Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/08/10
Update

『カーライル ニューヨークが恋したホテル』レビューと内容解説。プロの流儀と一流のプライドとは|だからドキュメンタリー映画は面白い24

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第24回

世界中のセレブたちが集うという、“秘密の宮殿”の魅力に迫る――。

今回取り上げるのは、2019年8月9日(金)からBunkamuraル・シネマほかで全国順次公開される『カーライル ニューヨークが恋したホテル』。

ハリウッドスターやミュージシャン、ファッションモデルたちが愛してやまないニューヨークの名門ホテル、「ザ・カーライル ア ローズウッド ホテル」の魅力が明らかとなります。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』の作品情報


© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Always at the Carlyle

【監督・脚本】
マシュー・ミーレー

【キャスト】
ジョージ・クルーニー、ウェス・アンダーソン、ソフィア・コッポラ、ジョン・ハム、アンジェリカ・ヒューストン、トミー・リー・ジョーンズ、ハリソン・フォード、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、ウディ・アレン、ヴェラ・ウォン、アンソニー・ボーデイン、ロジャー・フェデラー、レニー・クラヴィッツ、ナオミ・キャンベル

【作品概要】
ニューヨークのアッパーイーストサイドにそびえ立つ、1930年創業の「ザ・カーライル ア ローズウッド ホテル」の魅力に迫るドキュメンタリー。

ジョージ・クルーニーやウェス・アンダーソンをはじめとする総勢38名のセレブたちや、実際にホテルに勤めるスタッフたちのインタビューを交え、カーライルにまつわる秘話や、究極のおもてなしの真髄が明かされていきます。

監督のマシュー・ミーレーは、これまでにニューヨークに関するドキュメンタリー映画を多数手がけてきた人物で、本作制作のためにカーライルに4年間通い詰めました。

映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』のあらすじ


© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ニューヨーク、アッパー・イーストサイドにある「ザ・カーライル ア ローズウッド ホテル」。

1930年に、金融と海運業で富を築いたモーゼス・ギンズバーグによって建てられ、イギリスの思想家トーマス・カーライルにちなんで名づけられたこのホテルは、富裕層が暮らすアッパー・イーストサイドの象徴として、数多くのセレブに愛されてきました。

この格式高い5つ星クラシックホテルの魅力を、ジョージ・クルーニーやソフィア・コッポラ、ウェス・アンダーソンといった総勢38名のスターたちが語ります。

一方で、宿泊客に愛されるホテルスタッフからのインタビューも交えつつ、カーライルに脈々と息づく、究極のおもてなしの真髄が明らかとなります。

スポンサーリンク

ドキュメンタリーのニューヨーク派マシュー・ミーレー監督

参考映像:『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』予告

本作監督のマシュー・ミーレーは、長編映画『Everything’s Jake』(2000、日本未公開)の監督としてスタートするも、2010年に『Gentleman Gangster』 (日本未公開)を手がけて以降はドキュメンタリー制作に専念。

老舗デパート「バーグドルフ・グッドマン」の歴史を追った『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』(2013)に、高級ブランドの知られざる逸話に迫った『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』(2016)と、ニューヨークの名門ショップがテーマの作品を連続で発表します。

ニューヨークを活動拠点とし、ニューヨークが舞台の作品を撮る、いわゆる“ニューヨーク派”な監督としては、シドニー・ルメット、マーティン・スコセッシ、ウディ・アレン、スパイク・リーがいますが、ミーレーはさしずめ、“ドキュメンタリーのニューヨーク派”監督といったところでしょうか。

「ドキュメンタリーの魅力は綿密な取材にある」と語るミーレーは、本作でも4年もの歳月をかけてザ・カーライルホテルに密着。

ホテルの常連客の一人であるジョージ・クルーニーを筆頭に、数々のセレブインタビューも実現するまでに2年もかかったと明かしています。

豪華セレブたちが明かす高級ホテルの魅力


© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

本作ではそのクルーニーや、モデルのナオミ・キャンベル、映画監督のウェス・アンダーソンに、はては元政治家のコンドリーザ・ライスといった名だたるビッグネームが次々登場し、ホテルにまつわるエピソードを語っていきます。

クルーニーが「まるで自宅のようにくつろげる場だ」と語れば、テレビドラマ「マッドメン」シリーズで人気を博したジョン・ハムは、「このホテルに泊まれたら自慢になる。僕は泊まったことがないけど」とジョークを交えます。

なかでも特筆すべきは、『ゴーストバスターズ』(1983)のビル・マーレイがインタビューに答えていることでしょうか。

マーレイといえば特定のエージェントを持たず、取材にほとんど応じないばかりか、公の場にさえめったに姿を見せないことで知られる人物。

映像からしても、偶然ホテルに居合わせた時を捉えたものと推測できるだけに、そんな彼のインタビューに成功しているのは、何気にスゴイ事なのです。

スポンサーリンク

“秘密の宮殿”スタッフのプロフェッショナルな流儀


© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

さらに本作では、カーライルに勤めるスタッフやOBたちにもカメラを向けます。

元ベルボーイがホテル内でジョン・F・ケネディ元大統領とマリリン・モンローが逢瀬を重ねる秘密の通路の存在をうやむやにかわせば、勤続20年のルームサービスは、サービス精神旺盛なジャック・ニコルソンのエピソードを披露。

「我々はお客様の情報は一切漏らしません」と言いつつ、嬉々としてインタビューに応じるスタッフの機転の良さが表れます。

一方でカメラは、“秘密の宮殿”のプロフェッショナルな仕事ぶりも捉えます。

宿泊者のイニシャルを刺繍した枕カバーを用意すれば、レストランの給仕長は毎日の朝食において100もの注文をこなす。

さらに、「連れてきたペットの犬の用足しを室内で済ませたい」という、無理難題ともいえる客の要望にも、「No」とは言わない究極のおもてなしで対応します。

ホテルが宿泊客を選ぶ


© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

数々のスタッフにスポットを当てる中で、カーライルというホテルの何たるかを象徴するのが、36年もの長きに渡って主任コンシェルジュを勤めてきた、ドワイトの存在です。

吃音症を抱えながらも、仕事への有能ぶりとその人柄から、宿泊客の絶大な信頼を得てきたドワイトですが、彼は雇われる際、ホテルの経営陣から「吃音を治す必要はない」と告げられていました。

会話こそスムーズではないかもしれませんが、ホテル側にすればそれは問題ではなく、客へのおもてなしがしっかりと出来ることが重要。

もっと言えば、「応対したコンシェルジュが吃音であることを不満に思う客は、カーライルの宿泊客としてふさわしくない」ことを暗に意味します。

究極のおもてなしをするに値する、“豊かな心”を宿泊客にも求めるカーライル。

本作は、名門ホテルを紹介するカタログ映像としての意味合いもなくはありません。

しかしその実は、長年築き上げてきたホテルとしてのプライドが、節々に見え隠れしているのです。

© 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら



関連記事

連載コラム

村上由規乃映画『オーファンス・ブルース』感想と評価。工藤梨穂監督の描いた希望を与える光|銀幕の月光遊戯 32

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第32回 終わらない夏、汗ばむ肌、記憶が抜け落ちていく中、彼女は幼馴染を探す旅へ出かける。 「ぴあフィルムフェスティバル2018」にてグランプリを受賞した『オーファンズ・ブ …

連載コラム

韓国映画『はちどり』感想とレビュー評価。キムボラ監督が描く思春期の少女の日常|OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録9

第15回大阪アジアン映画祭上映作品『はちどり』 2020年3月15日(日)、第15回大阪アジアン映画祭が10日間の会期を終え、閉幕しました。グランプリに輝いたタイの『ハッピー・オールド・イヤー』をはじ …

連載コラム

『ジオウ』キャストと平成仮面ライダーを演じた歴代イケメン俳優の出自|邦画特撮大全12

連載コラム「邦画特撮大全」第12章 先日2018年9月2日(日)から放送が開始した平成仮面ライダー20作記念作品『仮面ライダージオウ』。 いまや“仮面ライダー”というと若手イケメン俳優の登竜門です。オ …

連載コラム

【イカゲーム8話ネタバレ】結末あらすじ感想と考察評価。67番脱北のセビョクついに⁈最終回で456番ギフンはどうなるか⁈| イカゲーム攻略読本8

【連載コラム】全世界視聴No.1デスゲームを目撃せよ 8 2021年9月17日(金)よりファーストシーズン全9話が一挙配信されたNetflixドラマシリーズ『イカゲーム』。 生活に困窮した人々が賞金4 …

連載コラム

映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』あらすじネタバレ感想と結末解説。5万人のランナーの多種多様の人種やLGBTQなどダイバーシティをも描く|Amazonプライムおすすめ映画館2

連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第2回 Amazonプライム・ビデオから最新作として配信されたオリジナル映画・ドラマの中から“大人向け・女性向け・映画ツウ向け”な作品を厳選。 Cine …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学