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Entry 2024/03/04
Update

【ネタバレ】『魔女の香水』あらすじ感想と評価解説。黒木瞳x桜井日奈子が香りに導かれて“自分だけの物語”を紡ぐ

  • Writer :
  • 谷川裕美子

打たれるたびに強くなっていくヒロインのサクセスストーリー

香水店の美しいマダムに導かれて、若きヒロインがたくましく成長していくさまを描く人間ドラマです。

香りを通して自分だけのストーリーを紡ぐ女性たちの姿を繊細に映し出すのは、『JAZZ爺MEN』(2011)『たった一度の歌』(2018)の宮武由衣監督。

白髪のミステリアスな店主を黒木瞳、逆境に負けず自身の道を突き進む主人公を桜井日奈子が演じます。

香しい香りが画面から立ち上るかのように、美しい世界が展開します。ごく平凡な女性が、香りに導かれて自分の足で歩き出すさまを描く本作の魅力をご紹介します。

映画『魔女の香水』の作品情報


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本】
宮武由衣

【編集】
岩切裕一

【キャスト】
黒木瞳、桜井雛、平岡祐太、水沢エレナ、小出恵介、落合モトキ、川崎鷹也、梅宮万紗子、宮尾俊太郎、小西真奈美

【作品概要】
「魔女」と呼ばれる香水店の店主、そして彼女が創る香水との出会いを通じて、将来への希望を見失っていた女性が自分自身の人生を切り開いてゆく様を描きます。

監督は『JAZZ爺MEN』(2011)『たった一度の歌』(2018)の宮武由衣。

香水店の店主・弥生役を黒木瞳が務めます。宝塚歌劇団月組の娘役を経て女優に転身後、演技派女優として『失楽園』(1997)等多数のドラマ・映画・舞台作品などに出演し、近年では『十二単衣を着た悪魔』(2020)など映画監督としても活躍しています。

魔女との出会いによって成長する女性・恵麻役には桜井日奈子。2018年映画『ママレード・ボーイ』で初主演を飾るなど、注目を浴び続ける若手女優です。

平岡祐太、水沢エレナ、小出恵介、落合モトキ、小西真奈美らに加え、主題歌を担当したシンガーソングライター・川崎鷹也が本作にて映画初出演を果たしました。

映画『魔女の香水』のあらすじとネタバレ


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

香水店を営む、白髪の上品な美しい女性、白石弥生。常連客に向かって2つの香水を見せながら「世の中には似て非なるものがたくさんある」と語ります。

華やかなバンケットホールで派遣社員として働く若林恵麻は、高卒ながら正社員を目指して頑張っていましたが、上司のセクハラ行為に抗議したためにクビになってしまいます。

自暴自棄になった恵麻は、夜の街のスカウトマン・杉斗に自分から声をかけました。彼は恵麻を、「魔女さん」と呼ばれている弥生の香水店へ連れて行きます。弥生に誘われ、恵麻はその店で働くこととなりました。

ある日、恵麻は金木犀の香り漂う男性・横山蓮と巡りあいます。

弥生からの言葉と香りによって、自分の人生を切り開くのは自分自身だと気づかされた恵麻は、起業を決めました。

それから3年後。香料会社で働き始めまた恵麻は、営業先で蓮と再会します。社長の蓮は取引打ち切りを告げますが、恵麻は必死でプレゼンしてもう一度チャンスをもらいました。

しかし、同行した上司は、派遣社員の恵麻の手柄を妬んで叱りつけます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『魔女の香水』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『魔女の香水』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

恵麻は弥生のもとを訪ねて、悩みを話しました。弥生は、魔女の香水『Parfum de prières(パッファンドプリエール)』の香りを恵麻に嗅がせ、伝説を自分で作るのだと奮い立たせます。

新作のアイデアに誰も耳を傾けてくれない中、霧子と調香師の真澄が恵麻に力を貸してくれました。恵麻が作った新作を蓮は気に入り、取引してもらえることとなりましたが、恵麻を妬む上司の進言によって派遣の契約を打ち切られてしまいます。

恵麻から顛末を聞いた弥生は笑い飛ばし、恵麻に起業するように言います。驚く恵麻に向かって、弥生は自分の人生は自分で切り開くのだと言い、「チャンス」の香水を嗅がせました。

一念発起した恵麻は会社を立ち上げ、孤軍奮闘します。弥生に『Parfum de prières(パッファンドプリエール)』を売らせてほしいと頼みますが、強く拒まれてしまいました。偶然再会した杉斗から、恵麻はヒントをもらい新たなアイデアを思いつきます。

ネットの仮想店舗でAIの魔女が客に合った香水を選ぶという恵麻の企画に、多くの人たちが協力してくれるようになりました。

偶然に再会した蓮と恵麻は恋に落ちます。しかしその後、資金繰りに困っている蓮は恵麻に援助を求めました。恵麻は、自分も内情が厳しいことを話して断ります。

後悔した恵麻は、何度も蓮に連絡をとろうとしますがつながりません。やがて、蓮が事故死したことを知らされます。彼が残した自分への愛を綴った手紙と指輪を見て、恵麻は遺体にすがって大声で泣きました。

弥生に苦しみを打ち明ける恵麻。弥生は自分の失った恋の辛い思い出を話し、これからも彼を愛して生きていけばいいと恵麻に語ります。

一年後。恵麻の会社は海外にも進出し、順調に成長していました。

そんなある日、体調を崩した弥生のもとにかけつけた恵麻は、弥生がナンバー9の香水を完成させようとしていることを知ります。残り1%の香料がわからないために、弥生は完成させられずにいました。

そこにやってきた杉斗は、自分が弥生の元恋人の子供だと告白します。亡き父から弥生について聞かされていた杉斗は、彼女に会いたいがためにこの町に住んでいました。杉斗のネックレスには、父が完成させた香水が入っていました。香りを嗅いだ弥生は、最後の香料の正体を知ります。

元恋人が、「弥生と過ごしたかもしれないもう一つの人生を考えたことがある」と言っていたことを聞かされた弥生は、最高の人生に笑顔となり恵麻と杉斗を抱きしめました。

やがて、最後のナンバー9まですべての香水が完成し、恵麻の会社で販売するようになりました。

町で漂ってきた金木犀の香りに気づいた恵麻は、明るい笑顔を浮かべます。弥生もまた、いつもと同じように客を笑顔で迎え入れます。

映画『魔女の香水』の感想と評価


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

何度も立ち上がり人生に挑み続けるヒロイン

自らの手で本当の幸せをつかんでいくヒロインを描いた爽やかなサクセスストーリーです。潔く人生に挑む姿にたくさんの勇気をもらえます。

高卒でまだ年若い恵麻は、派遣社員という弱い立場から脱出しようと日々努力を重ねていました。しかし、セクハラに抗議してクビになったり、よいアイデアを出してもやっかまれて派遣を切られたりと、辛い目に遭い続けます。

そんな中、スカウトマン・杉斗の仲介で、恵麻は不思議な力を持つ「魔女さん」こと香水店店主の弥生と出会います。弥生は迷える恵麻に香水について教え、魔力にも似た香水の力で恵麻を次々に新しいステージへと導きます。

ミステリアスで美しい弥生を演じるのは、元宝塚トップ娘役だった黒木瞳です。まさにはまり役で、白髪で落ち着いた雰囲気の魔女を魅力的に演じています

桜井日奈子が溌剌とした若さあふれるヒロインの恵麻を好演。喜怒哀楽を全身で表現し、観る者を魅了します。

顧客に“あなただけの物語”を提案していく恵麻恵麻の香水によって勇気づけられた女性たちが、「なりたい自分になる」ことを目指して歩き出すさまは爽快です。

恵麻の成長に加え、弥生の過去や、恵麻の切ない恋などほかにも見どころたっぷり。どうぞじっくり楽しんでください。

実らぬ恋がもたらす実りある人生


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

恵麻の成長を語る上で重要なキーとなるのは、彼女の辛い恋です。

弥生に導かれて起業した恵麻は、以前弥生の店で出会った金木犀の香りのする男性・蓮と再会します。彼は香水会社の社長をしていました。温かな心を持ち、自分を尊重してくれる彼と恵麻は恋に落ちます。

しかし、運命の女神は彼らに微笑んではくれませんでした。経営に行き詰まった蓮は恵麻に援助を頼みましたが、事業を始めたばかりで余裕のない恵麻は断ります。仲がぎくしゃくする中、蓮は交通事故に遇い帰らぬ人となってしまいます。

蓮は心からの愛を綴った手紙と指輪を恵麻に残していました。自分もまた深く蓮を愛していたことに気づいた恵麻は、苦しみ抜きます。

そんな恵麻の心を救ったのは弥生でした。弥生もまた、遙か昔に失った恋にとらわれたまま長い間苦しんでいました。「変わらず愛し続ければいい」という言葉をもらった恵麻は自分を取り戻します

そんな弥生に奇跡が起こります。実は杉斗は、弥生の元恋人の忘れ形見でした。亡くなった父から弥生への愛を聞かされていた杉斗は、真実を弥生に告げて彼女の魂を救います。

弥生も恵麻も、愛する人はもうこの世にはいません。しかし、彼女たちはこれからも、それぞれの恋人と共に生きていくことを心に決めました。

胸の内に愛を抱きしめて生きるふたりの人生は、実り多きものになっていくに違いありません

まとめ


(C)映画「魔女の香水」製作委員会

香水店の店主と香りに導かれ、年若いヒロインが自らの人生を輝かせるために成長を遂げていく爽快ストーリー『魔女の香水』

香水の奥深い香りを敏感に感じ取る感性と、温かな言葉を素直に受け入れる心の柔らかな主人公・恵麻。芳醇で悔いなき生き方をする秘訣を教えられます。

ピンチがチャンスであるのとも似て、絶望の隣にも輝かしい希望があることに気づかされる作品です。



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