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【映画ネタバレ】嘘八百3なにわ夢の陣|あらすじ結末感想とラスト評価解説。2023年続編は豊臣秀吉の“人の夢”が輝く幻の茶碗を巡る大騒動!

  • Writer :
  • もりのちこ

「なにわのことも夢のまた夢」……大閤・豊臣秀吉が残した宝とは?

中井貴一が扮する古美術商と、佐々木蔵之介が扮する陶芸家の《骨董コンビ》が、騙し合いの大騒動を繰り広げる痛快コメディ映画「嘘八百」シリーズの第3作『嘘八百 なにわ夢の陣』。

本作では、天下人にして大閤・豊臣秀吉の出世を後押ししたという縁起物「秀吉七品」のうち、唯一所在不明だった幻の茶碗「鳳凰」をめぐる物語を描きます。

開催せまる大阪秀吉博の顧問たち、秀吉七品を収集している謎の美女など、「鳳凰」を手に入れたい者たちが動き出す中、相変わらず空回りばかりの古美術商・小池則夫と、うだつの上がらない陶芸家・野田佐輔のもとにも「鳳凰」に関する仕事が舞い込みます。

果たして、幻の茶碗「鳳凰」は存在するのか。そして、秀吉が残した“本当の宝”とは。

映画『嘘八百 なにわ夢の陣』の作品情報


(C)2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【監督】
武正晴

【脚本】
今井雅子、足立紳

【キャスト】
中井貴一、佐々木蔵之介、安田章大、中村ゆり、友近、森川葵、前野朋哉、宇野祥平、塚地武雅、吹越満、松尾諭、酒井敏也、桂雀々、山田雅人、土平ドンペイ、ブレイク・クロフォード、高田聖子、麿赤兒、芦屋小雁、升毅、笹野高史

【作品概要】
嘘八百』『嘘八百 京町ロワイヤル』に続くシリーズ第3弾。1作目は「堺」、2作目は「京都」、そして本作は「大阪」が舞台となっています。

監督は『百円の恋』『アンダードッグ』、ドラマ『全裸監督』の武正晴。脚本をドラマからアニメまで数多くの作品を手がけ、今シリーズの小説版も執筆している今井雅子と、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の足立紳が、前作に引き続き担当。

主演の小池役・中井貴一と野田役・佐々木蔵之介の《骨董コンビ》の痛快バディぶりは相変わらず健在。また野田の妻役の友近と息子役の前野朋哉、小池の娘役の森川葵をはじめ、シリーズお馴染みの顔ぶれが再び集結となりました。

新キャラとなるカリスマ波動アーティスト・TAIKOH役は安田章大。本作のマドンナであるTAIKOHに寄り添う謎の美女を中村ゆりが演じています。また、ミュージシャンとしても才能を発揮する桐谷健太が歌う主題歌『夢のまた夢』にも注目です。

映画『嘘八百 なにわ夢の陣』のあらすじとネタバレ


(C)2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

テレビのニュースでは、大阪城の発掘調査にて発見された椀片が「秀吉七品」の一つにして、唯一所在不明だった幻の茶碗「鳳凰」ではないかと話題になっていました。

一方動画配信サイトでは、古美術商の小池則夫が秀吉七品の解説動画をアップしていましたが、こちらの再生回数は100回。「うち80回は自分だろ」と娘のいまりは呆れています。相変わらず古美術店“獺(かわうそ)”もパッとせず、いまりの占いブースだけは繁盛していました。

いまりが悲鳴を上げるほど最悪のカードを引いた則夫は、馴染みの元テレビプロデューサー・青山から呼び出されます。連れて行かれた場所は、大阪で開催される“大阪秀吉博”の実行委員会のもとでした。

先生とはやし立てられ気分を良くした則夫は、あれよあれよと総合プロデューサーへ。「客寄せのために『鳳凰』をこしらえたらえーんとちゃう」と無責任な顧問・雑賀がけしかけられ、会は盛り上がったものの、反論する則夫の声は届いていませんでした。

また巷では、波動アーティス・TAIKOHが人気を呼んでいました。「おはどうございます」の挨拶で動画サイトでも大人気な彼の描く絵画は、「良い波動が出ている」とされ高値で売られています。

そして「TAIKOHミュージアム」には、秀吉七品のうち6品が展示されていました。代表を務める山根寧々は、どうしても最後の1品「鳳凰」を手に入れなければなりませんでした。

その頃、一度は陶芸家最高の賞にも輝いたものの、最近は小物ばかりの注文をこなし、うがつのあがらない生活を送っていた陶芸家・野田佐輔のもとに、100万円もの報酬の依頼が舞い込んできます。

依頼主のもとを訪ねる佐輔。迎えたのはTAIKOHミュージアムの寧々でした。寧々は佐輔に「秀吉が茶をたてる茶碗を作ってほしい」と依頼し、作陶のための設備が整った部屋も用意していました。

「鳳凰」のことを知らない佐輔は、自分の腕を見込まれたと有頂天。美女の期待に応えようと創作意欲を沸かせます。

秀吉博総合プロデューサーとして秀吉七品を見物にきていた則夫は、佐輔を発見。後を追うと大阪城へ向かっていました。

顔を合わせるとケンカばかりのふたりですが、今回の目的は同じ幻の茶碗「鳳凰」。馴染みの学芸員が熱心に秀吉について教えてくれました。

則夫は佐輔に「手を組まないか」と誘いますが、佐輔はあくまでも自分が頼まれたものは「鳳凰」ではなく、「秀吉が茶をいれる茶碗」だと誘いを断ります。しかし作陶に取りかかるも、「鳳凰」のことを知った佐輔には何もアイデアが降りてきません。

創作に悩んでいたのは、佐輔だけではありませんでした。波動アーティスTAIKOHもまた、絵を描けずスランプに陥っていました。

「空っぽだ」と嘆くTAIKOHを寧々は優しく抱きしめ「大丈夫、鳳凰は見つけるわ」と伝えます。しかしTAIKOHのスランプでミュージアム経営に行き詰まっていた寧々は、波動水や波動グッズを販売し、あこぎな商売へと手を出していました。

大阪秀吉博の期間が迫る中、衝撃のニュースが入ってきます。それはTAIKOHクリエイション主催により、別の「大阪秀吉博」が開催されるというものでした。

「どちらが本物の鳳凰か!?」とマスコミが煽る中、事を急ぐ寧々は、一向に作る気配がない佐輔をクビにして他の陶芸家を探し始めます。則夫も、実行委員会が呼びたかったのは秀吉研究家「小出盛夫」の方だったと判明し、彼もまた総合プロデューサーをクビになっていました。

「なにわのことも夢のまた夢」……秀吉が残した辞世の句に込められた想いを形にするために、則夫と佐輔の《骨董コンビ》が動き出します。

以下、『嘘八百 なにわ夢の陣』ネタバレ・結末の記載がございます。『嘘八百 なにわ夢の陣』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

佐輔はある夢を見ていました。水の上に船のように浮かぶ茶碗が、きらきらと光り輝いている様はまるで“鳳凰”のようでした。

また則夫も、協力者ピエールから聞いた、秀吉の時代にあったとされるビードロ(ガラス)のことを考えていました。お互いに見えてきた「鳳凰」の姿を作り出すべく、二人は動き始めます。

茶碗焼きの技術でビードロを焼く。そして土に練り混ぜ、茶碗を作っていきます。試行錯誤を重ね、何度も作り直しては完成を目指します。

その頃、苦しんでいたTAIKOHのもとにも“鳳凰”の姿が現れていました。創作意欲がわき上がり、「“鳳凰”は僕に中にいたんだ」と夢中で描き続けるTAIKOH。

彼に影響を与えたのは、則夫の娘・いまりでした。彼女は10年前、まだ名の知られていないTAIKOHから“ピンクのイルカが泳ぐ海”の絵を買っていました。いまりが大事にしているその絵を持って彼の元を訪ねたのは、宗教まがいな集団から彼を救うためでした。

ふたつの“大阪秀吉博”が同時開催されようというその時、妙なテレビ番組が始まります。則夫が出演する番組はなんと“第三の秀吉博”であり、番組の目玉は秀吉七品で幻の茶碗「鳳凰」でした。

秀吉博の実行委員会のメンバー、そして寧々たちは慌てて中継場所に駆けつけます。公開された「鳳凰」を前に、秀吉研究家の小出が目を光らせ鑑定に入ります。

茶碗が納められている木箱、秀吉の文書など、すべてが揃っています。年季を感じる木の匂いや紙質に感嘆のため息をこぼした小出は、木箱や文書は「本物」だと判断します。

しかしこれらは、則夫と佐輔の仲間たちがこしらえた品々でした。まんまと騙せると安心したのもつかの間、茶碗に混ぜられたビードロの光に「時代背景が違う」と小出が唸ります。

秀吉の時代に、ビードロの技術がどこまで浸透していたのか。実行委員会の面々が次々と文句をつけ出す中、TAIKOHが割って入ります。

「僕の絵でゆずってくれますか?」大きなキャンパス一面に描かれた“鳳凰”が現れます。

例えその「鳳凰」が贋作であっても、本物と思えば本物。思わず涙を流す寧々に、TAIKOHは寧々の肩に手を置きます。2人は姉弟だったのです。

幼い頃、一緒に見た紙芝居で知った秀吉七品の物語に夢中になった姉弟は、夢を追ううちにいつしか「“本当の幸せ”は何か」を忘れていました。

「すべてのものは、夢の中で夢を見ているようなものです」「夢ぞ幻。それをまた現実にできるのは人間のみ」「これこそが、秀吉が残してくれたお宝なのではないでしょうか」……佐輔の茶碗に当たった光が、TAIKOHの絵を照らします。その様は、まるで光り輝く鳳凰が飛び立つ姿かのようでした。

「佐輔さん。僕も“鳳凰”の夢を見ました」と握手を交わす、2人の芸術家。時代を超え太閤・豊臣秀吉の想いが蘇りました。「これぞロマンだよ」と則夫も満足そうです。

のちに「鳳凰」は博物館に展示されていました。信じられない則夫をよそに、テレビ番組の特集では学芸員が嬉しそうに説明しています。

細々と個展を開催した佐輔は、自分の茶碗より壁に飾ったTAIKOHの絵の方が高く売れたと喜んでいました。そんな佐輔に「バカだなぁ」としみじみがっかりする則夫。

その頃、買われたTAIKOHの絵は海外でも高く評価され、さらに莫大の金額で取引されたことを佐輔は知りません。手放した絵の価値を知ったところで、もう“後の祭り”でした。

映画『嘘八百 なにわ夢の陣』の感想と評価


(C)2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

古美術商・小池則夫と陶芸家・野田佐輔の“骨董コンビ”が、騙し騙され騒動を繰り広げる「噓八百」シリーズ3作目。

これまで、堺では茶聖・千利休京都では利休の弟子・古田織部の茶器をめぐり一攫千金を企んできた則夫と佐輔でしたが、今回はなにわ・大阪にて秀吉の幻の茶碗「鳳凰」を狙います。

目利きは本物の古美術商、腕の立つ陶芸家の名コンビのはずが、なぜかいつも空回りでチャンスを逃してしまう2人。美女のお願いにめっぽう弱く、情にもろい所も相変わらず。顔を合わせれば口ゲンカばかりの2人が、目標を定めた時、互いの技を認め合い協力し合う姿にグッときます

また歴史の名宝の知識を知れるのも、本シリーズの魅力の一つ。今回は豊臣秀吉の出世を後押ししたという「秀吉七品」が登場し、戦国時代の文化や秀吉の辞世の句なども紹介されます。

草履を温めた逸話などで知られ、百姓から天下人にまで出世し続けた秀吉が栄華を極めし果てに遺した辞世の句「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢」。「夢の中で夢を見ているような、なんとも儚い人生であった」という心情が込められているとのこと。

人に夢と描いて「儚」。夢に捉われて自分を見失うことなく、儚いものだからこそ大切に温めていかなければならない。それこそ、秀吉が最期に伝えたかった宝だったのかもしれません


(C)2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

三度の共演となった中井貴一と佐々木蔵之介コンビは、セリフのかけ合いのテンポも良く、粋な大人の魅力が満載です。

中井貴一演じる古美術商の則夫は、次々と噓八百を並べ、贋作も本物と思わせる口の上手さが特徴ですが、滑らかな話し方と説得力ある佇まいに惹き込まれます。

一方、佐々木蔵之介演じる陶芸家の佐輔は、陶芸の腕は一流でも商売ベタで、妻に頭の上がらない不器用タイプ。普段の頼りない雰囲気と陶芸をする鋭い眼差しのギャップがとてもセクシーです。

そんな佐輔を時に叱咤し時に優しく包み込む妻の康子。演じるのはお笑い芸人でもある友近。まさにはまり役であり、場をかき回し事を荒げる康子の存在は、シリーズには欠かせないものとなっています。

また、歴史大好き学芸員役の塚地武雅も全シリーズで出演。則夫と佐輔を捕まえると歴史を語り出し、お宝を前に大興奮する姿はとても愛おしいキャラです。

そして佐輔と康子の長男・誠治が特殊メイクアップアーティストとして成長したことで、騙しのテクニックがさらにパワーアップ。この親にしてこの子ありの良い仕事ぶりです。演じているのは前野朋哉。唯一無二の存在感でシリーズを盛り上げます。

その他、馴染みの居酒屋仲間であり、凄腕の協力者たちも健在。紙偽造の達人よっちゃんの“2代目”が登場したりと、シリーズファンを喜ばせる展開も見逃せません。

今作から観ても楽しめますが、シリーズを通して積み重ねられた「噓八百」の数々を見るとさらに楽しめる作品となっています。

まとめ


(C)2023「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

もはや、お正月の定番映画となりそうな予感があるハチャメチャ痛快コメディ「噓八百」シリーズの第3作目『噓八百 なにわの夢の陣』を紹介しました。

偽物か本物か、騙し騙され、最後に一攫千金を掴むのは。笑いの中にも人情味あふれるストーリーがクセになる作品です。

そして、シリーズ次回作を匂わせるエンディングにも注目です。お次の舞台はついに海外の台湾か、ニュージーランドか……続編に期待です。




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