ルームシェアする女性2人の現代風な生き方と友情を描く
映画『Daughters』は、ルームシェアをして暮らしている女性2人の物語。2人の一人が妊娠し、シングルマザーへの道を選ぶことになります。2人の若い女性の大きな人生の転換点を描くヒューマンドラマです。
三吉彩花と阿部純子がW主演を果たし、脇を固めているのは、鶴見辰吾や大塚寧々らベテラン勢。脚本も兼任している津田肇監督が、初長編作品ながらも丁寧で見ごたえのある作品を作りだしています。
映画『Daughters』は、2020年9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開されています。
映画『Daughters』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【脚本・監督】
津田肇
【キャスト】
三吉彩花、阿部純子、黒谷友香、大方斐紗子、鶴見辰吾、大塚寧々
【作品概要】
数多くのファッションイベントなどを手掛けてきた津田肇の初監督作品。ルームシェア生活を送る2人の女性が、妊娠、シングルマザーという人生の選択を経て、現実と向き合いながら生きていく10カ月を描いたヒューマンドラマです。
『ダンスウィズミー』『犬鳴村』(2019)の三吉彩花と『ソローキンの見た桜』(2019)『海を駆ける』(2018)の阿部純子が主人公の2人の女性を演じています。共演に大塚寧々、黒谷友香、鶴見辰吾など。
映画『Daughters』のあらすじとネタバレ
4月の中目黒。桜が並ぶ目黒川沿いのマンションの1室で、友人同士の堤小春と清川彩乃が暮らしていました。共に27才です。
2人は、よく働き、よく遊び、自由を謳歌したルームシェア生活を送っています。小春はファッション関係のレイアウト・装飾・展示に関わる仕事をしていて、彩乃はイベンターやプレスの仕事をしています。
全く同じ仕事ではありませんが、同業者ともいえる仕事内容は、お互いを理解し共同生活を送ることに助けになっています。
そんな生活に、突然変化が訪れました。
5月のある休日。共にランチへ出かけたその席にて、小春は彩乃から突然の妊娠告白を受けました。
彩乃はその子供を産む決断をすでに下していることも打ち明けます。今の生活を続けながら子供を育てていくのは現実的ではない、と反対する小春。
しかし、彩乃に付き添って訪れた産婦人科医で、小春は産科医の香に胎児の映像を見せてもらい、彩乃のそばにいて彼女を支えていく決意を固めます。
そして、小春は、育児書を買って読んでみたりと勉強をはじめました。
映画『Daughters』の感想と評価
監督の津田肇は、本作が初長編作品。これまで映像作品やイベントの制作・演出を手掛けてきた経歴の持ち主で、この経歴を本作にも活かしています。
ただ、この経歴を見たときに少し不安になったのも事実です。PVやCMディレクターなどが映画監督に転身すると、どうしても短い絵面や画角、キャッチ―な音楽で場面・場面を彩りがちです。
確かに映えるように見えるのですが、長編映画として見たときにどうしても、ブツ切りになっている感じや勢いに任せているように感じることも少なくありません。
これは、それまで短い映像でインパクトを残すことを求められてきたからなので、仕方がない部分もあるのですが、やはり長編映画の時にそのままの方式で来ると違和感があるのです。
津田監督のキャリアを見たときに、このような作品になってしまうのではないかと正直心配でした。
主役の2人がファッション業界で働いているという設定も、何かそういう不安の基になりました。けれども、作品を見てみると驚くほど映画らしい映画になっていました。
物語としては10月10日+αのストーリー展開なのですが、これがブツ切りにならずに連続性のあるエピソードが続き、主役の2人にちゃんと感情移入できるように仕上げる手腕は見事でした。
華やか部分や映像で見せる部分もあるのですが、そこに変に引っ張られることもありません。監督は脚本も兼任しているということで、さらに驚きます。映画について学び、真摯に取り組んでいる姿勢が感じられました。
まとめ
監督・スタッフがほぼ80年代生まれ、主役の2人は90年代生まれという若い世代で作られている映画です。
それもあってか、映画の中の若者たちの姿も等身大の存在として変に誇張されたりせずに登場します。主役の三吉彩花、阿部純子は、思わぬ人生の転機に直面するキャラクターを好演しています。
この2人を温かく導く大塚寧々と黒谷友香の2人が、決して多くはない出番ではあったものの、”流石”の好演を見せてくれます。
また、彼女たちは現代の女性の在り方を体現していると言えるので、そういった観点から作品を見てみるのもいいと思います。
本作『Daughters』のヒロインたちとは一世代上になりますが、韓国映画の『82年生まれ、キム・ジヨン』と見比べてみるのも面白いのではないでしょうか?