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Entry 2019/05/29
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NETFLIXおすすめ映画『ザ・サイレンス 』ネタバレ感想と評価。結末までのあらすじ紹介も|SF恐怖映画という名の観覧車51

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile051

普段の何気ない行動に制限を課すことで恐怖を生み出す「〇〇をしたら死亡」というジャンルの作品群は大ヒットを連発し、ホラー映画界では「いま最も熱いジャンル」とも言われています。

大ヒットの走りでもある『ドント・ブリーズ』(2016)では「音を出したら死亡」と言う静寂とハラハラ感が織り交じった物語が人気となり、翌々年には『クワイエット・プレイス』(2018)が同じ「音を出したら死亡」というジャンルを世界観にまで落とし込み大成功を収めました。

そして2019年、動画配信サイト「NETFLIX」が独占配信作品でついにこのジャンルに足を踏み入れました。

そんな訳で今回は、NETFLIXが贈る「音を出したら死亡」系映画最新作『ザ・サイレンス 闇のハンター』(2019)の物語のネタバレあらすじと感想をご紹介します。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『ザ・サイレンス 闇のハンター』の作品情報

【日本公開】
2019年(NETFLIX独占配信、アメリカ映画)

【原題】
The Silence

【原作】
ティム・レボン

【監督】
ジョン・R・レオネッティ

【脚本】
ケアリー・バン・ダイク、シェーン・バン・ダイク

【キャスト】
スタンリー・トゥッチ、キーナン・シプカ、ミランダ・オットー、ジョン・コーベット、ケイト・トロッター、カイル・ブライトコフ、デンプシー・ブリク、ビリー・マクレラン

【作品概要】
「死霊館」シリーズの『アナベル 死霊館の人形』(2015)の監督を勤めたジョン・R・レオネッティが製作したNETFLIX独占配信映画。

メインとなる父のヒューを演じたのは『ラブリーボーン』(2010)で助演男優賞にノミネートされた経験を持つベテラン俳優スタンリー・トゥッチ。

映画『ザ・サイレンス 闇のハンター』のあらすじとネタバレ

ペンシルバニアの未開の洞窟で岩を掘り進める調査団は、暗闇から謎の生物を外に放ってしまいます。

3年前、交通事故で祖父母と聴力を失った女子高生のアリーは、読唇術を始めとした驚くべき適応能力で日常生活を問題なく過ごせるほどになっていました。

聴力障害に理解がありながらも、他者と変わらずに接してくれる学友のロブとの仲を深めるアリーは、異変を感じ取りながらも家族といつも通りに過ごしています。

アリーが学校でいじめられている事を聞いた父のヒューは、彼女の事を心配し「1人で抱え込むな」とアドバイスをし、就寝します。

深夜、母に起こされたアリーはアメリカ全土を謎の生物が襲い始めたことをニュースで知ります。

「don’t make noise(音を立てるな)」と言うプラカードを持った女性が襲われる動画と、謎の生物が「音」を探知し攻撃をしかけているため、家に籠り静かにしているように、という政府からの報道が流れていました。

しかし、そもそも街全体が騒々しいことを理由に、アリー、ヒュー、母のケリー、祖母のリン、弟のジュード、叔父のグレンの6人と愛犬1匹は、車で襲撃情報の無い北方面に向かうことを決めます。

一方、タイムズスクエアの地下鉄では、電車内に隠れる乗客の中で赤子が泣き出してしまい、母親ごと外に出されます。やがて、地下鉄の奥からやってくる謎の生物の群れに母親の顔は恐怖に歪みました。

アリーたちは、グレンとヒューの2台の車で北上していきますが、道は渋滞となり前に進めなくなります。

タブレットで情報を集めるアリーは謎の生物が「べスプ」と呼ばれ、静かな洞窟の中で異常な進化を遂げた種であるという情報を見つけます。

渋滞にしびれを切らしたグレンの車を先導として、空いた山道を行くヒューたち。しかし、突然飛び出してきた鹿の大群に気を取られたグレンの車は崖の下へと落下し、ドアに足が挟まれ大怪我をしてしまいます。

ヒューは何とかグレンを助け出そうとしますが、ボロボロに歪んだ車のドアは開かず、グレンは拳銃を持ち自分を置いて先に行くようにヒューに命じます。

助けるための道具を見つけて引き返してくることを決めるヒューでしたが、車に乗った途端べスプの群れに襲われます。

ヒューたちのピンチに気がついたグレンは、拳銃を乱射しべスプを引き付けようとします。

車中で犬がべスプに対して吠え、その音でべスプが集まってくることに気がついたヒューは、犬を殺害し外へと放り出します。

グレンが力尽き、静かになった一帯。ヒューはべスプが音のみに反応する生物であり、視力が無いことに気が付きました。

喘息でありながら実は喫煙をしていたリンにライターを借りグレンの遺体を確認すると、ヒューは車ごと火を放ち、べスプをグレンの車に集めることに成功します。

その音に乗じ、一家は徒歩で北を目指します。

日暮れが近づき、泊まる場所を探すヒューは山奥にある一軒家の存在に気がつきました。

家の外にバリケードが張り巡らされたその家に近づくと、家の中から銃を持った女性が現れヒューに立ち去るように叫びます。

その叫び声にべスプが反応し、女性を襲撃。彼女は井戸に落ち、べスプに喰い荒らされることになりました。

バリケードには鈴が括り付けられており、バリケード内に入るために一家は土管の中を進みますが、最後尾のケリーがべスプに襲われ、足を負傷してしまいます。

父が重機を動かし陽動したためケリーの命は助かりましたが、ケリーの傷は深いものでした。

夜、アリーは地元に親と共に残ったロブとインターネット通話を行うと、両親は死亡しロブも危険な状況に置かれていることを知りますが、途中で通話が切れてしまいました。

翌日、アリーがタブレットで情報を集めていると、街ではカルト信者が人々を惨殺するなど恐ろしい状況になっていることを知ります。

元看護士であるリンの診断により、ケリーの傷が感染症を引き起こしかねないほど悪化していることが分かり、抗生物質の入手を余儀なくされたヒュー。

抗生物質を手に入れるため、ヒューとアリーの2人で街へと向かいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ザ・サイレンス 闇のハンター』のネタバレ・結末の記載がございます。『ザ・サイレンス 闇のハンター』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

街にたどり着いたアリーとヒューは医薬品店に入り、抗生物質を探します。

医薬品店内もベスプが巣食っており、ベスプは人や動物の遺体に卵を産み付けていることを知ります。

スプリンクラーを発動させベスプの群れを陽動した2人は、無事に医薬品店から出ることに成功しました。

帰路につこうとする2人の前に、牧師姿の男が現れます。彼は自身の主導する教団に入ることを求めますが、2人はそれを拒否。

去っていく2人を見て牧師は息を吐き出しますが、その口には舌がありませんでした。

一軒家に戻った後、何も受信しないテレビを見るヒューにアリーはCNNがたまに映ると言います。

CNNの報道によると、ベスプは寒さに弱く、北極圏で暮らす人々は無事とのことでした。

リンたちが玄関に集まっていることを知ったヒューは玄関前へ行くと、一軒家の玄関に先ほどの牧師が仲間を連れ外に立っていることに気がつきます。

牧師はヒューに再度の入信を求めますが、ヒューが入信を断ると牧師は次にアリーを求めます。

アリーを狙っていることに危機感を覚えたヒューが銃を向け脅すと、牧師たちは不敵な笑みを浮かべ帰って行きました。

夜、アリーは生き残っていたロブからチャットを通して北に避難所があることを知ります。

ちょうどその頃、一軒家に少女が訪ねてきていました。

幼い少女を見捨てるわけにもいかず、彼女を家の中に迎え入れたヒューでしたが、彼女の舌は切り取られており、さらに彼女の体や家の外中にスマートフォンが括り付けられていました。やがて、アラームが大音量で鳴り始めます。

アラーム音に惹きつけられ、ベスプが家の中に侵入。パニックになる一家をよそに、その騒動に乗じてアリーを攫おうと覆面の人間たちも家の中に侵入してきました。

アリーが連れ去られるのを防ぐため、覆面の人間を鷲掴みにしたリンが叫び、べスプを使い自らを犠牲にアリーを守ります。しかし、その後現れた大量の覆面の人間たちにアリーは再び攫われます。

奥から牧師が現れ、この騒動の元凶が牧師の一団であることを知ったヒューは怒りに震えます。

鎌や槍で武装した一家が牧師たちに決死の攻撃を試み、アリーを奪還し牧師を殺害。残った覆面の人間たちは散り散りに逃げていきました。

リンを失いながらも北に歩みを進め続けた一家は、雪の降る地区でロブを含めた生存者たちと合流します。

寒さに弱いベスプが寒さに順応するのか、それとも人間がこの状況を打開するのか。

先に進化した方が生き残るとアリーは考えるのでした。

映画『ザ・サイレンス 闇のハンター』の感想と評価

謎の生物の登場により、終わり始める世界を描いた「ポストアポカリプス」映画な本作。

ホラー映画を始めとしたこのような物語の作品では、登場人物の身勝手な行動に辟易としてしまいがちなのですが、本作では主人公たち一家の誰もが「家族のために全てを捨てることの出来る」人間であるため、その一貫とした行動に辟易とすることなく、物語に入り込むことが出来ます。

中でも一家の大黒柱である父のヒューのは魅力に溢れており、いかなるパニック状況においても冷静な判断力と家族のために犠牲になる思考を持ち続け、「理想の父親像」を劇中で体現しています。

「音を出したら死亡」系映画としての新アイデアも面白い部分が多く、特に覆面の人間たちが使った一家への襲撃方法は彼等の知的な醜悪さが見事に表現されており、意外性も抜群。

アリーを演じたキーナン・シプカも好演しており、他の作品の負けず劣らずの画力を持ち合わせた、2019年の「音を出したら死亡」映画の代表作となる1作でした。

まとめ

物語の設定上の類似点が多く、しばしば『クワイエット・プレイス』と比べられがちな本作。

ですが、『クワイエット・プレイス』では外敵の襲来によってもたらされた「崩壊後の世界」が描かれているのに対し、本作では「これから崩壊していく世界」が題材となっています。

細かな違いであれど、物語に「逃避行」という新たな要素が加わり、未来に対する絶望感は独特のものとなっていました。

俳優陣の名演技も冴えわたる『ザ・サイレンス 闇のハンター』を、ぜひNETFLIXで楽しんでみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile052では、『チャーリーズ・エンジェル』(2000)や海外ドラマ「スーパーナチュラル」シリーズを手掛けたマックGが製作したNETFLIX独占配信映画『リム・オブ・ザ・ワールド』(2019)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

6月5日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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