロードショー予定





関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『灰とダイヤモンド』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

今でも色褪せないモノクロ映画の世界。ポーランドのジェームズ・ディーンと謳われた、主演のZ・チブルスキーのワイルドさに惹かれます。 時は第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツが敗北へと向かう中、ポーランドで …

ヒューマンドラマ映画

映画『チア男子!!』キャストの溝口渉役は浅香航大。プロフィールと演技力の評価

映画『チア男子!!』は2019年5月10日(金)ロードショー! 『桐島、部活やめるってよ』『何者』で知られる直木賞作家・朝井リョウが、実在する男子チアリーディングングチームをモデルに書き上げた『チア男 …

ヒューマンドラマ映画

映画『空に住む』あらすじネタバレと感想内容。三代目JSB主題歌の世界観を多部未華子×岩田剛典で描く

映画『空に住む』は、2020年10月23日(金)からロードショー 映画『空に住む』は、『EUREKA ユリイカ』の青山真治監督が7年ぶりに長編映画を制作し、多部未華子と初タッグを組んだ人間ドラマです。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『もみの家』ネタバレ感想と考察。ロケ地の風景が評判となる坂本欣弘監督の“故郷富山”への思い

立ち止まっても大丈夫、ゆっくり進もう。 撒いた種の実る季節は必ずやってくるから。 心に問題を抱えた若者たちを受け入れ、再び歩きはじめるための一歩を手助けする場所「もみの家」。 主人公の彩花は、そこで仲 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ワンダー 君は太陽』あらすじとキャスト。天才子役ジェイコブ・トレンブレイ出演

映画『ワンダー 君は太陽』は、2018年6月15日TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。 ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト第1位を記録し、全世界800万部突破の小説「ワンダー」を『ルーム』で …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP