差別に負けずアメリカNASAの「マーキュリー計画」を支えたある3人の女性の物語。
本国アメリカでも大ヒットを記録し、アカデミー賞3部門でノミネートを果たした話題作『ドリーム』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『ドリーム』の作品情報をどうぞ!
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1.映画『ドリーム』の作品情報
(C)2016 Twentieth Century Fox
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Hidden Figures
【監督・脚本】
セオドア・メルフィ
【キャスト】
タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルステン・ダンスト、ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ、キンバリー・クイン、グレン・パウエル、オルディス・ホッジ
【作品概要】
1960年代初頭、アメリカが超大国の威信をかけて推進していた有人宇宙飛行計画を背景にした本作は、その“マーキュリー計画”において黒人の女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げた史実を描き出します。
キャサリン・G・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンという実在の主人公3人は、当時まだ色濃く残っていた人種差別に直面し、職場でさまざまな苦難に見舞われますが、“人間コンピュータ”とも呼ばれた卓越した知性、たゆまぬ努力、不屈のガッツで次々とハードルを突破。
そんな3人の驚くべき道のりを軽妙なユーモアにくるんで親しみやすく伝え、なおかつ心揺さぶるカタルシスをもたらすサクセスストーリーに、誰もが魅了されずにいられません。
等身大の共感を呼ぶ“お仕事ドラマ”としても、NASAの宇宙開発の現場をリアルに再現した“歴史ドラマ”としても一級の出来ばえを誇るエンターテインメント快作です。
その感動的な物語をバイタリティあふれる演技で牽引したタラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイの主演トリオは全米俳優協会賞の最優秀アンサンブル賞に輝き、スペンサーがアカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。
さらに、言わずと知れた大物スター、ケビン・コスナーや『ムーンライト』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリががっちりと脇を固め、『ヴィンセントが教えてくれたこと』の新鋭監督セオドア・メルフィが軽やかな語り口を披露。
そして音楽界のスーパー・マルチアーティスト、ファレル・ウィリアムスが手がけたサウンドトラック、1960年代の風俗を今に甦らせたカラフルなファッションも観る者の胸を弾ませるに違いありません。
2.映画『ドリーム』のあらすじとネタバレ
(C)2016 Twentieth Century Fox
東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。
ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていました。
リーダー格のドロシーは管理職への昇進を希望していますが、上司ミッチェルに「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまいます。
技術部への転属が決まったメアリーはエンジニアを志していますが、黒人である彼女には大きなハードルが立ちはだかっていました。
幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリンは、黒人女性として初めてハリソン率いる宇宙特別研究本部に配属されます。
しかし、オール白人男性である部の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらありません。
それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAの「マーキュリー計画」に貢献しようと奮闘していました。
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3.映画『ドリーム』の感想と評価
(C)2016 Twentieth Century Fox
物語の舞台はアメリカとソ連による冷戦下の1960年代。
NASAで計算係として働く彼女たちは、肌の色と性別で二重の差別を受けています。
キング牧師を中心とした公民権運動が活発だった当時は、バスの座る場所やトイレさえ白人と黒人で分けられていました。
差別や世間の考え方に対して、毅然とした態度で立ち向かい、周りの人たちを変えていくその様は痛快です。
才覚や尊厳や誇り、そして立派な家庭を持った正にワンダーウーマン。
人間は肌の色や性別などで差別されるべきではない、その当たり前の権利を彼女たちは主張しているだけなのです。
家族ドラマとしても秀逸で、マハーシャラ・アリの好演も相まって、実に美しいプロポーズシーンも感動的です。
理想のアメリカ映画とはまさにこれと嬉しくなるような、そんな最高の一本です。
かつて“アメリカの良心”と呼ばれたジェームズ・スチュアートがいた時代のような、日本人が憧れるアメリカという国の姿。
今それを体言しているのはトム・ハンクスでしょうか。
近年ではイーストウッドが手掛けた『グラン・トリノ』や『ハドソン川の奇跡』、スピルバーグの『ブリッジ・オブ・スパイ』などがそうでした。
加えるなら明るさやユーモアという意味で『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』も実にアメリカらしかった。
くだらないものには流されず、自らの信念が正しいと感じた方向に進む。
アメリカ本国でこの映画が大ヒットしたのにも大きく頷けるほどに、今のアメリカは信じられないようなことが頻繁に起こる国になってしまいました。
ケビン・コスナー演じるハリソンの象徴的な言葉「NASAでは小便の色は同じだ」。
いい方向に進むためなら差別なんかはどうだっていい。頭のいい人とはまさにこういう人のことだと、非常に溜飲が下がる名シーンです。
ソ連に先を越されたのは至極当たり前で、まずは同じ国の人同士手を取り合って進まなければいけない。
悲しいことに、日本でも生まれで差別されるニュースが最近もありました。
そういう考えを持った人にこそぜひ届いてほしい、本当に万人にお薦めできる素晴らしい作品です。
まとめ
(C)2016 Twentieth Century Fox
邦題改変問題などがありましたが、そんなことは本当に些細なことで。
観た後に語り合いたいのは彼女たちの生き方、考え方について。
今の混迷する時代にこそ観る価値のある一本です。
コーヒーを気軽に手渡せる立場になりたいと誰もが思うのではないでしょうか。