命を懸けてチェルノブイリ原発事故の危機回避に挑んだ人々の実話!
映画『チェルノブイリ1986』が、2022年5月6日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国ロードショーとなります。
1986年に起こったチェルノブイリ原発事故において、全世界を未曾有の危機から救うため立ち上がった消防士をスペクタクルに描いた本作の見どころをご紹介します。
CONTENTS
映画『チェルノブイリ1986』の作品情報
【日本公開】
2022年(ロシア映画)
【原題】
Kogda padali aisty(英題:Chernobyl1986/Chernobyl: Abyss)
【製作・監督】
ダニーラ・コズロフスキー
【共同製作】
アレクサンドル・ロドニャンスキー、セルゲイ・メルクモフ、バディム・ベレシャギン、ラファエル・ミナスベキアン
【脚本】
アレクセイ・カザコフ、エレナ・イワノワ
【キャスト】
ダニーラ・コズロフスキー、オクサナ・アキンシナ、フィリップ・アブデーエフ、ラフシャナ・クルコバ、ニコライ・コザック、イゴール・チェルニェビチ
【作品概要】
1986年4月、当時ソビエト連邦だったウクライナのブリピャチで起きたチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故により起きた未曾有の事態に、命を懸けて挑む消防士の姿を描いたドラマ。
『ハードコア』(2016)、『マチルダ 禁断の恋』(2017)のダニーラ・コズロフスキーが主演、監督を務め、『ボーン・スプレマシー』(2004)、『スプートニク』(2020)のオクサナ・アキンシナが共演します。
本国ロシアでは2021年に公開され、初登場第1位を記録しました。
映画『チェルノブイリ1986』のあらすじ
1986年、ソビエト連邦のウクライナ・プリピャチ。
若き消防士アレクセイは、元恋人オリガと10年ぶりに偶然の再会を果たします。彼女には10歳になる息子アレクセイがいました。
同じ名前であることから、父親が自分だと直感したアレクセイは、オリガたちとともに新たな人生を歩みたいと願い、勤務地の異動を申し出て、受理されます。
ところがアレクセイの送別会が開かれた翌日の4月26日未明、チェルノブイリ原発で爆発事故が発生。事故対策本部の会議に召集され、深刻な水蒸気爆発の危機が迫っていることを知ります。
愛する人のため、アレクセイは水蒸気爆発を回避すべく、放射線量が極めて高い地下水路に赴く任務に志願。
しかし行く手には、想像を絶する苦難が……。
映画『チェルノブイリ1986』の感想と評価
“普通の人々”の視点から描く原発事故
1986年4月26日、ウクライナ・ソビエト連邦プリピャチのチェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故。ソ連が崩壊した一因になったともされるこの大惨事をテーマにした映画は、ドラマやドキュメンタリーといったジャンルを問わず、いくつも作られています。
記憶に新しいところだと、HBO製作のテレビドラマシリーズ「チェルノブイリ」(2019)では、事故発生の真相究明および、事故を軽視する政府関係者たちの思惑を交えた人間模様が描かれました。
そんな中で日本公開される本作『チェルノブイリ1986』は、人々の日常生活や生命をどれほど脅かし、彼らの人生に壊滅的な影響を与えたのかといった、普通の人々の視点に重きを置いています。
特に焦点を当てているのは、爆発直後に最初に現場に急行した消防士たち。
本作の主人公である消防士のアレクセイは、元恋人オリガとの新しい生活をしようと考えていた矢先、原発事故に遭遇。被害を食い止めようと、消火活動に向かった仲間の消防士たちは、次々と急性被爆で倒れていきます。
そんな阿鼻叫喚の現場を目の当たりにしたアレクセイは、自分と同じ名前を持つ被爆したオリガの息子アレクセイのため、何よりも愛するオリガのために、あまりにも危険な任務に挑むこととなります。
危険すぎる任務に挑む男たち
チェルノブイリ原発には、原子炉の地下に貯水タンクがありました。
ところが爆発事故により、もし4号炉から溶け出した核燃料が真下のタンクに達すると、大規模な水蒸気爆発が発生する恐れが。
そうなると大量の放射性物質が大気にまき散り、ヨーロッパ全土が汚染される危機を招いてしまう。
水蒸気爆発を回避する唯一の手段は、放射線量が極めて高い地下に人間が赴き、タンクの排水弁を手動で開いて水を抜くしかない――アレクセイは、オリガの息子が高度なスイスの医療施設で治療することを条件に、この危険な任務を引き受けます。
アレクセイを含めた3人の志願者による水蒸気爆発の阻止作戦は実話に基づいており、チェルノブイリ原発と同じ設計のクルスク原発をロケ地に、本物の消防士と消火設備を使って撮影。
迷路のような視界不良の地下空間を舞台に、アレクセイらが放射能汚染や浸水に脅かされ、なおかつ予期せぬトラブルに遭いながらも任務を遂行しようとする姿は、極限のスリルに満ちあふれています。
実話をベースにしながらも、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2019)や『ナチス・バスターズ』(2021)のような手に汗握るエンタメ要素を盛り込んだ演出は、他国の作品を観て育った世代がフィルムメーカーとなったことが、大きな要因となっています(劇中で、シルヴェスター・スタローンやジャッキー・チェンのポスターが映るあたりにリスペクトを感じます)。
まとめ
東海村JCO臨界事故、福島第一原子力発電所事故を経験した日本にとっても、『チェルノブイリ1986』は対岸の火事では済ませられない作品です。
そんな折、2022年2月に、原発があったウクライナがロシアによる軍事侵攻を被ることになると、誰が予想できたでしょうか。
事故の当事国にして、“太陽”と讃えていた原発を管理できなかったロシアの暴挙に、言葉を失った方も多いと思います。
本作プロデューサーのアレクサンデル・ロドニャンスキーと監督・主演のダニーラ・コズロフスキーは、ウクライナ侵攻に強く反対する声明をインスタグラムでそれぞれ発信。
声明で「この戦争は悲劇的な間違いだ」と発したロドニャンスキーは、先般ロシア当局からウクナイナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と共に“ペルソナ・ノン・グラータ”(好ましからざる人物)に認定され、残念なことに過去の全プロデュース作に対してロシアでの公開禁止処分を受けてしまいました。
そのロドニャンスキーは、本作の製作意図についてこう語ります。
「日常生活の中では必ずしも倫理的、もしくは勇敢な判断を下せない普通の人々が、災害発生時に自らを危険にさらしてまで他人のために行動できるのはなぜなのか。これは非常に興味深い問いであり、私たちは本作を製作する中でこの問いに答えようとしました」
いかにして絶望の状況下から再起・復興していく人々の姿は、日本で暮らす者なら共感できるはず。
また『チェルノブイリ1986』の興行で得た収益の一部は、ユニセフなどウクライナの方々への人道支援活動を行う団体に寄付されることも発表されました。
あまりにも多くの出来事が重なった状況での日本公開となりましたが、注目が集まる今だからこそ、多くの人命を守ろうとした名もなき人々の姿を見届けてもらいたいです。
映画『チェルノブイリ1986』は、2022年5月6日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー。