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Entry 2021/01/30
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映画『ヴィランズ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。恋愛ラブストーリーとスリラーのドキドキはいつだって相性抜群のコミカルさを生む|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー15

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第15回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第15回は、ダン・バークとロバート・オルセンの共同監督で贈るコメディスリラー映画『ヴィランズ』です。

フロリダでの生活を夢見た若いカップル、彼らは現金欲しさからスタンド強盗に入りますが、なんと逃走する車が途中でガス欠。その後、偶然逃げ込んだ家の住人は、訳あり夫婦が住んでいたから、さあ、大変!

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の恐怖のピエロ・ペニーワイズを演じたビル・スカルスガルドと、Netflix映画『TAU/タウ』の主人公ジュリアを務めたマイカ・モンローが、陽気でおバカな愛すべきカップルを演じています。

相対する夫婦役に、ドラマ『バーン・ノーティス 元スパイの逆襲』のジェフリー・ドノヴァン、『スウィート17モンスター』のキーラ・セジウィックが、サイコパスな中年夫婦を務めます。

B級映画らしいコンパクトな設定を上手に活かした構成で、キャスト陣の確かな演技力が光る、コミカルなスリラー映画『ヴィランズ』をご紹介します。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『ヴィランズ』の作品情報


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

【公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Villains

【監督】
ダン・バーク、ロバート・オルセン

【キャスト】
ビル・スカルスガルド、マイカ・モンロー、キーラ・セジウィック、ジェフリー・ドノヴァン、ブレイク・バウムガルトナー、ノア・ロビンス、ダニー・ジョンソン

【作品概要】
「IT イット」シリーズのビル・スカルスガルドと『TAU/タウ』のマイカ・モンローが主演を務め、恐ろしい夫婦の家に侵入した強盗カップルを描いたスリラーコメディ。

夫婦役にテレビシリーズ「バーン・ノーティス」のジェフリー・ドノバンと『ポゼッション』のキーラ・セジウィック。

映画『ヴィランズ』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

馬と鳥のマスクを被った恋人同士のミッキーとジュールス。彼らは手にした銃とバールをチラつかせ、無計画で行き当たりばったりな強盗として、ガソリンスタンドに押し入っていました。

手馴れていないミッキーとジュールスですが、レジから現金を手にして、喜び勇んで夢のフロリダでの生活へと逃亡を開始します。

しばらく、車通りのない寂しい山道を運転していると、ミッキーとジュールスの乗車した車はガス欠となってしまいます。

ミッキーはガソリンスタンド強盗として逃げて来たのに、間抜けなガス欠という事態に憤ります。

そこでジュールスは機転をきかせてミッキーをなだめていると、偶然にも、道の先に民家の郵便受けを見つけました。

なんと、奥まった森の先には孤立した一軒家があることに気付いたのです。

ミッキーとジュールスは、その屋敷にあるガレージの車を見つけ、その後、玄関のドアを強引にバールでこじ開けて侵入に成功。

家主は留守であったため、2人は車を盗もうと鍵を探しますが見つかりません。そこで良いアイデアを捻るために薬物を摂取し、頭をフル回転させると、ガソリンのみを取り出すことを思いつきました。

ガソリンを持ち運ぶガス缶を探しに地下室へ降りていくと、そこには柱に鎖で足を繋がれた少女がいました。

優しいジュールスは汚く惨めな姿の少女を心配して、必死に安心するように話しかけるのですが、一方の少女は口を閉ざすばかりでした。

ミッキーとジュールスは、車の鍵のことよりも少女の鎖を外す道具を探そうと1階に戻り、キッチンなどを物色していると、そこに帰宅して来た家の所有者のジョージとグロリア夫妻と遭遇してしまいます。

銃を手にするミッキーとジュールスは、地下に少女がいた理由を尋ねると、ジョージは落ち着いた様子で、娘のしつけのために閉じ込めていたことを説明します。

しかもジョージは、すぐにミッキーとジュールスが逃亡中の身だと見抜くと、ある提案を持ちかけます。少女のことは忘れて車だけ手に入れてこの場から立ち去ることを勧めたのです。

しかしジュールスは少女のことを思い、拒否。ミッキーも仕方なく申し出をはねのけます。そしてミッキーは、ジョージに銃を突き付けて地下室の少女のいるところへと向かい、鎖を外させました。

ミッキーは足につけられた鎖から解放された少女の肩を抱き、一緒にここから逃げようと話しかけますが、逆にその手に噛みつかれてしまいます。

その隙に、ジョージにも殴られたミッキーは、そのまま気を失ってしまいます。その後、目を覚ましたミッキーはグロリアの寝室で、ベッドに手足を縛り付けられていました。

グロリアが音楽をかけながらバスルームからランジェリー姿でミッキーの前の現れ、魅惑的な踊りを見せながら縛り付けられた彼を誘惑をしてきますが、グロリアはミッキーが勃起していないことに怒り、彼女は一方的に辱めを受けたと動揺を見せます。

しばらくして、再びグロリアがミッキーのところにやって来ます。すると機転を効かせたミッキーは「ママ」とグロリアを呼び謝罪します。

最初は緊張したから興奮してできなかったとミッキーは告げ、彼の方からキスを求めてグロリアを誘惑します。そして彼女に触れたいとミッキーは、ベットに縛り付けた手錠を外すように促します。

興奮の絶頂を期待したグロリアは言われるがまま手錠を外すと、ミッキーの顔色が変わり、彼女を身体を突き飛ばします。

ミッキーがその場から逃げ出し、玄関ドアの前に立つと、銃声が響き渡ります。2階の廊下にはジョージが立っており、再び銃を撃ちミッキーの足を貫通しました。

地下室に連れて行かれたミッキーは、柱に後ろ手にされていたジュールスと同じように縛り付けられました。

ミッキーとジュールスはお互いの様子に幾分か安心をするのもつかの間、ここから脱出を思案します。

そしてミッキーはジュールスの舌にあるピアスを取り、それを使って手錠の鍵を開けることを提案します。

しかし、痛いのは嫌だとジュールスは自分自身で外すことを拒否しますが、ミッキーに説得を促され、彼が口移しで外すことを手伝いました。

それを同じ地下室にいた少女はじっと見つめていましたが、外した瞬間、痛そうに顔を背けました。

ミッキーは手に入れたピアスでジュールスの手錠を外しますが、一方でジュールスはミッキーの手錠を外す前にピアスを誤って落としてしまいます。

仕方がない事態に、ジュールスは独りで外部に助けを求めに行くこととなり、少女スイートパイの提案で見つけた洗濯シュートから脱出を試みます。

地下室にやって来たジョージは、ジュールスが逃げ出したことに怒り、ミッキーを痛めつけ、どこにいるか問いただします。

ミッキーはジョージに嘘をついて、ジュールスはすでに家を出おり、ミッキーが待ち合わせの1時間に来なかった場合はすぐに警察に行くことを伝えました。するとジョージはミッキーを解放することに同意します。

一方のジュールスは、2階にあった子供部屋に一端身を隠すと、ベビーベットで眠っていた赤ん坊のイーサンを見つけます。そして、毛布に包まれた中身を見ると、頭が陶器で作られた人形であることを知ります。

グロリアが部屋にやって来ることに気がついたジュールスは、クローゼットに隠れます。そして、その隙間から部屋を覗き見ると、グロリアがイーサン陶人形をまるで生きた我が子のように接する異常な姿を目にします。

ジョージに呼ばれたグロリアが子供部屋を後にし、ジュールスは危機を間逃れます。

一方のミッキーは、ジョージから警察署には行かないことを条件に解放されるところでした。ミッキーを玄関まで見送ると、地獄で会おうとジョージは笑って声をかけました。

2階の子供部屋にいたジュールスは、1階の玄関にいたミッキーとジョージ会話を耳にします。ジョージがミッキーを解放するのではなく、殺そうと勘違いした彼女は反撃に転じます。

ジュールスは2階の踊り場に出て、手にしたイーサンの陶人形を宙吊りにして1階に落下させるぞと脅し、ミッキーの解放を要求します。

激怒したグロリアがジュールスに向かって銃を撃ち、驚いたジュールが2階からイーサンの陶人形を落としてしまい、1階の床でその陶器の頭が砕け散ります。

以下、『ヴィランズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ヴィランズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

ダイニングにある食卓テーブルの椅子に座らされたミッキーとジュールスは、ガムテープで括られていました。一方キッチンにいたグロリアはディナーの支度をしています。

食事の準備を終えたグロリアは、ミッキーとジュールスに手作りのミートパイを差し出します。ジョージは妻は何か嫌な出来事があった時は、それを忘れるだけの豪華で美味しい食事が用意されることを、2人に伝えました。

ジョージの薦められミッキーとジュールスは食事を口にします。そして彼は、妻グロリアがいつも出産することを楽しみにしていましたが、彼は彼女に子どもを与えることが出来なかった後悔の念を述べました。

そこでジョージとグロリアは少女を誘拐して自分たちの子どもとして育てましたが、単に少女の存在はグロリアには決して持つことができなかった子どもを思い出させるだけであったと説明します。

その際にグロリアは、少女を殺害しようとしましたが、しかしジョージは、少女を地下室に閉じ込めるほうが慈悲深いと考えたのです。

今度はグロリアが身の上話をはじめました。彼女は幼い頃に母親と離別、亡くなった母の最後の贈り物が、陶人形の「イーサン」であったと…。すると思い出した怒りに打ち震えました。

ミッキーとジュールスは突然気分が悪くなります。グロリアの用意したミートパイの中には、2人が強盗で使用した鞄に入っていた薬物を大量に混ぜていたのです。

ミッキーとジュールスが失神して意識を失うと、ジョージは「君たちみたいなクズが死んでも誰も気に留めない」と言って、グロリアと2人で笑い出します。

その時、玄関のドアのチャイムが鳴り、警察官が訪ねて来ました。ジョージは銃を隠し持ち、玄関のドアを開けて対応に出ました。

警察官は近隣のガゾリンスタンドで強盗事件が発生し、車が家の近く乗り捨てられていた事実を知らせてくれました。しかし、警察官は目ざとく、ドアがバールか何かで開けられた形跡を見つけます。

不審を感じ取った警察官は玄関先に入り、家の中を見せて欲しいと告げました。そしてダイニングルームに、警察官とジョージが入ると、そこにはミッキーとジュールスは居ませんでした。

グロリアが2人をトレーニングルームに押し込んで隠した後だったのです。それでも警察官は他の部屋を見回り、地下室への階段を降りて向かいます。あの少女が監禁されて居いた場所です。

地下室への階段を降りていった警察官ですが、所有していた通信機が鳴り、2人組の強盗犯が逮捕されたと報告が入り急行することになります。

一方ジュールスは、摂取させられた薬物から目覚めし、部屋の隅に置いてある自分たちのバッグを見つけます。

思うように身動きが効かないジュールスですが、床を這って行き、バックの中から薬を取り出して吸引します。

ジュールスは覚醒して力を取り戻します。そして気を失っていたミッキーの鼻に薬を同じように吸わせると、彼も勢いよく目を覚ましました。

警察官をうまくやり過ごしたジョージとグロリア安堵するのつかの間、ミッキーとジュールスがいるはずのトレーニングルームには2人の姿はありませんでした。

彼らは開いている窓に近づき、外を見るとジュールスの靴を庭先で見つけます。

ジョージは、なぜ逃がしたかとグロリアを怒鳴ります、そして、2人は家の外に出てミッキーとジュールスを探します。

しかし、ミッキーとジュールスは家を脱出していたのではなく、ジョージとグロリアを時間稼ぎで騙していただけでした。

それはミッキーとジュールスが、地下室の少女を連れ出そうと考えていたからです。少女の足かせとなっていた鎖の鍵を外し、一緒に行くか尋ねると頷きました。

一方のジョージとグロリアは、ミッキーたちが逃げ出した原因がきっかけで言い合いになります。しかし、ジョージは言いすぎたとすぐに反省して謝ります。

そして、プロポーズをして付き合い始めたときのように、今後は2人だけで生きていこうと誓い合い、自宅に遠くに旅に出ることを決めました。

屋敷の車庫ではミッキーとジュールスと少女が車に乗り込み、脱出して逃げようとしていましたが、そこでジョージが家に戻り、車の鍵を手にしようとすると、鍵がないことに気がつきます。

ジョージは、車庫にあるシャッターの外で車の前に立ちはだかると、車に乗ったミッキーたちのに銃を向けます。ミッキーは死ぬ覚悟で車を猛発進させました。

ジョージを跳ね飛ばした代わりに、ミッキーは胸を撃たれて亡くなってしまいます。ジュールスは少しの間、ミッキーのためにいつものように長い髪を顔にかけ、サヨナラの儀式を行いました。

しばらくするとジョージは意識を取り戻し、顔中深手の傷だらけになりながら、ジュールスを絞め殺そうとします。すると、少女が落ちていた拳銃を拾い上げ、ジョージの頭を打ち抜きました。

自宅から旅の支度を終えたグロリアが現れますが、倒れているジョージに気がつき駆け寄ります。そしてグロリアは血に染まった夫を、まるで息子のようにいつまでも抱き続けました。

それを後にしたジュールスと少女。2人は歩き出します。彼女たちは生きていくことを決意しました。山道から通りに出て歩き続けます。

そこに1台の車が通りかけるとヒッチハイクして、ミッキーと一緒に行くはずであったフロリダに向かいます。

映画『ヴィランズ』の感想と評価


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

周囲が見えないからこそ「人」は愛し合える

本作『ヴィランズ』は、若いカップルと中年夫婦がシンプルに対比されていることが最大の魅力であり、そのいずれもが「バカ」がつくほど、お互いを愛し合い必要とする。実にお似合いのベストパートナーです。

これは恋人であっても、夫婦であっても本作では同じなのでしょう。

それをリアルではないと笑うのか。または少し気持ちが分かると微笑ましいのか。まるで「観客の幸せのリトマス試験紙」のようでもあります。

言うなれば、思わず「バカップル」だと観客に思わせた瞬間、本作の演出の勝利だとも言えるでしょう。

それがジャンキーであろうが、サイコパスであろうが、善人悪人も一切関係はありません。あるのは「バカップル」だと思わせてしまうことが、あらゆる笑いの引き金になっています。

これは現実の世界でも同じなのですが、他人から見た愛し合っている当事者の2人の姿は、第三者から見れば蚊帳の外の他人ごとですし、それは2人だけの“ラブラブショー”なのですから。

そんなきっかけとなるのが映画の劇中冒頭で、ビル・スカルスガルドが演じたミッキーと、マイカ・モンローがジュールスの登場した際に見ることができます。

強盗マスクの「鳩とユニコーン」の意味

ガソリンスタンドに押し入る強盗として2人は登場しますが、顔が知られないように動物のラバー性のマスクを被っているのですが、それが「鳩」と「ユニコーン(一角獣)」でした。

これがよくあるようなゴリラやゾンビ、あるいはピエロではないことで、観客はミッキーとジュールスに親近感を抱きます。きっとこの2人は極悪な強盗ではないと。しかも鳩は平和の象徴であり、ユニコーンは純潔の象徴です。

また、犯罪を犯してる最中の所作も手馴れていなく、間抜けだったことで親近感は増幅されていきます。

その上で諸説ありますが、ユニコーンとは困難を越えて「夢を叶える」「目標を達成する」という意味合いもあるようで、勘の良い観客であれば、本作のラスト・エンディングは予想つく方もいたのではないでしょうか

ロングヘアーによる「個室カーテンルーム」


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

さて、2人だけの“ラブラブショー”と申し上げましたが、ミッキーとジュールスの印象的なルーティンワークがありました。

これは推測ですが、きっと、監督のいずれかが実生活のプライベートで味わった行為をヒントにしたものなのかも知れません。

パニック状態になるミッキーを落ち着かせるために、ジュールスがミッキーの上で女性上位の形になり、自身の金髪ロングヘアーで顔と顔を付き合わせる空間を作る儀式はオシャレでした。なかなかに羨ましくも微笑ましい見せ場と言えるでしょう。

ミッキーとジュールスは心底憎めない善人のバカップル。そしてジョージとグロリアは凶悪なバカ夫婦でしたが、基本的にはいずれのペアも女性が主導的な役割を担い、男性がそれに従うような紳士的な要素を持っていました。

グロリアがミッキーを性的に誘惑はしますが、あくまで「ママから見た息子」という意味が大きいでしょうし、本作ではジュールスで誇張して描いていますが、男性を優位に求めるのは女性であるとされていました。

劇中の終盤で揉めたジョージとグロリアは、かつての若い頃のように王子様のごとく片膝を付きプロポーズの誓いをします。また、ミッキーは少女に謝罪する際に同様のポーズでします。

言うなれば、本作『ヴィランズ』の世界観は、女性の方が男性よりも生命力が旺盛であり、目標に成し遂げる存在として生き残る姿を描いています

まとめ


(C)2019 Villains Pictures, LLC. All Rights Reserved.

映画『ヴィランズ』は、小気味の良い小品の映画として抜群の面白さを持った作品です。

かつて、1976年に巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の最後となる作品で、キャストにカレン・ブラックとブルース・ダーン出演した『ファミリー・プロット』というサスペンス・コメディがありました。

この作品は巨匠が全盛期をから力を無くした作品として位置されるものですが、個人的にヒッチコック監督が肩の力を抜いて次なるステージに至った映画だと感じてるもので、小品として秀逸です。

参考映像:『ファミリー・プロット』(1976)

もちろん物語の内容は本作『ヴィランズ』とは異なりますが、バカカップルという点ではある意味共通しています。そのような映画の持つ豊かなユニークさを知るヒッチコック監督ファンには『ヴィランズ』は、とてもお薦め作品です。

親しみのわく若いバカップルとサイコパスな中年夫婦という点だけでも「ヒッチコック劇場」的な要素だとも言えないでしょうか。

しかもそれをサスペンスコメディではなく、現代的なブラックユーモアのコメディとしている。そのうえでサスペンスと最も相性の良いラブストーリーを組み合わせたことは、ヒッチコック監督なら好んだ題材かもしれません。

シンプルな限定的な設定と、直線的な物語の運びは映画のお手本な面白さ。それを約90分足らずに見事にまとめた映画と言えます。

また、夢見るフロリダはどこか懐かしいロードムービーや70年代の匂いを感じさせてくれる秀逸さに満ちています。

映画好きなら『ヴィランズ』を観ると、しばし至福を覚えることでしょう。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら





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