『ジョアン・ジルベルトを探して』は2019年8月24日(土)より、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!
「イパネマの娘」「想いあふれて」「デサフィナード」など、誰もが耳にした名曲を世に送りだした、“ボサノヴァの神様”“ボサノヴァの法王”こと、ジョアン・ジルベルト。
しかし彼は、2008年8月26日にリオ・デジャネイロで開催されたコンサート出演を最後に、公の場に姿を見せなくなります。
それ以来10年以上も彼は完全に人前に姿を現さない、世捨て人の様な隠遁生活を送っていると、広く世間で信じられています。
そして今、ブラジル音楽を深く愛する1人の映画監督が、彼に会おうと手がかりを求め、ジョアン・ジルベルトゆかりの地や人々を訪ね歩きます。
ボサノヴァの名曲の数々が流れ、イパネマビーチを始とする美しいブラジルの風景を描いた、目にも耳にも心地良い音楽ドキュメンタリー映画。
果たして監督は、憧れのジョアン・ジルベルトに出会う事ができたのでしょうか。
CONTENTS
映画『ジョアン・ジルベルトを探して』
【日本公開】
2019年8月24日(金)(スイス・ドイツ・フランス合作映画)
【原題】
Where Are You, Joao Gilberto?
【監督・脚本・出演】
ジョルジュ・ガショ
【出演】
ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ
【作品概要】
1950年代後半にボサノヴァというジャンルを創生し、ギター1本と自らの歌声で世界に人々を魅了したジョアン・ジルベルト。
しかし彼は限られた人物とだけ接触する生活を選び、公の場から姿を消しました。それがさらなる憶測や逸話を生み、いつしか彼は謎のベールに包まれた、伝説的な人物へと変貌します。
2010年ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、ジョアン・ジルベルトを取材しようと試み、入念な準備を行いブラジルを訪れますが、遂に彼と出会う事は叶いませんでした。彼はこの旅路と自らの思いを、「Ho-ba-la-lá: À Procura de João Gilberto」という本に記します。
その本を手にし、彼の旅に深く共鳴した映画監督のジョルジュ・ガショ。彼はマーク・フィッシャーに代わって、ジョアン・ジルベルトを探す旅へと出発します。
このドキュメンタリー映画の日本公開を前に、2019年7月6日ジョアン・ジルベルトが、リオ・デ・ジャネイロの自宅で逝去したとの報道が、世界を駆け巡りました。
名実共に伝説となった音楽家、ジョアン・ジルベルトの晩年の姿を、奇しくも探求する事になったジョルジュ・ガショ。映画はその姿を描いています。
映画『ジョアン・ジルベルトを探して』のあらすじ
とあるホテルの一室でドイツ人ジャーナリスト、マーク・フィッシャーが記した本を読むジョルジュ・ガショ。その本にはジョアン・ジルベルトに心を奪われた著者が、世間から姿を消した彼に会うために、リオ・デ・ジャネイロを旅したてん末が記されています。
その本が出版される1週間前に、40歳の若さで自ら命を断ったマーク。ガショは彼の跡を引き継ぎ、敬愛するジョアン・ジルベルトに会おうと決意します。
マークの本と彼の遺した資料、写真やビデオクリップ、Eメールにブログ、facebookに音声データなどあらゆる記録を元に、ガショはマークの足跡をたどります。
マークのアシスタントを務めたハケルと出会い、彼女の助けを借り料理人や理容師といった、ジョアン・ジルベルトに接する人物を訪ねたガショ。しかし彼につながる手がかりは得られません。
助けを求めジョアン・ジルベルトの元妻であり、今も親友である歌手のミウシャに会ったガショ。彼女はジョアンの持つ、人を惹きつけて止まない魅力を聞かされます。
ジョアン・ジルベルトの姿を求め、マークと同じようにジョアンゆかりの人々や土地を訪ね歩くガショ。映画は美しいブラジルの風景を、ボサノヴァの名曲の調べに乗せて紹介します。
果たしてガショは、憧れのジョアン・ジルベルトに出会い、マークが果たせなかった夢を実現する事ができるのだろうか…。
映画『ジョアン・ジルベルトを探して』の感想と評価
“ボサノヴァの神様”を求める旅
ブラジル音楽の熱烈な信者であり、その専門家として過去にブラジルの歌手、そしてサンバを紹介するドキュメンタリー映画、ブラジル音楽の映画3部作を監督しているジョルジュ・ガショ。彼がマーク・フィッシャーの著作に出会った事で、物語は始まります。
当初この映画の脚本は、創造したシーンと会話のあるフィクション映画として準備しました。しかしジョアン・ジルベルトを探し求める旅は、予期せぬドキュメンタリー的な状況を生み出します。
映画はガショの視点を通して、ジョアン・ジルベルトを巡る人々と、彼の生きた風景と共に美しく、興味深く描き出します。この映画の持つ雰囲気を、ガジョは「サウタージ(憧れの思いを強く含む、郷愁や思慕の感情)」という言葉を使って説明しています。
伝説の音楽家を慕う想い、美しいブラジルの風景、そして全編に流れるボサノヴァのリズムが、見る者の「サウタージ」を掻き立てる、ドキュメンタリー映画を生み出しました。
危険な香りも漂うジョアン・ジルベルトを探す旅
一方で、完全に世間から姿を消した“ボサノヴァの神様”を探す旅は、探偵小説を思わせる展開を繰り広げます。
マーク・フィッシャーはジョアン・ジルベルトを探す旅のアシスタント、ハケルを“ワトソン”と著作で呼び、自身を“ホームズ”になぞらえ、数少ない手がかりを辿ってジョアンの姿を追い求めます。
ジョアン・ジルベルトの熱烈なファンであるジョルジュ・ガショは、彼の抱いた思いを痛切に理解する人物でした。またマークと思わぬ奇縁があった事を知り、ガショは彼と自身を重ね、彼の旅路を追体験する様に行動していきます。
ジョアンに迫ろうとする過程は、まるでミステリー小説の謎解きのような展開を生みますが、同時に少し危険な雰囲気を漂わせ始めます。
ジョアン・ジルベルトに出会う事が叶わず、著作の出版前に自ら命を断ったマーク。彼と同様の熱意でジョアンを探す過程で、見つからないものを探し求める行為が持つ、ある種の危険性を警告されるガジョ。
カリスマに憧れ、魅かれて止まない熱烈なファンの心理を体現したマークとガジョが、ジョアンの姿を探求の姿は、その情熱ゆえに危険な執着を感じさせ始めます。
それ故にジョアン・ジルベルトは姿を消したのか、あるいは彼が姿を消したから、マークやガジョのような信者を惹きつけるのか。甘美な映像の背景に、人間が持つある種の奇妙な情熱と、その哀しい姿を描いた作品でもあります。
まとめ
自ら姿を消した事で、その存在を伝説の域にまで高めたジョアン・ジルベルト。その姿を求め、同じ想いを抱き、時間を越えてブラジルの地で交差する、ジャーナリストと映画監督。
『ジョアン・ジルベルトを探して』は、ジョアンの足跡を通してボサノヴァの歴史、それを生み出したブラジルの風土を描きながら、同時に彼を探し求める2人の男を描いた、興味深いドキュメンタリー映画です。
ボサノヴァやジョアン・ジルベルトのファンは無論、カリスマの魅力に憑りつかれ、それに執着する人間の姿を描いた作品として、ドキュメンタリー映画ファンの関心を集める作品。
マーク・フィッシャーが強く望みながら、ついに出会う機会を得られなかったジョアンとの出会い。ジョルジュ・ガショは、それを成し遂げることができたのでしょうか。
この映画の日本公開を前に 2019年7月6日に亡くなり、真の伝説の存在となったジョアン・ジルベルト。その晩年の謎に満ちた存在を紹介した事でも、貴重な作品となりました。
映画『ジョアン・ジルベルトを探して』は2019年8月24日(土)より、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!