映画『キック・ミー 怒りのカンザス』は《未体験ゾーンの映画たち2024》において2024年3月15日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷にて上映、また関西地域では3月19日(火)のみシネ・リーブル梅田で上映!
高松琴平電気鉄道・創業100周年記念事業として制作された映画『百年の時計』(2013)のように、実在の地域を作品の舞台・撮影地とした、いわゆる「ご当地映画」は世界中に存在します。
2024年、そんな「ご当地映画」というジャンルから恐るべき映画がアメリカで生み出され、日本への上陸を果たしました。
今回は「未体験ゾーンの映画たち2024」上映作品としてトリを務め上げる、トンデモご当地映画『キック・ミー 怒りのカンザス』(2024)の魅力をご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『キック・ミー 怒りのカンザス』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Kick Me
【監督・編集・制作】
ゲイリー・ハギンズ
【脚本】
ベッツィ・グラン、ゲイリー・ハギンズ
【キャスト】
サンティアゴ・バスケス、ラモーン・アームストロング、マシュー・スタサス、エリック・ローガン、パッティ・マイヤーズ、エリサ・ジェームズ、ジョシュ・フェイデム、ウォルター・コッペイジ、ジェレマイア・ロッツォ、ベッツィ・グラン
【作品概要】
図書館司書として働きながらショートフィルムの制作を行うゲイリー・ハギンズ初の長編デビュー作。
ゲイリー・ハギンズ制作のショートフィルムに出演したサンティアゴ・バスケスが、本作で主演を務めました。
映画『キック・ミー 怒りのカンザス』のあらすじ
ミズーリ州カンザスシティ(通称:KCMO)の高校でスクールカウンセラーを務めるサンティアゴ(サンティアゴ・バスケス)。
彼は自身の実績に傷がつきかねない、発明家を自称する問題児ルーサー(ラモーン・アームストロング)の退学処分を回避すべく、KCMOの隣町ながらも危険とクレイジーな住民たちが跋扈するカンザス州カンザスシティ(通称:KCK)にある彼の自宅を尋ねます。
ところが、ルーサーを巡って発生したトラブルに口を挟んだのを機に、悪名高いギャングたちの頭目ブリッツ(マシュー・スタサス)の部下を殺めてしまったサンティアゴは、ギャングに命を狙われることになり、なぜかパンツ一丁で町を逃げ回ることに……。
映画『キック・ミー 怒りのカンザス』の感想と評価
「地元」で高い評価を受けたトンデモ映画
アメリカ合衆国のカンザス州とミズーリ州の双方に跨る都市カンザスシティを題材とした『キック・ミー 怒りのカンザス』。
監督であるゲイリー・ハギンズ自身もカンザスシティの出身であり、本作は製作陣が目にしたカンザスシティでの出来事を映画に落とし込んだ作品となっています。
しかし、本作は「ご当地映画」らしいカンザスシティの魅力的な部分を映すのではなく、逆に負の側面を徹底的に描いており、作中にはありとあらゆるカンザスシティの闇が登場。
主人公のサンティアゴがギャングからの逃走中に出会った路上生活者の老人は、付近の木にビニール袋を吊るしていました。
その袋の正体は「ジェンケム」と呼ばれる発酵させた糞尿から出るガスを利用したドラッグであり、本来は「都市伝説」として知られるジェンケム作りの光景は、監督同様にカンザスシティをよく知る脚本家ベッツィ・グランが実際に目撃した光景とされています。
このように本作は、カンザスシティの「ヤバイヤツ」を描きすぎているご当地映画なのですが、カンザスシティ国際映画祭にて最優秀俳優賞を受賞するなど地元からも愛されており、真実すぎるがゆえに地元民からも受け入れられる、トンデモなご当地映画となっていました。
二つのカンザスシティ
カンザスシティはアメリカの都市の中でもやや特殊な立地となっており、ミズーリ川を挟んでカンザス州とミズーリ州のそれぞれに「カンザスシティ」が存在。「カンザス州カンザスシティ(KCK)」と「ミズーリ州カンザスシティ(KCMO)」と呼び分けられています。
一般的に「カンザスシティ」と言えば「ミズーリ州側/KCMO」を指しており、観光名所や産業などの著名なものの多くはKCMO側に集中し、KCKとKCMOの間には決定的なほどの貧富の格差が生まれているとされています。
本作は「KCMO」側で働くスクールカウンセラーのサンティアゴが、ひょんなことから「KCK」側へと足を踏み入れてしまったことから騒動に巻き込まれる物語。
いわば同じ「カンザスシティ」の中で生きるサンティアゴが、ミズーリ川を跨いだことで経験することになる「カルチャーショック」が本作の肝であり、この点こそが「ご当地映画」として愛される所以となったのかもしれません。
異色の経歴を持つ主演俳優
本作で主演を務めたサンティアゴ・バスケスは、「黒帯の段位を持つ空手家」なだけでなく「麻薬Gメンの潜入捜査官」と言う肩書を持つ異色の俳優。
作中では自身と同姓同名の主人公を演じる中で情けない姿をたびたび晒し、登場時間の大半がパンツ一丁のバスケスですが、現実の彼はバリバリの武闘派であり、そのギャップが作品の面白さを際立たせていました。
本作のブラックなユーモアが溢れる脚本はバスケスの演技があってのものであり、「情けない姿」が異様なほどに彼の容貌とマッチしています。
なおゲイリー監督がバスケスと初めて出会った時は、麻薬組織への潜入捜査中であったことから「チンピラのような見た目」であったとのこと。本作からは想像もつかないこのエピソードが彼の「潜入捜査官」としての腕前と俳優としての適性を物語っていました。
まとめ
自分の知らない世界を映像を通して知ることが出来ると言う、映画鑑賞ならではの強み。
本作は余りにも強烈すぎるカンザスシティを描いたご当地映画ですが、新しいものを知ることの出来る喜びをブラックなユーモアを通して得ることが出来ます。
そんな映画『キック・ミー 怒りのカンザス』は「未体験ゾーンの映画たち2024」において2024年3月15日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷にて上映、また関西地域では3月19日(火)のみシネ・リーブル梅田で上映!
「闇」に満ちた「カンザスシティ」での一夜の物語をぜひその目を通し体験してみてはいかがでしょうか。