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映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』ネタバレ感想と考察。知識として初心者にも美味しい醸造法を探って見せる

  • Writer :
  • もりのちこ

Our Blood is Wine。伝統を守り続けてきたワインの故郷。

カスピ海と黒海に挟まれた南コーカサスの地にあるジョージア。ヨーロッパとアジアの交差点であり、多様な気候と風土に恵まれた土地で、育まれてきたワイン醸造法がありました。

紀元前6000年に遡る世界最古のワイン醸造法で、2013年世界無形文化遺産にも登録された「クヴェヴリ製法」です。

その歴史は、決して順風満帆ではありません。ソ連占領下の品種削減や禁酒法により、弾圧されてきたワイン製造。辛い時代を乗り越え、ジョージア人は伝統醸造法を守り抜いて来ました。

現在、究極の自然派ワインとして世界から注目を集めるジョージアの「クヴェヴリ製法」を追ったドキュメンタリー映画『ジョージア、ワインの生まれたところ』を紹介します。

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映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』の作品情報


(C)Emily Railsback c/o Music Box Films

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【監督】
エミリー・レイルズバック

【キャスト】
ジェレミー・クイン、ラマズ・ニコラゼ、ギオルギ・ナテナゼ、マリアム・イオセビゼ、ルアルサブ・トゴニゼ、

【作品概要】
世界無形文化遺産に登録され、究極の自然派ワインとして世界から注目されるジョージアのワイン醸造法「クヴェヴリ製法」。本作は、逆境に立ち向かいながら「クヴェヴリ製法」を守り続けてきたジョージアの人々のドキュメンタリー映画です。

監督のエミレー・レイルズバックは、本作のナビゲーターとしても出演しているソムリエのジェレミー・クインと共に映像制作会社を設立。飲み物への理解を通して文化やアイデンティティーに特化した映像制作を手掛けています。

ソムリエのジェレミー・クインは、ワイン調査に24カ国以上を旅する、全米トップのソムリエ賞にも輝いた実績の持ち主。世界中のワイン農園を飛び回り、ワイン醸造、ワイン文化、土地の特性を調査を進めています。

映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』のあらすじとネタバレ


(C)Emily Railsback c/o Music Box Films

「ワインはどこで生まれたのか?」。その問いが、ソムリエのジェレミー・クインをジョージアに導きました。

ジョージアには、「クヴェヴリ製法」と呼ばれる、紀元前6000年に遡る世界最古のワイン醸造法がありました。

「クヴェヴリ製法」とは何か……。現在もこの製法でワイン醸造をしている農園を訪ねました。

粘土をこね、大きな土器を作っている人がいます。人ひとりが、すっぽりと入る大きさです。この器は、ワインを入れて置くためのカメでした。

大人の男たちが4人がかりでカメを窯に移し、7日間かけて焼き上げます。完成したカメは、地下に掘られた穴へと運ばれ、間隔をあけて収められます。

収穫されたブドウは、足踏みされカメの中へ。丁寧に蓋をし、祈りを捧げます。「母から子供が産まれるように、ブドウも一度母なる大地に戻すんだよ」。

自然と共に生まれた醸造法は、自然への敬意の念にありました。

この「クヴェヴリ製法」が、現在まで順風満帆に受け継がれてきたかというと、そうではありません。その背景には、ジョージアの辛い歴史がありました。

ジョージアの歴史は、侵略の歴史です。「侵略者はブドウを潰し、歌を禁止した」。

ソ連占領下にあったジョージアは、ワインの生産地域を限定され、品種を減らされ大量生産を強制されます。合わせて、宗教的な郷土歌は禁止されたのです。

多くのワイン農園が失われ、ジョージアワインと呼ばれるワインは、どれも同じ味になりました。

しかし、「クヴェヴリ製法」でのワイン作りは、家族経営の農園でひっそりと受け継がれてきました。

個人宅や森にわずかに残る貴重な固有品種を調べ、先祖の土地を再構築しようとしている若い世代もいます。

土の中に素焼きのカメを埋め、ジョージア固有のブドウ品種と野性酵母により発酵し、熟成させる「クヴェヴリ製法」で作られた自然派ワイン。

この伝統作法で作られた新しい味わいは、現在世界中から注目されています。

以下、『ジョージア、ワインが生まれたところ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ジョージア、ワインが生まれたところ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Emily Railsback c/o Music Box Films

「乾杯!」。冬に眠らせたワインの完成の時です。祈りを捧げ、クヴェヴリを開けます。一口飲んで、笑顔が咲きました。

「美味しいワインを作るのは、生産者よりもっと大きなパワーが加わっているんだ」。

集まった人たちの中から、自然と歌声が聞こえてきます。次々と歌声が重なり素敵なハーモニーとなりました。ワイン作りに歌はつきものです。

「どうしてジョージアのワインは美味しいのですか?そう聞かれて困ったよ」。そう語るのはオーガニックワインの生産者。

「ジョージアは他民族の侵略や支配に幾度も苦しめられきた。私たちのブドウ畑には、人々の血と涙と祈りが染みわたっているのさ」。

ジョージアの人々にとってワインは血であり、信仰であり、アイデンティティーそのものなのです。

2013年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されたジョージアの「クヴェヴリ製法」ですが、問題もあります。

手間のかかる作業なだけに跡継ぎがなくクヴェヴリを手放すワイナリーもあります。個人宅で受け継がれてきたクヴェヴリ製法はマニュアルがなく、大量生産には向きません。

クヴェヴリ製法で作られたワインボトルの生産量は、現在ジョージアワイン全体の約1%しかありません。

ジョージアの森には樹齢200年以上のワインの木があります。ブドウの木ごとに絞り場があった時代もありました。

世界最古のワイナリー跡が発掘され、約8000年前のクヴェヴリ製法の破片が見つかっています。

「クヴェヴリは、ジョージアを不滅にするものだ」。「伝統に誇りを持っている」。「大企業はいらない。大量生産は無理だけど、いいものはできる」。「ブドウ作りは聖なる力なんだ」。

ワインの故郷ジョージアには、今もなお伝統の「クヴェヴリ製法」が息づいています。そして、美味しいワインと素敵な歌と、豊かな生活がありました。

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映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』の感想と評価


(C)Emily Railsback c/o Music Box Films

「クヴェヴリ製法」。なんと言いにくい言葉でしょう。初めて聞く言葉です。

ワインの故郷ジョージアで伝承されてきた、世界最古のワインの醸造法が「クヴェヴリ製法」。

ワインの映画ということで、産地のワインの特徴や生産者のこだわり、美味しいワインがたくさん紹介される映画だと思っていました。

今作は、そのようなワインの紹介だけではなく、ワインを通してジョージアの人々が受け継いできた信仰心、アイデンティティーが感じられるドキュメンタリー映画でした。

受け継がれてきたのは技法だけではなく、自然への畏敬の念、コミュニティにおけるワイン作り、そこには心に響く郷土歌もありました。

資本主義経済のもと、大量生産が求められてきた時代。各国のワイン製造も大きく変化してきました。それはそれで有難いことに、手軽な値段で美味しいワインもたくさんあります。

そして近年、体と自然に優しい自然派ワインが注目されています。なぜいま自然派ワインなのか。

自然派ワインは、有機的に栽培したブドウを、自然な製法で仕上げ、劣化を防ぐ化学物質などを出来る限り使用していないワインです。

そのため二日酔いになりにくいとも言われ、健康志向のワインとして人気となりました。気になるお味は、その土地によって個性があり軽やかで旨味がじんわりと沁み込んでくるような、優しい味わいと評判のようです。はぁー味わってみたい!

映画の中で紹介されたワインの生産者さん達のワインへ懸ける思いを知ると、より一層美味しく感じるはずです。

その土地の持つパワーでブドウ本来のうまみを最大限に引き出す自然派ワイン。土地や環境のことを考え手間暇かけて作られています。

その製法は、一過性の流行ではなく体と地球に優しい未来に繋がるワイン作りとして、ますます注目されていくことでしょう。

また、ジョージアに住む人々の伝統を重んじる姿勢に、物の価値とは何なのかを考えさせられました。

売れるからいい、多い方がいい、簡単な方がいい。AI化でスピードや正確性が求められる時代の中で、売れなくても少ない量でも手間暇かかっても、民族の記憶を絶やさず伝統の味にこだわるモノづくりにこそ価値がありました

まとめ


(C)Emily Railsback c/o Music Box Films

ワインの起源の地・ジョージアで、伝統の「クヴェヴリ製法」を守り自然派ワインを作る人々を追ったドキュメンタリー映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』を紹介しました。

環境にも体にも優しい自然派ワインは、現在世界中で注目されています。

ジョージアには、逆境を乗り越え先祖代々受け継がれてきた最古のワイン作りと郷土歌が、いまもなお息づいています

ジョージアの人々の血と汗と涙、そして祈りが染み込んだ土地で育ったブドウ。そしてそのブドウを究極の自然派製法「クヴェヴリ製法」で作り上げたワイン。

今作には、ジョージアの自然派ワインが世界中から注目される秘密が詰まっていました。

さっそく自然派ワインの調達に出掛けようと思います。ヨーロッパでは「乾杯の数だけ人は幸せになれる」ということわざがあるそうです。「乾杯!」。

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