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Entry 2022/04/09
Update

映画『1944 独ソ・エストニア戦線』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ナチスドイツとソ連の両軍の戦場となってしまったエストニアと“その国民の運命”とは⁈

  • Writer :
  • 秋國まゆ

悲劇の戦場を描いた第88回アカデミー賞外国語映画賞エストニア代表作品!

エルモ・ヌガネンが監督を務めた、2015年製作のエストニア・フィンランド合作の戦争ドラマ映画『1944 独ソ・エストニア戦線』。

第二次世界大戦。当時のソ連とナイツ・ドイツの争いに巻き込まれたエストニア人は、ソ連とナチス・ドイツそれぞれの軍に動員されることに。そしてドイツ軍に属したエストニア人兵士カールは、ソ連赤軍に属したエストニア人下士官ユーリと戦場で出会います……。

同じエストニア人同士が敵同士になり、殺し合わなくてはならなくなった戦場の悲劇を描いた、映画『1944 独ソ・エストニア戦線』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

映画『1944 独ソ・エストニア戦線』の作品情報


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

【公開】
2015年(エストニア・フィンランド合作映画)

【監督】
エルモ・ヌガネン

【キャスト】
クリスチャン・ウックスクラ、カスパール・フェルバート、マイケン・シュミット、ヘンリク・カルメット、カール=アンドレアス・カルメット、ゲルト・ラウドセップ

【作品概要】
『みかんの丘』(2013)に出演した俳優エルモ・ヌガネンが監督を務めた、エストニア・フィンランド合作の戦争ドラマ作品です。

カスパール・フェルバートがドイツに属するエストニア人兵士カール・タミク役で、クリスチャン・ウックスクラがソ連に属するエストニア人下士官ユーリ・ヨギ役でそれぞれ出演しています。

映画『1944 独ソ・エストニア戦線』のあらすじとネタバレ


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

1939年8月23日。ナチス・ドイツとソ連の間で不可侵条約(独ソ両国は互いにいかなる武力行使・侵略行為・攻撃をも行わないことを約束した条約)が締結されました。

しかしその1週間後、ドイツがポーランドへ侵攻したことで、ヨーロッパにおける第二次世界大戦の火蓋が切られました。

また1940年にソ連が併合した北ヨーロッパの共和制国家「エストニア共和国」を、翌年の1941年から1944年までドイツが占領。これにより大勢のエストニア人がドイツ軍とソ連赤軍にそれぞれ動員され、エストニア人カール・タミクもその中の1人でした。

赤軍によって両親と妹カドリが極寒のシベリアに追放された後、カールは姉アイノの制止の声も聞かず出征。自分と同じエストニア人で構成された、ドイツ武装親衛隊第20SS武装擲弾兵師団(エストニア人部隊)の第3小隊に着任しました。

第二次世界大戦末期の1944年。エストニアはソ連に再占領・併合され、「エストニア・ソビエト社会主義共和国」というソ連との共和国となりました。そして1944年現在、赤軍がエストニア国境に迫りつつありました。

1944年7月27日。カールは第3小隊の小隊長サーレスティ、第3小隊分隊長ポデール、衛生兵のサイナス、狙撃手のカメンスキー。エストニア人兵士ラーディックとピールと共に、「タンネンベルク線擲弾兵の丘」の防衛を任されました。

タンネンベルク線とは、エストニア・ナルヴァから16キロ南にある3つの丘に構築された、ドイツ軍の防衛線です。カールたちが配備されたのはその3つの丘のうちの1つでした。

東の丘が赤軍にやられたことを受け、カールたちは進撃してくる赤軍を撃退することにしました。

カールたちの前に現れたのは、赤軍の歩兵と戦車部隊でした。激闘の末、圧倒的な戦力差があったものの、カールたちは何とか敵を全員撃退しました。


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

その日の夜。第3小隊に、半人前の新兵コスチャとアントンが補充兵として着任しました。当初予定していた補充兵は10名だったため、ピールは悪態をつき、双子の兄弟であるコスチャたちをいじめます。

深夜。近くの塹壕が赤軍に攻撃され、味方が苦戦したことを受け、サーレスティは寝ている仲間を起こし、味方の元へ向かうことにしました。

近くの塹壕へ行く道の途中に地雷原があるため、第3小隊は抜け道を通って味方と合流。その味方とは、デンマーク人義勇兵でした。

7月28日午前4時。第3小隊と敵との戦いで生き残ったデンマーク人義勇兵4名は、敵陣にて戦闘を開始。

銃撃戦の末、彼らは敵を撃退し、奪われた陣地を取り戻しました。しかしこの戦いで、ピールが撃たれ重傷を負ってしまいました。

8月18日。陣営を築いた第3小隊は、ヒトラーとドイツへの愚痴を酒の肴にして、酒宴を開きました。

しかしカメンスキーが発した、「もし、戦場で赤軍の軍服を着たら(同じエストニア人の)同胞に会ったら?」という言葉をきっかけに、サイナスと彼が激しく口論してしまいます。

そんな2人を仲裁し、熱くなった気持ちを落ち着かせたのはカールとラーディック、ポデールでした。

5人はコスチャの後に着いていき、彼と見張り番を交代するアントンに酒を振舞いました。

しかしその直後、辺りが妙に静かなことが気になり、塹壕から顔を出したコスチャが頭を撃ち抜かれ即死。アントンは泣き崩れ、カールたちは突然の仲間の死に愕然としました

以下、『1944 独ソ・エストニア戦線』ネタバレ・結末の記載がございます。『1944 独ソ・エストニア戦線』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

9月19日、ドイツ軍がエストニア本土から撤退。カールたちは否応なく、ドイツへ撤退するよう命じられました。

その道中、カールたちはエストニア人の避難民とそれを護衛するヴィルマー自衛軍第2中隊と遭遇しました。

するとそこへ、赤軍の攻撃機2機が襲来。カールたちは何とか近くの森に逃げ込みましたが、避難民の何人かが被弾し重傷を負いました。

その中で1人、女の子が持っている人形に夢中で攻撃機に気づいていません。それを見たサイナスは、女の子を助けようとしますが、敵に見つかり射殺されました。

彼の代わりにカールがその子を助けると、赤軍の攻撃機は離れていきました。しかし、またいつカールたちの元へ戻ってくるか分かりません。

サーレスティは葛藤の末、避難民たちに自分たちが乗っていた車を譲りました。そして運転席にいた仲間の1人に、エストニアの首都タリンまで彼らを運び、そこから北欧行きの船に乗るよう命じました。

その後、カールを始めとする一部のエストニア人将兵はドイツに戻らず、故郷であるエストニアに残留し、エストニアを守るために戦うことを決めました。


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

9月20日。アヴィナーム近郊の森林地帯に潜伏し、反共ゲリラ「森の兄弟(フォレスト・ブラザーズ)」となったカールたちは、赤軍の戦車部隊を襲撃。

しかしその戦車部隊は、カールたちと同じエストニア人で構成された、赤軍第8エストニア人小銃部隊第249小銃師団だったのです。

カールは戦っていた相手がエストニア人だと気づくと、銃を下ろしました。目の前で対峙した彼が同胞であることに気づかず、第8エストニア人小銃部隊の小隊長を務める下士官ユーリ・ヨギは彼を射殺しました。

カールの死後まもなく、サーレスティと第8エストニア人小銃部隊の中隊長ビーレス大尉をはじめ、その場にいた者全員が、互いに殺し合っていた相手がエストニア人の同胞であることに気がつきました。

その衝撃的事実に誰もが愕然と立ち尽くす中、生き残ったサーレスティたちは静かに後退し、ビーレスたちはその後を追いかけることはしませんでした。

ヨギもまた、カールの胸元にしまわれた手帳を見て、自分が殺したのは同胞だったことに気がつきました。

突如ビーレスたちが攻撃を中止したことを不審に思った赤軍の大佐は、ビーレスにその理由を追及しました。それに対し、ビーレスはこう答えました。

「ただの村の子供が襲ってきただけです」「我々はスターリン同志に、エストニア・ソビエト社会主義共和国の首都を解放するよう命じられました。あなたは軍法会議に呼ばれたいので?」

その後ビーレスに命じられ、ヨギは自身が率いる隊の仲間ルーディとアリ、オスカルとアーブラムとプロホルと一緒に、戦死した仲間とカールら森の兄弟を埋葬しました。

9月22日。タリンを解放した赤軍第8エストニア人小銃部隊第249小銃師団は、祝宴を開いていました。そこへ無事合流できたものの、ヨギは同胞を殺した罪悪感が消えませんでした。

ヨギはせめてもの罪滅ぼしと思って、カールの手帳に挟まっていたアイノ宛ての手紙を、彼の代わりに届けに行くことにしました。

その手紙には、家族が追放されたのは自分のせいだと、ずっと罪悪感を抱いていたカールの気持ちが記されていました。

「あれ(カールの家族がシベリアに追放された日)から3年と43日が経った」「今でも罪の意識を拭えない」

「彼らの声、仕草や声を思い出そうとする」「だが記憶さえ徐々に薄れ、罪の意識ばかりが募る」

「この苦しみに死ぬまで耐えねばならない」「もう僕にはあなただけだ」「そのあなたに、僕が話さず、隠していた真実を打ち明けるのはとても難しい」

「あれ以来、夢の中にいるようだ」「出征するしか選択肢はなかった。そんな僕を、あなたは止めたね。だがその理由を聞けなかった」

「あの夜、赤軍による検挙があるらしいと、僕は伯父から聞いていた。家族に警告すべきだと」

「だが僕は、伯父の警告を信じず、街に出かけた」「だが検挙の噂を街でも聞き、僕は帰宅を急いだ。まだ間に合うと信じて」

「家まで走りながら祈った、杞憂であってくれと。だが既に車は家に来ていた」「両親と共に車に乗せられたカドリは、泣きもせず母さんの膝に乗り、何か耳打ちしていた」

「父さんは取り乱していた、あんな父さんを見るのは初めてだった」「家族が赤軍に連れ去られるのを、僕はただ見ていた」

それを読んで思わず言葉を失うアイノ。ヨギに大丈夫かと声を掛けられハッとすると、彼にこの手紙をどこで手に入れたのか尋ねます。

ヨギは自分がカールを殺したことは告げず、「戦場です。僕の目の前で撃たれて戦死しました」と答えました。

それを聞いたアイノはヨギに、家族がシベリアに追放されて以降、話し好きで明るい子だったカールが突如変わってしまい、出征してしまった理由がずっと分からなかったことを打ち明けます。

そんなアイノに、ヨギは何故兵士となったのか尋ねられ、こう答えました。「僕は1939年、国に徴兵された」

「だが翌年の6月には、赤軍がエストニア国境を侵すのを黙って見ていた」「僕はお行儀が良すぎて、誰かの命令なしでは動けなかった。臆病だった」

「数ヶ月後、気づいたら赤軍に入ってた。そして開戦に」「ルーディ、アリ、オスカル、アーブラム、プロホル。隊の仲間が僕の家族だ」

それを聞いたアイノは、ヨギはカールに似ていると話します。「罪なき人が罪を感じ、罪深い人は感じない」

そしてアイノは、ヨギに食事を振舞い、彼にこう言いました。「ここは私の部屋じゃなく、2週間前に北欧に脱出した叔父のなの」

「3月9日に赤軍が爆破したせいで、廃墟と化したこの街にはもう女性と子供、老人しか残ってないわ。男は皆戦場へ行った」

アイノが暮らす、エストニア大通りの街を爆破したのは敵の仕業だと聞いていたヨギにとって、それは耳を疑う話でした。

その後、ヨギはアイノと一緒に街を歩き、誰もいない教会で寄り添いながら、彼女の話に耳を傾けました。

「私の家族を追放処分にした彼を許そうと思う」「弟によれば、その人の名前はヨギっていうらしいの」

この瞬間、ヨギはカールたちの家族をシベリアに追放したのは自分だと知り、愕然としました。

翌朝。ヨギは心を通わせたアイノに、手紙を書くときに必要な苗字を尋ねられ、咄嗟にアリの苗字である「トゥール」と答えました。

アイノと別れた後、ヨギは大佐の部下に呼び止められ、すぐ近くに停まっている車に乗るよう促されます。実は、ヨギがアイノと一緒にいたところを大佐に見られてしまったのです。

「君とは長く共に戦ってきた。(ロシアの都市ヴェリーキエを解放することを目的とした戦い)ヴェリーキエ・ルーキの戦いからな」

「だが敵である民族主義者は残っている、仲間内にもだ」「君は若く精力的で、前途有望な人物で夜に出歩く余裕もある。…一緒に歩いていた女は誰だ?」

そう尋ねる大佐に対し、ヨギは「妹です。妹を訪ねに行きました」と答えました。ですが、ヨギに妹がいたという記録はありません。

大佐はその言葉を信じる代わりに、ヨギに軍内部に反ソ的な動きがないか調べ、それを全て報告するよう命じました。

11月17日。タリンから移動したヨギたちは、次の戦場であるサーレマー島へ到着。そこはアリの生まれ故郷でした。

生まれ故郷に戻ってきたことに大喜びだったアリでしたが、その島に誰1人いないことを知ると愕然としました。アリの家族を含むこの地域の農民は皆、ドイツに移送されてしまったのです。

その日の夜。ヨギの隊に、新たに3人の兵士が補充されました。1人はドイツ軍から脱走し、2人はドイツ軍の撤退に伴い帰郷し、今度は赤軍に動員されたのです。


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

11月19日。赤軍第8エストニア人小銃部隊第249小銃師団はソルベ半島にある、ドイツ軍の最終防衛線を突破しようとします。

しかし、港にいるドイツ軍の艦隊から降り注ぐ砲撃により、ヨギたちが途中にある地雷原を抜ける頃には、多くの兵士が命を落としました。

ヨギの隊に入った補充兵の1人は、砲撃を恐れてか隊列から外れ、地雷原へ逃走。踏んだ地雷によって重傷を負いました。

さらにドイツ軍の最終防衛線に到着後、アリは死んでると思ったドイツ兵に突如腕を掴まれ、彼が持っていた手榴弾によって戦死しました。

アリの死後、ヨギたちはドイツ兵が建物に隠れていることに気づき、ヨギは大人しく出てくるよう指示します。

大人しく出てきたドイツ兵3人を、アーブラムが容赦なく撃ち殺しました。それに皆が放心状態となる中、ヨギはアーブラムに「(ドイツ兵を殺せば)それで妹が戻ると思っているのか?」と問いかけました。

アーブラムはずっと、両親と祖父と叔父、妹のザーラと一緒に撮った写真を大事に持っており、よくヨギたちに見せていました。しかしその写真は、戦前のものでした。

その日の夜。ヨギは眠れず、心配して声を掛けてきた仲間の1人プロホルに、自分の胸の内を打ち明けました。

「あの青年のことが頭から離れない」「僕は最後の手紙を届けた、彼の姉にね」

これを聞いたプロホルは、ヨギに全てを話したか尋ねましたが、ヨギは何も答えません。話せなかった理由は、ヨギが姉に惚れたからだと見抜いたプロホルは、彼にこう言いました。

「彼を殺したのはお前じゃない、この戦争だ」「神は許すさ。…いやどうかな、許さんかな」

11月22日。赤軍は、あともう一息でエストニアを取り返せるところまできました。しかし、ビーレスとヨギは大佐率いる赤軍の政治部に目をつけられてしまい、そのせいで他の皆も危険な目に遭わせることになってしまうという最悪な状況でした。

大佐たちに監視されながら、森の中を進む赤軍第8エストニア人小銃部隊第249小銃師団。その道中、彼らはドイツ軍に後方部隊員として強制動員され、ドイツ行きが嫌で脱走してきたエストニア人の少年兵5名と遭遇しました。

それを聞いた大佐は、「敵に毒されたソ連国民は処刑せねばならん」と言って、ヨギに5人を射殺するよう命じます。

「僕には撃てない」とヨギが拒否すると、大佐は躊躇なくヨギを射殺しました。それに怒ってビーレスとヨギの仲間が銃口を向けると、大佐はこう脅迫しました。

「撃てよ。撃てばお前たちの家族全員、強制集世所送りになるぞ」「怖いのか?当然だ、それがソ連の力だ」

さらに大佐は、今度はビーレスに5人を射殺するよう命じます。それにビーレスが躊躇しているのを見て、下ろしていた銃をゆっくりと持ち上げていった大佐でしたが、プロホルの狙撃によって倒れました。

ビーレスたちは5人を殺さず、ドイツ軍の軍服を脱いで家に帰るよう指示しました。そして、赤軍第8エストニア人小銃部隊第249小銃師団第2小隊を先に進ませ、ビーレスとプロホルたちはヨギの死を悼みました。

その後、プロホルはヨギの胸元から出てきた手紙を、アイノに届けに行きました。アイノはカールが助けた女の子と一緒に暮らしていました。

ヨギがアイノに宛てた手紙には、こう書かれていました。「あなたにカールの手紙を届けてなかったら?戦後偶然に会っていたら?と、ずっと考えている」

「もしそうだったら、また会うことができるかもしれない」「その時、正直にあなたと向き合えるよう、僕は真実を告白する。あなたと真っ白から始めたいから」

「僕はユーリ・ヨギ、戦闘中にあなたの弟さんを殺した」「それを面と向かって言えなかったが、僕にはもうあなただけだ」「どうか許してほしい」

映画『1944 独ソ・エストニア戦線』の感想と評価


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

第二次世界大戦が始まり、ナチス・ドイツとソ連の両軍の戦場となってしまったエストニアは、戦争とは無関係の国民も兵士も関係なく、大勢の人が死傷し戦禍を被りました。

カールたちエストニア人が同胞同士で殺し合い、それに彼らが気づいた場面は、作中で一番胸が詰まり言葉を失います。

エストニア人の男は皆、老人と小さな子供以外は出征するしか選択肢はありませんでした。それが全員同じ軍に動員されるのではなく、敵対関係にあるナチス・ドイツかソ連、両軍のどちらかに分かれさせられるのです。

「もし戦場で同胞に会ったら?」と、そう作中でカールたちに投げかけたカメンスキーの言葉が、まさか本当にそうなるなんてカールたちは思ってもみませんでした。それはヨギたちも同じです。

ただでさえカールは、自分が伯父の警告を信じず伝えなかったせいで、大事な家族と妹がシベリアに追放されてしまったことに、ずっと罪悪感を抱いていました。

それに加え、同胞が殺し合ってしまった戦場で戦死したカールが死後、「もっと早く彼らが同胞だと気づけていたら」と、罪の意識に苛まれてしまうのではないかと心配でなりません。

一方ヨギは、同胞が殺し合ったことよりも、カールを殺してしまったことをとても悔やんでいました。カールが同胞であったことも理由の1つですが、心惹かれたアイノの弟だったからです。

アイノが作中で言っていたように、カールとヨギは似ています。同じ隊の仲間をとても大事に想っていること、誰よりも自分を責め、罪の意識の苛まれ続けているところ。そしてアイノに、生きている間に真実を言えずに死んでしまったことです。

「もし戦争なんて起きなければ」「もしカールたちが味方同士だったら」と、たらればを言いたくなるぐらいカールたち2人の死、エストニア人兵士の悲劇の戦場は悲しすぎて涙が止まりません。

まとめ


(C) TASKA FILM and MRP MATILA RÖHR PRODUCTIONS 2015

第二次世界大戦の最中、敵として相まみえてしまったエストニア人兵士の悲劇を描いた、エストニア・フィンランド合作の戦争ドラマ作品でした。

作中では大迫力かつ大スケールなアクション場面が満載ですが、ドイツ軍とソ連赤軍が持つそれぞれの武器と戦車等はCGに頼らず、本物を使用しています

本物ならではのスケールとリアリティさ、戦場で上がる爆炎の凄まじさは、観ているだけで呆然としてしまうほどです。

作中ではカールとヨギ、それぞれの視点からドイツ軍vsソ連赤軍の戦いの様子が描かれています。物語の前半と後半に分かれているため、本作を鑑賞する際はぜひ最後まで見逃さずに観てみてください。

エンドロール前のテロップには、「自由の名の下に戦い、苦しんだ全ての人に捧ぐ」と記されていました。

クリスチャン・ウックスクラやカスパール・フェルバートらが魅せる、ドイツ軍とソ連赤軍それぞれに分かれて動員されたエストニア人が、エストニアの地で殺し合わなければならなかった、歴史的にも最も悲劇的で過酷な戦いが行われた1944年を描いた戦争ドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

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