映画『ハウス・オブ・グッチ』2022年1月14日(金)全国公開!
GUCCI創業者一族の確執とその中で起きた創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオ・グッチ殺害事件を描いた『ハウス・オブ・グッチ』。
GUCCIという富と名声に翻弄され、一族内で醜い権力争いが繰り広げられます。それを裏で画策していたのはマウリツィオの妻、パトリツィア・レッジャーニでした。
労働者階級で育った彼女がどうやってグッチ一族に入り込んだのか。なぜマウリツィオは殺されることになったのか。
パトリツィアの視点で一族の盛衰を見つめていきます。
CONTENTS
映画『ハウス・オブ・グッチ』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原作】
サラ・ゲイ・フォーデン『ハウス・オブ・グッチ 上・下』(実川元子訳、ハヤカワ文庫、2021年12月刊行予定)
【監督】
リドリー・スコット
【脚本】
ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティベーニャ
【出演】
レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエックほか
【作品概要】
2001年にサラ・ゲイ・フォーデンが書いた『ハウス・オブ・グッチ 上・下』を原作とし、『エイリアン』(1979)や『ブレードランナー』(1982)などの名作から、アカデミー賞作品賞を受賞した『グラディエーター』(2000)や『最後の決闘裁判』(2021)など、幅広い作品を世に送り続けるハリウッドの巨匠リドリー・スコットが監督を務めます。
グッチ家崩壊を招くパトリツィア・レッジャーニには、世界的なミュージシャンとして唯一無二の存在であり続け、初主演『アリー/スター誕生』(2018)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたレディー・ガガ。
その夫マウリツィオ・グッチをアダム・ドライバーが演じるほか、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエックなどハリウッドを代表する豪華キャストが勢ぞろいしました。
映画『ハウス・オブ・グッチ』のあらすじ
父が営む運送業会社で経理を担当するパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は友人に誘われて出掛けたパーティーで1人の男性と知り合います。
彼の名前はマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)。その名前を聞いてピンときたパトリツィアは偶然を装って再会を果たし、積極的にアプローチを掛けました。
マウリツィオ本人は弁護士を目指していましたが、ファッションブランド“GUCCI”の創業者グッチオ・グッチの孫だったのです。
マウリツィオの父ロドルフォ・グッチ(ジェレミー・アイアンズ)はパトリツィアが財産目的で息子に接近していると怪しみ、結婚に反対しますが、世間知らずのマウリツィオはパトリツィアに夢中で、耳を傾けませんでした。
ロドルフォの兄で、GUCCI経営のトップに立つアルド・グッチ(アル・パチーノ)は甥の結婚を知り、2人を自身の誕生日パーティーに招きます。
アルドはパトリツィアを気に入り、2人をNYに招待しました。
パトリツィアは傾倒し依存する占い師ピーナ(サルマ・ハエック)の助言を受けて、家業を継ぐことに興味のなかったマウリツィオを説得。
NYに移り住むと、マウリツィオはアルドからブランドの仕事を託されるようになりました。
一方、アルドの息子パオロ(ジャレッド・レト)はGUCCIのイメージとはかけ離れた、新たなデザインを模索しますが、父やロドルフォに受け入れてもらえず苦悩していました。
やがて病身だったロドルフォが亡くなり、マウリツィオに対して支配的になっていったパトリツィアはパオロに味方するように思わせ、父子の対立を深めさせます。
それは2人をGUCCIから追いやっていくための方策でした。しかし、パトリツィアたちも無傷ではいられない事態になっていきます。
こうした親族内トラブルが続き、マウリツィオのパトリツィアへの愛は冷めていき、若い頃の友人に安らぎと愛を求めるようになってしまいます。
すべてを失うことを恐れたパトリツィアはピーナに相談を持ち掛け、最悪の手段を講じることにしました。
映画『ハウス・オブ・グッチ』の感想と評価
レディー・ガガが魅せる細やかな演技
パトリツィアは友人に誘われて出掛けて行ったパーティーでマウリツィオと出会います。
しかしパーティー会場のカウンターの中にいたマウリツィオを最初はパーティースタッフと勘違いして飲み物を頼みました。
おどおどと自分の立場を説明しつつもカクテルを作ってくれたマウリツィオにパトリツィアは好意を感じ、自分の名前を名乗ると、マウリツィオもフルネームで名乗ります。
「グッチ」という言葉を聞いたときのパトリツィアの目に注目です。マウリツィオをロックオンした音が聞こえてきた気がしました。
マウリツィオをダンスに誘うパトリツィア。しかし、その場でぐいぐい迫っていくわけではありません。
後日、偶然を装い、再会。印象を残す行動を取ります。
この辺りの駆け引きは見事。初心なマウリツィオがノックアウトされるのも仕方ありません。
パトリツィアを演じたレディー・ガガが予告編の中で「GUCCIはイタリアを代表する王朝と呼べる企業の1つ」と語っています。
華やかなファッション業界の頂点に君臨したブランドで富の象徴ともいえるでしょう。
しかしこの頃のパトリツィアは、GUCCIが持つ富の本当の意味を理解できていませんでした。
マウリツィオの伯父であるアルドから誕生日パーティーに招かれたとき、自分が知っている世界との違いに驚いているのがパトリツィアの表情から伺えます。
アルドからは気に入られ、マウリツィオをけしかけてNYで暮らし始めた頃からパトリツィアの顔つきが変わってきます。まるで獲物を狙う狡猾なハイエナのよう。
新居に着いて、マンハッタンの高層ビルを背景にしてベランダに立つパトリツィアをマウリツィオがカメラで捉えますが、カラコレで色味を落とし、BGMにユーリズミックスの「Here Comes the Rain Again」を流して、不吉感たっぷり。
2人の行く末が暗示されます。この頃から衣装も目を見張るほどに変わっていきます。これもGUCCIの全面的な協力があってこそ。
隙のない着こなしは、まるでGUCCIという鎧を身につけているようで痛々しさを感じます。
パトリツィアの変化をレディー・ガガが、細やかな目の動きといった顔の表情や立ち居振る舞いで演じ分けています。
初主演『アリー/スター誕生』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも納得です。
内気な若者が権力に魅入られていく
マウリツィオは幼い頃から富の享受は受けていたためか、パトリツィアのようなハングリーさがなく、父親が持つものへの執着を感じません。
人のいい“ぼんぼん”な感じをアダム・ドライバーが自然に醸し出していました。
マウリツィオは結婚を反対されて家を出て、パトリツィアの義父(パトリツィアの母は子どもを連れて再婚しているのです)が経営する運送会社で働き始めます。
もしかするとその頃が実は一番幸せだったのではないか、そんな気がするほど、2人とも楽し気です。
ところがパトリツィアに追い立てられるようにGUCCIの経営の一端を担ううちに、マウリツィオは洗練されていきます。
演じているのがアダム・ドライバーですから、カッコいいのも当たり前。ファンにとっては眼福ものでしょう。
やがてパトリツィアの存在が一族を変え始め、権力と名誉を求めて家族同士で争うように。
一度は永遠の愛を誓い、夫婦として同じ道を歩んでいたはずのパトリツィアとマウリツィオですが、身内に対する思いを共有するのには無理がありました。
“自分が夫をここまでにした”という思いでパトリツィアはマウリツィオを雁字搦めにしようとしますが、それって相手にとっては鬱陶しいだけ。
GUCCIのトップに君臨するようになったマウリツィオの気持ちはパトリツィアから離れ始めます。決定打となったのはマウリツィオが昔の仲間とスキー場で寛いでいたときのパトリツィアの振る舞い。
今度、聞こえてきたのはマウリツィオのパトリツィアへの思いが完全に切れた音。その瞬間のアダム・ドライバーの表情は要チェックです。
ため息がもれるラグジュアリーな空間
マウリツィオの父親ロドルフォの邸宅はイタリア最大のミシンメーカー、ネッキ家の私邸であるヴィラ・ネッキ・ カンピリオで撮影されました。
建築士のピエロ・ポルタルッピが予算無制限で建てただけあり、ため息が漏れるほど豪華。現在はガイド付きツアーでのみ見学可能です。
アルドの邸宅はルネサンス期のパラディアン様式の住宅を使用していますが、アンティークな雰囲気の内装が完璧!
マウリツィオがパトリツィアと別れた後、幼馴染みのパオラと暮らしていた家もエレガントなうえにゴージャスです。
ラグジュアリーな空間も本作の見どころになっています。
まとめ
ブランドの元祖と呼ばれた、世界屈指のファッション・ハイブランド“GUCCI”。
華麗なる創業一族が金と権力に惑わされ、崩壊していく様を描いた作品ですが、パトリツィアとマウリツィオの愛の物語でもあります。
きっかけはステージアップを狙ったパトリツィアの野心だったかもしれませんが、彼女がマウリツィオを愛していたのは確かだとレディー・ガガの演技を見ていると思えてきます。
愛=束縛と勘違いしてしまったパトリツィアの取り返しのつかない決断が多くの人を不幸にしてしまいました。愛情はたっぷりあったものの、愛し方が間違っていただけなのかもしれません。
ところでGUCCIと日本の関係は意外と深いのです。
第二次世界大戦期に牛革の使用が困難になり、GUCCIは革の代用品となる素材として日本から竹を輸入し、バッグの持ち手として採用したことで「バンブーバッグ」が誕生しました。
日本の関係は作品にも登場します。アルドがロドルフォの邸宅を訪ねたときに「コンニチハ」と声を掛け、「御殿場のモールへの出店」をロドルフォに提案していたのです。
御殿場プレミアム・アウトレットの開業は2000年7月13日ですから、その15年くらい前にGUCCIはすでに御殿場への進出を考えていたようです。
映画『ハウス・オブ・グッチ』2022年1月14日(金)全国公開!