人嫌いの男が、悲しい過去を持つ犬との出会いで見つけた、真実の愛。
孤独な男とやんちゃなラブラドール犬が、南インドからヒマラヤを目指して旅に出る姿を描くロードムービー『チャーリー』。
様々な言語が用いられる映画大国インドのカンナダ語映画=「サンダルウッド映画」において、歴代5位の興行収入を記録した人気作です。
サンダルウッド映画の人気スターであるラクシット・シェッティが主演・プロデューサーを務めた映画『チャーリー』。
愛らしいチャーリーは、とんでもないイタズラ好きの犬。主人公のダルマ同様、そんなチャーリーの魅力にいつの間にかドップリはまってしまう本作の魅力をご紹介します。
映画『チャーリー』の作品情報
(C)2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.
【公開】
2024年(インド映画)
【監督・脚本】
キランラージ・K
【キャスト】
ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ、ダニシュ・サイト、ボビー・シンハー
【作品概要】
「サンダルウッド」と称されるカンナダ語映画として、歴代5位の興行収入を記録したヒューマンドラマ。
過去の悲劇に囚われ、周囲との交流を拒絶して孤独に生きてきた主人公ダルマが、悪徳ブリーダーの劣悪な環境から逃げ出してきたラブラドール・レトリーバーのチャーリーとの出会いで、ともに生きる喜びを取り戻していく様を温かく描きます。
主演・プロデューサーを務めたのはカンナダ語映画界の人気スター、ラクシット・シェッティ。またタミル語映画・テルグ語映画で活躍する人気俳優ボビー・シンハーも出演を果たしています。
随所に散りばめられた喜劇王国チャーリー・チャップリンへのオマージュや、南インドの緑あふれる町並み、青い海が広がる海岸線、地平線の先まで続く荒野、そして雪山ヒマラヤなどインド各地の多様な景色も見どころです。
映画『チャーリー』のあらすじとネタバレ
(C)2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.
南インド・マイスールで暮らすダルマは、職場でも自宅の近所でも偏屈者と言われ、酒とタバコとチャップリンの映画だけを楽しみに生きる孤独な日々を過ごしていました。
そんな彼の家に、悪徳ブリーダーの劣悪な環境から逃げ出してきたラブラドール・レトリーバーの子犬が住み着くようになります。
犬嫌いのダルマは何度も追い払おうとしました。しかし、ある日バイクに轢かれてケガをしてしまった犬を見捨てられず助けたのをきっかけに、こっそり自宅で飼い始めます。
いつしか心を通わせるようになり、子犬はチャップリンにあやかり「チャーリー」と名付けられました。
イタズラ好きのチャーリーに振り回されながらも楽しい毎日を送っていたある日、チャーリーが血管肉腫で余命わずかであることが判明します。
ダルマは雪が好きなチャーリーに本物の雪景色を見せてあげるため、バイクのサイドカーにチャーリーを乗せて、南インドのマイスールからヒマラヤを目指す旅に出ました。
映画『チャーリー』の感想と評価
(C)2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.
過去に傷を持つ同士の固い絆
愛する家族を突然失い深い心の傷を持つ男と、悪徳ブリーダーに虐待されて育ったラブラドール犬との、奇跡の出会いと絆を描く感動のヒューマンドラマです。
偏屈男で知られる主人公ダルマは、再び大切なものを失う恐怖に怯え、周囲の誰とも打ち解けることなく生きてきました。休みもとらずに仕事に行き、家は散らかり放題で酒瓶が転がったままです。
ダルマにとって、チャップリンの映画を観ることが密かな楽しみでした。愛と悲しみ、善と悪、光と影……人間のすべてを映し出すチャップリン映画に心ひかれていたのは、心の奥底には実は誰かとつながりたいという強い思いがあったからかもしれません。
そんな彼のもとにやってきたのは、やんちゃなメスのラブラドール犬でした。まったく言うことを聞かないいたずらっ子で、追っ払ってもすぐにまた戻ってきてしまいます。
チャーリーの豪快ないたずらは痛快です。ソファを噛みちぎって家中を羽だらけにしたり、捕まえたネズミを得意気に見せにきたり。アイスクリームのCMを観て飛び跳ねる姿の愛らしいこと!
ある日、突然倒れて救急車で運ばれたダルマを、病院まで必死で追いかけてきたチャーリーを見て、ダルマは心揺さぶられます。
その後、よそにもらわれて行くことになった時の、チャーリーの切なすぎる瞳にも、ダルマは言いようのない感情を覚えました。様々な経験の末、彼は喜びとともに再び愛犬を迎え入れます。
二人の絆が日に日に強くなっていく中、チャーリーの不治の病という大きな悲劇が訪れます。「チャーリーに大好きな雪を見せてあげたい」という思いが、ダルマを奮い立たせました。
深い悲しみの中にありながら、ダルマとチャーリーの愛に満ちた旅は美しいものでした。最後は金が底を尽き、浮浪者同然の苦しい状況になってさえも、二人の絆はまったく揺るぎませんでした。
とうとう雪山にたどり着き、二人が童心に戻って遊ぶ姿はとても幻想的です。チャーリーがこれからいく遠い世界の、一つ手前にあった非現実の世界だったのかもしれません。
小さな子犬をひっそりと残して逝ったチャーリー。ダルマを救うために残した深い愛。ダルマは「苦難を乗り越えた経験は未来を満たす」という大事なことを教えてくれたチャーリーのために、動物を保護する施設を開設します。
チャーリーがダルマに残したのは、「リトルチャーリー」をはじめとする新たな希望でした。
チャーリーがつなぐダルマと人々との輪
(C)2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.
人付き合いがまったくできなかったダルマが、チャーリーを通して大勢の人々と絆を深めていく姿も大きな見どころです。個性的で魅力に満ちた人々が登場します。
毎日2枚のイドゥリ(発酵蒸しパン)を買いにくるダルマに、いつも3枚サービスしてくれる店のおばあさん。食べきれないイドゥリは、チャーリーの腹を満たします。回り回って善意の輪が優しくつながっていく様に心が温まることでしょう。
隣家の少女アドリカはずっとダルマを怖がっていましたが、彼が事故に遭ったチャーリーを助けたのを知ってから心を開くようになります。「ペット禁止の団地でチャーリーを飼う」という秘密をダルマとアドリカは共有し、少女はダルマの良き理解者となっていくのです。
最初はダルマに動物虐待の疑いを抱いていた動物愛護委員会の女性デーヴィカも、ダルマとチャーリーの固い絆を理解して力を貸すようになります。ファンキーな獣医アシュウィンや、犬をこよなく愛するヴァムシナダンとの出会いも、ダルマの固く閉じられていた世界を優しく開いていきました。
ダルマの心情にぴたりと寄り添った歌詞を歌い上げる歌声も、作品世界を美しく彩ります。
まとめ
(C)2022 Paramvah Studios All Rights Reserved.
ダルマとチャーリーの旅路に付き合っているかのように感じられる、濃密な164分の長編『チャーリー』。
二人の絆を描ききるためには、この長い時間がどうしても必要だったことを、観終えた後に絶対に実感させられることでしょう。
この世を去ってもなお、チャーリーは多くのものをダルマに与え続けています。
「愛と希望こそが、人生を明るく照らす」という真実を教えてくれたチャーリー。この作品を観た私たちにも、明日を歩む大きな力を与えてくれる作品です。