小説『競争の番人』が2022年7月11日(月)からフジテレビ系月9ドラマに登場
第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作『元彼の遺言状』の作者、新川帆立の勝負作『競争の番人』。
今まで描かれることのなかった公正取引委員会を舞台に、白熊・小勝負という凸凹バディが活躍する物語です。
2020年の4月からフジテレビの月9ドラマで放映された『元彼の遺言状』に続いて、本作もドラマ化され、7月11日(月)より放映されます。
キャストは、白熊楓に杏、小勝負勉に坂口健太郎。映画『オケ老人!』(2016)以来、6年ぶりとなる2人の共演となりました。
ドラマ『競争の番人』の放映に先駆けて、小説『競争の番人』をネタバレ有りでご紹介します。
小説『競争の番人』の主な登場人物
【白熊楓(しろくま かえで)】
公取委の女性審査官。29歳。
【小勝負勉(こしょうぶ つとむ)】
公取委のキャリア審査官。東大首席のエリート
【天沢雲海(あまさわ うんかい)】
「ホテル天沢S」オーナー。
【長澤俊哉(ながさわ としや)】
「ホテル天沢S」ホテル長。
【碓井健司(うすい けんじ)】
「ホテル天沢S」ウエディング部門長
【安藤正夫(あんどう まさお)】
「Sクラシカルホテル」社長。何者かに刃物で刺されます。
【豊島浩平(とよしま こうへい)】
談合疑惑の聴取対象者。楓からの聴取後、自殺。
【豊島美月(とよしま みつき)】
浩平の娘で高校生。
【徹也】
楓の交際相手。大学時代の空手部の元先輩。
小説『競争の番人』のあらすじとネタバレ
公正取引委員会に勤める29歳の白熊楓。
ある日、白熊は道路工事を発注するゼネコンの談合について、参考人である工事発注者側の市役所職員・豊島浩平に話を聞いていました。
涙ながらに談合についての秘密を話した豊島は、その日の夜、市役所の屋上から飛び降り自殺をしました。
なぜこんなことにという思いを抱きながら白熊は斎場へ向かいますが、そこで豊島の高校生の娘・美月から、「どうしてお父さんは死んだの?」と言われます。
お父さんは正しいことをした、何も悪くはないと言いながら、豊島の自殺を招いたのは自分ではないかと思う白熊は「申し訳ありません」と謝るしかありませんでした。
このことがきっかけかどうかはわかりませんが、白熊のいる審査局第六審査長、通称「ダイロク」では配置換えが行われました。
白熊は桃園千代子という女性の元に配置されることになり、東大を首席で卒業したエリート・小勝負勉が留学先から帰って来て、白熊とともにバディを組むことに……。
そして新しい事件の割り当てがあり、栃木県S市のホテル3社をウェディング費用のカルテル疑惑の調査に当たります。
カルテルとは、事業者同士が話し合って値上げなどの合意をすることです。
白熊には結婚を約束した彼氏の徹也がいました。徹也は大学の空手部の先輩で神奈川県の警察官です。
つき合い出したのは、白熊が24歳の時。ちょうど警察官だった白熊の父が怪我をしたころです。
白熊は警察官をめざして警察学校にはいったのですが、現役警察官であった父が勤務中に怪我をし、娘の身を案じた母に警察官になることに猛反対され、やむなく警察学校を辞めました。
そんな相談も徹也にし、白熊の公正取引委員会に職が決まったときに付き合いだしたのです。
徹也とは結婚式場を下見にいったりしています。自分のプライベートな問題もかぶり、白熊はウエディング費用のカルテルには憤慨します。
地道な調査が1週間続きました。「Sクラシカルホテル」「温泉郷S」「ホテル天沢S」の3社はいずれも高度成長期に開業し、最近はジリ貧の経営状態でした。
しかし、調査中に「Sクラシカルホテル」の社長安藤正夫が男に刺されました。安藤は死にはいたりませんが、入院するはめになりました。
ちょうどそのホテルで内偵をする予定だった、白熊と小勝負はホテルの駐車場で「ホテル天沢S」を経営する天沢雲海の姿を見ました。
なぜこんなところにと不信に思い、彼の車を追っていたところ、本部から豊島美月が行方不明になったという連絡を受けました。
動揺する白熊を「今は雲海に集中しろ」と冷静冷徹な小勝負が諫めます。
その時、車から降りた雲海が男に刺されそうになり、飛び出した2人は雲海を助けました。
雲海の命と犯人とおぼしき男の命は助かったのですが、これによって雲海は自分が公正取引委員会からマークされていることを知ってしまいました。
小説『競争の番人』の感想と評価
今まで名前は知っていても深くその働きを知らなかったと言える「公正取引委員会」。
小説『競争の番人』では、不正と戦う公正取引委員会職員の悩みとその活躍ぶりを描いています。
公正取引委員会は、不正な手段で利益を生もうとする企業の行為を見破り、フェアな市場を提供するのが務め。
企業への立ち入り検査などを行う権利がありますがその一方で、警察の捜査令状のような強制的な権力や逮捕権は持っていません。
じれったいのですが、あくまで調査をするのが役割でした。そのために甘くみられる組織と言えますが、そんな甘さをはねのける正義感あふれる委員が、主役の警察官志望だった白熊楓でした。
空手が得意な男勝りな肉体派の白熊は、調査でも体力勝負に出てしまいます。悩みを抱えながらも仕事に専念する白熊。
胸にあるのは、悪を絶対に許さぬ正義感と自分の信じたことをやりたいという強い意思です。
警察官と自衛官が違うように、同じように法の裁きを求める公正取引委員会も税務署とは違います。ですが、弱小役所と揶揄される職場で、白熊は思い切り活動しています。
まじかに結婚を控え、現実の勤務に悩みながらも、正義を全うしようとする自分の仕事に誇りを持っている白熊にリアルな親近感を抱きます。
ドラマ『競争の番人』の見どころ
原作は出版前からドラマ化が決まっていたと言います。しかも、同じ原作者のドラマを2クール連続で放送するのは、フジテレビ史上過去にない異例のケースといいますから、凄い!
原作とドラマの大きな違いは、白熊は警察学校を退学して公正取引委員会に入ったのですが、ドラマではある事件によって刑事を辞めた白熊が公正取引委員会に入ったという設定になっている点です。
白熊の持ち味の「刑事の眼」が、元刑事ということで一層リアルに描かれ、物語に深みも加わることでしょう。
また、主役の私的事情を織り交ぜながら、一連の事件がスピーディーに展開する様はそのままでしょうから、一度みたら病み付きになるに違いありません。
そして注目すべきは、そのキャスティング!
ストレートに感情のままに行動する空手の名人・元刑事の白熊楓に『CUBE 一度入ったら、最後』(2021)の杏、天才的頭脳の持ち主でクールなイケメン・小勝負勉は、『仮面病棟』(2020)などの坂口健太郎が演じます。
正反対の凸凹バディの2人は、自由で公正な経済活動の競争を守るために目を光らせる“競争の番人”。独占禁止法に関わる違反行為を取り締まり、不正を働く企業の隠された事実をあぶり出していきます。
杏は原作の白熊楓よりもしっかり者といった印象で、坂口健太郎はひねくれ者の原作の小勝負勉よりも若干憎めない印象を受けますが、この2人がどこまで原作に近い演技をするのかと興味を惹かれます。
バディを組みながら、お互いの過去やプライバシーに触れて、次第に惹かれあっていく様も楽しみな展開と言えます。
ドラマ『競争の番人』の作品情報
【日本公開】
2022年(日本ドラマ)
【脚本】
丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
【原作】
新川帆立『競争の番人』(講談社)
【演出】
相沢秀幸、森脇智延
【プロデユーサー】
野田悠介
【キャスト】
坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎 他
まとめ
名前は知っていてもその働きをあまり知られていなかった公正取引委員会を舞台に、白熊・小勝負という凸凹バディが活躍する物語『競争の番人』。
法の秩序に乗っ取って悪を裁くことには、警察も公正取引委員会も変わりはありません。悪を裁いたあとのスッキリとした爽快感はどちらも同じです。
原作者新川帆立が描く正義感あふれる物語が、『元彼の遺言状』に続いてフジテレビでドラマ化されます。
読んでから観るか。観てから読むか。どちらにしても、十分楽しめる作品と言えます。
ドラマ『競争の番人』は、2022年7月11日(月)から全国放映。