大きな愛が失った時を蘇らせる
2019年5月10日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショーの映画『僕に、会いたかった』。
EXILEのTAKAHIROが初めて映画作品で単独主演を飾ったことでも話題です。
記憶を失った男と、彼を支える周囲の温かさが、穏やかな隠岐の島の風景とともに映し出されます。
映画『僕に、会いたかった』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
錦織良成
【キャスト】
TAKAHIRO、山口まゆ、柴田杏花、板垣瑞生、浦上晟周、小野花梨、宮本裕子、吉野由志子、川村紗也、斉藤陽一郎、清水宏、山下容莉枝、秋山真太郎、黒川芽以、小市慢太郎、松坂慶子
【作品概要】
「EXILE」のヴォーカリストとして確固たる人気を誇り、俳優としても活躍するTAKAHIROが満を持して、映画で初めて単独主演。
ドラマを支えるのは、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2019)に出演の松坂慶子、“カメレオン俳優”と呼ばれる名バイプレーヤーの小市慢太郎らベテラン実力派です。
そしてテレビドラマ『コウノドリ』(2015)映画『相棒 劇場版IV 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』(2017)の山口まゆ、『ソロモンの偽証』(2015)で準主役を務めたボーカルダンスユニット「M!LK」の板垣瑞生ほか、柴田杏花、浦上晟周、小野花梨など次世代を担う若手が脇を固めます。
何気ない日常をとらえる描写力と柔らかな映像センスに定評がある錦織良成監督が描き出す、家族の絆と再生を描いた感動の人間ドラマ。
映画『僕に、会いたかった』のあらすじ
島の漁師・徹は、12年前に海で事故に遭い、それまでの記憶を失っています。
彼はその時の事故によるトラウマから、船に乗ることが出来ず、港で水揚げの仕事をしていました。
父は遠い昔に亡くなり、徹は母・信子と2人暮らし。
記憶の無い徹にとっては、母でさえも他人のように感じられ、距離を置いていました。
そしてひとりになると思い出すのは事故のこと。
雷鳴。嵐。揺れる船体。沈む身体。
どれもが鮮明に脳裏によみがえり、徹を苦しめます。
母はそんな息子の様子を感じ取りながらも、彼自身の力で乗り越える日を待ち続け、誰も乗らなくなった船を毎日磨いています。
ある日、都会からフェリーに乗って、3人の高校生たちがやってきました。
この島の高校では“島留学”として、都市部にすむ生徒の越境入学を受け入れているんです。
親元から離れたいがため志願した愛美、成績優秀で医者志望の雄一、そして「母が昔来たこの島に来てみたかった」と語るめぐみ。
それぞれの理由と意思を持った3人は、少しづつこの島になじんで行きます。
日課のジョギングをしていた徹を見かけ、彼に興味を抱くめぐみ。
また、雄一の島での世話係“島親”になった徹は、彼とともに過ごすうち、自分に欠けていたものを見つけ出します。
その姿を見守っていた母・信子は、ある決意をし…。
孤独を抱えた親子
TAKAHIRO演じる徹は、事故以来ずっと暗い海の中を漂っています。
自分を慕ってくれる人間がいても、赤の他人にしか思えず、自分が何者なのか、何がしたいのかもわからず、ただ習慣をこなしていくだけの毎日。
そんな徹のことを、松坂慶子が演じる母は、優しく微笑みながら待ち続けています。
北極星のように変わらぬ道しるべとして。
母の過去が語られる場面は決して多くはないものの、その微笑みのなかに全てがにじみ出ています。
仏壇の遺影から、彼女の夫は若くして亡くなったとわかります。
遺されたひとり息子も、記憶を無くし、自分を母としては見てくれていません。
12年間孤独だったのは、徹だけは無く、母も同じ。いえ、それ以上の悲しみと後悔を全て背負っても、彼女は息子を守ると決めたんです。
そして彼女の決意は島の人々をも動かし、徹を守るための優しい嘘の世界を作り出しました。
誰も徹の過去をほじくり出したりせず、彼が帰ってくるのを待っています。
待つというのは忍耐力が必要です。そして相手を信頼しているから出来る事です。
母は、ひたすらに徹を愛し、信じた。
だからこそ、徹は深い海から這い出る事が出来たんです。
松坂慶子の包容力
本作は松坂慶子だったからこそ、その豊かな愛で息子を待つ母という図が成立しています。
それもそのはず、錦織良成監督が「母役は松坂慶子以外考えられない」と、自ら手書きの手紙をしたためて、松坂にオファーをしたんだそう。
監督の熱意に松坂が見事に応えました。
無精ひげを生やした記憶喪失の漁師という難役に挑んだTAKAHIROを、先輩女優として支えているのが伝わり、それが親子としてのリアリティに繋がっています。
この松坂慶子の存在感、安心感は一体どこから来るんでしょうか。
松坂慶子は中学時代から劇団に所属し、子役としてテレビに出演していました。
その後、彼女を一躍スターに押し上げたのは、自身が主題歌も担当した『水中花』(1979)。その後もお色気担当女優としてのイメージを強め、妖艶な役どころが増えます。
つかこうへい原作の『蒲田行進曲』(1982)では、小悪魔でありながらも尽くすヒロインを好演。
彼女には、艶っぽさがありながらも、品格と、いつまでも少女のような純粋性があり、その多面性に観る者は惹きつけられるんです。
近年は、年齢と経験を重ねたからこその魅力をふりまき、コミカルな可愛らしさで、新たなファンを増やしています。
いくつになっても変わらぬ笑顔とグラマラスな体型を武器に我々を魅了する松坂慶子の姿を見ていると、前向きな力が貰えます。
ポジティブに目の前にあるものを受け入れる、それが女優松坂慶子の特性で、本作の母役での好演に繋がりました。
多くの人が本作の母のような状況になってしまったら、焦りを覚えて、息子の記憶を無理に思い出させようとすることでしょう。
ですが彼女は12年、自分のことを他人を見る目で接する息子のそばで、彼の本当の帰りを待っていました。
穏やかな微笑みに寂しさと哀しさを隠しながら。
これが松坂慶子以外、誰が出来ましょう。
まとめ
隠岐の島とも、母の姿が重なって見えてきます。豊かな自然と穏やかな風。降り注ぐ日光。
そんな彼女が、ともに徹を見守ってきた町医者に、ぽつりと本音を漏らすシーンがあります。
海を見つめながら「明日は晴れますかね」と問う彼女に、力強く頷く町医者。
町医者演じる小市慢太郎と松坂慶子という名俳優ふたりによって、本作屈指の場面となっています。
映画『僕に、会いたかった』は、2019年5月10日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショーです。
ご期待下さい。