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中国映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝 』あらすじネタバレと感想。原作は大人気の冒険アドベンチャー小説|未体験ゾーンの映画たち2020見破録10

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第10回

世界の東西各地様々な映画が大集合の「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催しています。2月7日(金)からはシネ・リーブル梅田でも実施、一部作品は青山シアターで、期間限定でオンライン上映されます。

前年は「未体験ゾーンの映画たち2019」にて、上映58作品を紹介いたしました。

今回も挑戦中の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」。第10回で紹介するのは、アドベンチャー映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』

日常の世界と異なる、胸躍る秘境は、誰もが訪れたいと想像するもの。映画草創期から秘境を舞台にしたドキュメンタリーや探検映画が作られれてきました。一方劇映画の分野でも、異国や異なる時代を舞台にした様々な映画が作られます。

この2つが結び付くのは当然の流れ。冒険アドベンチャー映画が誕生すると、時代と共によりスケールの大きな、より斬新な秘境を描いた娯楽作が求められ、現在に至ります。その冒険アドベンチャーの世界を、中国がより大きなスケールで映画化した作品です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』の作品情報


(C)2018 Dream Author Pictures(Beijing) Co.,LTD Huayi Brothers Pictures Ltd. Tencent Penguin Pictures(Shanghai)Co.,Ltd.Shenzhen Feixing Film Culture Development Co.LTD Shenzhen Kimson Media Co.LTD All rights reserved.

【日本公開】
2020年(中国映画)

【原題】
云南虫谷 / Mojin: The Worm Valley

【監督】
フェイ・シン(非行)

【キャスト】
ツァイ・ハン(蔡珩)、グゥ・シュアン(顾璇)、ユ・ハン(于恒)、チェン・タイシェン(成泰燊)、マ・ユケ(马浴柯)、チェン・ユシ(陈雨锶)

【作品概要】
人々を苦しめる大古の女王の呪いを解く宝物を求め、中国奥地の秘境を冒険する勇者一行の活躍を描く、アトラクション・アドベンチャー大作。主人公のヒーローを演じるのは、中国でドラマに出演し人気上昇中のツァイ・ハン。ヒロインは2018年の映画『抵达之谜』で注目を集めたグゥ・シュアンです。

注目株の若手俳優が集まる中、チェン・カイコー監督作品『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』に出演のベテラン、チェン・タイシェンが脇を固める、作り込まれた美術や高度なVFXを駆使した冒険活劇映画です。ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。

映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Dream Author Pictures(Beijing) Co.,LTD Huayi Brothers Pictures Ltd. Tencent Penguin Pictures(Shanghai)Co.,Ltd.Shenzhen Feixing Film Culture Development Co.LTD Shenzhen Kimson Media Co.LTD All rights reserved.

千年前、魔力を持つ精絶国の女王は、民を服従させるために呪いの印を付けました。呪いは子々孫々にまで引き継がれ、呪いの印を持って生まれた者は40歳で死んでしまいます。

女王の秘宝、龍骨天書(ロングー)と雮塵玉(ムーチェン)の2つを揃えることが出来れば、女王の呪いから人々を解放することが出来ます。その秘宝の探索に、今まで数多くの勇者や冒険家が挑んでいました。

秘宝の1つロングーは、今はソン教授(チェン・タイシェン)の手にありました。教授は古文書を読み解きもう1つの宝、ムーチェンが雲南省奥地の、“光る雲”と“龍の山”が示す場所にあると突き止めます。

それを聞いて、必ずムーチェンを手に入れようと誓うバーイー(ツァイ・ハン)。彼は伝説の盗掘師の子孫で、トレジャーハンターとして数々の冒険に挑み、古代の秘宝を手に入れてきました。ロングーも彼と教授と、その仲間たちの力で手に入れたものです。

その頃街ではオークション会場で、バーイーの仲間“金歯”(マ・ユケ)と“太っちょ”(ユ・ハン)が骨董の売買を行っていました。しかし大した売り物も無く、客は目当てのロングーを出せと騒ぎ出し、乱闘が始まります。

2人の仲間の娘リンロン(チェン・ユシ)も加勢し、騒ぎは大きくなりますが、皆から信頼されているリンロンの父、ジウェイが現れると、皆争いを止め姿勢を正します。彼の指示で金歯”と“太っちょ”は肩を見せます。そこには呪いの印が刻まれていました。

バーイーとここにいる若者たちは、人喰い蜘蛛や紅い眼の狼の襲撃をかわし、苦難の果てにロングーを手に入れた。精絶女王の呪いから解放されたい思いは皆同じだ、ロングーは売り物ではない。ジウェイの言葉に静まり返る一同。

バーイーとソン教授の前に、シャーリー(グゥ・シュアン)がムーチェンの手がかりを持って現れます。かつてムーチェンを求め、遺跡に向かった探検隊の生き残りがいたのです。その人物チェンは両目を失明し、精神に異常をきたし1人帰ってきました。

バーイーとシャーリーと教授は、チェンが入院する精神病院に向かいます。チェンは美しいシャーリーに関心を示し、彼女にだけ話すと要求します。シャーリーを愚弄するものの、肝心な事は話さぬチェン。しかしムーチェンについて訊ねられると、血相を変え叫びます。

あの山に行ってはならぬ。人の人生は80年、山の一生は10万年。山のひと眠りは2千年、寝返りを打つのに8百年。凡人に計り知れるものではない。そう語ってからシャーリーに立ち去るよう指示するチェン。

その態度に怒ったシャーリーは、あなたは臆病で逃げ帰ったから、ムーチェンを手に入れられなかったと言い捨てます。するとチェンは、そんなに私の目が見たいかと言い放ち、サングラスを外します。

彼の目は不気味な色に光っていました。そして、決して“山の主”の目を見てはならない、とだけ呟きます…。

バーイーとシャーリーとソン教授、“金歯”に“太っちょ”とリンロンの6人は、秘境の山を目指し雲南省をバスで奥地へと進みます。

山道でがけ崩れに会いバスは停車しますが、一行はがけ崩れの中に異様な蟲がうごめく、繭に包まれたミイラを発見します。この場所は献王の墓に近い、と仲間に告げるソン教授。

6人が先を進むと、花畑に包まれた建物が現れ、その宿の女主人ツァインがバーイーを出迎えます。バーイーは軍人時代この地に赴任しており、彼女と顔なじみでした。

ツァインに“龍の山”に至る水路を訊ねたバーイー。彼女は明日、娘のコンチェに案内させると言います。軍人時代、幼いコンチェに懐かれたバーイーですが、現れたコンチェは年頃の娘に成長していました。

バーイーとの久々の再会を喜び、はしゃぐコンチェの姿が馴れ馴れしく見えたのか、どうやらシャーリーの心中は穏やかでない様子です。

夜になると、宿の周りに蛍が現れます。通常より美しい輝きを放つ蛍を“太っちょ”が捕まえると、突然燃え上がります。コンチェはこの蛍は、掴むと燃えて死ぬと注意します。

コンチェは瓶に入れた、巨大な蛍を見せます。この“蛍の王”にひかれて他の蛍が集まってくる、そう言って瓶のふたを開けると、無数の蛍が集まります。リンロンと“太っちょ”が瓶を持ち走ると、銀河のように集まった蛍が後を追い、その光景に皆魅了されます。

バーイーはシャーリーに、この地の“蛇盘山”こそ“龍の山”だと語ります。高くそびえ王の冠を守る上山、立ち入った者は妖魔に襲われる。そんな伝承を持つ山に入れば、無事では済まないかもしれない…。

言葉を続けるバーイーの想いを知ったシャーリーは、彼と口づけを交わそうとしますが、“金歯”と“太っちょ”とリンロンに冷やかされ止めました。

翌日は晴天でした。コンチェの案内で険しい山道を進む6人。山中の池に到着すると、彼らはイカダを用意します。湖にある洞窟が、“蛇盘山”へ進む道の入口でした。6人はコンチェと別れ、2つのイカダで池へ漕ぎだします。

最後に、この先の峡谷は夜になると有毒のガスが発生するので、高い場所である“小島”に逃れるよう伝えるコンチェ。

イカダは暗い洞窟の中の水路を進みます。すると“太っちょ”が、リンロンに瓶に入れた“蛍の王”を見せます。コンチェに黙って持ち出した彼をリンロンは注意しますが、彼は盗んではいない、借りただけで後で返すと釈明します。

魚に気付いた“金歯”が触れようとして噛まれます。それはピラニアのように獰猛な肉食魚でした。獲物に気付いた魚は、群れをなして襲ってきます。男たちは刃物で、シャーリーは弓矢で、リンロンはパチンコを放ち応戦します。

洞窟の天井に鎖で吊り下げられた、無数の繭状のミイラがあり、侵入者に反応し次々と落ちてきます。水中に落ちたミイラからはい出た蟲は、羽化して群れをなし襲ってきます。シャーリーを鉄傘で守るバーイー。ソン教授の用意した火炎放射器で抵抗します。

追い詰められた一同ですが、2つのイカダは急流に呑まれ別々に洞窟から出ると、その先の巨大な滝に流され落下していきます。

一同は無事でしたが、2組に別れてしまします。バーイーとシャーリーと“金歯”は密林に上陸し、教授とリンロンと“太っちょ”は、巨大な甕の並ぶ場所に出ます。甕にはミイラ化した遺体が入っていました。

甕を見たソン教授は、これは献王の遺跡で、王の墓を作るのに駆り出された民の遺体だと説明します。甕に刻まれた文字から、献王は精絶女王を信仰していたと悟った教授。

この地ではバーイーの持つ古来より伝わるコンパスも、教授の探知機も働きません。バーイーは巨大な獣の足跡に気付きます。

峡谷は巨大で敏捷なワニの住みかでした。一同はワニから逃れようと、必死に走ります。教授たちは居場所を知らせようと信号弾を打ち上げます。逃げまどいながらも、バーイーらは教授たちと合流出来ました。

ワニの群れから逃れるために、崖を転がり落ちた6人。しかしそこもワニの棲みかでした。無数のワニが迫ってきますが、雷が鳴ると怯んで動きを止めます。教授の推測通り、ワニは視力が弱く聴覚を頼りに獲物に襲いかかりますが、大きな音が苦手でした。

夜の闇が近づき、毒ガスが広がりつつあります。教授は空に浮かぶ不思議な島を発見します。これがコンチェの語った“小島”でした。

バーイーは稲妻を確認した後、雷鳴が到達するタイミングを計り、その音でワニが怯んだ隙に島まで駆け抜けようと一同に語り、行動に移します。

しかし教授が蔓に絡まり動けなくなります。バーイーとシャーリーが囮になり、ワニを崖に落とすことで危機を脱し、一同は宙に浮かぶ不思議な島に到着します。

島は岩石が発する磁力で浮き、それを巨木が支える奇跡が生んだ場所でした。そこは美しい花が咲き1日で四季が巡る、楽園のような場所でした。シャーリーとリンロン、“金歯”と“太っちょ”は池に飛び込み戯れます。

冒険を通じ、リンロンと“太っちょ”は信頼し愛し合う仲になっていました。しかしソン教授はこの余りにも危険な旅が、将来ある若い仲間の命を奪う事にならないかと悩んでいました。

それを聞いたバーイーは、人々を救う可能性が少しでもある限り、旅を続ける意味はあると語り、仲間に誘われ池に飛び込みます。彼らは今ある生を楽しみます。

朝日が晴れ渡る中、6人の冒険家は花が咲きほこる道を“龍の山”へと進んで行きます。

以下、『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』ネタバレ・結末の記載がございます。『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 Dream Author Pictures(Beijing) Co.,LTD Huayi Brothers Pictures Ltd. Tencent Penguin Pictures(Shanghai)Co.,Ltd.Shenzhen Feixing Film Culture Development Co.LTD Shenzhen Kimson Media Co.LTD All rights reserved.

“龍の山”こと“蛇盘山”のふもとに到着した6人の冒険家。そこは石塔が立ち並び、山の切り立った崖に棺が埋め込まれた不気味な場所で、突然池から巨大なザリガニが現れます。

それは痛みを感じず、傷つけても池に戻れば回復する“不死のザリガニ”でした。皆で攻撃しても動きを止めぬザリガニは、リンロンを追い詰めます。彼女は“太っちょ”に救われますが、深手を負っていました。

彼らはザリガニを倒れた石塔の下敷きにして弱らせますが、怪物は池へと逃れます。それを見たバーイーは池に飛び込み、自らが囮となって集めた肉食魚の群れにザリガニを襲わせ、とどめを刺すことに成功します。

バーイーも無事戻り一同はホッとしますが、その目前でリンロンが倒れます。彼女は愛する“太っちょ”に、自分が生まれ変わっても追いかけてきてね、と言って目を閉じます。リンロンは“太っちょ”に抱きかかえられながら落命し、一同は深く悲しみます。

その頃リンロンの父・ジウェイは、精神病院に入院中のチェンと面会していました。“蛇盘山”から生きた帰った彼はこうつぶやきます。全てを諦めた者のみ、生きて帰ることができると。

冒険者たちはリンロンを棺に納め、水路に流します。こうすれば現地の娘、コンチェに案内された場所に流れ着くはずです。消沈した一同に、ソン教授は全てを諦めた者のみ、生きて帰ることができると告げます。

古文書を読み解いた教授は、引き返そうと提案します。この先に持ち受けるものは更に過酷だ。皆家族がいる。我々の人生は短いし、死んだらやり直す事はできない。我々はリンロンから未来を奪ってしまったと、自責の念を込めて語るソン教授。

シャーリーの提案で多数決を取ることになり、バーイー以外は皆、引き返す事に賛成します。しかしバーイーは俺は進むことしか出来ない、旅を続けたいと語ります。

自らの身にも、精絶女王の呪いの印を持つバーイー。この印は俺たちの意志に関係なく、勝手に付けられたものだ。この宿命を打ち破り、ここで全てを終わりにしたい。冒険を続ければ、俺は後悔せず死ぬことが出来る。彼は力強く宣言します。

その言葉を聞いたシャーリーは荷物を取り、バーイーにキスをすると彼と共に進みます。後に続く“太っちょ”と“金歯”。教授は若い君たちこそ人生を全うして欲しかった、私は旅から降りるが、君たちを洞窟の入口で待つと告げ、早く行けと叫び去って行きます。

4人は崖を登ります。その上に“光る雲”の上に立つ宮殿、献帝の墓所である“天空城”がそびえていました。その頃病院ではチェンが、美しい“天空城”の門こそ、地獄への入口だとジウェイに叫んでいました。

墓所に続く橋を進む4人。献帝の像の手に秘宝、ムーチェンがあります。しかし崖の棺の中から巨大なサソリが無数に現れ、彼らを取り囲みます。

サソリと闘う一同。仲間に助けられバーイーはムーチェンを掴み取ります。それに触るな、と遠く離れた病院で叫ぶチェン。

バーイーがムーチェンを手に入れると、吊り下げられた無数の鐘が鳴り響き、サソリは引き上げていきます。周囲を闇が覆い、献帝の墓所が崩れ落ちます。その中から現れたのは、巨大な蛇の頭でした。その蛇の瞳の奥に映るのは精絶女王の姿です。

女王は蛇にムーチェンを飲ませると野に放ちます。その蛇は地を這い巨大に成長していきます。人の人生は80年、山の一生は10万年。巨大に成長した蛇は山を巻き、時と共に山そのものになって行きます。こうして“龍の山”、“蛇盘山”が誕生しました。

その“蛇盘山”に精絶女王を信仰する、暴君献帝が築いたのが“天空城”。ここでバーイーたちは巨大な蛇と対峙していました。蛇の瞳を見つめると、チェンの様に目を奪われます。鳴り響く鐘の音に惑わされ、4人に全てを諦めよとの声が聞こえてきます。

俺は絶対に諦めない、と叫ぶバーイー。その声に3人も我に返ります。しかし蛇の巨大さに圧倒されて逃げまどいます。その時“太っちょ”の荷物から“蛍の王”を入れた瓶が転げ落ち、少し割れました。

“蛍の王”に反応し、“天空城”に集まる蛍の群れ。この蛍を掴むと燃えると言った、コンチェの言葉を思い出すバーイー。

蛍の大群を蛇に飲ませれば、退治できると考えたバーイーは、瓶を掴むと蛇に向かって行きます。しかし蛇に襲われ瓶は手から離れ、砕け散って“蛍の王”は飛び去ります。

全ては終わった、と思った時、ソン教授が“蛍の王”を掴み取ります。彼は別れた後、引き返して4人を追ってきたのでした。“蛍の王”を掴んだ教授の手が火を放ちます。

4人が叫ぶ中、教授は炎に包まれながら蛇の口に飛び込みます。その後を蛍の群れが続き、蛇は体内から燃え上がります。

蛇が苦しむと山は崩れ、大水が湧き流れ出します。焼け落ちる巨大な蛇から逃れたバーイーたちは、地を覆う水の中に飛び込み逃れます。

こうして脱出した4人は、リンロンを収めた棺と共に故郷を目指します。そしてリンロンの亡骸を、彼女の父ジウェイに返します。

ソン教授とリンロンの位牌の前に立つバーイーとシャーリー、“太っちょ”と“金歯”の4人は、2人の冥福を祈ります。

バーイーは持ち帰った秘宝、雮塵玉(ムーチェン)を龍骨天書(ロングー)と合せます。月の光に照らされると、4人の前でムーチェンは宙に浮き、ロングーの文字が光輝きます。

明日の朝、出発するぞと仲間に告げるバーイー。彼らの冒険は、まだまだ続きます…。

映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』の感想と評価


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中国の大人気冒険小説を映画化

開始前にも冒険があり、ラストはまだまだ冒険は続く、で閉じる物語。この展開に驚いた方もいるでしょう。この作品は中国の作家、天下霸唱(テンカバシン)の大人気小説、「鬼吹灯」シリーズ全8巻の、第3巻を映画化した作品です。


松永商事出版事業部

2006年にオンライン小説として発表された「鬼吹灯」は瞬く間に読者数が600万を越え、出版されるやベストセラー小説となります。その後次々と続編が誕生、コミック化、ゲーム化されました。コミックは日本語版も出版されています。

2007年にはハリウッドで映画化の話も持ち上がりましたが、まず中国で2016年にTVドラマ化されました。後に映画化権も中国の製作会社に移り、ドラマとは別のスタッフ・キャストで完成したのがこの作品です。

古代の墓を探検するトレジャーハンターという、将に中国版「インディー・ジョーンズ」と言うべき大人気小説です。本作がスケール大きなアドベンチャー映画として誕生した背景が、お判り頂けたでしょうか。

中華テイストの「インディー・ジョーンズ」誕生


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中国の古代文明と遺跡をファンタジー化、それを追う冒険家たち。将に「インディ・ジョーンズ」や「ロマンシング・ストーン」、「キング・ソロモンの秘宝」シリーズを彷彿とさせる作品です。

これら冒険アドベンチャー映画は1980年代にブームとなりました。しかし製作費がかかる事もあり衰退します。その後CGなどの技術進歩により、日常を離れた世界を描く映画も、SFや歴史物・ゲーム原作など様々なジャンルが発展し、現在に至ります。

そんな中、中国で正攻法で製作した冒険アドベンチャー映画が『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』です。大きく発展した中国映画界の勢いが感じられる作品です。

ハリウッドに匹敵するスケールを持ちながら、伝統のアクション、そしてあだ名で呼ばれる登場人物に、香港映画全盛期以来のノリが感じられます。また登場人物の死生感やその描き方が実に東洋的。我々には馴染みある世界です。

80年代アドベンチャー映画に挑戦した結果でしょうか、あるいは大作中国映画ならではなのか、全編に家族で楽しめる安心感があります。これを物足りないと感じるか、王道のエンタメ映画と受け取るかの判断は、ご覧の方自身に委ねます。

まとめ


(C)2018 Dream Author Pictures(Beijing) Co.,LTD Huayi Brothers Pictures Ltd. Tencent Penguin Pictures(Shanghai)Co.,Ltd.Shenzhen Feixing Film Culture Development Co.LTD Shenzhen Kimson Media Co.LTD All rights reserved.

現在中国映画界が持つ、スケール大きさを感じさせてくれる映画『トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝』。原作小説の人気が広まる姿も、日本以上にネット文化が盛んな中国の現状を感じさせてくれます。

ヒーロー・ヒロインを演じたツァイ・ハンと、グゥ・シュアン、チェン・ユシは、アジア系の俳優が好きな方が気に入る美男美女。先物買いをしたい方は要注目です。

ところでハリソン・フォードなら、本作の冒険家よりもっとスマートに、仲間も犠牲者にせず秘宝を手に入れたと思った方。良く考えて下さい。この映画はインディアナ・ジョーンズ博士が大の苦手の、蛇が出てきます。…きっとあの人、腰を抜かしますよ。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)Rapid Eye Pictures RIGHTS RESERVED.

次回の第11回はインドネシアの近未来アクション映画『フォックストロット・シックス』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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