アメリカの暗黒街を支配したマフィア王の実像とは?
名優ハーヴェイ・カイテル主演の映画『ギャング・オブ・アメリカ』が、2022年2月4日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショーとなります。
全米最大の犯罪組織《シンジケート》を率いて暗黒街を支配した実在のマフィアの生涯を描いた、本作の見どころをご紹介します。
CONTENTS
映画『ギャング・オブ・アメリカ』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Lansky
【監督・原案・脚本】
エタン・ロッカウェイ
【共同原案】
ロバート・ロッカウェイ
【製作】
ジェフ・ホフマン、ロバート・オグデン・バーナム、エリック・ビンズ
【撮影】
ペーター・フリンケンバリ
【キャスト】
ハーヴェイ・カイテル、サム・ワーシントン、アナソフィア・ロブ、ミンカ・ケリー、デビッド・ジェームズ・エリオット、ジョン・マガロ
【作品概要】
禁酒法時代から半世紀にわたりアメリカの暗黒街を支配した実在のマフィア、マイヤー・ランスキーの生涯を描いたクライムドラマ。
『レザボア・ドッグス』(1991)、『ピアノ・レッスン』(1993)のハーヴェイ・カイテルがランスキーを、『アバター』(2009)のサム・ワーシントンが彼にインタビューを試みる作家ストーンを、それぞれ演じます。
そのほかのキャストに、『ソウル・サーファー』(2012)のアナソフィア・ロブ、『オーヴァーロード』(2019)のジョン・マガロ、『(500)日のサマー』(2010)のミンカ・ケリー。
カルト教団による殺戮ホラー『サモン・ザ・ダークネス』(2020)の製作総指揮を務めたエタン・ロッカウェイが監督・原案・脚本を手がけ、彼の実父ロバートが実際に生前のランスキーにインタビューを行った経験がベースとなっています。
映画『ギャング・オブ・アメリカ』のあらすじ
1981年、マイアミ。長らくスランプ状態だった作家のデヴィッド・ストーンは、伝説的マフィアとして知られるマイヤー・ランスキーの伝記を書いて、起死回生を狙います。
しかしインタビューに応じたランスキーは、「俺が生きているうちは、誰にも伝記を読ませるな」と条件を提示。
かくしてインタビューは始まり、自らの人生を赤裸々に語るランスキー。それは、半世紀以上に及ぶギャングたちの壮絶な抗争の記録でもありました。
インタビューが終わりに近づいた頃、ストーンはFBIが3億ドルともいわれるランスキーの巨額資産を捜査していることに気付きます。
捜査協力を強いられたストーンが下すこととなる決断とは……。
映画『ギャング・オブ・アメリカ』の感想と評価
アメリカの暗黒街を支配し、ラスベガスを築いた男
本作『ギャング・オブ・アメリカ』は、アメリカに実在したマフィア、マイヤー・ランスキーの生涯をドラマ化したものです。
1902年、ロシア帝国領だったグロドノ(現在のベラルーシ、フロドナ)にてユダヤ系ロシア人として生まれ、8歳でアメリカに移住するも、貧しい幼少時代を過ごします。
しかし、同じユダヤ人で“バグジー”のあだ名で知られるベンジャミン・シーゲルとのコンビで、路上賭博や窃盗強盗などの稼業で名を上げます。
その後、イタリア系マフィアで構成される犯罪組織コーサ・ノストラの最高幹部ラッキー・ルチアーノとの出会いを機に、シーゲルを含む3人で殺し屋集団《マーダー・インク》を結成。1930年代には全米各地で次々と闇賭博の拠点を作ります。
さらに40年代に入り、人口わずか2,000人程度だったネバダ州の町ラスベガスをギャンブルの一大都市へと変貌させるなど、アメリカ経済にも影響を及ぼしたほど。
ちなみにランスキーが登場するほかの映画として、『バグジー』(1991)でベン・キングスレーが、テレビ映画『ランスキー アメリカが最も恐れた男』(1998)ではリチャード・ドレイファスが、それぞれ彼を演じています。
『バグジー』(1991)
明かされるマフィア王の二面性
アル・カポネやフランク・コステロら、名立たるマフィアと肩を並べるランスキーですが、彼が異彩を放っていたのは、その頭脳と才覚です。
身長は160センチ代と小柄でしたが、金銭の記憶と扱い方において卓越した知識を持ち、さらに警戒心の強さから犯罪行為なども直接手を下さないなど、表に出ることを極力避けるようにしていたのです。
また、マーダーインクや賭博ビジネスで雇用を創出したり、第二次世界大戦時にはFBIの依頼で、アメリカ国内にはびこる親ナチス団体狩りも行っていました。
暗黒街でマフィアの域を超えた存在となったランスキー。しかしながら私生活では、長男が障害を抱えた状態で生まれたのを機に、妻アンナとは不和状態に。
さらには、相棒シーゲルがカジノホテル経営に失敗したことで、2人の友情にも陰りが生じていきます。
あらゆるものを支配してきた男が、唯一支配できなかったもの――彼のもう一つの顔である、悩める姿が描かれます。
光るハーヴェイ・カイテルの老境演技
本作は、年老いたランスキーに作家のストーンがインタビューを行い、そこで語られる人生を、1910年代から80年代までの時代を行き来しながら描きます。
その80年代の老ランスキーを演じるのは、ハーヴェイ・カイテル。
『ミーン・ストリート』(1973)や『レザボア・ドッグス』(1991)、『バグジー』では実在したギャングのミッキー・コーエンを演じるなど、数々の作品でアウトサイダーな役をこなしてきた彼ですが、ある意味ランスキーは、そうした役どころの集大成的人物といえるかもしれません。
また、自らの出自を切々と語っていくランスキーは、東欧系ユダヤ人の血筋を引くカイテル自身とも重なる面も。
80代という老境に入ったこともあってか、これまでにない深みのあるランスキー像を構築しています。
まとめ
「パパのようになりたい」と長男に言われたランスキーは、「お前は何にでもなれる。でも俺みたいにはなるな」と告げます。
もしランスキーがまともな職に就いていたなら、確実に敏腕経営者となっていたはず。しかし、ユダヤ人として生まれた血筋と、移民として社会を生きねばならなかったアメリカという国が、それを許さなかった。
「この世は白と黒ではなく、グレーの濃淡で出来ている」
彼は悪人だったのか?それとも…
グレーに包まれたマフィア王の実像を、その目で確かめてください。
映画『ギャング・オブ・アメリカ』は、2022年2月4日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー。