窪田正孝が秘書役に初挑戦!秘書の目線から見た選挙の裏側をブラックユーモアたっぷりに描き上げる!
窪田正孝と宮沢りえが初共演した映画『決戦は日曜日』。
事なかれ主義の議員秘書と、急遽白羽の矢があたり候補者となった議員の娘、熱意はあるが空回りしてばかりというど素人の新人候補者に振り回される秘書、スタッフがからみます。
議員ではなく、裏方の議員秘書に目をつけ、選挙の裏側を描いた映画『決戦は日曜日』は、選挙の裏側をブラックユーモアたっぷりに描き上げた社会派コメディ。
『東京ウィンドオーケストラ』(2017)、『ピンカートンに会いにいく』(2018)の坂下雄一郎がまとめました。
映画『決戦は日曜日』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督・脚本】
坂下雄一郎
【キャスト】
窪田正孝、宮沢りえ、赤楚衛二、内田慈、小市慢太郎、音尾琢真
【作品情報】
『東京ウィンドオーケストラ』(2017)、『ピンカートンに会いにいく』(2018)の坂下雄一郎監督がオリジナル脚本で、議員秘書からみた選挙の裏側を描く映画『決戦は日曜日』。
オリジナル脚本でコメディ作品を次々と発表し続けている坂下雄一郎監督ですが、本作の脚本には何と約5年の月日をかけて執筆したといいます。
『初恋』(2020)、『Diner ダイナー』(2019)の窪田正孝が議員秘書役に初挑戦しました。
新人候補者は、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)の宮沢りえが務めました。
その他共演者にはドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)の赤楚衛二、『孤狼の血 LEVEL2』(2021)、『るろうに剣心 最終章 The Final』(2021)の音尾琢真。
更に、坂下雄一郎監督作『ピンカートンに会いにいく』(2018)で主演を務めた内田慈や、同監督作『東京ウィンドオーケストラ』(2017)に出演していた小市慢太郎も出演。
映画『決戦は日曜日』のあらすじとネタバレ
とある地方都市。
強い地盤を持ち当選を続ける衆議院議員・川島昌平の私設秘書谷村勉(窪田正孝)は、講演会に向かう川島昌平をぬかるんで足場が悪いためおぶって会場まで連れていきます。
秘書を務めて年数が経ち、川島昌平との信頼関係も築き、中堅となった谷村。
特別熱い思いはないが、私立の小学校に入学した娘のためにも、無難に仕事をこなす日々。
しかし、ある日川島昌平が突然病に倒れ、入院してしまいます。タイミングの悪いことに衆議院が解散してしまう……。
後継者として白羽の矢が立ったのは、川島昌平の娘・有美(宮沢りえ)でした。
古くから付き合いのある後援会の意見で、自分たちの意向を汲みやすい上に女であるという理由から選ばれた候補者でしたが、当の有美本人には、父である川島昌平の娘に引き継いでほしいと願いで選ばれたと伝えられていました。
自由奔放、世間知らず、選挙や政治に関してはど素人。それなのに熱意だけはある有美は、初日から気合いの入った挨拶をして秘書を始めスタッフらに失笑されてしまいますが、本人は全く気づいていません。
各々という感じが読めず、「かくかく」と読んでしまったり、炎上系動画配信者に過去のSNSでの発言をネタに煽られ、大激怒し炎上させてしまったり…
有美の補佐役になった谷村は、有美の問題行動に手を焼きます。後援会の人々も、他のスタッフも有美には関わらないようにし、谷村に注意をする始末です。
困った谷村はスタッフ皆の意見を収集し、有美に伝えます。
「今のままでは不愉快な素人」「相槌が適当すぎて聞いていないのがバレる」「やる気はあるが、やり方を履き違えている」などスタッフから辛辣な意見が続出し、最初は快く意見を聞くと言っていた有美の顔がどんどん険しくなっていきます。
そして、ある日有美は突然事務所の屋上に登り、スタッフらに向かって「改善を要求します!」と大声で言います。
自分に対する態度が酷すぎるから変えてほしいと叫ぶ有美に対し、谷村を始めスタッフらは白けた顔で有美を見ています。
「ああいう吐き出し方しかできない人いるよね」
改善しないなら飛び降りると言っても慌てないスタッフらに有美は驚きます。実は有美がいる屋上はさほど高くなかったのです。
スタッフは冷静にマットを運び、降りるならどうぞと涼しい顔をしています。
「日本の政治は間違っている!」ど素人でありながら、自分の意見をまっすぐ伝え、やる気だけはある有美の姿は次第に事なかれ主義の谷村の心境に影響を及ぼしていくのでした。
映画『決戦は日曜日』の感想と評価
議員秘書の視点から見た選挙の裏側をブラックユーモアたっぷりに描き上げた社会派コメディ映画『決戦は日曜日』。
全てのことをそういうものだと受け入れ、うまく調整して仕事をこなせばいい。そんな事なかれ主義で生きてきた議員秘書の谷村(窪田正孝)。
また、父親の影響で秘書を目指し、インターンでやってきた赤楚衛二演じる岩渕勇気も谷村らの仕事ぶりを見ながら“そういうものだ”と受け入れて仕事を飲み込んでいきます。
そのような谷村や岩渕の事なかれ主義はまさに現代の日本をよく表しているとも言えます。“さとり世代”、“忖度”などという言葉をよく耳にする現代。
有美のように「そんなのはおかしい!」と言葉にする人はそう多くないのではないでしょうか。人とぶつかることを避け、有美のような存在は厄介者、空気が読めないなど冷たい目線で見られてしまいます。
現に有美はスタッフから憎めないけど問題のある人だと思われ、まともに取り合う気はありません。
一方で有美自身にも大いに問題があります。無自覚であるが故に無神経な発言をしてしまったり、大人気なく怒り、暴言を吐く、ある意味素直な人物ですが、その自由奔放、世間知らずさは社会人として許容できる範囲ではありません。
過去のSNSの投稿が取り沙汰され炎上、問題発言で炎上…
また週刊誌の記事で議院と後援会での金銭の取引や、他の大きな事件が流れることで会見をしなくても済むと喜ぶスタッフの姿など、川島有美という人物を取り巻く様々な騒動にどこか既視感を感じることに気づきます。
政治家と金を取り巻く問題や、政治家の問題発言はニュースで実際に取り沙汰されてはいないでしょうか。
決してフィクションで終わる問題ではないのです。
そのような笑えない現実が背後にあることにハッとさせられる映画でもあるのです。
現代における様々な問題に対して私たちは事なかれ主義で果たして良いのでしょうか。
コメディの背後にある社会問題にも私達は目を向けなくてはならないのです。
現代社会の問題を浮き彫りにしながらも笑える社会派コメディとして見事にエンタメに昇華した本作は、坂下雄一郎監督のオリジナル脚本の素晴らしさ、そしてその脚本に惹かれ見事演じ切った窪田正孝、宮沢りえをはじめとしたキャスト陣の演技力の賜物と言えるでしょう。
まとめ
窪田正孝が秘書役に初挑戦し、議員ではなく、裏方の議員秘書に目をつけ、選挙の裏側を描いた映画『決戦は日曜日』。
5年の歳月をかけ、実際の議員秘書らに取材を重ねてできたオリジナル脚本のもと、選挙の裏側を描いています。
あまり描かれることのなかった議員秘書の仕事ぶりなども非常に興味深く、事なかれ主義が蔓延る現代社会、そしてそんな社会に生きる私達の目を開かせてくれるような、笑いの中にハッとする現実問題をうまく散りばめた映画になっています。