インディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画を配信するサービス「CINEMA DISCOVERIES」。
2021年3月6日に、サイトがリニューアルされ、早くも劇場で話題を集めた映画『かぞくあわせ』や『ハッピーアイランド』。
また他の動画サイトでは観ることのできない独占配信の映画『老人ファーム』など、続々と新着作品が登場しています。
今回はその中から、映画『かぞくあわせ』を中心にご紹介します。
本作は、同じ主演俳優、同じ撮影場所、同じ撮影日数(24時間)で、3本のオムニバスを制作するという、面白い試みの作品となっています。
CONTENTS
映画『かぞくあわせ』の作品情報
【公開】
2019年公開(日本映画)
【作品概要】
神奈川県・湘南の結婚式場「シーサイドリビエラ」を舞台に、長谷川朋史、大橋隆行、田口敬太の3人の監督が、結婚や家族をテーマに制作した3本のオムニバス映画。
映画『カメラを止めるな!』(2017)で、話題になった女優しゅはまはるみと、ベテラン俳優の藤原健彦が、3本共通で主演を務めています。
第1話『左腕サイケデリック』の監督とキャスト
長谷川朋史監督
【監督・脚本】
長谷川朋史
【キャスト】
しゅはまはるみ、藤田健彦、茎津湖乃美、田口敬太、奥村朋功
第1話『左腕サイケデリック』のあらすじ
徳一と和枝の夫婦は、娘のナオミの結婚式に出席します。
ですが、マリッジブルーに陥ったナオミは、徳一を突き飛ばして、バージンロードから逃げ出してしまいます。
突然の事に戸惑う徳一と対照的に、和枝は妙に落ち着いた様子を見せます。
和枝は、徳一との結婚式を思い出し「自分も逃げ出したかった」と振り返りますが、何故結婚したのか?が思い出せません。
徳一が、能天気な和枝の様子に呆れていると、結婚式場の上空に謎の飛行物体が出現します。
第2話『最高のパートナー』の監督とキャスト
大橋隆行監督
【監督・脚本】
大橋隆行
【キャスト】
しゅはまはるみ、藤田健彦、奥村朋功、佐藤考哲、太田いず帆、宇佐美真仁、上久保汐李、黒田麻美、才藤えみ、林良、藤井杏朱、松坂慎治
第2話『最高のパートナー』のあらすじ
21世紀、人類は高性能コンピューターと共に生活をしていました。
ダイスケは、パーティーの席でユーコと出会います。
ダイスケは、自身の高性能コンピューターである、フジタを通して、ユーコと連絡を取り合い、ユーコと食事の約束をします。
ですが、その瞬間からフジタの様子がおかしくなります。
実は、フジタはユーコの高性能コンピューターである、シュハマに偶然触れた事で、シュハマの事が気になっていました。
フジタはダイスケとユーコの恋愛を成就させる為、ダイスケへの猛特訓を開始します。
第3話『はなればなれになる前に』の監督とキャスト
田口敬太監督
【監督・脚本】
田口敬太
【キャスト】
しゅはまはるみ、藤田健彦、小島彩乃、池田良、松澤可苑、てっぺい右利き、星野花菜里、茎津湖乃美、奥村朋功
第3話『はなればなれになる前に』のあらすじ
離婚する事になった夫婦、良雄と愛子。
良雄は二度目の離婚となり、前妻との間に詩織という娘がいました。
ですが良雄は、愛子の連れ子である円香も、実の娘のように可愛がっていました。
円香は良雄と愛子の離婚が許せず、2人に反発するように1人暮らしを考えるようになります。
それでも離婚の決意が変わらない愛子は、良雄と離婚前の最後の思い出を作る為、詩織が働く結婚式場へ良雄と円香と共に向かいます。
愛子の考えが理解できず戸惑う良雄ですが、さらに結婚式場で、詩織の恋人と初めて顔を会わせる事になります。
映画『かぞくあわせ』感想と評価
「結婚式」にまつわる3つのエピソードを、長谷川朋史、大橋隆行、田口敬太の3人が監督・脚本を担当したオムニバス作品が展開される、映画『家族合わせ』。
3つのエピソードが「結婚式」を通して、さまざまな家族の形を見せています。
まず、コメディ色が強い第1話の『左腕サイケデリック』。
花嫁のナオミが結婚式から逃亡するという、なかなかの大事件が冒頭から起きますが、中盤から、さらにとんでもない事態が巻き起こります。
主演のしゅはまはるみと藤田健彦は、このエピソードでは倦怠期を迎えた夫婦を演じており「何で、あなたと結婚したのか分からない」というような、リアルなやりとりが繰り広げられます。
ですが、中盤以降のある展開を乗り越える事で、夫婦の絆が再び深まっていくまでが描かれています。
しゅはまはるみと藤田健彦の会話の応酬も含めて、かなり楽しいエピソードです。
続く第2話『最高のパートナー』は、高性能コンピューターが人間のパートナーとなった、21世紀の物語。
しゅはまはるみと藤田健彦が、擬人化された高性能コンピューターを演じています。
ダイスケとユーコの、人間の恋愛模様ではなく、2人をサポートする高性能コンピューターの恋路に焦点をあてた、変わり種の「家族の物語」なのですが、描かれている事は、男女の恋の始まりと、家族になるまでのエピソードなので、人間ドラマの王道とも言える物語です。
21世紀の物語なんですが、白黒の映像となっており、小津安二郎作品のような温かみのある印象を受ける、不思議な雰囲気の作品です。
最終話となる第3話『はなればなれになる前に』は、離婚を決意した夫婦の物語です。
愛子は、別れる夫の良雄との、最後の思い出作りの為に、ある事を計画します。
そこへ、良雄の前妻との娘である詩織や、愛子の連れ子、円香のさまざまな想いが交錯していく、家族の姿を描いた、群像劇となっています。
愛子と良雄の夫婦最後の時間を、ゆっくりとしたテンポで描いた作品で家族の終わりだけでなく、新たな始まりの物語でもあります。
映画『かぞくあわせ』は、3つのエピソードが、全く違う魅力を持っている作品です。
結婚というのは、人生の一大イベントになる為、そこに関わる人達の想いが交錯し、さまざまな人間ドラマが生まれるのは必然と言えます。
そして、本作で描かれる人間ドラマをの先にあるのは「優しさ」です。
ここで配信にあたり、プロデューサー兼務する長谷川朋史監督から、Cinemarcheへ届いたコメントをご紹介。
映画を観た皆さんが、明日も優しい気持ちで過ごせますように!
『かぞくあわせ』には、今あなたに必要な優しさがたっぷり込められています。
長谷川朋史
映画『かぞくあわせ』は、主演と撮影場所、撮影日数、そして扱うテーマが同じでも、監督によって、こんなにも描き方が変わっていくという部分が興味深く、映画の面白さを感じた作品でもありました。
2021年3月6日から独占配信!映画『老人ファーム』
シネマディスカバリーズで、2021年3月6日から配信となる作品を、もう一本ご紹介します。
本サイトでも2019年に紹介した、映画『老人ファーム』です。
映画『老人ファーム』あらすじ
病気の母親を支える為に、実家へ戻ってきた和彦。
和彦は、老人ホームの介護職員として、新たな職業に就きますが、慣れない仕事に当初は戸惑います。
家に変えれば母の小言が待っており、和彦にとって心が休まる時間は、恋人の遥と過ごす時間だけでした。
ですが、母親は遥との交際を良く思っておらず、和彦は頭を悩まします。
老人ホームで共に働く同僚や、施設管理者である後藤のサポートを受け、仕事にも慣れてきた和彦ですが、次第に施設のやり方に疑問を持ち始めます。
また、施設内の老人の中で、唯一職員に反抗的な態度を取る、アイコの存在に触発され、和彦は独自に施設を「過ごしやすい環境」に変えていこうとします。
ですが、時に施設内のルールも破る行動を取る和彦を、後藤は良く思っていません。
和彦は後藤から「規則を破らないでもらえるか?こいつらは動物と同じだから」と忠告を受けます。
それでも自分のやり方を貫こうとする和彦ですが、アイコが突然施設内から姿を消してしまい…。
老人ファームの感想と評価
兄の三野龍一が監督、弟の三野和比古が脚本を担当する、兄弟による映画制作チーム「Mino Brothers」初の劇場公開作品。
本作は「カナザワ映画祭2018」にノミネートされ、観客賞を受賞した他、「TAMA NEW WAVE ある視点部門」、「日本芸術センター映像グランプリ審査員特別賞」、「新人監督映画祭」など多くの映画祭で高い評価を受けています。
タイトルが『老人ファーム』ですが、老人ホームや介護問題を扱った作品ではなく、世の中に蔓延する「常識」や「当たり前」に疑問を投げかける内容で、2019年の公開当時は、賛否両論を巻き起こしました。
2021年は、「Mino Brothers」の新作『鬼が笑う』も公開予定なので、このタイミングで前作『老人ファーム』の世界に触れてみてはいかがでしょうか?
まとめ
同じく配信!渡邉裕也監督『ハッピーアイランド』
2021年3月6日に、サイトがリニューアルされる、「CINEMA DISCOVERIES」から、『かぞくあわせ』と『老人ファーム』をご紹介しました。
また、福島県出身の渡邉裕也監督『ハッピーアイランド』の他にも、今後の「CINEMA DISCOVERIES」は、「第31回東京学生映画祭」の入選作の中から17作品を配信するなど、他とは一味違う作品が鑑賞できます。
「映画ファンとともに歩むプラットフォーム」を掲げ、ネクストステージに突入した「CINEMA DISCOVERIES」に、今後も注目です。