詐欺事件に遭った当事者本人が脚本・主演で映画化
映画『ジェリーの災難』が3月20日(木・祝)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショーされます。
実際に起きた巨額の詐欺事件を、実際に被害に遭った当事者主演で描く異色サスペンスの見どころをご紹介します。
映画『ジェリーの災難』の作品情報
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
【日本公開】
2025年(アメリカ映画)
【原題】
Starring Jerry as Himself
【製作・監督・脚本・撮影・編集】
ロー・チェン
【共同製作】
ジョン・シュー
【共同脚本】
ジェリー・シュー
【共同撮影】
ティンクス・チャン
【音楽】
エリック・ホルジャス
【キャスト】
ジェリー・シュー、キャシー・シュー、ジョシュア・シュー、ジェシー・シュー、ジョン・シュー、ハオソン・ヤン、ニック・ベイリー
【作品概要】
アメリカ在住の初老男性ジェリー・シューが巻き込まれた巨額詐欺事件を、ジェリー本人の脚本・主演で映画化。
共演に、テレビドラマシリーズ「マダム・セクレタリー」(2014~19)のファン・ドゥ、『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(2014)のニック・ベイリーなど。
ブルックリンを拠点にドキュメンタリーや動画広告を手がけてきたロー・チェンの長編デビュー作となり、製作・共同脚本・撮影・編集も兼任。
スラムダンス映画祭やサンタバーバラ国際映画祭など40もの世界映画祭で多くの賞にノミネートされ、最優秀主演男優賞を含む受賞歴を獲得しました。
映画『ジェリーの災難』のあらすじ
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
長年アメリカに住み、この地で成功することを夢見てきたジェリー・シューは、妻とも別居し、3人の息子とも離れて、独りで暮らしていました。
そんなある日、彼のもとに中国警察から電話があり、国際的マネーロンダリング事件の捜査で、自身が容疑者になっていることを知らされます。
このままでは逮捕されて中国に強制送還すると告げられたジェリーは、中国警察のスパイとして事件の捜査を余儀なくされ……。
映画『ジェリーの災難』の感想と評価
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
映画やテレビドラマにおいて、実際に起こった出来事を実録ストーリーとして映像化することは格段珍しくはありません。
その際には俳優が事件に関わった当事者を演じるものですが、当事者本人が撮影に参加するケースもあり、例えば刑務所から脱獄した囚人の実話を描いた『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』(2020)では、当の脱獄囚がカメオ出演しています。
しかしながら本作『ジェリーの災難』は、実際に巨額の詐欺事件に遭った当事者が主演を務めるという、きわめて稀な内容となっています。
主人公のジェリー・シューは、1970年代に渡米し、エンジニアとして家族を養っていましたが、成人した3人の息子も独立し、やがて妻とも別居。定年退職して独り暮らしをしていたある日、中国警察のチャン巡査から電話がかかってきます。
電話の内容は、ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を通して128万ドルもの大金が違法に移動しているという、いわゆるマネーロンダリング事件の容疑者となっているというもの。当然身に覚えのないジェリーでしたが、このままでは逮捕されて中国に強制送還すると言われ、捜査に協力することに。
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
銀行を監視して写真を撮影したり、秘密裏に送金をしたり、さらには隠しマイクを着けて銀行窓口係を探ったりと、チャンの指示を受けて捜査を手伝う。これらすべてはジェリーが実際に行ってきたことの再現であり、主演のみならず脚本にも参加した理由です。
実はジェリーが渡米したのは、フィルムメーカーになるという夢を叶えるためでした。
脚本執筆と演技に情熱を燃やしていたものの、家庭を持ったことで断念。しかし数十年後に、予期せぬ形でアメリカン・ドリームを掴むこととなったのです。
まとめ
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
いつの世も起こる詐欺事件。その手口は様々にして巧妙になってきており、いくら注意していても冷静な判断ができず、うっかり騙される可能性もあります。ジェリーの災難は決して他人事ではないのです。
数カ月間、潜入捜査をしていた事実を妻や息子たちに打ち明けるジェリー。それは彼にとって、驚愕の選択にもつながっていきます。
フィクションとノンフィクションの境界線を跨ぎつつ、防犯意識の啓発と同時に家族の絆も描いた秀作に、乞うご期待ください。
映画『ジェリーの災難』は3月20日(木・祝)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー。
松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)