連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第19回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第19回は、1985年公開のシルヴェスター・スタローン主演作『ランボー/怒りの脱出』です。
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CONTENTS
映画『ランボー/怒りの脱出』の作品情報
【公開】
1985年(アメリカ映画)
【原題】
Rambo: First Blood Part II
【監督】
ジョージ・P・コスマトス
【脚本】
シルヴェスター・スタローン、ジェームズ・キャメロン
【キャラクター原案】
ディヴィッド・マレル
【製作】
バズ・フェイシャンズ
【製作総指揮】
マリオ・カサール、アンドリュー・ヴァイナ
【撮影】
ジャック・カーディフ
【編集】
マーク・ゴールドブラット、マーク・ヘルフリッチ
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、チャールズ・ネイピア、スティーヴン・バーコフ、ジュリア・ニクソン、マーティン・コーヴ
【作品概要】
シルヴェスター・スタローン主演の『ランボー』(1982)の続編として、1985年に製作されたアクション映画。本国アメリカのみならず全世界で大ヒットを記録し、スタローンにとっては『ロッキー』に続く当たり役となりました。
脚本は、前作に続きスタローンが兼任したほか、『ターミネーター』(1985)の監督ジェームズ・キャメロンが草案を執筆。2020年には、シリーズ第5作にして完結編となる『ランボー ラストブラッド』が公開予定です。
映画『ランボー/怒りの脱出』のあらすじとネタバレ
ワシントンの田舎町をたった一人で壊滅させた、ベトナム帰還兵のジョン・ランボー。
服役中だった彼を、元上官のトラウトマン大佐が訪ね、特赦と引き換えに極秘任務を依頼します。
それは、終戦して10年以上経ったにもかかわらず、いまだベトナムで囚われの身となっているアメリカ兵捕虜収容所に潜入し、その証拠となる写真を撮影するというものでした。
トラウトマンの仲介により、ランボーは任務を指揮するCIAのマードックと顔を合わせます。
マードックは、確固たる証拠がない限り軍を派遣できないという理由から、決して単独で捕虜救出に動かないことと、敵と戦わないことを命じます。
ベトナムに向かう飛行機に乗り込む間際、ランボーはトラウトマンにマードックに不信感を抱いていることを明かし、機上の人に。
ベトナム上空からパラシュートで降下しようとしたランボーですが、その際に発生したアクシデントでカメラを始めとする装備の大半を失います。
マードックはランボーが死んだと言うも、彼の生存を信じるトラウトマンは、予定通りの時刻に救出のヘリを出すよう要求するのでした。
一方、なんとかベトナムに潜入したランボーは、収容所への案内役の女性コー・バオと落ち合います。
収容所で捕虜への虐待を目の当たりにしたランボーは、命令を無視し単独での救出活動を開始。
ベトナム軍による追跡を受けながらも待ち合わせ地点に向かったランボーは、トラウトマンが乗る救助ヘリを待ちます。
ところが、ランボーが捕虜を連れていることを知ったマードックは作戦を中止し、ランボーたちを置き去りにして飛び去ってしまいます。
基地に戻ったトラウトマンがマードックを非難すると、彼はこの作戦の真の理由を明かします。
それは、アメリカ政府は最初から捕虜救出の意志がなかったということでした。
トラウトマンは、ランボーが必ず戻ってきて復讐すると忠告します。
一方、ベトナム軍に捕らえられ、苛烈な拷問を受けるランボーの前に、ベトナム軍と秘密裏に通じていたソ連軍中佐ポドフスキーが姿を見せます。
ポドフスキーからマードックに連絡するよう脅されたランボーは、マイクでマードックに殺しに行くことを告げた直後、周囲のソ連兵たちを襲って脱出し、救出に現れたバオと共に収容所を離れます。
映画『ランボー/怒りの脱出』の感想と評価
参考映像:『ランボー』(1982)
ジェームズ・キャメロンが脚本参加したシリーズ第2弾
本作『ランボー/怒りの脱出』は、前作『ランボー』を観たベトナム戦争帰還兵からスタローンが受け取った、ベトナムで捕虜となった兵士をテーマにした続編を求める手紙から着想されたと云われています。
脚本の草案を、後に『ターミネーター』や『タイタニック』(1997)などでヒットメーカーとなる監督のジェームズ・キャメロンが執筆。
キャメロンが書いた脚本では、精神病院に入っていたランボーがトラウトマン大佐の導きにより、陽気な性格の相棒と一緒に捕虜救出に向かうというプロットになっており、その相棒役にはジョン・トラヴォルタが候補になっていました。
しかし、「ランボーは常に孤高であるべき」というスタローンの意向により、大きくリライトされることに。
ちなみにトラヴォルタは、スタローンが監督した『スティン・アライブ』(1983)で主演を務めれば、『ランボー』が最初に映画化企画された際のランボー役の第一候補だったという縁もあります。
一方、脚本アイデアの大半を却下されたキャメロンは、その悔しさを晴らすかのように、ランボーが精神病院に入っているという設定を『ターミネーター2』(1991)のサラ・コナーに活かしています。
ランボー=戦争アクション映画の代名詞に
前作が、アメリカでつまはじきとなったベトナム帰還兵の鬱屈した怒りを描くヒューマンドラマに対し、本作はアクセル全開のアクション映画へと転換しています。
これは、本作が公開された1985年がベトナム戦争終結10年目という節目だったのと、その数年前から『地獄の7人』(1983)や『地獄のヒーロー』(1984)といった、ベトナム戦争を下地にしたアクション映画が作られていたことが起因していると思われます。
また、ランボーがナイフや銃だけでなく、弓矢を射ったりヘリで敵を殲滅する流れは、大のミリタリーオタクで草案を執筆した、キャメロンの影響によるものと云われています。
いずれにしろ本作で、「ランボー」シリーズは戦争アクション映画の代名詞を確立。
劇中でランボーが「俺は消耗品だ(I’m expendables)」と発してから25年後、スタローンは“消耗品”軍団が活躍するアクション映画『エクスペンダブルズ』(2010)を発表することとなります。
参考映像:『エクスペンダブルズ』(2010)
シリーズ第3作『怒りのアフガン』ではアフガン兵とタッグ結成
参考映像:『ランボー3/怒りのアフガン』オープニング
全世界で本作『ランボー/怒りの脱出』が大ヒットしたことを受け、スタローンはすぐさま続編製作を発表。
3年後に完成した第3作『ランボー3/怒りのアフガン』は、ランボーがアフガニスタンの民兵(ゲリラ)と組んでソ連軍を相手に戦うという、当時の世相を反映した内容に。
戦う相手が大きくなるに比例するかのように、ランボーの存在も大きくなっていきます。
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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