道化師たちが逆賊を制裁を下す韓国時代劇アクションコメディ
キム・ジュホが監督を務めた、2019年に韓国で製作された、謀反を起こした暴君の評判をでっちあげる道化師たちと臣下が挑む大作戦を描いた、時代劇アクションコメディ映画『王と道化師たち』。
話術が巧みな漫談師である主人公率いる‟道化師たち”が、詐欺の腕前を評価して依頼してきた王の忠臣の依頼を受け、謀反を起こした暴君といわれる王の評判を良くするための嘘をでっちあげていく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
チョ・ジヌンが主演を務め、王の良い評判をでっちあげる詐欺師集団と、王を取り巻く臣下たちの裏の顔を描いた、韓国の時代劇アクションコメディ映画『王と道化師たち』をネタバレあらすじ交えてご紹介いたします。
映画『王と道化師たち』の作品情報
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
【公開】
2019年(韓国映画)
【原題】
Jesters: The Game Changers
【脚本・監督】
キム・ジュホ
【キャスト】
チョ・ジヌン、ソン・ヒョンジュ、パク・ヒスン、コ・チャンソク、キム・スルギ、ユン・バク、キム・ミンソク、チェ・ウォニョン、チャン・ナミョル、キム・ヒチャン
【作品概要】
『風と共に去りぬ!?』(2012)のキム・ジュホが監督を務める、「のむコレ3」(2019年11月15日~/東京・シネマート新宿や大阪・シネマート心斎橋)で上映された、時代劇アクションコメディ作品です。
『毒戦 BELIEVER』(2019)や『バトル・オーシャン 海上決戦』(2019)、『権力に告ぐ』(2020)などに出演するチョ・ジヌンが主演を務めており、他にもソン・ヒョンジュやパク・ヒスンら豪華キャスト陣が出演しています。
映画『王と道化師たち』のあらすじとネタバレ
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『朝鮮王朝実録』には実際に起きたことが、『世祖実録』には40もの数奇な逸話が記録されています。
10年前、首陽(スヤン)は自らの甥を殺し、王位に就きました。
しかし、首陽とハン・ミョンフェたち忠臣が謀反を起こし、先王の端宗(タンジョン)と彼に忠誠を誓った忠臣たちを殺した事実は、『六臣の忠』という書物に記されてしまいます。
この原本を持つ道化師たちによって、この話は王の悪評と共に街中に広まっていき、民に知れ渡っていきました。
この事実を知った王は、ハン・ミョンフェや大監(テガム)ら王の臣下たちは、3人の道化師たちを捕まえ、矢の的にして彼らを殺します。
大監は悪化する病よりも、『六臣の忠』に記された内容を気にする王は、唯一残った息子の世子セジャに、死ぬまで王位を継がせないつもりかと愚痴を言いました。
これを聞いたハン・ミョンフェは、王の生前の王権の正当性が記された『六臣之忠』には、臣下の功過も記されているから他人事ではないぞと忠告します。
一方、切り立った山に住居を構える、霊力が弱まった巫女のグンドクは、チョ参判(チャムパン)の妻からある依頼を受けました。
それは、夫が寵愛する妾が尻軽女だと悪評を立ててほしいということでした。
グンドクは、一緒に全国の市場を飛び回っている一団『道化師』の仲間と共に、参判の妾が他の男性と浮気する現場を、参判の配下たちに目撃させます。
身のこなしが柔軟で素早い軽業師の青年・八風(パルプン)や、見えない糸を使って操り人形の要領で人を浮かせるチョン・ホンチル、楽器を巧みに扱って音を操るグンドク、近づかなければ実物の枝と見間違うほどの腕前を持つ元宮廷絵師のジンサンら『道化師』の活躍をハン・ミョンフェは物陰から見ていました。
そこでハン・ミョンフェは、『道化師』のリーダーで妾を誘惑する男性に扮していた、話術が巧みな市場の漫談師マ・ドッコとその仲間を拘束したうえで、ある依頼をします。
それは、数多くの善政を施した現在の王の信頼を回復させるため、謀反を起こした暴君から天意によって与えられた聖君に仕立て上げろということでした。
その話をしたハン・ミョンフェが立ち去った後、チョン・ホンチルは、臣下と王を殺したハン・ミョンフェが持ち掛けた依頼を断ろうと提案します。
マ・ドッコは見張りがいるから目的地の明には行けない、試しにこの仕事を引き受けてみようと言い出し、パルプンはこれに賛同しました。
多数決を取った結果、反対はチョン・ホンチルとジンサンの2人、賛成はドッコとパルプンの2人、グンドクは保留したので、チームで決めた規則に従って決めることにします。
空中に投げた竹は立ったらやる、倒れたらやらないということです。結果、竹は立ったため、ドッコたちは大きな見返りがあると期待して、いつも通り命がけで仕事に取り組むことを決めました。
それから3日後、お祈りのために各地の寺を回っている首陽やハン・ミョンフェたち臣下は、俗離(ソンニ)山の法住寺(ポッチュサ)へ向かいます。
先に着いていたドッコたちは、法住寺の入り口にある松の木を、わざと首陽たちが通る直前で倒しました。
ドッコたちはジンサンが描いた風景画を立てかけて姿を隠し、チョン・ホンチルとドッコら男性陣で木に括り付けた縄と見えない糸を引っ張ります。
グンドクが奏でる音と共に持ち上がる松の木、それはまるで、王を迎え入れるように松の木は持ち上がったようでした。
これによって、無事首陽が乗る輿は松の木の下を通り抜けます。これを物陰から見ていた村人によって、5日以内に全国に噂として広まっていきました。
まさにハン・ミョンフェが思い描いていた通り、天意は大王と共にあるのだと民は信じ込んだのです。
ドッコたちの功績を讃えたハン・ミョンフェは、「道化師の過去の罪は問わない。今後も王様と民のために全力を尽くせ」とドッコたちに言います。
これに対しドッコは、「俺たちは、お上に従わない唯一の賤民だ。大金をもらっても嫌な客に芸は見せない、飢え死にしても気に入らなきゃ描かない、自尊心が傷つけば舌を噛み切って自害する。剣を突きつけられても言うべきことは言う」と正直に答えました。
さらにドッコは、「快適な住まいと奴婢から解放してほしい」と要求します。これに応じたハン・ミョンフェは、次の仕事を依頼し、漢陽(ハニャン)へ直ちに向かえと命じました。
約束通り、奴婢から解放され、良民となったドッコたちは、喜んで漢陽へ向かいます。
そこにはドッコの師匠であるマルボという、『六臣之忠』の内容を忠実に再現した芝居をする市場最高の話術師がいました。
マルボは謀反を起こした首陽が、端宗に仕える忠臣ソン・サムムンを拷問する様を1人で2役をして演じます。
「ソン・サムムン、なぜ余を裏切ったのだ」「裏切っておりません旦那様、太陽が1つであるように、私には王も1人しかおりません。私が王と認めるのは先王だけです」
「余を”王様”と呼ぶのなら命だけは助けてやる」「甥を殺した謀反者を王ですと? もってのほかです。うちの倉には旦那様から頂いた俸禄を腐ったまま置いてあります」
「先王を売り、謀議を行ったではないか」「謀議を行っただと?私は旦那様とは違います」
「おのれ、熱した鉄を足に突きつけ、腕は切り落とせ」「(高温に熱した焼きごてを足に突きつけられる)鉄が冷めてるぞ、旦那様の拷問はなかなか刺激的だ」
この芝居が終わった後、マルボに声を掛けたドッコは、久々に彼と食事しに行きました。
しかし朝鮮最高の文人、梅月堂(メウォルダン)であるキム・シスプが記した『六臣之忠』に書かれたことを信じるマルボと、実際にその場面を見ていないから信じていないというドッコは言い争ってしまいます。
ドッコはパルプンたち仲間と共に、漢陽で行う仕事に取り掛かりました。
それは、円覚寺(ウォンガクサ)周辺に色とりどりの粉を纏ったパルプンが走り回り、寺の上から菩薩の格好をしたグンドクが登場するというものでした。
さらにドッコたちは、ハン・ミョンフェの部下や大監たちと協力し、空に上げた小さな気球から赤い花びらを落として、切り立った崖の上を歩く首陽の周りに舞わせます。
そして、ジンサンたちが手作りした巨大な菩薩とパネル型の小さな菩薩を出現させ、首陽たちや見物客に見せつけました。
これを見た民や臣下たちによって、街中は菩薩の話で持ちきりとなり、首陽を信奉する者が朝廷に押しかけてきたのです。
以下、『王と道化師たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『王と道化師たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
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自分たちが仕掛けた作り物と嘘によって、王への信頼を回復させていったことに大喜びの大監は、ドッコたちを呼んだ宴の席で、酒に酔ってグンドクにセクハラ発言をします。
これを不快に思ったグンドクが大監を突き飛ばすと、大監は倒れた際に割れた酒瓶を持って、彼女を殺そうと詰め寄りました。
咄嗟に大監の腕を掴んで止めたドッコは、嘘をついてグンドクを殺させないよう、大監を宥めて事態を収束させます。
そこに現れたのはハン・ミョンフェ。顔から全身に広がる原因不明の膿疱に苦しむ王の身を案じる民のため、王が天の助けによって病を治したと信じ込ませる話をやってくれとドッコたちに依頼しました。
ドッコはその仕事を成功させた暁には、自分たちを官職につかせろと要求します。承諾したハン・ミョンフェは、実際に王の身を蝕む病を見せようと、首陽への謁見をするためドッコを連れて行きました。
首陽と謁見したドッコは、彼の体や顔にできた膿疱を見て、その痛ましさに愕然とします。
そんなドッコに対し、首陽は夢の中で端宗と共に殺した彼の母、顕徳(ヒョンドク)王后に「息子を殺したお前を必ずや恨みを果たすぞ。お前だけでは済まさぬ、唯一生き残ったもう1人の後継者も苦しめて殺してやる」と言われたことを話しました。
ドッコは顕徳王后の亡霊に怯える首陽に、次の作戦を伝えます。
まず首陽たちには、首陽の病を治療するという名目で釈迦の師匠・文殊菩薩像が祀られている上院寺(サンウォンサ)へ、1000回お祈りに行きます。
ここで重要なのは、王の身を案じて輿に近づく見物客を追い返してはいけないことです。
日が暮れたら、首陽1人で上院寺の前にある五大(オデ)へ行き、物陰で見ている見物客の前で、病に冒された体を晒して川で洗ってもらいます。
それに難色を示す首陽でしたが、実際に五大川に入って体を洗うのは、首陽に扮したドッコです。
ドッコは文殊菩薩に扮したグンドクに、体につけた膿疱を綺麗に取ってもらい、首陽の病は文殊菩薩によって治されたことを見せつけます。
その嘘は、まんまと信じ込んだ見物客によって街中に広まり、天の恩恵を受ける王の事はもう悪く言わないようにしようという意識が民の中で生まれました。
これに大満足したハン・ミョンフェは、自身の屋敷に招待したドッコたちに、約束通り官職を与えます。
一番位の低い官職を与えられて不満げなドッコへ、ハン・ミョンフェは他の臣下に頼み、救国の決断を邪魔した6人の奸臣の姿を記録した『六臣之逆』という書物を渡しました。
ハン・ミョンフェがドッコに次の仕事として与えたのは、『六臣之忠』によって民から誹謗中傷を受けた臣下の信頼を取り戻すため、亡き先王と6人の忠臣の亡霊を出現させ、民へ噂とはまるで反対の言葉を言わせるというものでした。
これに怒って反対したのはジンサン、彼はハン・ミョンフェに「元門番だった卑しい生まれのお前は、賄賂によって臣下に出世した」と叫びます。
そんなジンサンを他の臣下に殺させないよう、ドッコは必死に両者と話して宥め、ドッコを連れて外へ出ました。
大雨が降る中、ドッコはジンサンの言動のせいで、仲間もろとも殺されかけたと叱ります。
ドッコは続けて、ジンサンに「六臣之逆をやるかやらないかなんて、俺たちに選択する余地はないのだ」と告げました。
ジンサンはそれでも、実父のような存在であった主であり、六臣のソン・サムムンを極刑に課した者たちに仕えることはできないと言います。
ジンサンは続けて、「そんな連中に仕えるくらいなら、元の貧乏生活に戻って飢え死にする方がマシだ」と話し、ドッコたちの元を去っていきました。
一方マルボも、ドッコたちが広めた嘘話や噂によって、自身が話す『六臣之忠』の内容を、もう民に信じてもらえませんでした。
それでも最後まで話し続けた道化師たちのため、王の反逆行為を記した著者のために、マルボは話し続けることをやめようとはしません。
ドッコはそんなマルボに対し、「俺と知り合いだなんて絶対に言うな」と冷たく突き放してしまうのです。
しかしドッコは、自分たちが広げた嘘によって、マルボ以外にも被害が及んでしまった事を知ります。それは、花吹雪を舞わせ菩薩を登場させた円覚寺周辺に暮らす民です。
円覚寺を増築させるという名目で、家を焼き払い、民を甚振るハン・ミョンフェたち臣下の姿を見たドッコは、仲間と一緒に愕然としました。
ドッコは1人でハン・ミョンフェの屋敷を訪れ、彼にあれはさすがにやり過ぎだと苦言を呈します。するとハン・ミョンフェは、急に『六臣之忠』に書かれた死んだ忠臣たちは、本物の中心だったと話し始めました。
皆が幼い王の身を案じていましたが、その中でも自分たちの信念を貫き通した忠臣たちを、ハン・ミョンフェたち今の臣下が殺し、晒し首にします。
そんな君臣の義を廃した首陽とハン・ミョンフェたち臣下は、互いを縛り付ける名分が必要だったため、牛の血を飲んで君臣の間に誓いを立てる『会盟の義』を行ったのです。
しかしハン・ミョンフェは、王の狂気に左右される今の国の姿は、自分たちが忠臣を殺してまで築きたかった革命ではないと否定します。
そこまで話したハン・ミョンフェは、ドッコに「国の危難を鎮め安寧をもたらすため、一緒に王を追い出し、功臣の世界を作り上げないか」と誘いました。
その世界を作り上げるためには、ハン・ミョンフェの前で王を跪かせ、彼に王の運命を握らせるように仕向ける必要があります。
そう話を持ち掛けられたドッコは、グンドクたち仲間に、自分たちは臣下たちが権力を握るために利用されていたことを話しました。
そう気づいたとしても、ドッコたちにはどの道を選択しようとも、待っているのは死だけでした。
そこでドッコたちは、ジンサンという凄腕の絵師がいないため、ドッコの幼稚な絵で描いた計画書をもとに、ハン・ミョンフェと首陽にそれぞれ作戦を伝えます。
ハン・ミョンフェには、3日後の吉日に、文殊菩薩像の除幕式という口実を使って、会盟の義が行われる上院寺へ首陽と世子を連れて行きます。
出立直前に羽織の裾に雌猫の匂いを染み込ませた王が、上院寺の仏堂の庭に入ると、ドッコたちが事前に捕まえた雄猫の群れが取り囲み、足止めをするのです。
そこでハン・ミョンフェが、何か怪しいと言って兵に仏堂の中を調べさせに行くと、ドッコたちの誰かが扮した刺客が現れます。
ハン・ミョンフェが黒幕は誰だと問い詰めると、刺客は「黒幕は世子だ」と告げるのです。
刺客が現れ、ハン・ミョンフェによって捕まるところまでは2人へ伝えた作戦内容は一緒ですが、首陽に伝えた結末は違いました。
それは刺客役を演じるドッコが、「黒幕はハン・ミョンフェだ」と言い、ハン・ミョンフェたち臣下を大逆罪で裁こうとしたところです。
しかし、刺客が現れる前までは順調に事が進んでいたはずが、刺客役を引き受けたドッコは仏堂の中で捕らえられ、代わりにパルプンが刺客としてハン・ミョンフェの前に連行されていきました。
作戦通りに言わねば仲間を殺すと脅されていたパルプンは、ハン・ミョンフェが望むがまま、「黒幕は世子だ」と言ってしまうのです。
これにより、作戦の事など知らない世子と首陽は漢陽に移送され、牢に入れられそうになります。
それを回避しようと、首陽は世子の舅でもあるハン・ミョンフェに懇願しました。
するとハン・ミョンフェは、世子の命を助ける代わりに、世子に王位を譲って、新王と功臣たちに干渉しないことを約束させます。
それを了承する首陽が、自らが望んだ通り跪き、運命を委ねた姿を見て、ハン・ミョンフェは大満足でした。
ハン・ミョンフェは首陽が会盟の義で宣言する前に、刺客役のドッコたちを口封じのために、絞首刑に処そうとします。
ドッコたちを救ったのはマルボ。彼は『六臣之忠』の原本を持っていると言い、彼らを解放するようハン・ミョンフェに要求したのです。
その結果、ドッコたちとマルボは牢屋に入れられ、ハン・ミョンフェたち臣下に『六臣之忠』の原本が奪われて、彼らをさらに調子に乗らせてしまいました。
しかしマルボはこうなることがわかっていたのか、事前にジンサンたちに自分たちを脱獄させるよう話をつけていたのです。
ジンサンたちが牢屋の下から送り込んだ煙によって、見張りをしていた兵を眠らせます。その兵に扮したドッコたちは、馬を盗んで脱獄しました。
追ってから逃げる際、ドッコに向けて放たれた矢を、身を挺して受けたマルボは、息も絶え絶えに「ドッコを助けるために来たのだ」とドッコに打ち明けます。
これを機に衝突した2人は和解しますが、マルボは「お前たちしか、漢陽に道化師はいない。作り話で騒ぎ立てるだけじゃなく、真心と誇りをもってやれ。お前たちには才能がある」と言い遺し、ドッコの手を握ったまま死んでしまいました。
ドッコたちは殺された道化師たちの墓がある場所に、マルボの墓を作って弔います。
そして『真心団』と改名したドッコたちは、ハン・ミョンフェたち臣下に、互いを殺し合うよう仕向けに行きました。
上院寺で行われた会盟の義、そこで世子が牛の血を口に塗ろうとすると、ハン・ミョンフェたちは煙幕の下から入り込んだ、幻覚作用がある草でいぶした煙を吸い込んでしまいます。
空に照らされたソン・サムムンの絵を本物だと思わせることに成功したドッコは、拡声器のように作った竹の笛を使い、『六臣之忠』に記された内容を大声で読み上げました。
さらに円覚寺周辺に住んでいた民に協力を仰ぎ、臣下たちが家を焼き払ったように、パルプンと民が上院寺の周辺に火を放ち、逃げ場を塞ぎます。
グンドクは顕徳王后が乗り移ったかのように、ドッコを押しのけて、首陽に向けて夢で言った言葉とまるで同じことを告げるのです。
その後、首陽たちの前に開眼した巨大な大仏が現れ、「愚かな首陽よ、これがお前の望みか。十数年王座に就くために多くの血を流したのか? あれだけいた忠臣はどこに行った、周囲には無能で欲深い奸臣しかいない。お前の長子を殺したのはその奸臣たちだと分からぬのか?」と話します。
その声を演じるのはドッコです。ドッコは続けて首陽に、「天に仇をなした罪を償う方法は、罪を犯した奸臣たちを始末し、自らを悔い改めることだ。残された息子を失いたくなければそうせよ」と言いました。
自分の長子を臣下に殺されたことを知った首陽は、怒りのままに大監と他の臣下1人を剣で斬り捨てます。
さらに牛の血を飲み干したハン・ミョンフェへ斬りかかろうとした首陽ですが、先にハン・ミョンフェに首を掴まれてしまい、気絶させられてしまいました。
ハン・ミョンフェは奪った王の剣を地面に突き立て、うろたえる臣下たちに対し、「我々が恐れるのは、王の剣ではなく六臣の忠という書物だ。これに記された我々の所業を隠匿するため、多くの奇跡を生み出し良心を操ったのだ。力のある者が歴史を作り上げる。我々が作った歴史を後世に引き継げば永遠となる。この書物を燃やせば我々の歴史を阻むものはない」と言います。
そう言い放ったハン・ミョンフェは、臣下たちの前で焚火で『六臣之忠』を燃やしますが、彼が燃やしていたのは『六臣之逆』だったのです。
火で炙られ浮かび上がってきたその文字を見て、ドッコたちに本がすり替えられていたと気づくハン・ミョンフェ、そこへ本物の『六臣之忠』を持ったドッコが現れます。
襲い掛かってくる臣下たちを、見えない糸でぶら下がって避けたドッコは、「お前らに殺された道化師たちに代わって言おう。見ておれ、道化師の名前は永遠に記録され、お前らの汚い名前からは永遠に悪臭が漂うだろう」と話しました。
ドッコは続けて、「天意がお前たちと共になかったことは、後世にも知れ渡るだろう」と言い、煙の中に姿を消していきます。
意識を取り戻した首陽はむくりと起き上がり、「過ちを功で消せるのか? 余は愚かなことしかしていない。結局のところ歴史は我々を逆賊と、“死六臣(サユクシン)”たちと『六臣之忠』に記すだろう」と言いながら高笑いしました。
一方、その場から民と一緒に立ち去ろうとしていたドッコたちは、グンドクが顕徳王后の演技をしていた事を覚えていないと聞かされ、愕然とします。
後日、会盟の義で起こったことは全て街中に噂として広まっていき、『六臣之忠』に書かれた逆賊が真の忠臣で、今の臣下たちが逆賊であると証明されました。
グンドクとドッコは、和尚に頼んで真実の『六臣之忠』を後世に伝えていって欲しいと頼みます。その際、和尚に名を問われたドッコは、「私はマ・ドッコ、道化師マルボの弟子」だと胸を張って名乗っていました。
巷を騒がせた死六臣の忠信は、現在も『六臣伝』として残されています。
お尋ね者になってしまったドッコたちは、グンドクが占い師をしている寺にいました。するとそこへ、金持ちのふくよかな女性が、好きな男性を自分に夢中にさせてほしいと依頼に来ます。
最初は報酬にと出された金の調度品に目が眩んだドッコたちでしたが、依頼内容を聞いて、故郷である朝鮮に帰ろうと心の中で思いました。
映画『王と道化師たち』の感想と評価
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ドッコたち『道化師』と呼ばれる者たちが、それぞれの得意技を駆使して作り上げる、大掛かりな仕掛けと嘘話に、観ているこっちまで感嘆して騙されそうになります。
良い評判をでっちあげていくたびに、自分たちの待遇が良くなっていくことが嬉しいドッコですが、ジンサンは父と慕った忠臣ソン・サムムンを殺した逆賊に従いたくないと思い、衝突してしまう場面はとても切ないです。
それまでの彼らの仲の良さ、強い絆、それによってもたらされる妙技を観れば、どちらの気持ちにも共感出来て涙が出ます。
一番悲しいところは、ドッコを命懸けで守ったマルボの死です。
それまで、『六臣之忠』の内容について言い争っていた2人が和解できたというのに、それが最後の会話になってしまうのがとても悲しくて涙が止まりません。
そして実は、王を聖君にしようと嘘をでっちあげさせていたハン・ミョンフェたち臣下が、首陽の長子を殺していた真実が物語の終盤で明かされます。
その前から権力を握るため王を裏切ろうとする臣下たちと、臣下に裏切られて怒る首陽とで何度か衝突はあったものの、そんなことまでしていたのかと驚かされる場面です。
それによって完全に袂を分かった首陽たちでしたが、それに裁きを下したのはドッコたち道化師でした。
ドッコたちが物語の最後に行った芝居、それはこれまでのものよりも壮大で凄い迫力があって感動します。
最後まで自分たちのやり方と信念を貫いたドッコたち、それが成した偉業に、誰もが感嘆することでしょう。
まとめ
チョ・ジヌン演じるマ・ドッコたち道化師が、王の嘘の評判をでっちあげていく中で、本当の真実を知っていく韓国の時代劇アクションコメディ作品でした。
仲間想いで師匠想いのマ・ドッコが、自慢の話術で本当の悪を裁く姿を、チョ・ジヌンが華麗に格好良く演じていた姿がとても印象的です。
剣と剣がぶつかり合うアクションはないものの、言葉と言葉でぶつかる熱い戦いが描かれていて、それだけでも充分楽しめます。
ハン・ミョンフェたち臣下と、マ・ドッコ率いる道化師が、それぞれ策を講じて化かし合うのは、種明かしされるたびに驚嘆することでしょう。
会盟の義で捌かれたハン・ミョンフェたち臣下は、これからどうなっていくのかは劇中で明かされていません。
テロップで流れていた『六臣伝』に、もしかしたらその事が書かれているかもしれないと想像すると、これを観た後に読んでみたくなりました。
政権を巡った臣下たちと道化師の化かし合い、道化師が魅せる妙技が素晴らしい面白い時代劇アクションコメディ映画を観てみたい人に、とてもオススメな作品です。