Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/12/14
Update

おすすめ映画『ボクの高校、海に沈む』あらすじと感想。ダッシュ・ショウによる長編アニメーション|銀幕の月光遊戯16

  • Writer :
  • 西川ちょり

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第16回

来る2018年12月15日(土)、16日(日)に、座・高円寺2にてAfter School Cinema Club + Gucchi’s Free Schoolによる上映イベント【珍作?傑作?大珍作!! コメディ映画文化史】が開催されます。

今回は、その最強ラインナップの中から、アメリカの新進気鋭のイラストレーター、ダッシュ・ショウによる長編アニメーション映画デビュー作『ボクの高校、海に沈む(my entire high school sinking into the sea)』(2016)をご紹介します。

待望の日本初公開です!

【連載コラム】『銀幕の月光遊戯』一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『ボクの高校、海に沈む (My Entire High School Sinking Into the Sea)』のあらすじ

ハイスクールの二年生になったダッシュ・ショーは、唯一の友人で同じ新聞部に所属するアサーフとともに、スクールバスに乗っていました。

今日はいつもより、少し後ろの席に陣取ります。僕らはもう後ろの席に座ってもいいはずだ、とダッシュは息巻きます。

彼らは新入生向きの情報を詰め込んだ最新号を廊下で配りますが、誰も受け取ろうとしません。みんな私たちを嫌ってるんだわ、と女子部員のヴェルティは呟きます。

アサーフはヴェルティといい雰囲気。新聞部は三人しか部員がいないので、のけものにされたように思ったダッシュは、二人の悪口を号外として構内にばらまきました。

校長から呼び出しを受けたダッシュは悪態をつき、あらゆる報道に不適格と“永久記録”をつけられてしまいます。

ダッシュは、“永久記録”の書類を盗み出すため、資料室に忍び込みました。そこで彼は驚くべき書類を見つけます。

校舎の構造は州の耐震基準を満たしておらず、増築により地盤がぐらつくという調査結果が書かれていました。

校長はこれを無視し、屋上の増築工事を行っているのです。

その時、生徒会のメアリーが携帯を取りに入ってきました。ダッシュはメアリーに、地震が起きると学校が沈むと言って近寄りますが、ビンタされてしまいます。

アザーフとヴェルティが図書館で話をしていると、ダッシュが入ってきました。学校は耐震が不十分で地震が起きたら沈んでしまう、今すぐ逃げようと彼は呼びかけますが、誰にも相手にされません。

ダッシュとメアリーは勝手に資料室に入ったと、先生に追い出され、教室に閉じ込められてしまいます。

その時、地震が起こり、二人は重なるように倒れました。「言ったとおりだろ?」とダッシュが言うと、メアリーは「あんたと一緒にいたくない」と地震で開いたドアから出ていってしまいました。

地震で地盤が崩れ、学校は海に落ちて浮かんでいる状態。徐々に沈み始めるはずです。

ダッシュが図書室に言ってみると、炎が出て、悲惨なことになっていました。アサーフは倒れた書棚の下敷きになっていて、ダッシュに助け出されました。

倒れているヴェルティを医務室に連れて行くと大勢の人が集まっていました。海水が入ってきて、サメが人を襲い始めました。

ダッシュとアサーフとヴェルティは泳いで避難します。ダッシュは途中で、意識を失って沈みますが、“学食のロレイン”に助け出されます。

三階のフロアには臨時救護室が作られ、三年生たちが避難していました。みんな事態をよく理解しておらず、キスをしているカップルまでいます。

テレビの報道でようやく事態をしった生徒たち。ちょっとしたことをきっかけにパニック状態に陥りました。

学食のロレインのおかげで騒ぎはおさまりますが、ダッシュが、皆に四階にいって、屋上にあがろうと呼びかけても反応がありません。

メアリーだけが手をあげ、友人たちに行こうと誘いますが、彼女たちはここに残ると言ってききません。

新聞部の3人とメアリー、学食のロレインは上の階を目指して進みますが、それは困難を極めました。

彼らはこの沈みゆく校舎から脱出して生きて帰ることが出来るのでしょうか!

映画『ボクの高校、海に沈む(My Entire High School Sinking Into the Sea)』の感想と評価

監督のダッシュ・ショーについて

ダッシュ・ショーは、ニューヨーク・マンハッタンのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ在学時から作品を発表し始め、『Love Eats Brains: A Zombie Romance』(Odd God Press)などの著書があるアメリカのグラフィック・ノベル作家です。

ニコール・キッドマンがプロデューサーと主演を兼任した『ラビット・ホール』(2010)や、遠い惑星からやって来た美少女をエル・ファニングが演じた『パーティで女の子に話しかけるには』(2017)で、彼のことを知った方も多いのではないでしょうか?

どちらもジョン・キャメロン・ミッチェルが監督を務め、『ラビット・ホール』では、マイルズ・テラー演じるジェイソンという青年が描くSFコミックをダッシュ・ショーが担当。

『パーティで女の子に話しかけるには』では、アレックス・シャープが演じるエンというパンク好きの青年が描くコミックやイラストを手がけているのです。

彼のナイーブで想像力溢れるコミックやイラストが作品内で効果的に使われ、映画を一層魅力のあるものにしています。

『ボクの高校、海に沈む(My Entire High School Sinking Into the Sea)』は、彼の初の長編アニメーション映画です。

ベルリン国際映画祭やトロント国際映画祭などに出品され、話題となった作品が、ついに日本にも上陸しました!

学園ものとパニックものの融合

冒頭、主人公のダッシュ・ジョーが(作者自身がモデル?)、登校する様子が、スピード感溢れるタッチで描かれています。

ダッシュは同じ新聞部員で親友のアサーフに声をかけ、後ろの席に移動します。アメリカの学園もののスクール・カーストは、これまで数多くの作品で描かれてきましたが、スクールバスの座席にも序列があることを本作で初めて知りました。

学園でイケてない最下層グループに属するダッシュたちは、一生懸命作った新聞も受け取ってもらえず、誰からもまともに相手されません。

それゆえ、ダッシュが校長によって隠蔽された学校の耐震問題を暴露し、皆に避難を呼びかけても生徒会の女子生徒一人を除き、皆、まともに聞く耳を持ちません。

この映画の面白さは、そんな学園ものとしてのお約束が、パニック映画と融合して、絶妙にリンクするところにあります。

例えば、サメが一人の女子生徒の方ばかりに集まり、ダッシュたち新聞部員には寄り付かないというシーンがあります。

「なぜ彼女ばっかり?」「人気者だから」

こんなふうに思わず吹き出すブラックな笑いが盛り込まれています。

魅惑的なグラフィック・アニメーションの世界

ダッシュ・ショーはコミック好きの父親のもとで育ち、日本のアニメーションにも大きな影響を受けました。

平面なキャラクターが、凝った背景や、センスあるカラフルなデザイン、想像力豊かな手法で生き生きと躍動します。

高校が海に落ちるという大惨事なので、被害も相当大きいのですが、詩的な絵柄で、ひょうひょうとしたタッチのアニメーションだからこそ、可能となった表現が出てきます。

昨今はサメ映画でもあまり人を殺せなくなってしまったハリウッド映画界ですが、ジェイソン・ステイサムの「MEG ザ・モンスター」に物足りなさを感じた方は本作で欲求不満を解消できるかもしれません(?)

災害の中、仲違いしていた友人と助け合い、友情を取り戻し、深めていく様子が、手に汗握る脱出劇の中、描かれていきます。

また、生徒たちを助ける大人のキャラクターとして“学食のロレイン”という中年女性が出てくるのですが、この人の生き様がものすごくカッコよいのです。

ダッシュ・ショー(作家の方)の理想の大人像、ヒーロー像が込められているのではないでしょうか!? あるいは、セーラー・ムーンへのオマージュといってもいいかもしれません。

スポンサーリンク

まとめ

主人公のダッシュ・ショーの声を担当しているのは、ジェイソン・シュワルツマン。ウエス・アンダーソン監督の名作学園映画『天才マックスの世界』で個性的な主人公を演じていたのが思い出されます。

HBOの連続ドラマ『Girl’s/ガールズ』、映画『タイニー・ファニチャー』で知られるレナ・ダナムが、生徒会長のメアリーを担当。アサーフをレジー・ワッツが、ヴェルティをマーヤ・ルドルフ、学食のロレインをスーザン・サランドンが担当するなど、豪華な面々が声優を務めています。

『ラビット・ホール』、『パーティーで女の子に話しかけるには』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督も声優としてゲスト出演しています。

『ボクの高校、海に沈む(My Entire High School Sinking Into the Sea)』は、座・高円寺2にて開催されるAfter School Cinema Club+Gucchi’s Free Schoolによる上映イベント【珍作?傑作?大珍作!! コメディ映画文化史】の初日、12月15日(土)のAM11:00より上映されます! お見逃しなく!!

次回の銀幕の月光遊戯は…

次回の銀幕の月光遊戯は、全米NO.1コメディエンヌ、エイミー・シューマーの最新作『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』を取り上げます。

お楽しみに!

【連載コラム】『銀幕の月光遊戯』一覧はこちら

関連記事

連載コラム

アニメ『ジョゼと虎と魚たち』あらすじと感想評価レビュー。田辺聖子の青春恋愛小説をタムラコータローが描く|TIFF2020リポート3

アニメ『ジョゼと虎と魚たち』は東京国際映画祭2020の特別招待作品! 2020年実施の東京国際映画祭の特別招待作品として、上映された『ジョゼと虎と魚たち』。 芥川賞作家田辺聖子の同名小説が原作で、20 …

連載コラム

映画『インビジブル・スパイ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。香港ノワールの現在形をアクションとのド派手な融合スタイルで描いた秀作|未体験ゾーンの映画たち2021見破録13

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第13回 世界各国の埋もれかねない映画をお届けする「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第13回で紹介するのは、ド派手なアクション映画『インビジブ …

連載コラム

坂田貴大映画『クマ・エロヒーム』あらすじと感想。気鋭の監督が異色作で描いた現代社会の問題とは| SF恐怖映画という名の観覧車27

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile027 20代の新進気鋭の映画監督、坂田貴大が製作した12月22日(土)公開の最新映画『クマ・エロヒーム』(2018)。 今回は私たちの住む地球 …

連載コラム

映画『ライ麦畑で出会ったら』あらすじと感想レビュー。サリンジャーを探す旅に出た少年の物語|銀幕の月光遊戯5

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第5回 こんにちは、西川ちょりです。 今回取り上げる作品は、10月27日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開される『ライ麦畑で出会ったら …

連載コラム

『騙し絵の牙』原作小説ネタバレと結末までのあらすじ。塩田武士が大泉洋をイメージして執筆に取り組む|永遠の未完成これ完成である12

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第12回 映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。 今回紹介するのは2021年3月26日(金)より全国公開予定の『騙し絵の …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学