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Entry 2021/02/27
Update

映画『コスモボール』ネタバレ感想と結末あらすじ評価。ロシアSFアクションが描くのは銀河を救うスポーツ!?|未体験ゾーンの映画たち2021見破録17

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第17回

世界各国で誕生した様々な映画をお届けする「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第17回で紹介するのは、ロシア発のSFアクション巨編『コスモボール COSMOBALL』。

月が崩壊し環境が激変した未来の地球で、人類が熱狂し続ける命懸けのスポーツ“コスモボール”。それが、世界の運命を懸けた闘いであるとも知らずに……。

ソビエト時代には様々なSF映画が製作されていたロシア。21世紀に入ると、SFファンタジー映画「ナイト・ウォッチ」(2004)シリーズが誕生。同作の大ヒットはSF・ファンタスティック系映画が製作される下地を再び生み出しました。

『アトラクション 制圧』(2017)と続編の『アトラクション 侵略』(2020)、『アンチグラビティ』(2019)など、今やSF映画大国となったロシアで新たに登場した、スケール感あふれる痛快SFアクション映画を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

映画『コスモボール COSMOBALL』の作品情報


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

【日本公開】
2021年(ロシア映画)

【原題】
Vratar galaktiki/Cosmoball

【監督・脚本・製作】
ジャニック・フェイジエフ

【キャスト】
エフゲニー・ロマノフ、ヴィクトリヤ・アガラコヴァ、エフゲニー・ミロノフ、マリヤ・リソヴァヤ

【作品概要】
VFX技術で未来世界と派手なアクションを描き、2020年ロシアでの劇場公開時には初登場1位を獲得したSFアドベンチャー大作。『黒人魚』(2018)などを製作し、『オーガスト・ウォーズ』では監督を務めたジャニック・フェイジエフが手掛けた作品です。

主演のエフゲニー・ロマノフは少年時代からサッカーやホッケーに親しみ、モスクワ州立スポーツアカデミー卒業後、俳優活動を開始。身体能力を生かした活躍が期待される俳優です。

また『黒人魚』と『ゴースト・ブライド』(2016)のヴィクトリヤ・アガラコヴァ、演劇界の重鎮としてロシア人民芸術家の称号やロシア名誉勲章も受賞しているエフゲニー・ミロノフが共演しました。

映画『コスモボール COSMOBALL』のあらすじとネタバレ


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

かつて勃発した銀河戦争で宇宙の平和を守るため、恐るべき破壊者チェルノと戦ったベロ(エフゲニー・ミロノフ)。戦いは熾烈を極め、損傷したチェルノの脱出艇はやがて太陽系の地球の衛星、月に激突します。

その結果、月は完全に崩壊。またチェルノの脱出艇は地球に墜落した後に地殻奥深くへと突入し、そのまま彼の牢獄と化しました。

月を失った地球の両極は移動し、環境は激変し食料・電力不足が発生。さらに疫病の流行が重なったことで世界は荒廃し、人類は生き延びることが困難な時代を迎えました。

宇宙間戦争に巻き込まれ、甚大な被害を受けた地球を救うため、銀河評議会は高度な文明を持つエイリアンたちに協力を呼びかけました。

エイリアンたちの指揮・支援のもと再建が始まった地球。人類は新たな段階へと進化し、テレポート能力を持つ者も誕生します。

銀河評議会に所属するエイリアンたちは人類に手を差し伸べる一方、地球の地下最深部に閉じ込められたチェルノの監視を続けていました。

月の崩壊から20年後、2071年のモスクワ。街は徐々に活気を取り戻していましたが、インフラの復旧は不十分で住民は困窮した生活を送っています。

水を求めて並ぶ人々の列の中には、青年アントン(エフゲニー・ロマノフ)がいました。突然街燈が折れて倒れかかり、危うく怪我をしかけるアントン。

なぜか日常的に危険に巻き込まれるアントンは、周囲の人々からトラブルメーカーと思われていました。彼を襲う数々の事故の背後には、正体不明の謎のエイリアンの存在があるようです。

モスクワ郊外の地中奥深くに墜落した、チェルノの脱出艇は牢獄として封印され、銀河評議会の監視下に置かれていました。

牢獄の中では自由に振る舞うチェルノの前に、彼の娘ヴァラヤのホログラム映像が現れます。ヴァラヤこそ、アントンをトラブルに巻き込んでいるエイリアンです。

牢獄から逃れ、銀河委員会に復讐を果たそうと企むチェルノは、宇宙船内で何か実験を行っていました。

チェルノの反撃の鍵は、彼が新たに生んだ原型遺伝子の覚醒です。それは今、地球人の青年アントンの肉体の中で眠っています。それを活性化させようと、ヴァラヤは父の指示で工作活動を続けていました。

チェルノは娘にアントンを殺せと命じます。ただし死の前に、必ず原型遺伝子を活性化させろと指示しました……。

モスクワ郊外には、巨大な花のようにそびえたつドーム競技場があります。そこで行われる各惑星代表チームが争う競技こそ、全人類を、銀河委員会に所属する各文明を熱狂させるスポーツ“コスモボール”でした。

打ち出された強力なエレルギー体の球体を、選手がサッカーのように5回蹴るとゴールゲートが開放。開いたゲートにエネルギー体をシュートすれば得点を獲得。球体をキックする度に大きな衝撃が発生し、観客は盛り上がります。

コスモボールの試合が始まれば、人類の大多数が夢中で見守ります。おかげで職業紹介所の職員から無視されたアントン。彼は誰もが現実から逃れようと夢中になるコスモボールを、心底嫌っていました。

シリウスチーム4人に対抗する地球チームは、キャプテンのナターシャ(ヴィクトリヤ・アガラコヴァ)、南米出身のペレ、幼い少女ファンのテレポート能力を持つ3名。

このスポーツには、観客が知らない事実がありました。コスモボールで使われる球体の正体は、実はチェルノが定期的に製造する破壊弾なのです。

コスモボールの運営者は、チェルノを監視する銀河委員会のメンバーです。チェルノが製造した破壊弾を強制的に回収し、競技用に使う球体にしていました。

今回チェルノは激しく抵抗し、破壊弾のコントロールを奪い返し、操って設備や監視室を破壊します。次の球体を打ち出せなくなったため、コスモボールリーグのコミッショナーで、地球チームの指導者を務めるベロは中断を宣言しました。

競技場に現れたベロは観客にとってはカリスマ的存在であり、熱狂的に迎え入れられます。両チームメンバーに事情を説明するベロ。選手たちは全てを承知しており、単なる一時的中断を装います。

破壊弾のコントロールを回復すると、ベロはゲームの再開を宣言します。破壊弾を奪い返され怒り狂うチェルノ。

再開した試合は接戦の末引き分け、地球チームは初の決勝戦進出が決定します。人類の大多数がこの快挙に沸き立ちました。一方でプレイでゴールされた危険な破壊弾は、無力化され処分。そんな事実も知らず盛り上がる観客たち。

ナターシャはシリウスチームの健闘を称えた上で、仲間と勝利を喜びます。残る1名の地球チームメンバーは、あなたかもしれないと語るアナウンサー。コスモボールに興味の無いアントンに、苦しい生活に喘ぐ人々がゲームに夢中になる姿は理解し難いものでした。

アントンが帰宅すると、ただ1人の家族の母は倒れていました。母が必要とする薬は切れています。

薬局に走るアントン。無人の薬局の窓ガラスを破ろうとしますが割れません。

そこに盗みを生業にする少女アーニャ(マリヤ・リソヴァヤ)が現れ、窓を破り商品を盗みます。アントンも店内に入りました。

警報が鳴り響く中、母の薬を盗むアントン。すると部下と共に警察署長が現れます。アーニャを追うように逃げるアントン。

捕まりかけたアントンを助けたアーニャ。2人は狭い部屋に逃げ込みます。

そこで苦手なトカゲを見て、思わず声を出したアントン。警察署長に出てこいと言われ、彼はアーニャを残し外に出ました。

隙を見て逃げたアントンは車と衝突します。しかし彼の姿は消え、盗んだ薬だけが残されています。何が起きたか理解に苦しむ警察署長。

そして車を運転していた男は、チェルノの娘ヴァラヤに姿を変えます。彼女は自身の目的を果たしたようでした。

モスクワ市内で何者かがテレポートを行なったと確認するベロ。アントンは自分で意識せずテレポート能力も用いていたのです。

呆然とするアントンを連れ、地下にある隠れ家に連れて行くアーニャ。彼女はなぜ自分を助けたのかとアントンに聞きました。僕にはなぜかいつも悪いことが起きる、君を巻き込みたくなかったと答えるアントン。

アーニャもコスモボールに興味は無く、それより父を救いたいと語りました。アントンは自分と似た境遇の彼女と意気投合し、その後母の元へ帰って行きます。するとアーニャはヴァラヤに姿を変えました。

ヴァラヤは手にしたアントンの髪の毛をチェルノに渡します。命の危険に曝され思わずテレポートしたアントンは、原型遺伝子を覚醒させていたのです。

目的の遺伝子を手に入れたチェルノ。それを利用して新たな生物兵器を作ろうと試みますが、上手くいきません。

兵器を完成させるには何かが足りません。原型遺伝子入手後、アントンを殺したかと娘に尋ねたチェルノ。

目的を果たす非情さを失ったか、とチェルノは言い放ちます。テレポート能力のある地球人がベロに従うと、自分の強敵になると警戒していました。

母の薬を手に入れたアントンが自宅に帰ると、そこにナターシャたちコスモボール地球チームの3名とベロがいます。

思わずテレポートした彼に、君はコスモボールプレイヤーの資格を得たと語るベロ。しかし元々コスモボールに興味が無いアントンは、病気の母の世話を理由に拒否します。

家に警察署長と部下が現れ、薬局に押し入った件で逮捕しようとしますが、ベロが特殊な力で凍結させました。

ナターシャはベロに、宇宙人の技術で母を治療しようと提案します。その条件でアントンのチームへの参加が決まりました。

アントンは一行と共にスタジアムに向かいます。巨大な花、タンポポのように見えるスタジアムは、自分が設計し作り上げた生物だと説明するベロ。

施設を守るセキュリティシステムのチェックを受け、中に入ったアントンたち。ベロは彼から遺伝子サンプルを採取します。そして彼の遺伝子情報はベロの開発したマイクロチップと融合され、彼と一体化するドロイド“スプートニク”が誕生しました。

彼と同じ血が流れるスプートニクは意志を持つ仲間であり、同時にコスモボールをプレイする際のユニフォームに変型する相棒です。

自らのスプートニクに“モーグリ”と名付けるアントン。彼は早速コスモボールプレイヤーになる訓練を受けました。

命の危険にさらされ目覚めたテレポート能力を自在に操れるよう、ベロとナターシャ、ペレが指導します。地球人離れしたアントンの才能に驚くベロ。

彼の身体能力なら、チームに欠けていたゴールキーパーの役割も果たせます。訓練を終え、ベロはナターシャと銀河評議会との会合に向かいます。

アントンの母を治療する技術の提供は、まだ未発達の地球文明には危険と判断した評議会。アントンの優れた能力は人類を次の段階に引き上げると、ベロは協力を訴えました。

共にアントンの自宅を訪れ、母を診たナターシャ。具合を気にするあまり、彼女に厳しい態度を見せるアントン。

母は息子の態度を自分を思うがゆえと、ナターシャに詫びました。アントンは月が崩壊した日、不思議なことに自分の体に宿ったと彼女に教えます。

独り思い悩むアントンに、アーニャから会いたいとのメッセージが届きました。

現れた彼にアーニャは迫ります。しかし彼女は、アントンがコスモボールチームの制服を着ていると気付き驚きます。

コスモボール嫌いと以前彼女に語っていた彼は、チームは辞めるつもりだと告げます。彼はベロの話を盗み聞き、母の治療する気は無いと信じていました。

アーニャは“タンポポ”と呼ばれるコスモボールの競技場が、植物で形作られているとアントンに確認すると、その植物を汚染する薬品を彼に渡そうとします。「競技場が無くなれば、無意味なゲームから皆が解放される」と訴えるアーニャ。

そこにナターシャがスプートニクと共に迎えに来ます。アーニャの魅力に負け断りきれず、薬品を受け取るアントン。競技場に戻るアントンは警察署長に追われますが、署長は中に入ることは出来ません。

選手の相棒であるスプートニクは、身に迫る危険を教えてくれるとナターシャは告げました。今彼に何か危険が迫っていると警告します。

彼の持つ薬品はセキュリティに検出されません。ゲームは見た目以上に危険だと警告し、試合に備え休むよう話すナターシャ。

コスモボール決勝戦の日、人々は競技場に集まり試合開始を心待ちにしていました。

集合した4人の地球チーム選手を前に、今日の試合の重要性を語るベロ。選手たちはスプートニクが変型したユニフォームを身にまといます。

アントンは最後まで迷いますが、自分のスプートニクであるモーグリを説得し、ユニフォームの中にあった薬品を取り出し床に撒きました。

試合に向かうアントン。対戦相手は体格の優れた選手、そして女性選手を中心に編成されたアマゾニアンのチームです。

試合前にアントンは相手チームに軽くあしらわれ、からかわれました。キャプテンのナターシャは気を引き締めるよう言いました。

両チームが競技場に入場します。ついに4名がそろった地球チームが挑むコスモボール決勝戦に、全人類・全宇宙が注目します。

アントンの母も、家に訪れた警察署長と共に中継を見ていました。観客がアントンの名を叫ぶ中、決勝戦が開始されます。

以下、『コスモボール COSMOBALL』のネタバレ・結末の記載がございます。『コスモボール COSMOBALL』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

エレルギー体が撃ち出され試合が開始されますが、アントンはボイコットするようにその場で座り込みます。それを見て驚くベロ。観客からはブーイングが起き、相手のアマゾニアンチームも戸惑います。

試合は中断されます。事情を聞きに現れたベロに、母を治療する約束は嘘だと抗議するアントン。

ナターシャが自宅の母の姿を見せ説明します。ベロは銀河評議会に掛け合い、地球人には未知の治療を行うことを承認させてました。

元々コスモボールに関心の無いアントンを競技場外に連れ出し、ベロはゲームの真の目的を教えます。

試合に使用されるエネルギー体は、“ウェーブイーター”と呼ばれる破壊兵器であること。それを無力化するには5回衝撃を与え、エネルギーを放出させる必要があること。それがこの競技の発端となったことを説明するベロ。

20年前に起きた惑星間戦争で月を崩壊させた、科学者でもある破壊者チェルノ。彼は実験室を持つ脱出艇と共に、墜落した地球の地下深くに封印されましたが、今もウェーブイーターを製造しています。それを人々に気付かれず処理するために生まれたスポーツがコスモボールでした。

地下のチェルノを処刑すれば彼の宇宙船の実験室は爆発し、地球は月のように粉々になります。そこでタンポポと呼ばれる競技場を作り、危険を顧みぬ勇敢なプレイヤーが、ゲームを装い大量破壊兵器のエネルギー体を処理すると説明したベロ。

また万が一エネルギー体が爆発した場合にも備えて、その爆発の範囲を抑え、観客には危害が及ばぬようベロはタンポポ内部を設計していました。巨大な宇宙船でもある競技場、タンポポはウェーブイーターから地球と人類を守る役目を担っていたのです。

殺すことが出来ないチェルノの破壊兵器を封印するために始まったコスモボール。それが人気スポーツになったのは、ベロにも予想外の展開でした。

ベロはこの重大な秘密を、アントンがゲームに馴染んでから説明するつもりでした。ただのスポーツと信じていた彼は驚き、アーニャから渡された薬品をすでに撒いてしまっていたことから、大慌てで現場に向かいます。

既に競技場を構成する植物の腐食は始まっていました。次のウェーブイーターを放出され、地球チームはアントン抜きで再開されたゲームに臨みます。

競技場に戻ったアントンは、施設の崩壊が始まったと叫びます。ベロは亀裂を凍結させますが、薬品の毒素は生物組織に感染して広がり崩壊は止められません。

競技場には緊急放送が流れ、観客席は強制的に脱出されます。逃げ遅れた観客を救おうとするナターシャ。また暴走するウェーブイーターをアマゾニア、そしてテレポートしたアントンが連続して衝撃を与え無力化していきます。

倒れたアントンを、ベロは奇跡的な活躍と讃え医務室に行くよう告げます。彼の行為を勇敢と讃える対戦チームのアマゾニアン。

アントンはユニフォームに変型していたモーグリを外して隠し、1人でアーニャの元に向かいます。

ベロたちは競技場を侵した毒素が、チェルノが遺伝構造をコピーして製造したものと気付きます。そしてアントンを追うモーグリに気付いたナターシャ。

アーニャは現れたアントンをガスで麻痺させ、ヴァラヤの正体を現します。父チェルノの指示で彼の原型遺伝子を覚醒すべく、幼いころから恐怖を与え続けたと告白しました。長年アントンを見守っていたヴァラヤには、彼に屈折した愛情があるようです。

ヴァラヤはアントンの頭に器具を突き刺し、完全に覚醒した原型遺伝子を採取しチェルノに送ると隠れ家から脱出します。

しかし、隠れ家にモーグリが現れます。そして頭部を傷付けられたアントンを、「選手と同じ遺伝子」で作られたスプートニクとして治療し終えると力尽きました。

チェルノは娘に渡された原型遺伝子から兵器となる、新たな巨大生物を生み出します。その体内に入り意志を乗っ取るチェルノ。

アントンが意識を取り戻した時、ベロとナターシャが駆けつけました。ベロはこの場所にチェルノの実験設備と同じものがあると気付きます。ベロに問われ、自分が騙され競技施設のタンポポに毒薬を与えたと認め、謝罪するアントン。

そこにチェルノからのメッセージが入ります。ベロを自らの創造者と呼び、自分の元に来いと要求するチェルノ。その言葉にナターシャは驚きます。

モーグリはあなたの命を救った、とアントンに告げ外に駆け出すナターシャ。

街にチェルノの作った怪物がテレポートして出現、破壊を開始します。それを見つめるベロと各惑星のコスモボール選手たち。ヴァラヤも怪物の体内に入り、チェルノは怪物と共に宇宙へ飛び立ちました。

ベロは選手たちに地球に残れと告げ、銀河評議会への報告に向かいます。そして競技場ではなく「宇宙船」として飛び立つタンポポの中から、全人類に真実を告げます。

コスモボールは宇宙戦争の一部であり、地球を破壊から守るためタンポポを建造した。しかし悪を封印する試みに失敗し、まもなく破壊弾が20年前のように地球に降り注ぐが、我々は最善を尽くす。

人々への謝罪と共に全てを語り終えたベロは、チェルノとの決戦に向かいます。自分の引き起こした事態に打ちのめされ、機能停止したモーグリを抱えて出たアントン。

自宅に帰り打ちひしがれていたアントンを、誤りを犯したなら正せば良いと母は励まします。

ベロの元に現れたナターシャは、チェルノが彼を「創造者」と呼んだ理由を尋ねました。

チェルノはベロが、自分と同等の能力を持つ分身として創造しました。自分を助ける存在になるはずが、感情を与えられたチェルノは暴走を始めます。

彼の始めた研究は宇宙の文明を危険にさらすものです。こうしてベロとの宇宙戦争がはじまり、人類は大きな被害を被りました。

自分を阻止する能力を持つコスモボールの選手を、地球に足止めしようと宇宙からウェーブイーターの雨を降らせるチェルノ。コスモボールのアスリートたちは、上空にテレポートして破壊弾を迎え撃ちます。

怪物を包囲した銀河評議会の大艦隊を、チェルノの生んだ怪物はいとも簡単に破壊していきます。アスリートはウェーブイーターの着弾を阻止しますが、爆発で地表に被害が現れます。それに気付き立ち上がるアントン。

アントンは復活したモーグリを母に託し、ユニフォーム無しで地球を守る闘いに加わります。

被害で出始めたモスクワの街では、警察署長がアントンの母に思いを告げ避難させていました。

倒れた幼いアスリート、フィンを助け闘いに戻るアントン。しかし爆発の衝撃で吹き飛ばされました。それに気付き彼の元に飛ぶモーグリ。

アントンはモーグリが変型したユニフォームを身に付けます。スプートニクと一体化した彼は、一撃でウェーブイーターを破壊する力を持っていました。

ナターシャはベロと共に怪物の体内にテレポートします。創造者ベロに対する愛憎を語るチェルノに襲い掛かるナターシャ。しかしヴァラヤに阻止されます。

ベロとチェルノ、ナターシャとヴァラヤは激しく闘います。しかしナターシャ、そしてチェルノを氷漬けにしたベロをガスで無力化するヴァラヤ。ウェーブイーターを破壊しつつ、宇宙にテレポートしたアントンはナターシャの危機を悟ります。

人々と共にシェルターに逃げ込んだ警察署長は、アントンの母とキスすると、皆を守ろうと武器を手に取りました。

アントンは怪物の体内にテレポートし、ヴァラヤを人質に取ります。娘は完全な創造物ではないと告げ、ヴァラヤごと彼を攻撃するチェルノ。

怪物の体組織に取り込まれテレポートできないアントンに、チェルノはとどめを刺そうとします。その時注意を引き囮となり、攻撃を受けたベロ。

父に見棄てられ、アントンに今がチャンスと告げるヴァラヤ。怪物はアントンと同じ原型遺伝子から創られ、彼は怪物の意志と感応することができました。

無敵の怪物も、その精神は生まれたばかりの幼いものでした。怪物をなだめて友になるアントン。しかしチェルノは強制的に怪物を支配しようと試みます。

地上では警察署長たちが、市民たちに応援されウェーブイーターに立ち向かおうとしていました。

怪物は抵抗し、チェルノとウェーブイーター発生装置を体外に吹き飛ばます。太陽に落下し消滅するチェルノと装置。その瞬間ウェーブイーターも活動を停止し、モスクワの人々も救われました。

飛び立ったはずのタンポポは地上に戻っていました。ナターシャの指導の下、ウェーブイーターをエネルギー源に人々の生活は改善されます。

アントンは怪物を操り、その力と銀河評議会の協力により月を再建します。亡きベロの意志を継ぎ、地球文明を再興しようと訴えるナターシャ。人類は苦難の20年を耐え、新たな時代を迎えようとしていました。

コスモボールの地球チームの4名の前に現れた、警察署長とアントンの母は結婚を報告します。

アントンは警察署長に仲間を紹介します。しかし彼はナターシャを前にして緊張すると、いまだに直らないテレポートの癖が出てしまいます。

こうして平和と未来を取り戻した地球。しかし宇宙空間には、眠りについたヴァラヤが漂っていました。

映画『コスモボール COSMOBALL』の感想と評価


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

何ともスケールの大きな物語です。その壮大過ぎるスケールには、ゲームからコミックへと発展し、いつの間にか宇宙人と試合をしていたサッカーアニメ「イナズマイレブン」シリーズ(2008~)をつい思い出してしまいます。

という指摘はさておき、本作のロシア語原題を直訳すれば「銀河のゴールキーパー」。確かに主人公はサッカーではいえば、ゴールキーパーポジション。それにしては非常に攻撃的ですが、やはりコスモボールはサッカー、或いはフットサルを彷彿とさせます。

“ロシア版・マーベルヒーロー映画”として企画


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

本作の製作は2014年8月、ジャニック・フェイジエフがマーベル映画に劣らぬ、ロシア製スーパーヒーロー映画製作を発表したことに始まります。

宇宙戦争に巻き込まれ環境が激変した地球、地球外文明との交流、超能力を得た新人類の誕生……とSFヒーロー物らしい設定が与えられ、それに相応しい世界観が構築されます。

製作期間はのべ5年に渡ります。主要なロケ撮影は2017年6月から数か月間行われましたが、特殊効果などポストプロダクション作業に多大な時間が費やされました。

2018年1月には正式な予告編が完成、2019年1月の公開予定でしたが製作陣の技術的問題から10月に延期。さらに競合作の公開と重なったために、2020年8月に変更と紆余曲折をへてロシアで劇場公開されました。

ハリウッド映画に関わったCGのスペシャリストなど、多くの特殊効果スタッフが参集した本作は、その製作経緯もあり「ロシア映画界のSFX技術の水準を引き上げた」と評されています。

世界の映画興行が厳しかった2020年。ロシア映画界では困難な時期に公開された、自国製大作映画を大いに注目しました。しかし7億8600万ルーブルの製作費を投入した本作の、興行収入は1億600万ルーブルと厳しい結果となりました。

未来世界を描いた映像に生きる“ロシアらしさ”


(C)2020 Studio Bonanza / CTB Film Company / Cinema Foundation of Russia

ゼロから築き上げたセンス・オブ・ワンダーなSF世界を、2時間弱の上演時間で説明して描いた本作。駆け足の内容ゆえにストーリーが薄味に感じられる方もいるかもしれません。

また海外作品を強く意識した結果か、一部のゲームや映画キャラクターとの類似が指摘されるなど、ロシア本国の映画ファンからも手厳しい声が上がっています。

とはいえ海外作品を含め既存の作品から影響を受け、マッシュアップして新たなものを創作するのは、いずれの分野でも行われていること。特にジャンル映画では当然の行為です。

むしろマーベル映画、それに類するSF大作映画の影響を受けつつも、作品に色濃く残ったロシア的なものに注目した方が、映画の観方としては面白いでしょう。

「やや荒んだ未来の社会」を描くと、ソビエト製SF風刺コメディ映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)を思い出させる描写が、画面に現れるから不思議です。そして主人公たちのユニフォームが中世ロシア騎士の代名詞「鎖帷子(チェーンメイル)」に似ているのはご愛敬。

また線の細い美少女系のヒロインと、逞しいパワフルなお姉さんが対になるように登場するのも、これまたロシア的趣味と紹介して良いはずです。

まとめ

参考映像:『スター・ファイター』(1984)

SF大作として、またロシア映画のSFX技術の水準の高さを見せた映画として、興味深い『コスモボール COSMOBALL』。綿密に描かれた独自感ある未来世界の映像に注目してみて下さい。

一方で未知のヒーローを必死に、慌ただしく紹介した映画との感も否めません。それでも原作の無い企画を立ち上げ、多くの時間と予算をかけ本作を完成させたロシア映画界の力量には注目すべきです。

スポーツやゲームが、そのまま世界を救う宇宙空間での戦いになるというお話は、『スター・ファイター』(1984)以来数多く作られています。

『スター・ファイター』は映画に本格的にCGを取り入れた、初期の作品としても有名です。SF映画の歴史の中で、本作のテーマ的・SFX技術的位置づけを考えるのも良いでしょう。

ですが、やはりイチ推しは間違いなくアマゾニアンの女性たち。強くて逞しく、ともかく大きな存在です。『妖怪巨大女』(1958)や『モンスターVSエイリアン』(2009)など、大きなおネエさんが好きな人にはタマらない、と約束しましょう。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C) 配給:「潔白」上映委員会

次回第18回は、殺人事件の容疑者となった認知症の母を救うために弁護士となった娘が見つけ出す、事件の背後にあった真実とは……韓国のミステリーサスペンス映画『潔白』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら






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