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Entry 2021/08/17
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映画『ヴィジット』ネタバレ感想考察と結末あらすじ解説。祖父母の正体は?怖すぎどんでん返しホラーでのシャマランの“原点回帰”|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー46

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第46回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第46回は、『シックス・センス』(1999)、『サイン』(2002)の、M・ナイト・シャマラン監督のサスペンススリラー『ヴィジット』です。

学校の夏休みや冬休み、おじいちゃんやおばあちゃんの家に、数日間お泊りに行った思い出はありませんか?

物語は若気の至りで恋に落ちた娘が、親の反対を押し切り恋人と駆け落ちをし、十数年の時を経て、両親がSNSを通じ娘を見つけ、“孫に合わせて”と打診したことから始まります。

姉弟2人だけで、初めて会う祖父母の元へ1週間のお泊り……姉には“ある考え”もあり、祖父母の家に行くことを希望します。しかし、祖父母の家では守るべき“3つの約束事”があり、それを破ったとき恐ろしい秘密が暴かれます。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『ヴィジット』の作品情報


(C)Universal Pictures.

【公開】
2015年(アメリカ映画)

【原題】
The Visit

【監督/脚本】
M・ナイト・シャマラン

【キャスト】
オリビア・デヨング、エド・オクセンボールド、キャスリン・ハーン、ディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー

【作品概要】
監督は、『シックス・センス』(1999)、『アンブレイカブル』(2001)、『サイン』(2002)のM・ナイト・シャマラン。

シャマラン監督といえば衝撃展開で鑑賞者をアッと言わせる、脚本家としても人気の高い監督ですが、『ヴィレッジ』(2004)以降は賛否両論作品の発表が続き、ヒット作から遠ざかっていました。

『ヴィジット』はシャマラン監督の持ち味でもある、まさに“衝撃展開”の蔵出し作品。シャマラン監督に向けられた期待から、半信半疑で鑑賞した人たちからは「待ってました!」との声がおきた話題作です。

映画『ヴィジット』のあらすじとネタバレ


(C)Universal Pictures.

ロレッタは高校の卒業直前に、代替教師として赴任したコリンと恋に落ちますが、彼女の両親は交際に大反対します。ところがロレッタは高校を卒業すると、19歳で家を出てコリンと駆け落ちし結婚しました。

結婚して10年、夫婦は長女ベッカ、長男タイラーの2人の子をもうけますが、夫のコリンは別の女性と恋に落ち、家族を捨てカリフォルニアに駆け落ちしてしまいます。

ロレッタの両親はコリンが“女の姿を目で追う”様を嫌い、険悪な雰囲気のまま、ロレッタと両親は激しくののしり合った末、15年間絶縁状態になっていました。

夫に裏切られ、両親とも絶縁状態のロレッタは、女手ひとつでベッカとタイラーを育てます。

そして、姉ベッカが15歳、弟タイラーが13歳になったある日、ロレッタの両親がネットで彼女をみつけ、2人の孫と1週間ともに過ごしたいと連絡してきました。

ベッカとタイラーからみたら祖父母にあたるロレッタの両親は、現在は人気のカウンセラーとして従事しながら暮らしていました。

ロレッタが子どもたちに祖父母のことを話すと、特に姉のベッカが乗り気で、会うことを反対しても「勝手に会いに行く」と言います。

ベッカには祖父母との初対面を“ドキュメンタリー映画”として撮影するという目的ができ、カメラを回し始めていました。

ベッカは母のロレッタに、家を出た時の様子を詳しく聞かせてほしいとインタビューしますが、彼女は頑なに話そうとせず、聞きたいのなら祖父母から聞けばいいと答えます。

ロレッタは姉弟を駅まで送り、走り出す列車を追いかけながら見送ります。

ベッカはロレッタにはミゲルという“ちょい悪”の彼氏ができ、2人きりにしたら南の島へ旅行すると決めていた、とカメラに話します。また列車での様子を撮影し続けるベッカは、カメラに向かって父親が家を出てから、極度の潔癖症になってしまった弟タイラーについて話します。

月曜日の朝、列車が祖父母の暮らす、ペンシルバニア州のメイソンビルに到着すると、“ようこそ!ベッカ&タイラー”と書かれた、大きな紙を持って祖父母が迎えに来ていました。

ベッカはカメラに向かい、「お料理上手で目の色が同じ、マリア・ベラ・ジェイミソン」と「農業とカウンセラーをしている、フレドリック・スペンサー・ジェイミソン」と祖父母を紹介。祖母は手作りのプレッツェルを持参する歓迎ぶりで、2人とも優しそうで品のある人です。

母の育った生家に到着すると、話でだけ聞いていた“ブランコ”、“柱時計”などロレッタの思い出が迎えてくれました。一つ一つの紹介を興奮気味に伝えつつ撮影をする姉弟は、母の使っていた部屋でベッドの取り合いをしたり、他愛なく初対面の祖父母との1週間を開始します。

祖父は部屋を案内すると「地下室はカビだらけ、入るなよ」と、注意をして出て行きました。

さっそく電話回線でネットを繋ぎ、スカイプで母と話す姉弟。母は両親のことが気になりますが、あえて答えを聞こうとしません。

ベッカは自分たちのことは気にせず、旅行に行くよう最後のひと押しをすると、2時間後には豪華客船で旅行だとはしゃぐ母にエールを送ります。

ところがその日の午後から姉弟は、祖父母の不可解な行動を目にするようになります。

撮影協力をされたタイラーが、牧場の小屋から出てきた祖父に「おじいちゃん!」と声をかけても、彼をチラッと見るだけで無視して去ってしまいます。タイラーは祖父の態度から、「小屋に何か隠されているのでは」と気にしはじめます。

またその晩、ベッカが動画の編集をしていると、祖父が部屋に来て「年寄りの夜は早い。9時半には寝る」と言って出て行きます。

Wi-Fiも繋がらない田舎の夜、時間を持て余すかと思いましたが、10時23分にタイラーは就寝。しかし小腹の空いたベッカは、祖母が焼いたクッキーを食べたくなります。

母親もしていたであろう深夜のつまみ食いを再現すると、ベッカは寝ている祖父母に気を使いながら、カメラを回しつつキッチンへと向かいます。

ベッカが階下に目を向けると、白いロングネグリジェ姿の祖母が、嘔吐しながら横切ります。驚いたベッカは慌てて部屋に戻ると、タイラーを起こし「おばあちゃんは、病気よ」と言います。

以下、『ヴィジット』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヴィジット』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)Universal Pictures.

火曜日の朝、タイラーは祖母にノートパソコンのWebカメラの説明をし、動画を撮って公開していると教えています。祖母の様子は元気そうで、ベッカにも朝食を勧めました。

朝食が済むとベッカは祖父が作業をしている納屋へ行き、祖母は病気なのかと訊ねると、祖父は「お腹の風邪をひいただけ」「歳をとれば弱くなる」と言いベッカも納得します。

午後は母がかつてよく行った場所を訪れる予定で、それを伝えるためタイラーを探します。彼は家の外の床下に隠れ、ベッカの足を掴んで驚かします。

ベッカは、母がよく床下でかくれんぼをしたという話を思い出し、2人はかくれんぼの様子を撮影しようと、外の床下にもぐりこみ遊びはじめました。

しかし、しばらくするとタイラーは、ベッカではない何者かに追いかけられます。タイラーの怯えた声を聞いたベッカは、心配してタイラーを探し始めます。やがてタイラーが逃げ切ると、今度は不気味な笑い声と共に、ベッカの背後にその何者かが迫り、追いかけてきました。

必死に逃げる姉弟は、何者かから何とか逃げ切り外へ出ます。すると、あとから出てきた何者かの正体が、祖母だとわかりあっけにとられます。

しかも祖母は「ポットパイを作るわ」と平然と家へ戻りますが、その後ろ姿は巻きスカートが開け、何も履いていない下半身が半分露出していました。ベッカは驚きながらも、元気そうな祖母にホッとした仕草をします。

姉弟が家に戻りしばらくすると、祖父母にカウンセリングを依頼しているという、医師のサムが訪ねてきました。ベッカが2人は散歩に出ていると伝えると、先日無断でカウンセリングを欠席したので、心配して様子を見に来たと言います。

サムはカウンセラーのボランティアは、ストレスが溜まるといいますが、ベッカが元気だと伝えるとサムは安心し、「病院で騒動が起こった」と伝えてほしいと帰って行きました。

12時15分、タイラーは祖父が何かを隠した小屋へ調査しに行きます。この日も祖父は、袋を持って中に入るとしばらくしてすぐに出てきます。

タイラーが薄暗い小屋の中に入ると、たくさんの農作業用具があり、異臭が立ち込めていました。部屋の奥へ進むと、そこには汚物の付いた大人用おむつが大量に積まれていて、知らずにつまみ上げたタイラーは、パニックで小屋を飛び出し、倒れ込むとそこに祖母が歩み寄ってきました。

祖母は「おじいちゃんは失禁症なの。男らしい人だから、それを恥じている」と、タイラーに理解してあげてほしいと諭します。

母の思い出の場所を巡る前に、ベッカは「母は“思い込み人間”で、ダメと思ったらすぐに諦めてしまう」「それを治すには“特効薬”が必要だ」と録画をします。

祖父はカウンセラーのボランティアをしているというメイプル・シェイド病院に通りかかりますが、「入館バッチを忘れた」と言って立ち寄りませんでした。

目的地は、母の通っていたメイソンビル高校。ベッカが祖父に母は優等生だったかと訪ねると、通りの向こう側にいる男性をみつめ、「ずっとこっちを見ている」とつぶやきます。そして、突然その男性に走り寄ると「追ってくるんじゃない」と押し倒し殴りかかります。

ベッカが慌てて制止すると、祖父は人違いだと我に戻ります。タイラーは祖父をイカれてるし狂暴だと言い出しますが、ベッカは年齢特有のパニックと、農作業で腕力もあるからだとたしなめます。

編集作業をしながら、ベッカは寝落ちしてしまいます。しかし、部屋の扉のすぐ外で異音が聞こえ、姉弟は目が覚めます。

10時47分、姉弟は何の音なのかを探るために撮影を開始しますが、その気配は近すぎてなかなか扉を開けられません。意を決したタイラーが扉を開けると、そこにいたのは向かい側の壁をガリガリとひっかく、全裸になった祖母の後ろ姿でした。

水曜の朝、ベッカは祖父に祖母の奇行について聞きます。祖父は、おばあちゃんの奇行は“日没症候群”という、認知症の症状の一種であることを話します。

祖父はタキシードに着替えながら、日が落ちると祖母が“日没症候群”を発症するからという理由で「9時半以降は部屋から出ないように」と約束させます。ベッカが外出するのかと聞くと、祖父は列車で仮装パーティーに出かけると言います。何かの間違いじゃないかと正すと、彼は「予定のこともわからなくなっている」と落ち込みます。

一方の祖母はベッカに、仮装パーティーに行くと言ったか聞かれます。聞かれたと答えると「ボケてるの」と言います。さらに、パソコンのカメラにバターを落として、クリーナーで拭いたけど……と言い、見るとパテのような補修材が塗られていて、カメラも使えなくなっていました。

ベッカは“日没症候群”のことを調べると、祖母の奇行について説明のつく内容がありました。また、スカイプで母と連絡を取り合ったとき、タイラーは祖父母の異変を口にします。母は老人性の症状だと判断します。

母は床下のかくれんぼもしたし、祖母は裸での日光浴もしていたと話します。ベッカは祖父母のことを偏見で見ないようタイラーに言います。

ベッカは祖母に、母親についてインタビューさせてほしいと願い出ます。祖母はオーブンの掃除をしてくれたら受けてもいいと告げ、ベッカは言われたとおりにします。

祖母はカメラの前に座りますが、母が家出をする前に起きたことを聞かれるとパニックをおこし、結局インタビューにはなりませんでした。

インタビューを断念したベッカが居間に行くと、母や姉の話に納得できないタイラーが、真相を暴こうと隠し撮りを考え、飾り棚にカメラを設置していました。タイラーは隠し撮りによるリアルな映像の方がウケがいいと主張しますが、ベッカは隠し撮り映像には、倫理上の問題があるとカメラを取り上げます。

それでもタイラーは、祖母の奇行が気になります。10時16分、扉の向こうの廊下を激しく走り回る音がすると、タイラーは祖母を“狼女”と呼び、撮影に挑もうとします。

扉を少し開けて様子をみると、祖母は手を後ろに組んで、右往左往走り過ぎると四つん這いで、姉弟の部屋に迫ってきました。

(C)Universal Pictures.

木曜の朝、祖父母と一緒に散歩をします。散歩から戻ったベッカは、タイラーに出て行った父親について、どう思っているかインタビューをはじめます。

タイラーは「仕方がない」と、気にしていないふりをします。むしろ変な葉書を送ってきたことを、最高に面白いというほどでした。

ベッカは更に恨んでいないのか聞くと、タイラーは恨んでいないと答えます。それは嘘だと思ったベッカは納得できる説明をしてほしいと問い詰め、やがてタイラーは8歳の時に出場した、アメリカンフットボールの試合の話をします。

リードしていて守り切れば勝てるという時に、向ってきた敵が自分より大きく、タックルできずに立ち尽くしたまま、点を与えて負けました。しかし、そのことを父は責めもせず「仕方ない」とでもいうように肩を叩き、連れ帰ったと話します。

ベッカは父が黙って出て行ったのは、自分の失敗のせいだと思っているのか聞くと、タイラーははっきり言うなと認めます。

今度はタイラーがベッカにインタビューします。台本はありましたが、そこには書かれていないことを質問します。

「なぜ鏡を見ないのか」と、核心にせまります。歯を磨くときも下を向いたまま、今着ているセーターも裏返しだと指摘します。タイラーは自分を見ていないと認めるか、嘘をつき続けるのかと問いますが、ベッカは素直には認めません。

タイラーは自分を「無価値だと思ってる」とベッカに畳みかけます。ベッカは反論できないまま、自撮りしながら語ります。

父が最後にくれたのが葉書だけだったことが許せず、映画に挿し込もうと用意した、幼い頃の父親との映像は、使えば父を許すことになると封印します。

タイラーは祖父母がおかしいと言い続け、ベッカにそのことを突きつけます。「地下室に行くな」と言うのはおかしいし、何かを隠していると訴え、隠しカメラの設置を再び提案します。

祖父母が留守にしている時、カウンセリングで世話になったという、ステイシーが来訪します。「土曜日に立ち寄ってくれる」と言っていたが来なかったので、祖母の体調が悪いのかと心配で来たと言います。祖父母が留守だと知った彼女は、病院での噂は聞いているかと尋ねますが、ベッカは聞いていないはずと答えました。

その日の午後、祖父母の日常を撮影しようと思ったベッカが、祖母の笑い声のする部屋へ向かうと、そこにはロッキングチェアに揺られ、何も無い壁の方を向いて笑う祖母がいました。

ベッカが大丈夫か聞くと「暗闇さんがいるの」と意味不明なことをつぶやき、頭に巻いていたスカーフで、鼻と口を締めはじめてしまいます。

常軌を逸した祖母の行動に戦慄したベッカは、祖父のいる納屋へ行くと、祖父はライフルの銃口をくわえています。祖父は手入れをしているだけだとごまかします。

さすがのベッカもこの奇行には驚きを隠せず、リビングに隠しカメラを設置することを決め、タイラーと準備をします。

その晩、姉弟が寝静まるとやはり奇行がはじまります。しかし隠しカメラに気づいた祖母は、それと包丁を持って2階へ。姉弟のいる部屋のドアノブを回したり、扉を叩きますが、それ以上のことは何も起こらず、金曜日の朝を迎えました。

ベッカは録画を確認すると、包丁を持った祖母がカメラを元にもどす様子を見て、午後に帰宅する母を待ち、祖父母から距離をおこうと考えます。しかし、ベッカは母の“万能薬”が撮れていないとつぶやきます。タイラーがなんのことか聞いても答えません。

祖父母と距離をとるため、姉弟は外で遊んでいるふりをしますが、祖父から不意に声をかけられたベッカは、インタビューしてもよいかと聞いてしまいます。

祖父はかつて石炭工場で働いていましたが、ある夜勤の日、白くて黄色い目をした何かを見たと話します。しかし祖父のほかに誰もそれを目撃しておらず、人に話しても信じてもらえず、最終的には工場をクビになったと言います。

ベッカは最後に、まだ母を許していないのかと聞きます。祖父は黙ったまま、何も答えませんでした。

祖父のインタビュー録画を観たタイラーは、あの話はヤバいと言い、ベッカも祖父母共に精神病を患っていると考えます。

来訪者があり、2階の窓から外を見ると、ステイシーが祖母に対し怒っている姿を目にします。やがて祖父は何かを言いながら、3人で裏庭の方へと行きました。

ベッカはやっと、Webカメラから補修材を取り除きます。タイラーはステイシーが帰ったところを見たか聞きますが、定かではありませんでした。

外にいるベッカたちに、祖母が再び映画に出演してくれると、祖父が声をかけます。

ベッカは母ロレッタが家出した時のことを、あくまで「誰か」の物語として語り、ロレッタが夫の裏切りにあい、両親を恋しがり、寂しがっていることを伝えます。そして、もしもその娘の母親の立場だったらどうするかと質問すると、祖母は「お前のことを許すわ」と涙ながらに言います。

そして、ベッカは祖母の「許す」という言葉が、母ロレッタの“特効薬”だとタイラーに教えます。

(C)Universal Pictures.

祖父母が散歩に出かけると、姉弟は帰宅した母にスカイプを繋ぎ経緯を話し、鶏小屋の前にいる祖父母をWebカメラで映します。

しかし、映し出された両親を見た母ロレッタは「2人は別人だ」と言い、本物の両親はどこにいるのかと不安で顔色が変わっていきました。母は近所の家に逃げるよう指示しますが、そこに偽の祖父母が戻ってきて、今夜は“さよならゲーム大会”をしようと提案します。

食後の片づけを済ませ、姉弟は外の映像を撮りに行こうと裏口のドアを開けると、木にぶら下がったステイシーの首吊り死体を見てしまいます。

偽祖父は「ゲームは“若者VS老人”だ」と言いながらドアを閉めると、姉弟をリビングに連れていきます。そしてゲーム大会が始まりますが、ベッカはバッテリーが切れそうだと嘘をつき、地下室の映像を撮りにいきます。3人で続きをしますが、今度は偽祖父が、“失禁”してしまい中座をし、祖母にも異変が出てきました。

ベッカは地下室に本物の祖父母を探しますが、そこで祖父母の写真と血の付いたハンマー、「メイプル・シェイド病院」とプリントされた患者用パジャマを見つけます。

さらに物色すると、ベッカは祖父母の遺体をみつけます。やがてパニックに陥るベッカの前に「偽の祖父」ことミッチェルが現れ、孫たちの訪問と再会の話は、姉弟の本当の祖父母から聞いたと語りだします。

その話題は、「偽の祖母」ことクレアの妄想に火をつけたと言うミッチェル。クレアは過去に子どもをカバンに詰め、池に投げ入れるという事件を起こしていたのです。

ベッカはミッチェルに捕まり、2階の部屋へ閉じ込められます。部屋の中にはクレアがおり、ベッカに襲いかかり追い詰めます。

その時、ベッカは嫌いな鏡で自分の顔を見ます。そして背後からクレアに襲われて鏡が割れると、ベッカは破片を持ち格闘。クレアに首を絞められたベッカは、ガラスの破片で彼女を刺し、扉のノブを叩き壊して脱出します。

一方、ミッチェルは硬直しているタイラーに「お前は菌が苦手だったな」と、汚物のついたオムツを顔に擦り付けます。そこに脱出してきたベッカが、ミッチェルに背後から飛びかかり、タイラーに逃げるよう叫びます。

姉の姿を見たタイラーは突然タックルを思い出し、ミッチェルにタックルすると、覚醒したように繰り返し、ミッチェルを気絶させました。そして2人で外へ逃げ出すと、そこにはパトカーとロレッタが駆けつけており、姉弟は無事に母ロレッタと再会をしました。

ロレッタはカメラの前で、15年前、口論の末に立ちはだかる母を殴ってしまい、それに激怒した父が彼女を殴り、そこで記憶が止まったままだと語ります。両親はロレッタに歩み寄ろうとしましたが、意地になって拒否をしたのは彼女だったのです。

ロレッタはベッカが母の許しの言葉を撮るため、祖父母の元に行ったと気づき、自分が立ち直るために必要な“特効薬”は、目の前にあると話します。

そして、父親を許せないでいるベッカに「怒りは忘れるべき」と諭します。母の想いを理解したベッカは、父へのわだかまりを忘れることにしました。

映画『ヴィジット』の感想と評価

(C)Universal Pictures.

『ヴィジット』は、姉のベッカが記録映画を撮るという、POV形式の映画でした。撮影者の目線に沿ってストーリーが進み、老いた祖父母の日常を通して心から母の幸せを祈る、子供の気持ちを映しだしていました。

しかしカメラが映し出すのは、それだけではありません。祖父母が狂気に飲まれてしまった偽者と入れ替わっていた……そんな怖ろしい展開です。

何が恐ろしいのか? それは「老人だから」の一言によって目の前の現実からの逃避が続く中で、狂気は着々と肥大化し現実を侵食してゆく様を、撮影者であるはずの姉弟さえも置き去りにし、カメラの眼はただ淡々と映し続けているからです。

クレアの願いを叶えるために、ミッチェルはロレッタの両親を殺害します。それは狂気に飲み込まれてしまった世界で育まれた、歪んだ愛が起こした悲劇でした。

ベッカが語った「フレームの外を想像させるような画」は、なりすまし老人の精神疾患と過去、ベッカとタイラーの父への思い、ロレッタが抱えてきた両親への後悔などにそのまま当てはまるのです。

“怒り”は後悔をもたらす感情

ロレッタは19歳という若さゆえに、両親の忠告よりもコリンを恋焦がれる思いが勝り、感情的な争いの末に家を出ます。“目で女の姿を追う”という両親のコリンに対する洞察力は当たっていて、結婚10年後には、他の女と駆け落ちされてしまいます。

ロレッタが放った“怒り”は次第に意地に変わり、両親から「ほれ見たことか」と思われることが許せなかったのでしょう。

両親へ放った怒り、コリンへ放った怒りは時間を経て、両親を死に追いやり、大切な子供たちを危険にさらしました。

ロレッタがベッカを諭した際の「怒りは忘れるべき」の言葉は自らにも深く刺さるほどに重いものであり、同時にこの親子にとっての人生を切り開く“特効薬”になりました。

“元・役者”の車掌と医師のセリフの意味

本作には、「役者だった」という車掌と医師が登場しました。車掌は「私は侮辱され、告発され、中傷の毒のヤリで……」と何かのセリフをつぶやきます。既存の芝居にありそうなセリフですが、これはシャマラン監督が受けてきた、実体験を象徴しているのかもしれません。

シャマラン監督はカメオ出演をすることで有名ですが、本作では「登場人物の“セリフ”の中で、自分を登場させたのでは?」と考えられます。

医師が言った「人生は歩き回る影法師、哀れな役者」……これはシェークスピアの有名な戯曲「マクベス」に出てくるセリフです。

“人生とはわずかな灯が映し出す影法師が、無意味に歩きまわるようなもの。人ははかないものを大事にとらえては、右往左往している”

多くの人々はありきたりな日常生活を送り、その中でささやかな刺激を求めながら、時々起こるアクシデントを楽しんでいる。このことを監督は、限られた条件と史上最低の予算、何もかもがギリギリの中で、確立できた演出をします。オーディションで選ばれた無名の役者の演技も、別の意味で緊張感をもって演じ、それが作品に落とし込まれていました。

まとめ

(C)Universal Pictures.

映画『ヴィジット』は苦悩を抱えた親子が、思いがけない事件の中で、ショックを受けながら人生の立て直しをするストーリーでした。また、シャマラン監督が語った“原点回帰”の作品でもありました。

では、監督にとっての“原点回帰”とは何だったのでしょう?

実はシャマラン監督は、少年時代に両親からスーパー8カメラ(8ミリフィルムカメラ)を与えられたのをきっかけに、映像を撮る世界に入ったと言います。つまり『ヴィジット』に登場したベッカは、少年時代のシャマラン監督が重ねられているのです。

「POV」という撮影者の目線で撮られ、監督を再び“スリラー映画の名手”として押し上げた『ヴィジット』は、まさにシャマラン監督の“原点回帰”への想いが込められた作品といえるでしょう。

シャマラン監督もまた、発想を蓄えインモフィリア星に出発しているのかもしれません。

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