映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』は2021年1月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国公開!
韓国国内のみならず世界中で大ヒットを記録したゾンビパニックアクション『新感染 ファイナル・エクスプレス』のその後の世界を描くヨン・サンホ監督の『新感染半島 ファイナル・ステージ』がいよいよロードショー公開されます!
パンデミックに襲われた半島を脱出し他国に逃れる際、船上で感染者が出て姉と甥を奪われたジョンソクは、香港で荒んだ生活を送っていました。あれから4年。彼は地元のヤクザから、半島に戻りゾンビが眠っている夜の間にドル紙幣が積まれたトラックを仁川港まで運ぶことを提案されます。
同じ境遇の3人の仲間と共に、再び半島の地を踏んだジョンソクを待ち受けていたものとは!?
韓国のスター俳優、カン・ドンウォンを主演に迎え、誰も予測できなかった驚異のアフター・パンデミックの世界を描いたノンストップ・サバイバルムービーです。
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CONTENTS
映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』の作品情報
【日本公開】
2021年公開(韓国映画)
【原題】
반도(英題:PENINSULA)
【監督】
ヨン・サンホ
【キャスト】
カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドユン、イ・レ、イ・イェオン
【作品概要】
韓国国内のみならず世界中で大ヒットを記録したゾンビパニックアクション『新感染 ファイナル・エクスプレス』のその後の世界を、前作に引き続きヨン・サンホ監督が描くノンストップ・サバイバルムービー。第73回 カンヌ国際映画祭(2020年)カンヌレーベル出品作品
撮影準備に1年間を費やし、2000平方メートルもの巨大セットを制作。VFXにはアジア随一のクリエイターたちが参加。カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョらが出演。
映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』のあらすじ
感染爆発が半島を崩壊させてから4年。
脱出時、船上で感染者が出て、姉と甥を死なせてしまった元軍人のジョンソクは、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていました。
そんな彼のもとに、犯罪組織の男たちが現れます。彼らはジョンソクにある仕事を提案しました。ロックダウンされた半島に戻り、木洞のオモク橋の近くに放置された大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するというものです。組織のボスは謝礼として半額を手渡すことを明言しました。
愛する妻子を失い、同じく廃人のような暮らしをしているジョンソクの姉の夫チョルミンらと共に危険な仕事に着手しますが、彼らを待ち受けていたのは、増殖した感染者たちと、631部隊という狂気の軍人たちでした。
両者に追い詰められたジョンソクは、ミンジョンという女性と2人の子どもたちに間一髪のところで救われます。
大金を届ければこの地獄から抜け出せるという最後の希望にかけて、ジョンソクとミンジョンはトラックを奪いますが、感染者たちが大挙として現れ行く手を塞ぎます。631部隊が追跡してくる中、彼らは目的を果たせるのでしょうか!?
映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』の解説と感想
社会性を内包するド派手なエンターティンメント
世界中で大ヒットし「Kゾンビ」なる言葉も生み出したヨン・サンホ監督の2016年の作品『新感染 ファイナル・エクスプレス』の後日譚にあたる本作は、初っ端から登場人物は韓国脱出を図っており、最後の砦だった釜山にも感染が広がったことが語られます。
「半島」とはずばり「朝鮮半島」のこと。韓国という国が崩壊してしまうという設定にまず衝撃を受けます。感染から逃れて生き残った人々は命からがら祖国を脱出したものの、さらなる苦難が待ち受けていました。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』ではソウルから釜山までの道程に朝鮮戦争のイメージを重ね、その前日譚にあたる同じくヨン・サンホ監督によるアニメーション映画『ソウル・ステーション/パンデミック』は、民衆に銃を向ける政府を描き、光州事件を彷彿させましたが、本作は朝鮮半島の歴史を重ねた前2作とは違い、未来への警告が込められています。
今も世界中の多くの地域で紛争があり、多くの難民が生まれていますが、その難民を受け入れるか否かというのは国際問題にもなっています。本作でも近隣諸国から受け入れを拒否され、立ち往生する船舶のショットが登場します。
また映画は難民認定の難しさや他国に移り住んでからの差別にも触れています。ヨン・サンホ監督は韓国を難民問題の当事者として設定することで、平和な日常というものがいとも簡単に崩れてしまうということを容赦なく描き出します。
カン・ドンウォン扮する主人公たちが、廃墟と化した危険な「半島」に、再び足を踏みいれることを決心するのはこのような背景があるからです。
こうした社会問題をある意味生真面目なまでに内包しながら、とびきりのエンターティンメントとして打ち出してくるのがヨン・サンホ監督作品の特徴であり、本作も怒涛のアクション・パニック・ホラーとして、期待を裏切りません。
感染者と狂気の軍隊
荒廃した半島では感染者だけでなく、半島に取り残された631部隊の軍人たちが驚異として立ちはだかります。
631部隊は、ダニー・ボイル監督の『28日後…』(2002)に登場する軍人たちを思い出させます。ソンビ以上に恐ろしいのは、狂気に陥った軍人たちというわけです。
キム・ミンジェ扮するファン軍曹は、見た目も感染者と見間違えるかのごとき迫力です。国民を守るために最後まで留まったがゆえに取り残されてしまったのか、あるいは、残った方が1つの「王国」の「王」になれるという権力欲であったのか? いずれにしても国民を守る軍人としての面影は跡形もなくなり、心は荒廃して冷酷な“人間ゾンビ”に成り果てています。
『ソウル・ステーション/パンデミック』を実写化するという企画のもと生まれた『新感染 ファイナル・エクスプレス』が『ソウル・ステーション/パンデミック』とはまったく別物になっていたように、本作も『新感染 ファイナル・エクスプレス』とはまったく違ったアプローチがなされています。
“感染三部作”がそれぞれ別の独自のスタイルを持っているところにヨン・サンホ監督のストーリーテラーとしての多才さを改めて感じさせます。
本作では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015/ジョージ・ミラー)を彷彿させる激しいカーチェイスが展開します。
さらにアクションやバトルが繰り出される度、その場その場に感染者たちがなだれ込んでくる面白さがあります。
ほぼ夜を舞台にした作品だけに、暗いトーンの画面が続きますが、そこに光が現れるや、その先にあるものを見定めようとする感染者たちの姿が浮かび上がります。ベテランの制作陣によって恐ろしくも完璧なビジュアルが作り上げられました。スピーディーな動きに加え、その圧倒的な数にも驚かされるでしょう。
胸が熱くなるエモーショナルなアクション
カン・ドンウォン扮する主人公を間一髪のところで救ったのは、まだ幼い少女たちでした。名子役イ・レが演じるジュニは天才的な運転技術を持っており、イ・イェウォン演じるユジンはラジコンを巧みに操作して、感染者たちをきりきり舞いさせます。
彼女たちは感染者がいる世界で4年間も過ごしてきました。感染者の怖さを知り尽くした上で、その対応、対策に精通しています。なんと頼もしい存在でしょう。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』ではコン・ユやマ・ドンソクが、愛する娘や妻をなんとか守ろうと懸命に行動する姿が感動を呼び起こしましたが、本作では子どもや女性も自ら行動します。
少女たちの母親であるミンジョンには、イ・ジョンヒョンが抜擢されました。彼女はジョンソクとの間にある因縁が存在するのですが、この女性の4年前の姿と今の姿の変わりように驚かされます。愛する者を守るために、人はここまで変わって強くなっていけるのかと激しく心揺さぶられます。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』にしても本作にしても、数々の見どころがありますが、何が一番素晴らしいかといったら、愛する人を守るために圧倒的な恐怖と困難に命をかけて挑む人間の熱い魂に尽きるでしょう。そこで巻き起こる怒涛のバトルの数々には思わずエモーショナル・アクションと叫びたくなるほどです。
まとめ
カン・ドンウォンは2014年の『群盗』(ユン・ジョンビン)の妖艶ともいえる悪役や、『MASTER/マスター』(2016/チョ・ウィソク)の颯爽とした刑事役、『1987、ある闘いの真実』の若々しい大学生役などで知られる韓国を代表するスター俳優です。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』では、元軍人ということで、素晴らしいガンアクションを披露していますが、決してスーパーヒーローではなく、むしろ最初は受け身ともいえる演技を見せています。そんな彼がどのように変化していくのかが一つの主題となっています。
イ・ジョンヒョンは、これまでにない役柄に挑戦。颯爽たるアクションで、新たな魅力を見せています。
キム・ミンジェ扮するファン軍曹とク・ギョファン扮するソ大尉との緊張関係や、ナ・ホンジン監督の『哭声 コクソン』(2016)で一躍名を挙げたキム・ドユン演じるジョンソクの義兄・チョルミンの受難などにも是非注目してみてください。
また、廃墟と成り果てた半島のビジュアルも、霧に包まれた仁川港から始まって、一つの国の消滅の姿をリアルに表現しています。それでいて、荒廃の中に生まれる新たな美を伝えることに成功しています。
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