人々を魅了してやまない味わいある人間ドラマ
大邸宅に暮らす貴族・クローリー家と使用人たちの生活を描き、ゴールデングローブ賞やエミー賞に輝いたイギリスの人気ドラマを映画化。ドラマ版に引き続き、オスカー受賞のジュリアン・フェローズが脚本、マイケル・エングラーが監督を務めます。
全6シーズン放送されたドラマ版の最終回から1年半後の1927年を舞台にした物語です。イギリス国王夫妻がウントン・アビーを訪問することになり、クローリー家で大騒動が起こる様を描きます。
マギー・スミス、ヒュー・ボネヴィル、ジム・カーター、ミシェル・ドッカリーらドラマ版のキャストに加え、映画版で初登場となるモード役でイメルダ・スタウントンが出演します。
伯爵家側も、使用人側も、国王を迎え入れる名誉に大わらわ。そこにさまざまな人間模様が入り交じり、深みあるヒューマンドラマが繰り広げられます。
CONTENTS
映画『ダウントン・アビー』の作品情報
【公開】
2020年(イギリス・アメリカ合作映画)
【原作・脚本】
ジュリアン・フェロウズ
【監督】
マイケル・エングラー
【編集】
マーク・デイ
【キャスト】
ヒュー・ボネヴィル、エリザベス・マクガヴァン、マギー・スミス、ミシェル・ドッカリー、ジム・カーター、イメルダ・スタウントン、ペネロープ・ウィルトン
【作品概要】
全6シーズン放送された大人気テレビドラマ「ダウントン・アビー」の劇場版第1作。テレビ版に続きオスカー受賞のジュリアン・フェローズが脚本、マイケル・エングラーが監督を務めるのをはじめ、キャストも再集結しました。
20世紀初頭、クローリー伯爵一家と使用人たちが織りなす人間模様をドラマチックに描きます。本作では、ジョージ5世国王とメアリー王妃がダウントン・アビーを訪れることとなり、メアリーらクローリー一家と使用人たちは準備に奔走します。
マギー・スミス、ヒュー・ボネヴィル、ジム・カーター、ミシェル・ドッカリーらおなじみキャストに加え、イメルダ・スタウントン、ジェラルディン・ジェームズら新キャストも出演します。
映画『ダウントン・アビー』のあらすじとネタバレ
1927年、英国国王ジョージ5世とメアリー王妃が、ヨークシャーへの行幸啓途中でクローリー伯爵家ダウントン・アビーを訪れることとなりました。
先代グランサム伯爵夫人のヴァイオレットは、従妹のモードとモードの財産相続を巡ってもめていましたが、王妃の女官としてモードも一緒に来訪することを知ります。
国王夫妻より先に、王室の使用人たちがやって来ましたが、彼らの態度は高慢で、国王夫妻の世話すべてを独占しようとします。あまりの傍若無人ぶりにクローリー家の使用人たちは反発を覚えます。
伯爵家の長女メアリーは、若い執事のバローでは役不足だと判断し、引退していた老執事のカーソンを復帰させました。
クローリー家はパレードや豪勢な晩餐会の準備を進めます。
映画『ダウントン・アビー』の感想と評価
当主メアリーの深い苦悩
古き良き時代から遺されたイギリス貴族の存在。冒頭から、クローリー家の長女メアリーは「屋根の修理もあるから節約しないと」とぼやいています。
セレブな生活への憧れが一瞬にして萎むような、シビアな幕開けです。巨大な古い邸宅を維持するためにはいったいどれほどの費用がかかるのでしょうか。
賢いメアリーは、イギリスの貴族の過去の栄光が日々薄れていっていることに誰よりも気づいており、深く悩んでいます。戦後、日本の華族制度はあっという間に廃止され、没落してしまいました。特権階級というものが次第にすたれていくことは間違いないでしょう。
ダウントン・アビーを守るべきか手放すべきかメアリーは葛藤します。しかし、それは彼女個人の意志で決められる規模のものではなくなっていました。
この暮らしを続けていくのが正しいのか、自分の子供たちにも今のような生活をさせるのかとすがるように問う孫に、死を覚悟したヴァイオレットは「未来は違って当たり前」と答えます。しかし、ダウントンは彼らの一部なのだと。
ヴァイオレットから未来を託されたメアリーは、ダウントンを守っていく覚悟を決めます。
間もなくこの頼もしい祖母はいなくなるという厳しい現実とも、強いメアリーはなんとか折り合いをつけていくことでしょう。そう見込んだからこそ、ヴァイオレットは息子ではなく、孫のメアリーにすべてを託したのです。
もう一人、生き方に悩んでいたメアリー王女も、自分にとって王室が何より大切だと気づき、不仲の夫との仲をやり直す決心をします。
家を何より大切に思うことで切り開く未来。強い女性たちの幸せを願わずにはいられません。
魅力あふれるダウントン・アビーの使用人達
「ダウントン・アビー」の魅力は、生き生きとした使用人達の人間模様にあります。
生きづらそうな貴族たちに比べ、使用人たちはいつもまっすぐで感情に素直に生きています。今回は、傍若無人な王室の使用人らを相手に見事な戦いぶりを見せます。
ふんぞり返っている王室の使用人らに怒った彼らは、策をめぐらせてなんと彼らを追い出し、自分たちの仕事を取り返すのです。
偽の電話をかけて下僕を追い払い、シェフに薬を持って眠らせ、執事を部屋に閉じ込める。どれも古典的でむちゃくちゃな方法なのですが、使用人らの得意気な満面の笑顔を見ると、思わずつられて笑ってしまいます。
嫉妬でボイラーを叩き壊した下僕と、彼の熱い一面にふれて恋に落ちた料理人助手の恋や、王室衣装係の窃盗を見つけてそれをネタに脅迫して主人のドレス直しを特急でやらせるメイドなど、人間らしさあふれるキャストの魅力にいつの間にかはまってしまいます。
給仕に出たモールズリーが、料理を作ったのはウントン・アビーの料理人だと思わず言ってしまうのも名シーンです。
冷たい空気になってしまいますが、王妃の優しい機転に助けられます。この王妃は後にも心温まる気遣いで、イーディス夫妻の危機を救ってくれます。
負けてたまるか!というダウントン・アビー陣の心意気が頼もしく、清々しい作品です。
まとめ
国王夫妻を迎え入れることになったダウントン・アビーの住人の奮闘ぶりを描く劇場版スペシャルストーリー。
邸宅維持に悩む長女メアリー、王政反対派のトム、子供を授かったイーディス、確執を抱えるヴァイオレットとモード、夫との不仲に悩むメアリー王女、逞しい侍女アンナ、国王を自分たちの手で接待したい使用人たちなど、魅力的なキャラクターが躍動します。
どうぞお気に入りの登場人物に感情移入して、華麗なる一族のドラマに浸ってください。