女子高生が過去にタイムスリップ!全世界興収900億のコメディ
映画『こんにちは、私のお母さん』が、2022年1月7日(金)よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国公開となります。
過去にタイムスリップしてしまったダメ女子高生の奮闘を描き、全世界興収900億円という記録を打ち出したコメディを、ネタバレ有りでレビューします。
映画『こんにちは、私のお母さん』の作品情報
【日本公開】
2022年(中国映画)
【原題】
你好,李煥英(英題:Hi, Mom)
【監督・脚本】
ジア・リン
【製作】
シー・シャオイエ
【共同脚本】
スン・ジービン、ワン・ユー、ブー・ユー
【音楽】
ポン・フェイ
【キャスト】
ジア・リン、チャン・シャオフェイ、シェン・トン、チェン・フー、リウ・ジア
【作品概要】
何をするにもダメな女子高生が、母と巻き込まれた交通事故をきっかけに過去にタイムスリップしてしまう騒動を描くコメディ。
中国の舞台・テレビ・映画で活躍するコメディエンヌのジア・リンが、自身の母との実話を元に監督・脚本を担当し、撮影時39歳にして主人公の女子高生を演じます。
中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で「2021年度実力俳優」に選出されたチャン・シャオフェイが若き日の母親役を熱演。そのほかの共演者に、中国屈指の喜劇王と称されるシェン・トン。
中国では2021年の旧正月に公開され、最終的に約937億円という全世界公開映画の興行収入第2位を記録しました。
映画『こんにちは、私のお母さん』のあらすじとネタバレ
2001年の中国。とあるレストランで、女子高生ジア・シャオリンの大学合格祝賀パーティーが開かれていました。
母のリ・ホワンインは娘の合格を誇らしげに喜びますが、実はジアは大学の合格通知を偽造していたのです。
パーティーにはホワンインの元同僚で、嫌味な性格のワンも参加。昔の因縁を引きずる2人は小競り合いになり、それが原因でジアの嘘はあっさりとバレてしまいます。
恥をかかせてしまったことを謝るジアでしたが、それでもホワンインは責めずに慰めるのでした。
ところが、直後に自転車を二人乗りして帰路に就いていた最中に、自動車事故に巻き込まれてしまいます。
病院で意識のない母を見て泣き続けるジアは、いつしか眠りに。
そして気がつくと、ジアは20年前の1981年にタイムスリップしており、空から落ちて、若かりし頃の母ホワンインの上に覆い被さっていました。
母に出会ってしまったジアは戸惑うも、一緒に担ぎ込まれた病院にて「私はホワンインの遠い従姉妹」とごまかします。
2人を病院に運んだホワンインの兄(ジアの伯父)は訝るも、ホワンインはなぜか納得。工場で働くホワンインの家に一緒に暮らすこととなります。
これまで母に苦労ばかりかけてきたことを悔やんでいたジアは、今こそ親孝行するチャンスと奮起。
ホワンインが工場員の中で一番最初にテレビをワンに買われたのを悔やんでいたことを思い出し、ジアは小芝居を打って先に買わせることに成功。
さらに、工場のバレーボール部に所属していたホワンインを大会でワンのチームに勝たせるべく、不良青年のロン・ターらも巻き込んでメンバー収集に奔走します。しかし、ジアもメンバーに加わって挑んだ試合は、奮闘虚しく負けてしまいます。
そんな中、大会を観ていた工場長が頑張るホワンインの姿を認め、一人息子シェン・グアンリンとの見合い話を勧めてきます。グアンリンは、本来ならワンと結婚するはずでした。
このままホワンインとグアンリンが結婚すれば、自分は生まれなくなってしまう――いったんは落ち込むジアでしたが、これまでの母の人生を思い出し、より良い人生を送ってもらおうと考えを改めます。
ホワンインとグアンリンを結婚させるべく、早速動き出すジア。グアンリンは父親の権力を鼻にかけるドラ息子でしたが、ホワンインに一目惚れしたことで、ジアのデート案に乗ることに。
しかし、映画を観に行かせるべく2人にチケットを渡すも、座席番号の手違いで隣同士に座らせることに失敗。さらに密かにジアに片想いするロン・ターの協力を得て、公園のボートで2人きりにさせるも、グアンリンが食事として持ち込んだ枝豆で体調を崩して台無しにするなど、なかなか上手く行きません。
その一方でジアは、両親と折り合いが悪くて悩むロン・ターに自分を重ねるのでした。
映画『こんにちは、私のお母さん』の感想と評価
本作『こんにちは、私のお母さん』は、中国本土で絶大な人気を誇るコメディエンヌのジア・リンが、実母との死別を基にした小品(コント)から想を得ています。
「世の中には間に合わないことがある。その最たるが親孝行」として、ジアは自分が母にしたかったことを本作で表しました。「孝行したい時に親はなし」ということわざがありますが、何もこれは日本に限ったことではないのです。
主人公が過去にタイムスリップして若き日の親に会うというプロットは、言うまでもなく『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)の影響があります。
ただ、主人公が自分の出生の危機を防ごうとする『バック・トゥ~』と違い、本作ではジア扮する女子高生が、自分が生まれなくても構わないから、苦労をかけてきた母ホワンインに幸せな人生を送ってほしいと奔走します。
「いつになったら私を喜ばせてくれるの?」という母の言葉が重い十字架となっていたジアが、不器用ながらも親孝行に励む――その姿に共感できない人は、おそらく皆無でしょう。
本作は、1980年代の中国の世俗に触れられる点でも興味深いといえます。
鄧小平の主導により1978年から始まった改革開放政策の一環として、市場経済を立て直すべく若者たちが労働に精を出していた中国。
ただし共産主義国ゆえに電化製品などは完全に普及しておらず、同じ中華圏でもイギリス領だった香港とは、明らかに文化の発展度合に差がありました。
それを象徴的するのが、劇中でホワンインとグアンリンが映画館で観る『廬山の恋』(1980)です。
実はこの作品は中国映画で初のキスシーンが描かれたのですが、同時期の香港ではキスシーンを含む作品は当たり前のように作られていたことを鑑みても、いかに中国本土の表現描写の規制が厳しかったかが伺えます。
ちなみにその頃の香港ではジャッキー・チェンやサモ・ハンらのアクション作品が隆盛を極めていましたが、本土ではジャッキーはおろかブルース・リーの存在も知られていなかったといいますから驚きです。
コメディ描写も分かりやすいぐらいベタなのも、広大な中国らしく大陸的かつ牧歌的な雰囲気を醸し出していると言えるかもしれません。
まとめ
原題の『你好,李煥英』とは「こんにちは、リ・ホワンイン」という意味で、これは劇中に登場する母リ・ホワンインにして、ジア・リンの実際の亡き母の名前でもあります。
なぜ母の名をタイトルに入れたかという問いに、ジアは「母のことを語りたかっただけでなく、李煥英という一人の女性のことも語りたかったから」と答えています。
失望させてばかりいた娘ジアの親孝行がしっかりと母に伝わっていたというラストには、感涙必至となるはず。
母親賛歌に満ちた、感動の一作です。
映画『こんにちは、私のお母さん』は、2022年1月7日(金)よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国公開。