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Entry 2021/12/21
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ネタバレ感想:仮面ライダー ビヨンドジェネレーションズの内容評価と結末のあらすじ解説。“100年目の変身”で描く家族と約束の物語|邦画特撮大全101

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第101章

今回の邦画特撮大全は、映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』(2021)を紹介します。

“仮面ライダー50周年記念映画”と銘打たれた『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』は、2021年12月現在放送中の『仮面ライダーリバイス』、仮面ライダーシリーズの前作『仮面ライダーセイバー』が共演するクロスオーバー作品です。

物語のキーとなる親子を中尾明慶と古田新太が演じる他、数多くのアニメやナレーションで知られる声優・立木文彦の顔出し出演、玄田哲章、松本梨香、中尾隆聖らベテラン声優が声を担当するゲスト怪人、そして藤岡弘、の長男・藤岡真威人が父と同じ本郷猛/仮面ライダー1号を演じるなど、多方面にて話題に満ちた作品となっています。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』の作品情報


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

【公開】
2021年(日本映画)

【原作】
石ノ森章太郎

【監督】
柴崎貴行

【脚本】
毛利亘宏

【キャスト】
前田拳太郎、木村昴、内藤秀一郎、日向亘、井本彩花、濱尾ノリタカ、小松準弥、浅倉唯、関隼汰、八条院蔵人、山口貴也、川津明日香、青木瞭、生島勇輝、富樫慧士、岡宏明、市川知宏、アンジェラ芽衣、庄野崎謙、番家天嵩、知念里奈、田邊和也、映美くらら、戸次重幸、藤岡真威人、上田耀司、松本梨香、森川智之、中尾隆聖、玄田哲章、関智一、立木文彦、中尾明慶、古田新太

【作品概要】
仮面ライダー50周年記念映画として製作されたクロスオーバー作品。2021年12月現在放送中のシリーズ最新作『仮面ライダーリバイス』と前作『仮面ライダーセイバー』からメインキャストが総出演しています。

監督は仮面ライダーシリーズ・スーパー戦隊シリーズで長く活躍し映画『死神遣いの事件帖』(2020)を手がけた柴崎貴行。脚本は劇団少年社中の主宰で『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017)のメインライター毛利亘宏。

映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』のあらすじとネタバレ


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

2071年、世界は悪魔によって支配され、悪魔たちは上空のデビルシティに住み、生き残った人類は下級悪魔があふれる下界で奴隷とされていました。

悪魔たちから逃げている男・百瀬龍之介は謎の老科学者に助けられます。老科学者が作り出した変身ベルト“サイクロトロンドライバー”を使って、龍之介は精神体のみ悪魔が支配する以前の現在──2021年へとやって来ました。

悪魔崇拝組織“デッドマンズ”はある古い研究所に封じられていた悪魔・ディアブロを復活させます。さらにディアブロは配下である4体の怪人クリスパーも召喚します。

五十嵐一輝/仮面ライダーリバイの実家“しあわせ湯”では、集客キャンペーンとして「親子ハッピーウィーク」を企画していました。そこを訪れた一組の親子は、父の仕事の都合で遊ぶ約束が潰れ揉めているようです。

一輝がその父親の忘れ物──社員証と古い新幹線の乗車券を届けに行くと、未来からやって来た龍之介が現れました。さらに3人をディアブロが強襲します。


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

一輝は悪魔バイスと共に、仮面ライダーリバイ、仮面ライダーバイスに変身。また精神体のみの龍之介も、その父親の体を借りて“仮面ライダーセンチュリー”へと変身! 

仮面ライダーセンチュリーはディアブロを退けますが、その後暴走してしまい一輝とバイスを襲います。しかし事態を察知した神山飛羽真/仮面ライダーセイバー、新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズが助太刀に入ったことで、なんとかその場は収まりました。

一方、世界各地ではディアブロの配下であるクリスパーが活動を開始。ヒミコ・クリスパーが南極、クフ・クリスパーはエジプト、エジソン・クリスパーはイースター島に出現します。

ソードオブロゴスの剣士たちは仮面ライダーに変身しクリスパーたちに対抗しますが、歯が立ちません。さらにクリスパーの現れた場所には、巨大な光の柱が出現します。

果たしてディアブロの目的とは──。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

百瀬龍之介の息子は、一輝が忘れ物を届けた相手・百瀬秀夫でした。

精神体のみの龍之介は自身と同じ遺伝子を持つ秀夫の力を借りなければ、仮面ライダーセンチュリーには変身できません。しかし秀夫は龍之介を「家族を捨てた男」と拒絶してしまいます。

政府直属の特務機関“フェニックス”の科学者ジョージ狩崎によれば、ディアブロは1971年に発見されたディアブロスタンプに封じられていた悪魔で、悪の秘密結社ショッカーによって研究されるもその凶悪さから再封印されたといいます。

そして百瀬龍之介は秘密結社ショッカーの科学者であり、本郷猛/仮面ライダー1号の改造手術にも関与していました。元々は遺伝子研究の科学者だった龍之介は、研究に行き詰っていた頃にショッカーにスカウトされたのです。

のちに翻意しショッカーからの脱走を試みたものの、あえなく組織に捕らえられた龍之介は、家族へ危害を加えないことと引換にディアブロスタンプの被験者となりました。そして「再封印」にあたって大気圏外に投棄されましたが、宇宙船の墜落事故によって2071年の未来に辿り着いてしまったのです。

ディアブロの目的は世界各地の光の柱によって逆五芒星を作りだし、増幅したエネルギーを吸収することで完全体となることでした。フェニックスとソードオブロゴスは協力し、ディアブロの野望を打ち砕くため活動を開始します。

ソードオブロゴスの剣士たちと門田ヒロミ/仮面ライダーデモンズは光の柱の破壊へ。飛羽真と倫太郎、ユーリ/仮面ライダー最光、五十嵐大二/仮面ライダーライブと五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ、バイスの6人は龍之介の肉体を守るため2071年の未来へ。そして一輝と龍之介は秀夫の説得に向かいます。

2071年の未来に到着した6人。龍之介にベルトを託した老科学者=未来のジョージ狩崎の協力を得て、クローンライダーに変身! ディアブロ配下のデビルライダーたちと戦います。


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

一方、一輝と龍之介は秀夫の説得に失敗。さらに逆五芒星が完成し、ディアブロはその中心地・富士山に姿を現します。一輝は2人を残しディアブロと戦いますが、その強さに圧倒されてしまいました。

秀夫は50年前に龍之介と一緒に乗ると約束した新幹線の乗車券を投げ捨てます。しかし龍之介もその乗車券を大事に取っていました。2人は「今度こそ新幹線に2人で乗る」と約束し、ディアブロとひとり戦う一輝の元へ駆けつけ、仮面ライダーセンチュリーへ変身!

説得が成功したと知り、未来へ行っていた飛羽真たちも現代へ。

飛羽真とバイスは一輝たちのいる富士山へ、大二とさくら、ユーリは世界各地で戦うソードオブロゴスの助太刀に向かいます。そして4体のクリスパーを撃破し、デッドマンズを撃退。

さらに仮面ライダーリバイと仮面ライダーバイス、仮面ライダーセイバー、仮面ライダーセンチュリーは巨大化したディアブロを討ち果たします。

戦いは終わり未来が変わったことで龍之介は消滅。龍之介は最後、秀夫に彼の息子・真一との約束を守ってほしいと遺します。

戦いを終えた仮面ライダーたちはしあわせ湯で勝利を祝し、秀夫は息子・真一との約束を守り新幹線に乗って釣りへ出かけます。秀夫の手には、50年前の乗車券が大事に握られていました。

映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』の感想と評価


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

第1作『仮面ライダー』(1971)の放送から50年、『仮面ライダークウガ』(2000)によってシリーズが復活・継続してから21年。仮面ライダーシリーズは今や親子2世代どころか親子3世代に亘って楽しめるコンテンツとなりました。

本作『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』はまさに「家族」を描いた作品です。悪魔が支配する未来からやって来た父親と、現代で今は自身も父親となった息子の50年ぶりの再会と和解、親子一緒に変身する仮面ライダーセンチュリーが物語の主軸となっています。


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

しかしあくまで本作は、仮面ライダーリバイスと仮面ライダーセイバーの共演映画です。そもそも2021年12月現在放送中の『仮面ライダーリバイス』も、主人公の五十嵐一輝と弟・大二、妹・さくらの3人が仮面ライダーであり、実家の銭湯である“しあわせ湯”が主な舞台となっているなど「家族」を描いている作品であることは忘れてはいけません。

また『仮面ライダーセイバー』には尾上亮/仮面ライダーバスターという子連れの仮面ライダーが登場し、本作でも息子のそらと一緒に登場しました。さらにテレビシリーズでは決着が描かれなかった新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズと須藤芽依が「家族」になるのかにも言及がなされます。

そして本作のもう1つのキーワードが「約束」です。


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

古田新太演じる百瀬秀夫が息子と遊ぶ「約束」を仕事で潰してしまうこと、百瀬龍之介と百瀬秀夫が50年前に果たせなかった「約束」。未来の世界へ行く前に五十嵐一輝とバイスがした「約束」……「約束」は、『仮面ライダーセイバー』の重要なテーマでした。劇中でも『仮面ライダーセイバー』の主人公・神山飛羽真が約束について言及する場面があります。

このように本作は映画に登場する新ライダー“仮面ライダーセンチュリー”を中心に据えてはいますが、そこへ『リバイス』『セイバー』の2作がそれぞれに持つ大切なテーマや要素を巧みに編み込まれています。

『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』は50周年記念のお祭り映画だけではなく、『仮面ライダーセイバー』と『仮面ライダーリバイス』の劇場作品としてもしっかりと成立しているのです。

まとめ


「ビヨンド・ジェネレーションズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

今年2021年春で誕生から50周年を迎え、いまや親子2世代、親子3世代に亘って楽しめるシリーズとなった仮面ライダーシリーズ。

未来のライダー“仮面ライダーセンチュリー”を中心に、2071年・2021年・1971年の百年に亘る壮大な物語が展開しますが、『仮面ライダーリバイス』の「家族」、『仮面ライダーセイバー』の「約束」、それぞれの作品のテーマを最大限に活かした記念映画となっていました。

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