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【ネタバレ】オーバードーズ 破滅の入り口|あらすじ感想結末と評価解説。ジャン=ポール・ベルモンドを偲ぶフレンチアクションとは⁈|Amazonプライムおすすめ映画館21

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第21回

オリヴィエ・マルシャルが脚本・監督を務めた、2022年製作のフランスのアクション映画『オーバードーズ 破滅の入り口』。

トゥールーズ司法警察の麻薬捜査官サラ・ベイシュが捜査中の麻薬輸送事件と、パリ警察のリシャール・クロスが捜査中の少年殺害事件の関与が判明。

性格が正反対であるサラとリシャールは、殺人犯と麻薬輸送犯を捕まえるためにやむなく協力し合うこととなりました。

そしてサラたちはスペインからフランスへとつながる道中、行き着く暇もない激しい攻防戦へと身を投じることになります。

Amazonプライムビデオにて配信された映画『オーバードーズ 破滅の入り口』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「Amazonプライムおすすめ映画館」記事一覧はこちら

映画『オーバードーズ 破滅の入り口』の作品情報


Amazonプライム『オーバードーズ 破滅の入り口』

【配信】
2022年(フランス映画)

【脚本】
クリストフ・ガバ、オリヴィエ・マルシャル

【監督】
オリヴィエ・マルシャル

【キャスト】
ソフィア・エサイディ、アッサード・ブアーブ、アルベルト・アンマン、ニコラ・ザガレ

【作品概要】
ローグ・シティ』(2020)や『あるいは裏切りという名の犬』(2006)のオリヴィエ・マルシャルが脚本・監督を務めた、フランスのアクション作品です。

フランスのテレビドラマ『彼女たちの戦火』(2022)のソフィア・エサイディが主演を務めています。

映画『オーバードーズ 破滅の入り口』のあらすじとネタバレ

スペイン国境にほど近いフランス・トゥールーズ司法警察の麻薬捜査官サラ・ベイシュは、相棒のボブ・フォンターナと共に、300キロのコカイン輸送事件を捜査していました。

しかし、サラお抱えの情報屋トニは飲酒検問所を突破しようとして激突事故を起こして死亡。

彼が運転していた車のトランクの中から、麻薬捜査班と対立する悪徳弁護士のデリュイソーの自宅にあった家具や貴重品が見つかり、サラは張り込み捜査していたことも含めて、上司のダニエル・プラット本部長から叱責されます。

サラはトニから得た情報を守るために、彼が盗みを働いたことを隠蔽しました。

その情報とは、アルフォンソ・カストロビエホという男が率いる麻薬組織がモロッコから300キロの麻薬を輸送しようとしている、というものでした。

サラにはトニの他に、レイナルという4年前に組織犯罪の研修で知り合った情報屋がいて、麻薬組織へ潜入してもらっていました。

しかしここ3か月、レイナルからの連絡はなし。ヤク中である彼は、もしかしたら寝返ったのではないかとサラたちは危惧していました。

その翌日、サラのもとに「明日、スペインを発つ。ブツの受け渡し場所はカルカッソンヌ(フランス南部にある町)」と、レイナルから3か月ぶりに連絡がありました。

サラはトゥールーズ司法警察本部にいるプラットにこのことを報告。ボブと一緒にフランス・ペルピニャン警察署犯罪捜査部へ向かいます。

そしてペルピニャン警察の麻薬捜査班を率いているチャールズ・モランス警視と、警部に昇格した麻薬捜査班の副班長ビクトル・ピクマルに、合同捜査をしないかと話を持ちかけました。

なぜスペインの警察に協力を仰がないかというと、一部の警官がカストロビエホに買収されており、麻薬を輸送する連中(以外、麻薬輸送団と表記)と関係がある者がいる恐れがあったからです。

モランスたちはサラたちからの提案を受け入れました。これにより、トゥールーズ司法警察の麻薬捜査班と、ペルピニャン警察の麻薬捜査班が合同捜査を行い、スペイン国境付近で麻薬輸送団を逮捕しようとします。

翌朝。レイナルを含む麻薬輸送団は予定どおり、スペイン・カタルーニャ州にあるカストロビエホの邸宅から出発。

レイナル以外のメンバーは、麻薬輸送団のリーダーのエドゥアルド・ガルシアとその恋人ヴァネッサ・サンチェス、麻薬組織の構成員レマスと元ラリードライバーのウィリー、サイード・マスリシュとその恋人レイラの7人です。

しかし高速道路を走行中に問題が発生。ヤク漬けのレイラが突然嘔吐し意識を失ったため、サイードは運転していた車をパーキングエリアの脇に停めました。

そこへ巡回中のスペインの警官3人が現れ、彼らの話す言葉が分からず、銃口を向けて車に近づこうとしてきたため、さらにパニックになったサイードは銃を発砲。

銃撃戦の末、サイードは警官2人を殺害。レイラは銃撃戦に巻き込まれ、死んでしまいました。

サイードの後ろを走っていたガルシアは、サイードと対峙していた警官を背後から銃撃し殺害。レイラの遺体を置いて、サイードと一緒にその場から立ち去りました。

レイナルから連絡を受け、麻薬輸送団が高速道路から降りてカタルーニャ州北東部にあるフィゲラス方面へ向かったことを知ったサラたちと、ビクトルとペルピニャン警察の麻薬捜査班の班員。

4人はひとまずスペインの警官3人が殺害された銃撃現場へと急行。捜査責任者から話を聞きます。

その結果、地元の麻薬常習者が黒い車に乗った2人の男を目撃していることが判明。目撃者のいう男たちの特徴から、犯人はガルシアとサイードであるとサラたちは推測しました。

サラたちは、ひとまず身を隠すことにした麻薬輸送団が必ず取引現場に現れるであろうと信じ、予定どおりカルカッソンヌに向かうことにしました。

以下、『オーバードーズ 破滅の入り口』ネタバレ・結末の記載がございます。『オーバードーズ 破滅の入り口』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

一方、パリ警察の刑事リシャール・クロスは、ネッカー小児病院に入院中だった2人の少年、13歳のジェローム・バネルと15歳のアリ・ベン・ハミドが殺害された事件を捜査していました。

ジェロームたちがネッカー小児病院に入院したのは10日前。ジェロームは心臓疾患で、アリは移植手術のために入院していました。

ジェロームは工具で心臓を刺され、同室のアリの喉はアーミーナイフか何かで切り裂かれていることから、この事件の犯人は2人だと検視官は推測しました。

その後の調べで、ジェロームたちを最後に目撃したのは日勤の看護師で、事件当日の午後3時40分。夜勤の研修医が2人の遺体を発見したのは午後6時であること。

面会に訪れたのはアリの母親だけですが、この数か月は滞在していたパリにいるいとこの家から、2日前に病院に行くと出て行ったきり行方不明であると、リシャールの部下フランク・ダルシュヴィルはいいます。

ですが3日前、モロッコ人カップルがそのいとこの家に訪ねていることが判明。そのカップルの特徴は、病院の敷地内に設置された防犯カメラに映っていたカップルの特徴と一致。

ジェロームたちがいる小児病棟前に停められた黒のバン「シトロエン・ジャンピー」から降りてきたのは、白衣と帽子とサングラス姿の北アフリカ系の男と、ブルカ(伝統的にイスラーム世界の都市で用いられた女性用のヴェールの一種)姿の女でした。

2人は病棟に入り、その30分後に大急ぎで走り去っていったと、リシャールの部下リュシー・ディ・マルコはいいます。

2人の報告を聞いたリシャールは、フランクに病院にかかってきたすべての通話記録と、その中に病院の付近で使われた携帯電話番号と一致するものがないかどうか調査を依頼。リュシーにアリの母親とバンを探すよう命じました。

その後、リシャールたちはセーヌ川に投げ捨てられていたアリの母親の遺体を発見。検視の結果、死亡推定時刻は48時間前、切り裂かれた喉と軟骨の傷のサイズが酷似していることから、彼女を殺した凶器は息子と同じアーミーナイフであることが判明しました。

親子の遺体を検視した検視官は、2人の遺体には犯人と争った形跡がなかったことから、親子の顔見知りによる犯行ではないかと、リシャールにいいました。

また病室から採取したDNAを調べた結果、2人分のDNAが検出されるも前歴はなし。水上警察からの報告によると、2日前の夜、黒いバンがセーヌ川に架かる橋「オステルリッツ高架橋」の近くの防犯カメラに写っていたといいます。

しかもそのバンに乗っていたカップルの特徴は、アリの母親のいとこの家と病院にきたカップルと一致。彼らがセーヌ川に遺体を投げ捨てる様子も写っていたのです。

さらに病院の通話記録を調べた結果、ネッカー小児病院・アリの母親のいとこの家・オステルリッツ高架橋の近くからある携帯電話の番号がかけられていることが判明。

その携帯電話のSIMカードは海賊版で、セーヌサンドニ県のルジャンで購入された携帯電話と判明し、現在も使用中。この2日間カタルーニャ州にある小さな村から発信されていたのです。

しかし、リシャールたちが捜索中のバンは、パリ郊外にあるセーヌサンドニ県のルージュモン公営住宅の駐車場で燃やされていました。

聞き込みをした住民の女性ジュリエットの話によれば、夜中の3時〜4時にアラブ系のカップルがバンに火をつけて立ち去ったといいます。

ジュリエットは亡き夫、20年前の強盗事件で殉職した警官のダニエルの真似をして、物騒な町であるため用心も兼ねて近隣住民のことをノートとカメラに記録していました。

ジュリエットはカップルを目撃しただけではなく、窓際から彼らをカメラで撮影していました。しかしその写真は、現在女性の義理の息子が現像中。届いたら見せるとリュシーにいいました。

リュシーが、ジュリエットのノートに頻繁に出てくるクリスという人物について尋ねます。

ジュリエットは、「この町の麻薬取引を牛耳っている悪党のクリス・レリンジャー。D棟の最上階に住んでいるけど、イカレているから聞き込みに行くのはやめたほうがいい」と警告しました。

その後の調べで、病室から検出されたDNAが、今朝スペインの銃撃現場で死んだモロッコ人女性レイラ・ハムンドニのDNAと一致していること。

彼女と一緒にいた2人の男がグアルディア・シビルの隊員3人を殺害し銃撃現場から逃走したこと。

トゥールーズ司法警察の麻薬捜査班とペルピニャン警察の麻薬捜査班が合同捜査を行い、国境付近で麻薬輸送団を逮捕する準備をしていることが判明。

麻薬輸送事件と少年殺害事件の関与が判明したため、リシャールは単身スペインへ向かいます。

ペルピニャン・リヴザルト空港に到着したリシャールは、そこで待ち合わせていたサラたちと合流。彼女らと一緒にこの2つの事件の真相を突き止めようとします。

その道中、フランクから電話がかかってきました。レイラの出身地はアリの家族と同じモロッコの村で、彼女の家族は代々モロッコ北部のシャウエンで麻薬の売人をしていること、主に大麻を扱っていたけど最近欧州でコカインの取引も始めたというのです。

サラたちの隠れ家にて、リシャールは彼らと情報を共有しました。レイナルが仕込んだGPSによると、麻薬輸送団はスペイン・ジローナ県の農場にいること。

しかしその周辺は遮るものがないため、偵察班を行かせたものの張り込みに苦戦していること。GPS以外の追跡方法はないこと。

でもカルカッソンヌに向かうには国境を越えなければならないため、スペイン側もフランス側もそれぞれ国境付近に警官を配置していること。

彼らから連絡が入り次第、麻薬輸送団を追跡。受取人のニノ・ブラガンティの姿を確認後、麻薬輸送団を逮捕する手筈となっていること。

それを聞いたリシャールは、パリにはクリスがいることを話します。調べでは、クリスはサイードの仲間で、レイラの元恋人でした。

殺人犯の車が見つかった地域で麻薬取引を行っていたことから、リシャールはクリスがパリの受取人ではないかと推測します。

実はジュリエットからの情報で、クリスが偽造ナンバーのBMWの車を用意し、1時間前にその車にクリスの仲間ウサムとマルレーが乗って出発したというのです。

トゥールーズの料金所でその車の詳細が分かり次第、その車を追跡すれば麻薬輸送団も殺人犯も、受取人も一網打尽にできるとリシャールは豪語します。

翌朝。麻薬輸送団は農場を後にし、カルカッソンヌの旧市街へと向かいました。

その道中、レイナルは密かにサラにそのことを伝えます。サラたちも急いでカルカッソンヌ旧市街へと向かいました。

午前8時。ニノとその手下2名、ウサムたち、そして麻薬輸送団が順にカルカッソンヌ旧市街に到着しました。

彼らが白昼堂々取引を行おうと思ったのは、校外学習にきた子供たちがスクールバスから降りてくる間が受け渡しのチャンスだからです。

受け渡しを終えた彼らが別れて、その場から車で立ち去ろうとした瞬間を狙って、カルカッソンヌ旧市街に待ち伏せていたサラたちが一斉検挙します。

捕まったのはニノ一味とガルシア、ヴァネッサ、ウィリー。バイクに乗るレイナルとレマス、レンジローバーに乗るサイード、BMWの車に乗るウサムたちには逃げられてしまいました。

サラたちは判事の取り調べを受ける前に、ニノやガルシアたちに揺さぶりをかけて情報を聞き出そうとします。

頑なに口を割らないニノやガルシアに対し、ウィリーは自分の娘にこうなって欲しくないからと、知っている情報を話してくれました。

レイラがワヒブという男と一緒に、パリで何か大変なことをしてしまったと、ガルシアに話していたと。

その直後、パトロール隊がエロー県レルグ川渓谷で燃やされたレンジローバーとバイク2台、車内に焼死体があるのを発見しました。

トゥールーズ司法警察はその焼死体はまさかレイナルではないかと危惧していましたが、レマスという麻薬取引と武装強盗の逮捕歴がある元傭兵でした。

実は、クリスから密告者がいるのではないかと言われたサイードは、レマスとレイナルに疑いの目を向け、レマスを殺害したのです。

サラたちはプラットの指揮のもと、スペインの警察と一緒にカストロビエホの自宅に乗り込み逮捕するチームと、ニノたちをトゥールーズへ移送するチームと二手に分かれて行動することに。

その結果、警官を殺して逃げようとしたカストロビエホを殺害。トゥールーズへの移送中に渋滞にはまってしまい、その隙にガルシアとヴァネッサが脱走を目論みました。

道路上での銃撃戦の末、ガルシアたちと同じ車にいたビクトルが死亡、ボブも重傷を負い経過観察中、ガルシアは走って逃げていきました。

フランクと話をしたプラットは、病院に駆けつけたサラとリシャールに、カストロビエホの自宅からは病室と同じDNAは検出されなかったと知らせました。

トゥールーズ司法警察本部長室にて、リシャールはサラたちにウィリーから得た情報を共有。レイナルはサイードたち3人とBMWの車に乗ってパリに向かっていると交通管制から情報が入ったことを知らせます。

それを聞いたプラットは、サラにリシャールと共にパリへ行くよう命じ、モランスと自分はウィリーとニノの手続きを進めようといいました。

そこへ、農場で殺害された農場とレンジローバーの持ち主カマロの妻子が、スペインの警官に連れられてやってきます。ウィリー曰く、レイナルに地下室で殺されるはずだった親子でした。

その日の夜。サラとリシャールはフランクと合流し、ジュリエットが撮った写真を受け取ります。

クリスと一緒に写真に写っている男は、病院と川岸の監視カメラに映っていた男と似ていました。

その男が乗ってる車はメルセデス・ベンツ・E-Class、クリスの名義でレンタルされているものでした。

さらにリュシーが、スピード違反の記録を調べていてあることに気づきます。クリスの名前でのスピード違反は2回、交通違反切符はクリスの家と7区のユニヴェルシテ通り13にある建物に送られていること、その建物の借主は「ナワビ社」という会社になっていたことに。

リュシーとフランクはその建物に踏み込んでみましたが、中はもぬけの殻で、管理人も移転先を知らないといいます。浴室に歯ブラシがあるのが見つかり、DNAの鑑定待ちです。

ウィリーの証言に出てきたワヒブについて調べたところ、ワヒブのフルネームはワヒブ・ナワビ、ネッカー小児病院で研修医として働いていて、事件発生時は勤務中でした。

ですがワヒブに犯罪歴はなく、レイラとは同じ村出身であるということくらいしか分かっていません。

モロッコの警察によると、2人の家族は何世代も前から土地を共有し大麻を栽培していたといいます。

殺人犯と逃亡中のガルシアたちをどう捕まえるかサラたちが考えていると、リュシーのもとにジュリエットから「クリスが男と一緒にバイクのTMAXに乗って出かけた」という新たな情報が届きました。

一方ガルシアは、カマロの妻子がトゥールーズ司法警察に入っていく姿をニュース報道で知り、レイナルが警察に密告した裏切り者であると悟って激怒。レイナルたちをオーベルビリエの廃墟に呼び出します。

そしてレイナルを地下室に連れて行かせ、トラブルを起こした元凶たるサイードをガルシア自らの手で始末しました。

翌朝。サラが泊まっているホテルで一夜を明かした2人のもとに、捜索中のバイクがオーベルビリエの廃墟にあると知らせがきます。

ガルシアがレイナルへの拷問を終えて一服しようとしたその時、サラたちとフランス国家警察の犯罪捜査部局捜査介入部(BRI)が現場に突入。銃撃戦が繰り広げられていきます。

フランクと共に地下室へと向かったサラは、惨たらしい姿となったレイナルと再会。両耳と舌を切り落とされ痛み悶えていたレイナルは、最後にサラの姿を目に映して息を引き取りました。

激しい銃撃戦の末、クリスが死亡し、ガルシアと、地下に隠れていたワヒブが逮捕されました。

ガルシアはサラに、自分がレイナルの耳と舌を切り落としたと言って挑発します。サラは激昂し殺そうとするも、フランクがそれを止めて、彼女の代わりに仇を討ちました。

というのもこの銃撃戦で、ガルシアの撃った弾がリシャールに被弾。重傷を負ってしまったのです。

サラとフランクによる取り調べを受けて、ワヒブはぽつりぽつりと事の顛末を語りだします。

ワヒブとレイラの家族は村の土地で大麻を栽培していましたが、長年諍いが絶えませんでした。ですが取引先を増やしてコカインにも手を広げるために、両家で話し合って手を組むことに。

両家が結束した証として、ワヒブとレイラは婚約しました。ですがそれが決まった時、ワヒブは人脈を広げるためにフランスで医学を学んでいました。

ワヒブはいとこのサイードを仲間に入れて、クリスを紹介してもらいました。そんなある日、ワヒブの父から「村に住む男が我々を裏切った」と連絡がありました。

その男の名はタリク・ベン・ハミド、アリの父親でした。モロッコのフランス大使館の前でタリクが警官と話していたところを、タクシードライバーが目撃したのです。

ワヒブの父は「裏切り者はその家族ともども皆殺しにするべき」という村のしきたりに則り、息子とレイラにタリクとその家族を殺すよう命じました。

ワヒブたちの狙いは、アリたち家族だけ。なぜジェロームまで殺したのかとフランクが尋ねると、「予定ではアリは処置室にいるはずだったのに、担当看護師の都合でまだ病室にいた」、「レイラはコカインでハイになっていて気が動転し、ジェロームを刺してしまった」とワヒブはいいました。

そしてワヒブたちは、アリのカルテに載っていた住所へ向かいました。アリの母親に息子の手術代の援助をしたいと嘘を言い、薬物入りのケーキを手土産に渡しました。

2人は薬で眠ったアリの母親をバンに乗せ、夜に運び出しました。ワヒブがアリの母親の喉を切り、彼女の遺体を川に捨てたのです。

なぜそんな残忍なことが平気でできるのかとフランクが尋ねると、「村のしきたりには逆らえない。我が家の跡継ぎである僕は父に敬わねばならない」とワヒブは答えました。

その後、モロッコ当局からタリクの遺体が見つかったと連絡が入りました。タリクは拷問され、斧で斬りつけられ、山の茂みに捨てられていたといいます。

タリクがフランス大使館に行ったのは、息子の容体が悪く、早く入院できないかと相談したかったからでした。

サラは怪我を負ったリシャールのもとへお見舞いに行こうとしましたが、その前に彼の妻と15歳の娘が彼を見舞いに来ていたため、彼を遠目から眺めることしかできませんでした。

リシャールは家を出て行った妻と娘が迎えに来てくれたことを喜んでいましたが、それと同時に去り行くサラを複雑な思いで見送りました。

映画『オーバードーズ 破滅の入り口』の感想と評価


Amazonプライム『オーバードーズ 破滅の入り口』

まさかフランス・トゥールーズ司法警察とペルピニャン警察が合同捜査中の麻薬輸送事件と、パリ警察が捜査中の少年殺害事件が関与していたなんて驚きです。

それぞれの捜査が進んでいくにつれて、点と点が1つに結ばれていきます。サラたちの捜査で浮上した人物たちは全員つながりがあったのです。

サラたちとリシャールたちがそれぞれのやり方で捜査していくところも面白いですが、フランスの3つの警察と、スペインの警察が協力して捜査にとりかかっていくのも迫力とスリルが増して楽しめます。

協力者として麻薬組織に潜入していたレイナルも、最後は命からがら危機を脱してサラと祝杯をあげるのかと思いきや、まさか物語のラストで酷い拷問を受けて死んでしまうとは思いもしませんでした。

レイナルは作中、ガルシアたちに見せるヤク中の男と、サラに協力する情報屋としての2つの顔を見事に演じきっていて、どちらが本物の彼なのか分からなくなります。

危ない橋を渡ってでも情報と麻薬輸送団逮捕に貢献したレイナルの苦労は、助けに駆けつけたサラが涙を流してくれたことで少しは報われたのではないでしょうか。

また合同捜査中、サラとリシャールのラブロマンスな展開が描かれています。リシャールには妻子がいる既婚者ですが、妻と娘が家を出て行ってしまったためほぼフリー状態でした。

一緒に捜査をしていくにつれて、サラたちは互いに心惹かれ合うものがあったのでしょう。サラの誘いに乗って、リシャールは彼女と関係を持ちました。

事件解決後、2人のラブロマンスも何か進展があるかと思いきや、まさかの家を出て行ったリシャールの妻子が見舞いに来て、2人の関係は2人の心の中に秘めたまま終わってしまうというオチで少し切ないです。

まとめ

フランス・フランス・トゥールーズ司法警察とペルピニャン警察が合同捜査中の麻薬輸送事件と、パリ警察が捜査中の少年殺害事件の関与が判明し、サラたちが協力して麻薬輸送団と殺人犯を追い詰めていくフランスのアクション作品でした。

本作の見どころは、フランスの3つの警察がスペインの警察と協力して、悪あがきを続ける麻薬輸送団と殺人犯を逮捕へと追い詰めていくアクション場面の数々と、サラとリシャールの一夜限りのアバンチュールです。

スペインからフランスに繋がる道中での警察v麻薬輸送団のバトル、物語のラストで描かれた廃墟での銃撃戦、どちらも息つく暇もない激しい攻防戦でハラハラドキドキします。

思わず瞬きをせずに見入ってしまうほどの本作の冒頭では、「この不快な世の中を、我々は何とかせねば」という、麻薬取締局捜査官ウォルト・ブレスリンの言葉がテロップで流れていました。

またエンドロール前には、「ジャン=ポール・ベルモンドを偲んで」というテロップが流れます。

ジャン=ポール・ベルモンドは、シリアスなドラマからアクション・コメディまで幅広く出演してきた20世紀後半のフランスを代表する俳優の1人で、『勝手にしやがれ』(1960)や『リオの男』(1964)、『ボルサリーノ』(1969)など数多くのヒット作に出演してきました。

フランスのメディアによると、2021年9月6日、ジャン=ポール・ベルモンドはパリの自宅で亡くなったといいます。88歳でした。

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