縄文土器、弥生土器、どっちが好き?どっちも土器!
縄文と聞いて何を思い浮かべますか?縄文土器、土偶、竪穴式住居、貝塚、狩猟民族。
今から約1万3千年前。約1万年も続いた縄文時代。
名前は知っているけど、はるか昔のことでよく知らない、想像つかないという人も多いことでしょう。
現代の暮らしの中に縄文を感じることはほぼありません。しかし縄文にこそ、私たちが進む未来のヒントが隠されているのかもしれません。
なぜ今、縄文なのか?縄文にハマる人々の話と、縄文文化を通して、縄文の魅力に迫ります。
1万数千年続いた縄文時代を追う、夢と情熱のドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』を紹介します。
映画『縄文にハマる人々』の作品情報
【日本公開】
2018年(日本映画)
【監督】
山岡信貴
【ナレーション】
コムアイ(水曜日のカンパネラ)
【キャスト】
小林達雄、佐藤卓、いとうせいこう、猪風来、小山修三、小杉康、池上高志、デニス・バンクス
【作品概要】
日本の歴史の中でも最も続いた時代、縄文時代にスポットを当てたドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』。
監督は、『死なない子供、荒川修作』で美術家の荒川修作をみごとに解読し、これまでに手掛けた作品の数々が、海外の映画祭に招待作品として上映が続く山岡信貴監督。
監督自ら「縄文にハマった人」のごとく、5年をかけて縄文について取材を続け完成させた作品です。
ナレーションには、音楽ユニット・水曜日のカンパネラのコムアイが登場。唯一無二の存在、コムアイがポツポツと語る声は、聞くものを心地よく縄文の世界へいざないます。
映画『縄文にハマる人々』のあらすじ
縄文にハマっている人が言うことには「そこまでハマる理由。なんなんでしょうね」。
縄文時代の実態は、知れば知るほど謎が多く、実はほとんどが謎に包まれた存在なのです。
よく宇宙人みたいと称される土偶にしかり、奇妙な造形と縄模様の土器、これらは数多く出土されているにも関わらず、21世紀の今となっても、何なのか解明されていません。
古代史研究家の大谷幸市は、縄文土器に見られる6:8の双対関係に注目。これは、宇宙創成と生命誕生の原理に繋がることであり、縄文人はすでに統一理論を知っていたと考察します。
縄文から、本来日本人が持っている力を引き出そうとしている人もいます。縄文心導ストレッチ創設者の倉富和子です。
倉富は、体の外側をストレッチでほぐしても、心の部分、どこか体の真の部分のコリが気になっていました。そんな時、火焔土器と出会います。
火焔土器を見ているうちに土器の中に入ってみたい、土器と一体になりたいと思うように。その思いをストレッチの型としました。土器から縄文人の生命力を感じ取ったのです。
「縄文人も温泉に入っていた」「縄文は多占である。どこからも影響を受けていない純粋で共生的、未来への指針となり得る」。
なんだか縄文って現代人が忘れていたものの原点があるのかな?とにかく凄そう。
作家でアーティストの、いとうせいこうは彼らしいユーモアで縄文を捉えているようです。
「縄文はギャル度が高いよね。縄文のビーナスは、キラキラして、デコってるし。女性は、カフェとかやっててほしいよね」。
いとうせいこうは、縄文土器を前に、こうも言っています。「頭のイイ人の考えが分からない。そんな感覚になるよね」と。
縄文土器は用途不明な形が多く、その造形や縄模様は自然模写とも信仰心とも想像されてきました。
縄文研究の第一人者、國學院大学名誉教授の小林達雄は、「縄文土器は使い勝手が悪い。しかし、使えればいいという考え方は文明社会の現代人の感覚にすぎない」。
縄文時代には土器を作る意味が、使うという以外にもあったかもしれない。そこに込められた思いは、今日の私たちにはわからないままです。
グラフィックデザイナーの佐藤卓は、「縄文の女神(国宝)」のカーブやデザインの秀逸さに、「縄文の女神は現代の車にも通ずるデザインですよ」と驚きます。
火焔土器は、非常なアシンメトリー、精巧なアンバランス、それでいて全体のバランスが取れている。これは計算なのか偶然なのか。
縄文にハマった芸術家と言えば、岡本太郎がいます。火焔土器に深海を見た太郎は、縄文にのめり込み、自分が縄文か、土器が太郎か、縄文と一体になり作品を作り続けました。
土偶の開いた口は、何か言いたげに見えます。東京大学客員准教授のイローナ・バウシュは、「縄文を知ることは己の中を知ることだ」と言います。
知れば知るほど興味深い縄文の世界。何か掴めそうで掴めない、近づいたと思ったら遠のく存在、縄文。
縄文時代の思想をうかがわせる跡があります。それは、貝塚です。小学校の頃、貝塚はゴミ捨て場だと習った記憶があります。
しかし、縄文時代にはゴミがありませんでした。再生観念があった縄文人は、壊れた土器も修復し、さらにデザインを加え大事にしていました。
自然から頂く食べ物、植物、果物、魚、貝、動物はすべてが地球のもの。無駄なものはない。人間もまた自然のサイクルの一部でしかない。
貝塚から人骨が発見されることは、死んだら土に還すという概念の元、行われていた行動かもしれません。
その思想は、遠く離れたネイティブアメリカンや、オースラリアのアボリジニ、北海道のアイヌ民族にも繋がります。
すべては大地の母のものであり、自然を敬い共存する道を歩む。それは、共生と共死を持って成り立っていました。
縄文の終わりは多文化の融合で終息していきます。土器は、実用性のあるものと儀礼用に分かれていきます。それに伴い、施設的なものが建てられていきます。
縄文アーティストの猪風来は、「動きある世界から、静の世界になったんだよ」と、縄文の動きの美学を追求しています。
化学が進むと見えてくるものと、見えなくなるものがあるのかもしれません。目に見えるもので成り立っている現代の何とちっぽけなことか。
約1万3千年前の縄文人と、全く同じ性質を持つ21世紀の私たち。これからの未来、私たちは縄文人も驚く世界を作り上げていくことが出来る存在なのです。
今の文明が5千年後に発掘された時、そこに縄文を超える魅力はあるのでしょうか。
映画『縄文にハマる人々』の感想と評価
映画『縄文にハマる人々』には、教授や研究者など縄文文化の専門家を始め、アーティストやグラフィックデザイナーなど多方面にわたる「縄文にハマる人々」が登場します。
なぜ人々は縄文にハマるのか?映画の中でいくつか理由らしきものが登場します。
「西暦が始まって2000年。縄文時代はその5倍以上続いた」「一万年間、戦争がなかった
」「縄文土器は世界最古級」「土器の過剰な装飾の意味が不明」「土偶の全てが謎」「グッズの充実」「未来への指針になる」。
これだけでも十分、縄文に興味が沸いてきませんか。今まで縄文という名前だけで、勝手にイメージしていたものが覆されることになります。
謎は謎のまま、正解がわからないから想像し、求め続ける。縄文を知ることは、日本人の思想のルーツを探ることにも繋がります。
その探索は、現代の私たちにとって生きるヒントとなり、未来への指針となるものでした。
まとめ
人類史に残された最強のミステリー。1万年以上続いた「縄文」という謎に迫る映画『縄文にハマる人々』を紹介しました。
縄文時代が終焉を迎えて約2500年。この時間の流れの中で日本人は、一体何を失い、忘れてしまったのでしょう。
山岡信貴監督が、5年の歳月をかけて、縄文を求め歩いたドキュメンタリー映画です。全国100カ所をめぐり、1000点以上の縄文土器、土偶を紹介しています。
山岡監督がまさに「縄文にハマった人」なのでしょう。
実際に映画を見た後は、もっと縄文に触れたい、じっくり縄文土器・土偶を見たいという衝動にかられるはずです。
映画『縄文にハマる人々』に興味があるということは、あなたはすでにハマっている人です。