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Entry 2022/04/16
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【ネタバレ映画】ヘル・フィールド ナチスの戦城|あらすじ感想と結末評価解説。ラストのどんでん返しをも破壊する“真実の呪い”とは|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー76

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第76回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第76回は、エリック・ブレス監督が演出を務めた、映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』です。

エリック・ブレスが脚本・監督を務めた、2020年製作のイギリスの戦争アクションホラー映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』。

かつてナチスが占拠していた城の見張りに派遣された5人の米兵部隊が、その城で頻発する奇妙な怪現象の原因を調べていく物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

第二次世界大戦末期のフランスを舞台に、5人の米兵部隊が敵よりも恐ろしい城の何かに襲われる、ブレントン・スウェイツ主演の戦争アクションホラー映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』の作品情報


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

【公開】
2020年(イギリス映画)

【脚本・監督】
エリック・ブレス

【キャスト】
ブレントン・スウェイツ、テオ・ロッシ、スカイラー・アスティン、カイル・ガルナー、アラン・リッチソン、ビリー・ゼイン

【作品概要】
『バタフライ・エフェクト』(2004)のエリック・ブレスが脚本・監督を務めた、イギリスの戦争アクションホラー作品です。

『ガンズ&ゴールド』(2013)や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)などに出演するブレントン・スウェイツが主演を務めています。

映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』のあらすじとネタバレ


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

「戦争はいつ終わるのか、前進し衝撃を受けるたび、心と体が弱っていく。母と別れた日の僕の面影は、もうない。無限に続く緊張感、銃弾で命を失うのか、その前に罪を償えるのだろうか……D(ディーター)・ヴェルナー一等兵、18歳」

第二次世界大戦末期の1944年、ナチス占領下のフランス。かつてナチス最高司令部が占領していたという城の見張りのため、クリスとカーク、ユージンとタッパート、ブッチーの5人の米兵部隊が派遣されました。

野戦続きだったクリスたちは、次の交代が来るまで何日も眠れるし、ナチスが置いていったチーズやワインなどの食料もあって快適な任務だと喜んでいましたが、なぜか前任の部隊は逃げるように城から去っていきました。

それを不審に思うクリスたちでしたが、すぐにその理由が分かりました。この城では、奇妙な怪奇現象が頻発するのです。

クリスたちが暖炉のある1階の広間で休んでいると、誰もいないはずの2階から何か大きな物音と足音が聞こえてきました。音の正体を確認するべく、2階の部屋をしらみつぶしに捜索するクリスたち。

クリスとブッチーは、突如開いた部屋の扉に驚きつつ、部屋の中へ入っていくと、カーテンの向こうで首を吊っている人影を目撃。しかし、カーテンに映った人影はすぐに消えてしまいました。さらにその近くの床には、奇妙な引っ搔き傷がありました。

部屋の捜索を終え、クリスたちが広間に戻ると、今度は暖炉の奥からモールス信号が聞こえてきました。

ユージンがそのモールス信号を解読した結果、「I HAVE NO LEGS(脚がない)」というメッセージであることが判明。しかも次の瞬間、突如暖炉に死んだリスが落ちてきたのです。


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

その日の深夜。クリスから、屋根裏から外の見張りを任されたタッパートは、ライフルスコープから城の庭を眺めていました。するとそこへ、突如子供の亡霊が現れました。

2日目の朝。ユージンはクリスとブッチーと一緒にバルコニーでくつろいでいた時、タッパートにまつわるある噂について話をしました。

それはかつてタッパートが戦場にて、ナチスの青年組織「ヒトラー青年団(ヒトラーユーゲント)」の死体たちとその血の海の中で、妙な笑顔を浮かべて座っていたという話でした。

その時のタッパートは、指に紐をかけて「あやとりできる?」「次は君の番だ」と、誰かに話しかけていたのです。彼の周りには死体しか転がっていなかったというのに………。

そこへ、タッパート本人が現れます。

「前任の隊がピリピリしていた原因が分かった」「ドイツ軍がニュルンベルクを出発し、フランス国境へ向かったとラジオで聞いた」「トラックが数台と歩兵が数十人」「早速準備しよう。ここでは簡単にやられてしまうから、森に隠れてやり過ごそう」

そう平然と話すタッパートの提案を「5人対50人なんて自殺行為だぞ」「ダメだ、ここに残る」とクリスは却下します。

あっさり引き下がったタッパートは、ユージンを連れて屋根裏部屋へ行きました。そこでタッパートは、ユージンに「俺の陰口でも叩いていたのか?」と尋ねます。

ユージンが戸惑っていると、タッパートは一気に床に敷かれた絨毯を引っ剝がしました。するとその床には、黒魔術の魔法陣が描かれていたのです。

それを見たユージンは、「ヒトラーはオカルトを信じてたという噂がある」「ナチスは儀式的にこの城に住んでいた一家を殺したんだ」と推測しました。

ユージンとタッパートは、部屋の隅に置かれた棚を移動しようとします。しかし魔法陣の上を歩いた瞬間、突如開いていた棚の扉が閉まり、ユージンの指が挟まれてしまったのです。

ユージンは激痛に悶えながら広間に戻り、クリスとブッチーと合流。前任者の壊れた無線機を修理していると、暖炉の奥から「IF YOU LEAVE YOU DIE(ここを去れば死ぬ)」というモールス信号が聞こえてきました。さらに無線機からも「ここを去ればお前らは死ぬ!」という声が聞こえてきました。

その日の夜、城の食料を求めてやって来たナチス兵が襲来。クリスたちは城の玄関に南京錠をかけ、バリケードを築いて戦闘態勢を整えます。

ドアが開かないのを見て、ナチス兵が諦めて撤退しかけたその時、城内で大きな物音が響き渡りました。音のせいで城内に人がいるのがばれ、ナチス兵は壊した窓から手榴弾を投下。ブッチーは皆を守るため、手榴弾に覆いかぶさり重傷を負ってしまいました。

屋根裏部屋からタッパートが次々と敵兵を狙撃していく中、クリスたちは城内へ乗り込んでくるナチス兵と交戦します。

しかしそんな時でさえも、城の怪奇現象は止まりませんでした。子供の笑い声が聞こえたり、ナチス兵が浴室のバスタブで溺死したり、書斎に隠れたユージンが女の亡霊と燃えている男の亡霊を見たり……。

そして屋根裏部屋に侵入したナチス兵が、両手を縛られた状態で首を吊って死んだりなど、不可解なことが相次いで起きたのです。

以下、『ヘル・フィールド ナチスの戦城』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヘル・フィールド ナチスの戦城』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

3日目の夜。ナチス兵との戦いを終え、クリスたちは書斎に集まりました。その時ユージンは、地下で見つけた「ディーター・ヴェルナー」という名のナチスの一等兵の日記に書かれていたことを話します。

「この城に住んでいたヘルウィグ一家は、ユダヤ人を匿っていた」「城がナチスの手に落ち、軍が入ってきた時、子供たちは隠れた」

「だが父親はこの書斎で見つかり、椅子に縛りつけられた」「母親はキッチンに隠れたが引き摺りだされ、屋根裏部屋に隠れた息子の元へ連れていかれた」

「母親の見ている前で、息子はバスタブで溺死させられた」「次に娘のクリスティナを発見。屋根裏に連れていき、娘の首を吊った」

「泣き叫ぶ母親を書斎へ運び、彼女の夫に灯油をかけ、笑いながら火をつけた」「彼らの死体は山積みにされ、葬儀も墓石もなかった」……。

ユージンは、一連の怪奇現象はナチスに殺されたヘルウィグ一家の呪いだと推測しました。

またユージンは日記以外にもう1つ、ヘルウィグ一家に関連するものを見つけていました。それは、一家が生前撮った家族写真でした。

皆と話した後、ユージンは昏睡状態のブッチーの様子を見にいきました。するとそこへ、タッパートがやって来て、彼にこう言いました。

「ノルマンディー上陸作戦後、ドイツへ進軍中、5日寝なかった話はしたか?」「3日で夢か現実か分からなくなった。多少まともな状態でも、正常に戻れるのか自信がなかった」

「ヒトラー青年団にしたことは悪夢だ。自分で制御しなきゃな」「俺が彼らを殺した実感がない。覚えているのは、血の海の中で座ってる俺の姿」

「その時、一人が起きた。彼は紐を取り出して、手を出した」「彼は首もないのに、その紐であやとりを始めたんだ」「俺が殺した相手だから、断ったら失礼だろ?しばらくあやとりをして遊んでいたら、彼はバタンと後ろに倒れた」

「あれはきっと夢だったに違いない。でも怖くて動けなかった」「紐を持って一緒に座っているところを、あんたが見つけた」……。

その後も怪奇現象は続き、浴室でヘルウィグ家の息子の亡霊を見たクリスは、彼と同じようにバスタブで溺死させられそうになった夢を見ました。

4日目。ブッチーは意識を取り戻しますが「これは現実じゃない」と繰り返し叫びます。「現実じゃない、俺たちがやったんだ」と叫んだ後、ブッチーは一番近くにいたクリスの胸ぐらをつかみ、「思い出せ」とだけ伝えてそのまま息を引き取りました。


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

5日目の朝。ブッチーの死体を埋葬したクリスたちは、任務放棄で軍法会議にかけられることを覚悟した上で、急いで城から出ました。しかしどんなに歩いても、同じ場所に戻されてしまいます。

それでも城から離れたかったクリスたちは、近くの森で野宿することに。その時タッパートは、ナチス兵やヘルウィグ家の娘同様、屋根裏部屋で首を吊っている夢を見ました。

6日目の朝。飛び起きたタッパートは、すぐそばの地面に「ヴェトルレク」という謎の文字が書かれていることに気がつきました。

クリスたちはもう一度城から離れようしましたが、どんなに歩いてもやはり城へと戻されてしまいます。さらにこの日はそれだけでなく、城の庭に停められた敵軍のトラックに積んだはずのナチス兵の死体が、何故か城への道中にトラックと一緒に転がっていたのです。

城の呪いから解放されるため、クリスたちはこの城のどこかにある、ヘルウィグ一家の死体を埋葬し弔うことにしました。

城に戻った後、クリスは亡霊の足跡を残すため、床に白い粉を撒きました。その時、タッパートは今朝見た「ヴェトルレク」という言葉をずっと呟いていました。

それを聞いたユージンは「ディーターによると、“ヴェトルレク”は古いイスラム教で、“悪事を働いた者はその10倍苦しむ”という意味があるそうだ」とクリスたちに言いました。


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

その日の夜。ヘルウィグ家の夫人の亡霊が2階から降りてきて、足跡を残しながら迷うことなく広間にいるクリスたちへ近づいてきました。そして真ん中にいたクリスの肩をむんずと掴むと、庭にある小屋へと連れ去っていきました。

クリスたちは最初、夫人の亡霊がなぜ小屋へ行ったのか分かりませんでしたが、すぐにその理由が分かりました。彼女は自分とその家族の死体がある場所を教えてくれたのです。

クリスたちはヘルウィグ一家の死体を庭へ運び出し埋葬します。その時、ユージンは遺体の1つに、紛失していた日記の最後のページがあることに気がつきました。

ユージンは日記の続きを読みました。

「フランス人ではなく、アフガニスタン人であるヘルウィグ一家は、ユダヤ人を隠し、安全にアメリカに脱出させてた」「彼らは命懸けでナチスに抵抗してたんだ」「死ぬ間際に夫人はヴェトルレクの呪いをかけた。見てたやつらに呪いを」

埋葬した遺体に祈りを捧げた後、クリスたちは城へ戻りました。しかしタッパートがいないことに気づかない3人は、地下にあったトランクを開けてみました。そこには葉巻が入っていただけでしたが、ユージンはこのトランクのことも、日記に書いてあると言います。

「“埋葬は力を与える。死から蘇る力を”」………ユージンが日記の内容を読み上げた直後、屋根裏部屋に刻まれた黒魔術が発動し、蘇ったヘルウィグ一家の亡霊が出現。

クリスたちに襲いかかってきたヘルウィグ一家の亡霊は、次第にデジタル映像に変わっていきます。そして夫人の亡霊に、クリスは「思い出しなさい」と怒鳴られました。

次の瞬間、クリスは秘密の施設のベッドの上で目覚めました。そんなクリスの顔を、医師のエンゲルと看護師2人が覗き込んでいました。

エンゲルは城へ来る途中、クリスたちが遭遇し殺したナチスの将校だったはずですが、何故か医師として目の前にいます。

クリスの近くのベッドには、タッパートたちが眠っていましたが、みんな頭に謎の装置が装着されており、手足や顔の一部が欠損していました。クリスもまた両足がなく、錯乱するクリスにエンゲルはこう言いました。

「アフガニスタンでの任務で負った君たちのケガは酷く、カンダハル(アフガニスタンの都市)の施設では手に負えない」

「体の麻痺や切断に気づくと、絶望から死に至るが、生きる気力があれば回復できる」「(クリスたちがいる病室の中央に置かれた)このコンピューターの疑似体験で得た気力は、傷の回復に役立つんだ」

エンゲルの話を聞いた瞬間、クリスはアフガニスタンでの任務の記憶を思い出しました。それは、あるアフガニスタン人の医師とその家族の救出作戦のことでした。

アメリカ軍と欧州軍縮会議は、イラクおよびシリアを拠点に活動するスンニ派過激派組織「イスラム国(IS)」の拠点を探るため、アフガニスタン人の医師ヘルウィグとその家族に協力を仰ぎました。

彼らの協力の結果、アメリカ軍と欧州軍縮会議はISの拠点を特定し、評議会員4名をドローン攻撃によって暗殺。しかしその4人は全員ヘルウィグが診察した者たちだったため、ヘルウィグ一家は危険に晒されてしまったのです。

そのためアメリカ軍はクリスたちを派遣し、ヘルウィグ一家の救出作戦を実行。クリスたちがヘルウィグ宅に到着した直後、ISの部隊がトラック3台に乗って近づいてきました。

無線の向こうから「E11」というコードネームで呼ばれている米兵は、敵に道路が封鎖されたため逃げ道がないと知り、クリスたちに自分と一緒に壁の裏に隠れるよう命じます。

「救出作戦は中止だ。ドローンに敵の基地まで追わせる、あとは欧州軍縮会議が敵を監視する」「いやだ、ここに残る」「俺たちは一家を守る」「お前たちの意見など聞いていない!今すぐ壁の中に隠れろ!」

クリスたちが壁の裏に隠れた直後、ISの部隊がヘルウィグ宅に襲来。ISの部隊のリーダーは、ヘルウィグがISの情報を提供する見返りとして、アメリカから薬をもらっていることを知っていたのです。

ISの部隊はまずクリスティナの首を吊って殺害し、次にヘルウィグの息子をキッチンの洗い場に貯めた水で溺死させ、最後に椅子に縛りつけたヘルウィグの体に灯油をかけ、彼を生きたまま燃やしました。

クリスたちは米兵とは違い、殺されそうになっているヘルウィグ一家を助けようと、反撃の機会を窺っていましたが、遅れてトラック2台に乗ったISの部隊が来たため、壁の外へ出ることはできませんでした。

守ってくれると約束したはずなのに、自分たち家族を見殺しにしたクリスたちに向かって、夫人は「報いを受けなさい!想像を絶する苦しみを!」と叫びました。


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

ISの部隊が立ち去った後、ヘルウィグ宅を出たクリスたちに、生き残った夫人が壁の中に隠してあった爆弾を持って飛びかかってきました。最後尾にいたブッチーが慌てて夫人を止めようとしましたが間に合わず、夫人は自爆してしまいます。

吹き飛ばされたクリスたちは重傷を負い、それぞれ手足や顔の一部を失ってしまいました。全てを思い出したクリスは、エンゲルたちに「一家はまだフランスにいるのか?なぜ大戦の体験をさせたのか?」と尋ねます。

これに対しエンゲルは、「第二次世界大戦が舞台だと、兵士に仲間意識ができる。それが生きる気力になる」と答えました。

「この6週間で、君たちは奇跡的な回復力を見せた。特に精神面で」「数日前、なぜかブッチーは昏睡状態から目覚め、自分の体を見てただ目を閉じて死んでいった」……そう語るエンゲルの話を聞いて、クリスはブッチーが最期「現実じゃない」と叫んでいたことを思い出しました。

「カークは足がかゆいと言っていたのは、幻肢痛だったんだ」「“脚がない”とモールス信号を送ったのは、俺たちの潜在意識が教えてくれたことなんだ」「“去れば死ぬ”というモールス信号も、脅しではなく警告だ」………そう推測したクリスは、エンゲルにこう尋ねました。

「(城で起きた怪奇現象は)システムのバグか?それともホラー映画を体験するプログラムを仕込んだのか?俺たちに過去の戦闘や任務を追体験させるんだろ?」

対してエンゲルは「違う。これは穏やかなプログラムだ」「君たちに過去の戦闘や任務を追体験させるためではなく、現実を思い出さないように大戦を選んだだけだ」と答えました。

クリスが「ヴェトルレク」について尋ねると、それはイスラム教の呪いの言葉で、クリスたち全員が口にしていたとエンゲルたちは言います。

その直後、病室で怪奇現象が発生。

クリスは自分たちの所業を教えてくれたヘルウィグ一家を今度こそ救うため、そして他の仲間が手遅れになる前に罪を償うため、夢の世界へ戻すようエンゲルたちに要求します。

しかし夢の世界へ戻る直前、コンピューターがクリスのアフガニスタンでの記憶も、城での記憶も消去してしまったため、クリスは大事な記憶を失くした状態で夢の世界へ戻ってしまったのです。

そのためクリスは、城へ行く途中で野宿した森の中で、葉巻を吸ったヘルウィグの亡霊に会っても、彼が誰だか分かりませんでした。

映画『ヘル・フィールド ナチスの戦城』の感想と評価


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

「ナチスが占領していた城をただ見張るだけ」……そんな簡単な任務を任されて大喜びのクリスたち。今まで、いつ敵と遭遇するか分からない緊張状態に晒されていたからです。

しかし笑顔さえ浮かべていたクリスたちの顔は、頻発する怪奇現象によってどんどん恐怖に染まっていきます。それは画面越しに観ている人も同じことでしょう。

いきなりライフルスコープに映ったヘルウィグの息子の亡霊、奇妙なモールス信号、不可解なナチス兵の死、そして蘇ったヘルウィグ一家の出現。どの場面も観ているだけで背筋が凍りつくほどとても怖いです。

物語の終盤までホラー要素が強いですが、「実はフランスでの出来事は全て、昏睡状態に陥ったクリスたちが見ていた夢」というどんでん返しの結末が最後には描かれます。

ただエンゲルたちは、ヘルウィグ一家の亡霊が起こす怪奇現象については、何のことだか分からない様子。そこから察するに、ヘルウィグ一家の呪いはエンゲルたちが作った、兵士の生きる気力を回復させるためのコンピューターシステムには組み込まれていないものなのでしょう。

単なる夢オチかと安堵するのも束の間。「アフガニスタンでクリスたちに家族を見殺しにされた、ヘルウィグ夫人の呪いは本物だった」というどんでん返しさえのギミック的展開さえも飲み込む真実は、思わず言葉を失うほどの衝撃を受けます。

ヘルウィグと彼の子どもたちがクリスたちの目の前で殺される場面は、「何で自分たちを見捨てたんだ」というヘルウィグ一家の無念と、今すぐにも助けてあげたいのにそれができないクリスたちの葛藤の両面が描かれ、現実も夢も関係ない「戦争の真実」がもたらす光景が映し出されます。

そしてブッチーが、夢の中でも現実の世界でも命を落としていたのがとても悲しいです。

まとめ


(C) 2019 GHOSTS OF WAR LIMITED

第二次世界大戦末期、ナチス占領下のフランスの呪われた城で起きた怪奇現象と、5人の米兵の惨劇を描いたイギリスの戦争アクションホラー作品でした。

物語の序盤で出てきたナチスの将校が、物語の終盤でエンゲルという医師として登場したり、カークが訴えていた足のかゆみが実は幻肢痛によるものだったり。謎のモールス信号は、昏睡状態のクリスたちの潜在意識が教えてくれたものだったりと、作中での伏線が物語の終盤で全て回収され、点と点が線で結ばれていきます

クリスたちはもちろん、観る者も予想できないことが怒涛の勢いで展開されていくため、ヘルウィグ一家の亡霊や怪奇現象が物凄く怖くても最初から最後まで目が離せません。

そして作中では頻発する怪奇現象の他に、グロテスクな場面や残酷描写が随所にあるため、あらかじめ心の準備を済ませてから本作を鑑賞することをオススメします

予測不能の展開が巻き起こる兵士たちの戦慄の恐怖体験を描いた、異色の戦争アクションホラー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら




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