映画『ランディ・ローズ』は2022年11月11日(金)より全国ロードショー!
80年代ヘビー・メタルシーンに多大な影響を与えたロックギタリスト、ランディー・ローズの生涯を追ったドキュメンタリー『ランディ・ローズ』。
ヘビー・メタル音楽に爆発的なムーブメントが巻き起こった80年代において、エドワード・ヴァン・ヘイレンら変革的ギタープレーでムーブメントの原動力となったミュージシャンの一人、ランディ・ローズの生い立ちを描きます。
作品を手掛けたのは、「N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン」のアンドレ・レリス監督。
映画『ランディ・ローズ』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Randy Rhoads: Reflections of a Guitar Icon
【監督】
アンドレ・レリス
【出演】
ランディ・ローズ、オジー・オズボーン、エドワード・ヴァン・ヘイレン、ルディ・サーゾ、フランキー・バネリ、ジョージ・リンチ、ゲイリー・ムーア、ダグ・アルドリッチ、ジョエル・ホークストラ、ブルース・キューリック、ドゥイージル・ザッパ、トレイシー・ガンズ(ナレーション)
【作品概要】
超絶テクニックと端正なルックスで80年代のロックシーンに大きな影響を与えながら、25歳の若さで他界した天才ギタリスト、ランディ・ローズの生涯を描いたドキュメンタリー。
『ヒューマン・ハンター』(2017)『ウェズリー・スナイプス コンタクト』(2017)『アウトレイジ・ギャング』(2013)などのアクション映画で製作を務めたアンドレ・レリス監督が作品を手掛けました。
劇中では本人のライブ映像やプレー音源、肉声インタビュー、プライベートショットなどに加え、彼が大きな注目を浴びるきっかけとなった人物であるオジー・オズボーンや、同時代に活躍したギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレン、さらにランディの家族のインタビューも収録されているなど、貴重な資料的映像にもなっています。
映画『ランディ・ローズ』のあらすじ
飛躍的な音響技術の向上で大きく変貌を遂げた80年代の音楽シーン。
その中で、多くのロックファンを魅了したランディ・ローズは、アメリカのとある田舎で育った青年でしたが、早くからその驚異的なギターテクニックで周囲から大きな注目を集めていました。
彼の輝かしいキャリアの一つであり80年代を代表するハードロックバンド、クワイエット・ライオットは当時、全米デビューは果たせず日本のみのメジャーデビューとどまったものの、ローズのギタープレーを含め衝撃的なパフォーマンスは話題をさらい、多くのファンをライブに集めていました。
そしてその後、ハードロックグループとして歴史に大きく名を刻んだバンド、ブラック・サバスを脱退したボーカリストのオジー・オズボーンがギタリストとして彼を抜てきしたことで、ローズには急激な転機が訪れました。
クワイエット・ライオットからの脱退はローズに大きな葛藤を生み出しましたが、オズボーンのソロ転向は大成功、彼はあっという間にロック・スターの座へと駆け上がりました。
しかし人気絶頂にあった全米ツアーの移動の中、大きな悲劇が彼に降りかかります…。
映画『ランディ・ローズ』の感想と評価
ミュージシャンの真実に迫るドキュメンタリーが数ある中、本作もランディ・ローズという一人のギタリストにスポットを当て、その人間的な本質に迫った物語であるといえるもの。
しかしヘビー・メタルファン、ランディ・ローズのファンであればともかく、恐らく彼やヘビー・メタルという音楽をあまり知らない人にとっては、少し困惑する要因を持っている作品と言えるかもしれません。
物語はローズが青年期からすでに成熟したテクニックを持ち、ギタリストとして非凡さを持った天才だったことを示し、以後スターダムに駆け上がるまでの道筋を客観的に描いています。
作品の描き方としてはこの「客観性」というポイントがクセモノとも言え、ローズ自身に「天才」というイメージを示しながらも、何らか彼が物事に対してすべて「受動的であった」ような印象をもたらしています。
顕著なのは、彼の第一のキャリアとも言える、クワイエット・ライオットというバンドのエピソード。
バンドは80年代に発生した大きなロックの波の中で翻弄されながら、自身のステータスを確立すべく奮闘しました。しかしそんな様が描かれる一方で、ローズの立場はどちらかというとその奮闘に強く関与していない印象すら覚えます。
そしてローズにとっては青天の霹靂ともいえる、オジー・オズボーンのソロ活動への抜擢。
ここでは長年苦楽を共にしたクワイエット・ライオットからの脱退に苦悩したというエピソードが若干言及されており、物語中に彼の本質がそっと覗かれる数少ないパートとなっています
総じてみると、数々の貴重な証言や映像はあれど、本作は天才ギタリストであるローズの、その生い立ちと偉大な功績、軌跡、そして終焉までを、まさにストレートに描くということに終始している印象であり、彼がロック、ギタープレーという活動に関して「こうしたい」という願望を示したとされるエピソードを印象的に描いた場面はほとんどありません。
しかし、それはある意味彼が真の「天才」であったことを暗に物語っている意図的な構成とも言えるでしょう。
捉え方を変えれば、彼の人生は自身の欲望を前面に出して突き進んでいたというよりは、彼の持つ天性のものが道筋をおのずと示していたとも見え、彼自身が放つ伝説的な光のイメージを明確に表しているようでもあります。
唯一残念なのは、クワイエット・ライオットのボーカリストであるケヴィン・ダブロウのローズに対する意識が、本作ではあまり見えないところにあります。
もちろんダブロウは2007年に逝去しており、ローズに対する意識を推し量ることのできる遺物や映像を見つけることは困難だったかもしれません。
しかし、ローズの真実を知る上で、彼の抱いていたローズに対するイメージは、大きなポイントになったことも考えられます。
それでもダブロウが彼とともに、そして彼と別れた後に歩んでいった道筋、そしてクワイエット・ライオットの現在に至るまでの道程は、ローズの印象を想起させるヒントにもなり得るようでもあり、世で語り継がれる「天才」という存在の具体的なイメージがどのようなものなのかを実直に示した作品であると言えるでしょう。
まとめ
また本作で描かれるローズの印象として注目すべき点に、「天使」のような清らかさの印象があります。
ローズの大きなステップアップとなった、オズボーンからの抜擢。その奇行やコワモテなルックスから「悪魔的」といわれたオズボーンに対し、ワイルドでシャープなギタープレーとは異なりハンサムで優しさすら見えたローズのルックスは「天使」と称されることもありました。
2人の対照性はオズボーンのソロ活動の中でも大きなポイントでもあり、その活動は「オズボーン名義の活動」ながらローズは彼とともに大きくクローズアップされ、見方によっては同等レベルのアーティストと位置づけられていたとも言えます。
映像の印象でもそうですが、彼の生涯はとにかくロックンロールにつきもののセックス、ドラッグ、アルコールといったいわゆる「悪」の影は全く見られません。
若くして命を落としてしまった彼ですが、果たして彼が不幸に見舞われず今でも生きていたら、どのような生涯を送っていたか。
そんな想像をしてみると、不謹慎に思えるかもしれませんが、その事件ですら彼の「天使」的な印象を形作った一つの要素でもあります。
そしてこのローズの生涯からは、一つの道を究めることの真実をユニークな視点で知らされるような感覚を覚えることでしょう。
映画『ランディ・ローズ』は2022年11月11日(金)より全国ロードショー!