映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』は2025年1月17日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイントほか全国順次公開
『ディックス!! ザ・ミュージカル』は、『グレイテスト・ショーマン』(2018)や『ラ・ラ・ランド』(2017)のスタッフが集結したA24初のミュージカル。
原案は、ジョシュ・シャープとアーロン・ジャクソンがオフ・ブロードウェイで上映していた30分のコメディミュージカルです。原案の2人が脚本を担当し、主演の双子も演じました。
監督を務めたのは、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2007)のラリー・チャールズ。
ニューヨークのトップ・セールスマンとして働くクレイグとトレヴァーは、女性と権力が大好きなモテ男。そんな2人はある日、運命の糸に引き寄せられるように、新しい職場で出会います。
そして2人は自分たちが生き別れた双子ということに気づきます。何か足りないと思っていたものは、家族だったと気づいた2人は、離婚した両親を復縁させようと計画しますが……予想外の結果になっていきます。
エッチで馬鹿馬鹿しくも愛おしい異次元のミュージカル映画です。
映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』の作品情報
【日本公開】
2025年(アメリカ映画)
【監督】
ラリー・チャールズ
【原題】
Dicks: The Musical
【脚本】
アーロン・ジャクソン、ジョシュ・シャープ
【製作】
ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング、コリ・アデルソン、ラリー・チャールズ
【キャスト】
ジョシュ・シャープ、アーロン・ジャクソン、ネイサン・レーン、メーガン・ムラーリー、ボーウェン・ヤン、ミーガン・ジー・スタリオン
【作品概要】
『グレイテスト・ショーマン』(2018)や『ラ・ラ・ランド』(2017)のスタッフが集結したA24初のミュージカル作品。監督を務めたのは、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2007)のラリー・チャールズ。
原案を手がけたアーロン・ジャクソン、ジョシュ・シャープが本作の脚本を務め、クレイグとトレヴァー役を務めました。
エッチで馬鹿馬鹿しくも愛おしい異次元のミュージカル映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』は、トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門で上映され、観客賞受賞しました。
共演は、『バーナデット ママは行方不明』(2019)のメーガン・ムラーリー、『ボーはおそれている』(2024)のネイサン・レーン、更に「サタデー・ナイト・ライブ」のキャストとして知られ、『ねこのガーフィールド』(2024)で俳優としても活躍しているボーウェン・ヤン、ラッパーのミーガン・ジー・スタリオン。
映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』のあらすじ
ニューヨークのトップ・セールスマンとして働くクレイグとトレヴァー。女性と権力が大好きで、ヤクでハイになってセックス三昧の日々を送っていた2人は、どこか物足りなさを感じていました。
会社の合併によって同じ部署になったクレイグとトレヴァーは互いを見て、自分にそっくりだと感じます。そして互いにライバル視し、売上を競い合いますが……互いの共通点が多いことから、自分たちが生き別れた双子だと気づきます。
何かが欠けているような気がしていたのは、「家族」だったと気づいた2人は離婚した両親を復縁させようと計画を企てます。
しかし、両親には複雑な事情を抱えており……。
映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』の感想と評価
運命の糸に引き寄せられるように職場で出会い、生き別れた双子だと気づいたクレイグとトレヴァー。
二卵性の双子ならまだしも、一卵性の双子とは思えないほどクレイグとトレヴァーを演じるアーロン・ジャクソン、ジョシュ・シャープは似ているわけではありません。
しかし、そのようなことを気にしていたらキリがないほど、ナンセンスで馬鹿馬鹿しく、異次元なミュージカルであるところが本作の魅力といえます。
そして、生き別れた双子が再会して、両親を復縁させようとする展開は、まさに有名児童文学『ふたりのロッテ』を想起させますが、一筋縄ではいかに本作は、『ふたりのロッテ』のような展開にはなりません。むしろその予想の斜め上をいくのです。
両親の驚きべき事情が明かされるだけでなく、クレイグとトレヴァーの関係性にも変化が……。良くも悪くも今まで見たことのないミュージカル映画になっています。
そんな本作は、冒頭から激しい性行為をする場面が映し出され、自身の性器に自信を持っているマッチョな異性愛者としてクレイグとトレヴァーが登場します。
クレイグとトレヴァーが体現しているマッチョな異性愛者である男性像は、多くのラブコメ映画において理想とされてきた男性像であり、そのような男性像を“あえて”面白おかしく取り上げています。
クレイグとトレヴァーを演じ、本作の脚本も担当したアーロン・ジャクソン、ジョシュ・シャープは、同性愛者であり、“勇敢”にも異性愛者を演じていると映画の冒頭で紹介されます。
そのようにあえて誇張することで、理想とされてきた男性像の固定観念を壊し、インモラルとされてきたものを掬い上げ、どのような形であっても愛は素晴らしく、批判されるものではないという強いメッセージを打ち出していきます。
本作はクィアなミュージカルであり、大きな愛の物語でもあるのです。
まとめ
『グレイテスト・ショーマン』(2018)や『ラ・ラ・ランド』(2017)のスタッフが集結したA24初のミュージカル映画である『ディックス!! ザ・ミュージカル』。
脚本を担当したアーロン・ジャクソン、ジョシュ・シャープによるクレイグとトレヴァーも印象的な登場人物ですが、他の登場人物もクィアで個性的なキャラクターばかりです。
ナレーションとして登場するのは、ボーウェン・ヤン演じる神様です。ボーウェン・ヤン自身も同性愛者であり、神様をアジア系の俳優が演じているのも印象的です。
更に、クレイグとトレヴァーの上司を演じるのはラッパーのミーガン・ジー・スタリオンです。ミーガン・ジー・スタリオンは、バイセクシャルであることを公言しています。そのように本作は、A24初のミュージカル映画であり、クィアによる初のミュージカル映画でもあるのです。
パワフルさと馬鹿馬鹿しさで突き抜ける本作は、深刻な現実をも忘れさせるパワーを持っているといえます。