連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第9回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第9回は、2020年1月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開のジャッキー・チェン主演作『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』(2020)を、ネタバレ有で内容解説いたします。
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CONTENTS
映画『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』の作品情報
【日本公開】
2020年(中国映画)
【原題】
神探蒲松齢(英題:The Knight of Shadows: Between Yin and Yang)
【監督】
ヴァッシュ・ヤン
【製作】
アガン
【キャスト】
ジャッキー・チェン、イーサン・ルアン、エレイン・チョン、リン・ボーホン、リン・ポン
【作品概要】
太宰治や手塚治虫といった日本の文化人たちに影響を与えた、怪異短編集の最高傑作『聊斎志異(りょうさいしい)』の原作者として知られる清代中国の作家・蒲松齢(ホ・ショウレイ)。
彼をモデルにした主人公プウをジャッキー・チェンが演じ、邪悪な妖怪を封印する“陰陽の筆”を武器に大活躍するファンタジーアクション。
監督は、“中国第七世代の映画監督”と呼ばれる新鋭ヴァッシュ・ヤン、製作は、『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(2014)、『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』(2016)といった「西遊記」シリーズを手掛けたアガンです。
映画『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』のあらすじとネタバレ
はるか昔の中国。
妖怪の世界から人間たちを守っていた結界が破れ、妖怪たちが人間界へ押し寄せる事態が発生。
彼らを捕らえるために、凄腕の妖怪ハンターのプウが人間界に送り込まれます。
プウは小説家を装いながら、ワンヤオ、チューヤオ、ピピ、シンショウらお供の妖怪とともに、「陰陽の筆」の力を使って邪悪な妖怪たちを封印する日々を送っていました。
ある日、鏡の中の世界と人間界を行き来する魔女と、人間の魂を吸い取るシャオチンの妖怪姉妹による、人間の少女が誘拐される事件が多発します。
衛門府の見習い護衛兵のヤンフェイは、事件が妖怪の仕業であると推理しますが、上司の隊長に相手にされません。
そこで、ひょんなことから出会ったプウが妖怪ハンターと知り弟子入りを志願し、彼に事件の捜査を頼むのでした。
一方、町の知事の娘を誘拐し、彼女の魂を吸い取ろうとしたシャオチンは、チュイシャと名乗る男から妨害されます。
シャオチンは、「人間に戻してやる」とチュイシャに言われるも、娘の魂を吸い取り、逃亡。
逃げおおせたシャオチンは、その直後に鏡の魔女から、チュイシャを亡き者にしてやると告げられます。
チュイシャを大量の鏡で埋めつくした部屋へと誘い、襲い掛かる鏡の魔女。
チュイシャも必死で応戦しますが、鏡を活用する魔女の攻撃に苦戦します。
とどめを刺そうとする魔女の腕をシャオチンが制止したところで、魔女の所在を突き止めたプウの姿が。
闘いの末に魔女を魔法書に封印したプウは、気を失ったチュイシャを連れ帰り手当てをします。
意識を取り戻したチュイシャは、シャオチンを捕えようとするプウに協力を申し出ます。
人間の魂が吸えず、体が衰えていたシャオチンを追うプウたち。
あと一歩のところでシャオチンを封印しようとするも、彼女の身を案じたチュイシャに妨害され、取り逃してしまいます。
そこでプウは、改めて2人の関係を知ることに。
実はチュイシャは、元々は蛇の妖怪ツァイチェンでした。
影の中でしか生きられないツァイチェンは、明るい日の光を浴びられる人間になりたいと願っていました。
そんなある日、ツァイチェンは美しい人間の娘シャオチンと出会います。
心優しいシャオチンは、ツァイチェンを人間にするために自分の影を与え、その代わりに妖怪の魂をもらい、自ら妖怪となります。
ところが、邪悪な魂に憑りつかれて血が汚れてしまったシャオチンは、人間の魂を吸い取らなければ老いて死んでしまう体となってしまったのです。
人間のチュイシャとなったツァイチェンは、シャオチンが与えてくれた影を返して邪悪な魂を自身に取り込み、彼女を人間に戻そうとしていたのでした。
少女失踪事件の仕業が妖怪であることを改めて知事に伝えたヤンフェイは、彼から新たな隊長に任命されます。
プウは、隊長となったヤンフェイの権限を利用し、町内で大規模な宴を開かせることに。
宴に集った大勢の人間の魂を求めるシャオチンをおびき寄せようという考えからです。
作戦の妨げにならないよう、チュイシャを宴の場から離して縄で縛ったプウは、変装してシャオチンが来るのを待ちます。
やがて、踊り子に化けて人間に襲い掛かろうとするシャオチンとプウとの闘いが勃発。
そこに縄をほどいたチュイシャが現れ、またもやシャオチンを逃がそうとするも、プウはそれを振り切り、彼女を封印。
そして、お供の妖怪ワンヤオの記憶を消す能力を使い、チュイシャに学者を目指す若者という新たな記憶を植え付けるのでした。
ジャッキー・チェンmeets『ゲゲゲの鬼太郎』&『妖怪ウォッチ』
ジャッキー・チェンの映画は、大まかに分けて2種類のジャンルがあります。
一つは、『ドラゴン・ブレイド』(2014)、『ザ・フォーリナー/復讐者』(2019)のような、ハードかつシリアスな映画。
そしてもう一つは、『ライジング・ドラゴン』(2012)や『カンフー・ヨガ』(2017)といった、観客層を限定しない、コメディ要素高めの映画でしょう。
本作『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』は後者に相当し、妖怪ハンターのプウに扮したジャッキーが、悪しき者と闘います。
魔法によるコミカルなバトルに加え、プウを助ける4匹のお供の妖怪も愛嬌あるキャラクターであることなどからも、『ゲゲゲの鬼太郎』や『妖怪ウォッチ』テイストな、老若男女問わず楽しめる内容となっています。
魔法を駆使する新鮮なジャッキー
参考動画:『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』の本国版予告
ジャッキーが“人外=人ならざる者”と相対する作品は、実はあまり多くありません。
古くは『拳精』(1978)だったり、近年でも『THE MYTH 神話』(2005)ぐらいでしょうか。
ジャッキーによると、プウを演じるにあたり、エンターテインメント色を強める意味でも、かなり振り切ったキャラクターづくりを目指したそう。
ただ、本作を観た方は察しが付くと思いますが、あらすじの中心人物は、『ナイト・オブ・シャドー』というタイトルでも示されるように、“影の武士”であるチュイシャです。
そのため、どちらかといえばプウは狂言回し的なポジションに収まっています。
本作は、残念ながら中国の興行では苦戦を強いられたようなので、純粋な続編が作られる可能性は低いかもしれません。
ただ、プウのモデルとなった作家の蒲松齢の怪奇小説集『聊斎志異』は、およそ500篇ものエピソードで構成されており、その中からはキン・フー監督の『侠女』(1971)やジョイ・ウォン主演の『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(1987)、同じくキン・フー監督&ジョイ・ウォン主演の『ジョイ・ウォンの魔界伝説』(1993)などが映画化されています。
魔法を使って闘うジャッキーが実に新鮮だっただけに、これで終わらせるのは惜しいもの。
可能ならば、『聊斎志異』の別エピソードを用いた新作なども観たいものです。
吹き替え声優・石丸博也がギネス世界記録に認定!
参考:ぷろだくしょんバオバブの公式ツイッター
ジャッキーへ
I really appreciate to receive this honor by virtue of Mr.Jackie Chan's effort for lifelong production.
Please take care of yourself, and I wish you the best of luck in your future. I will do my best too! Thank you, Jackie!Hiroya Ishimaru
石丸博也— ぷろだくしょんバオバブ (@baobab_info) January 15, 2020
最後に、絶対に触れておきたい話題を。
本作『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』にて、ジャッキーの吹き替えを40年以上務める声優・石丸博也が、”同じ声優による同一俳優への吹替え映画の最多数(申請時は75作品)”という前人未到の記録で、ギネス世界記録に認定されました(2020年1月時点で通算91作品)。
日本でのジャッキー人気の要因の一つなのは間違いない、“石丸ジャッキー”。
ギネス記録となった偉業を祝うとともに、今後の更なる活躍に期待しましょう!