連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第8回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第8回は、ドニー・イェン主演の「イップ・マン」シリーズ第3弾、『イップ・マン 継承』(2017)を、ネタバレ有で内容解説いたします。
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CONTENTS
映画『イップ・マン 継承』の作品情報
【日本公開】
2017年(中国・香港合作映画)
【原題】
葉問3(英題:Ip Man 3)
【監督】
ウィルソン・イップ
【アクション監督】
ユエン・ウーピン
【キャスト】
ドニー・イェン、リン・ホン、マックス・チャン、マイク・タイソン、パトリック・タム、チャン・クォックワン、カリーナ・ン、ケント・チェン、レオン・カーヤン
【作品概要】
ブルース・リーの師匠で、中国武術・詠春拳の達人として知られるイップ・マンの活躍を描いた、ドニー・イェン主演のシリーズ第3作。
監督は、前2作に引き続きウィルソン・イップが担当。
妻ウィンシン役を前2作から引き続きリン・ホンが演じ、同じ詠春拳の達人チョン・ティンチ役に、『大脱出3』(2019)でシルヴェスター・スタローンと共演したマックス・チャンが扮します。
さらに、ブルース・リーのそっくりさんとして有名となったチャン・クォックワンや、元ボクシング世界ヘビー級王者マイク・タイソンが特別出演しています。
映画『イップ・マン 継承』のあらすじとネタバレ
1959年の香港。地元で詠春拳道場を開くイップ・マンは妻ウィンシンと、次男イップ・チンの3人で暮らしていました。
ある日、イップ・マンの元にシュウロンと名乗る一人の青年がやってきます。
小さい頃に一度道場の門を叩いたことがあるという彼は、成長して改めて拳法を習いたいと、自らの蹴りの速さをアピール。
イップ・マンがはじくタバコを次々と蹴りで落としたシュウロンですが、最後に放った水を蹴ることはできずに、意気消沈してその場を去っていきます。
そんな中、小学校でイップ・チンが同級生ホンとケンカをしてしまいます。
学校に向かったイップ・マンとウィンシンは、ホンが腹を空かせていると知り、一緒に家に連れて夕飯を食べさせることに。
ホンを迎えに来た父のチョン・ティンチは、詠春拳の同門であり、いずれ自身の道場を持つべく車夫をしながら賭け試合に出て、金を稼ぐ日々を送っていました。
闇試合を開催するアメリカ人のフランクは、イップ・チンの通う小学校の土地再開発を目論んでおり、手下のサンを使って学校への嫌がらせを繰り返します。
町の安全と学校を守るため、イップ・マンは弟子とともに警備にあたることにします。
警察の怠慢をポー刑事に訴えるイップ・マンでしたが、警察の上層部とフランクが密かにつながっていて思うように動けないとして、逆に頼られる始末。
連日の警護で帰宅が遅くなる夫を心配するウィンシンでしたが、サンの嫌がらせは次第にエスカレートしていきます。
一方その頃、チョンは大金の為に、再開発計画に邪魔な者たちを潰すようサンの依頼を受け、夜な夜な襲撃を繰り返すのでした。
「貧富の差はあっても人はみな平等。心ある者がこの町を統治すべきだ」と、改めて治安維持をポーに訴えるイップ・マン。
しかしサンは、強硬手段としてイップ・チンを含む数人の子どもたちを誘拐。助けに行くも、人質に取られて何もできないイップ・マンでしたが、そこへ同じく息子ホンをさらわれていたチョンが現れます。
チョンの助けもあり、無事に事件を解決して帰宅したイップ・マンでしたが、待っていたウィンシンに、子どもまで巻き添えにしたことを責められます。
そして彼女の口から、ガンを宣告されたと告げられるのでした。
子どもの誘拐事件を、ポーの主導により大々的にマスコミ沙汰にしたことで、フランクの学校への脅迫を止めさせることに成功。
警護から解放されてウィンシンに付き添うことにしたイップ・マンでしたが、フランクが送り出したムエタイ使いの刺客に、彼女と一緒にいるところを襲われます。
刺客を一蹴し、意を決してフランクの元に自ら足を運んだイップ・マンは、決着を申し込みます。
3分間の勝負で、負けることなく立っていられたら全ての件から手を引くという条件で、フランクと対峙するイップ・マン。
フランクの繰り出すパンチに苦戦しながらも、肘を使った防御法と蹴りで、3分間を闘い抜くのでした。
「生命」と「夫婦愛」を描くシリーズ第3弾
本作『イップ・マン 継承』は、『イップ・マン 序章』、『イップ・マン 葉問』と続く「イップ・マン」シリーズのパート3となります。
監督のウィルソン・イップによると、第1作のテーマが「生存」、2作目を「生活」とするなら、第3作となる本作は「生命」とのこと。
生ある者がその命を終えていくという真理を、イップ・マンとその妻ウィンシンになぞらえて描きつつ、前2作よりも夫婦愛の要素を強めた構成となっています。
詠春拳の鍛錬で使う木人椿を、夫婦の絆を確かめるアイテムにしているというのも、泣かせる演出す。
なお、本作の敵役となったチョン・ティンチの後日譚を描くスピンオフ、『イップ・マン外伝 マスターZ』も必見の一本。
こちらは、イップ・マンに敗れて去ったチョンが、己の再起と友人たちのために詠春拳を繰り出すという、分かりやすくも仁義に満ちた内容となっています。
至るところに散りばめられたブルース・リーへのリスペクト
参考:『イップ・マン 継承』での冒頭シーン
本作の冒頭に登場する青年シュウロンとは、言わずと知れた後のブルース・リー(李小龍)です。
彼を演じるチャン・クォックワンは、チャウ・シンチー監督・主演の『少林サッカー』(2002)でも、『ブルース・リー 死亡遊戯』(1978)のトラックスーツ姿のゴールキーパーを演じた、いわゆるそっくりさん俳優。
しかし、そのなり切りぶりが認められ、2008年のブルースの伝記ドラマ『ブルース・リー伝説』では主役に抜擢されています。
実は、『継承』に登場するブルースは当初、CGIキャラクターにする予定でした。
しかし、ブルースの遺族が設立したブルース・リー財団の反対により、その案は白紙に。
そこで、元々CGIキャラのモーションキャプチャーを務める予定だったチャンに、実際にブルース役を演じてもらう運びとなりました。
そこまでしてブルース・リーの登場にこだわったのは、他ならぬ主演のドニーの強い意向から。
作品冒頭でイップ・マンが語る「水の理論」は、生前のブルースが説いていた思想ですし、何よりも、チョンとの闘いの決着を付けたイップ・マンの寸勁は、詠春拳を学んだブルースがアメリカ在住時の演武で披露した、ワンインチ・パンチの再現です。
イップ・マンを演じつつ、ブルース・リーへのリスペクトも外さないあたりが、ドニーらしいといえましょう。
シリーズ最終作『イップ・マン 完結』が2020年5月公開!
そして、「イップ・マン」シリーズ最終作となる『イップ・マン 完結』が、2020年5月8日に日本公開となります。
妻を亡くし、愛弟子ブルース・リーとともにサンフランシスコに渡ったイップ・マンが、現地でアメリカ海軍との抗争に巻き込まれます。
共演に、『継承』に続きブルース役を演じるチャン・クォックワン、敵対する海軍兵役をイギリス出身のアクション俳優スコット・アドキンスが演じます。
シリーズの有終の美を飾るであろう完結編に、期待しましょう!
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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