連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第17回
大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。
今回はテレビアニメ化が決定し2021年10月からの放送開始も内定した「遊郭編」を、原作漫画のネタバレあらすじと共に、その魅力や見どころをご紹介します。
2021年6月16日にはブルーレイ&DVDが発売されるメガヒット映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』はいまや日本を飛び出し、世界各地を席巻。その続編となる「遊郭編」の放送は、世界中が今や遅しと待っているといって過言ではありません。
そんな「遊郭編」とは果たしてどのような物語であり、どのような魅力・見どころを溢れているのかを改めて探っていきます。
漫画『鬼滅の刃 遊郭編』のあらすじとネタバレ
“上弦の参”こと猗窩座(声:石田彰)は少年の姿に変えた鬼舞辻無惨(声:関俊彦)のもとを尋ね、命じられた「青い彼岸花」の捜索の途中経過、そして鬼殺隊の“炎柱”煉獄杏寿郎を倒した事を報告します。
しかし無惨は鬼が人間に勝つのは当たり前だとし、一向に見つからない「青い彼岸花」、そして“上弦の参”にも関わらず“柱”でもない隊士に傷を与えられた猗窩座に腹を立てます。
下がるよう命じる無惨のもとを後にした猗窩座は、自身の胸に刺さっていた黒い日輪刀を目にし、その持ち主である少年・竈門炭治郎(声:花江夏樹)への憎悪を募らせます。
「蝶屋敷」にて魘夢との戦いの傷を癒した炭治郎は、煉獄に託された遺言を伝えるために煉獄の生家へと向かいます。
そこで炭治郎は、煉獄の弟・千寿郎(声:榎木淳弥)と父・槇寿郎(声:小山力也)と対面しますが、槇寿郎は炭治郎を見るなり「“日の呼吸”の使い手だから馬鹿にしているのか」と謂れのない言いがかりをつけ、殴りかかります。
槇寿郎曰く、全ての“呼吸”の原型となった始まりの呼吸が“日の呼吸”であり、炭治郎の耳飾りは「日の呼吸を伝えられた者の証明」なのだと言います。
煉獄の死に際して何もできず、自らの弱さを痛感していた炭治郎は槇寿郎の言葉に激昂。思わず反撃し、槇寿郎を気絶させてしまいます。
幸い槇寿郎に大事はなく、すぐに回復。炭治郎は千寿朗に煉獄の遺言を残し、煉獄家を後にしようとします。そんな炭治郎に、千寿朗は煉獄が用いていた鍔を炭治郎に託します。
その後、刀を無くした事に激怒する鋼鐵塚との遭遇というハプニングを経て、炭治郎は善逸・伊之助と共に鍛錬と任務の日々を過ごしていきます。
そんなある日、任務を終えて蝶屋敷に戻った炭治郎は、神崎アオイ(声:江原裕理)となほ(声:桑原由気)を連れ去ろうとする“音柱”宇髄天元(声:小西克幸)と遭遇します。
任務のために女性隊士が必要だと言う宇髄に炭治郎と共に駆け付けた吾妻善逸(声:下野紘)と嘴平伊之助(声:松岡禎丞)は「自分たちが代わりに行く」と言ったのに対し、意外にも宇髄は了承。炭治郎たちは宇髄に連れられ、日本最大の遊郭・吉原へ向かいます。
吉原に潜む鬼を探るため、宇髄は自身の嫁である雛鶴・まきを・須磨の三人を潜入させていましたが、音信不通に。その三人を探すため、宇髄は炭治郎たちに女装させ、遊女見習いとして遊郭へ潜入を敢行。行方不明である三人の足取りを探らせます。
炭治郎が潜入した「ときと屋」では、宇髄の嫁の一人・須磨が足抜け(売られてきた遊女が借金を返さないうちに逃げる事)をした噂が流れていました。
やがて「ときと屋」の花魁・鯉夏から、須磨が日記に足抜けする事を記していたことを聞かされますが、炭治郎は須磨の失踪に鬼が関与しており、日記は鬼が偽装したものと考えます。
伊之助が潜入した「萩本屋」では、まきをが病気を理由に長く部屋から出てこないという話を耳にします。まきをの部屋に向かった伊之助ですが、そこにはまきをの姿はなく、荒らされた部屋だけがありました。そして天井裏から鬼の気配を察知した伊之助は、追跡をしたものの逃げられてしまいます。
一方、「京極屋」に潜入していた善逸は花魁・蕨姫(わらびひめ)が遊女見習いの少女に対し、横暴な振る舞いをする姿を目の当たりにします。
漫画『鬼滅の刃 遊郭編』の感想と評価
物語が進むごとに戦いの激しさが増す『鬼滅の刃』。「遊郭編」もその例外ではなく、映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』がメガヒットを記録した「無限列車編」を上回るといっても過言ではない激闘を描いています。中でも「遊郭編」は特に、戦闘においての攻勢・劣勢が次々と入れ替わるスリリングなストーリー展開が秀逸でした。
やはり「無限列車編」での煉獄の敗北は読者の印象に深く残っているため、「果たして“上弦”の鬼に勝てるのだろうか?」という疑問は常に付きまとっていたことでしょう。それだけに、「遊郭編」における“上弦”の鬼・妓夫太郎と堕姫からの勝利はより一層、盛り上がったのではないでしょうか。
“音柱”宇髄をはじめ戦友である善逸・伊之助も倒れ、敗戦が濃厚となった場面から、炭治郎が一瞬の隙を突き、それを機に倒れたはずの仲間たちが次々と復活。一気に勝利へ至る展開はまさに少年漫画の王道であり、胸を熱くした読者も多かったはずです。
また炭治郎・善逸・伊之助の全員が揃っての共闘は「遊郭編」が初であり、これまで様々な状況から「三人が揃っての共闘」が実現しなかったがゆえに、非常に感慨深い場面でもあります。
そして「遊郭編」での象徴的な見せ場はバトルシーンのみならず、炭治郎・禰豆子兄妹とも対比される妓夫太郎と堕姫の「兄妹の絆」にもあります。
妹が誇りであったことを末期に思い出したがゆえに、堕姫……梅と離別する選択をとろうとする妓夫太郎。しかし兄との絆を「なかったもの」にしたくないと泣き叫ぶ梅の言葉に、妓夫太郎はようやく「人間」として救われる姿には、涙を誘われた人も少なくないでしょう。
そんな、まさに『鬼滅の刃』のテーマや魅力を濃縮したエピソードとなった「遊郭編」が屈指の人気を誇る物語となっているのは、ある意味では必然であるといえます。
テレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』の作品情報
【放送】
2021年10月予定
【原作】
吾峠呼世晴
【監督】
外崎春雄
【キャスト】
花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、小西克幸
【作品概要】
「週刊少年ジャンプ」で連載された吾峠呼世晴による大人気漫画『鬼滅の刃』を原作とするテレビアニメシリーズ第二期。「竈門炭治郎 立志編」を描いたテレビアニメ第一期、「無限列車編」を描いた映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に引き続き、監督を外崎春雄、アニメーション制作をufotableが担当します。
無限列車での戦いの傷も癒え日常を取り戻す炭治郎は、ひょんなことから“音柱”宇髄天元の指示のもと日本最大の花街・吉原に潜入することに。遊女の失踪や女主人の不可解な死など、暗雲渦巻く吉原で暗躍する鬼を討伐すべく、炭治郎たちは未だかつてない激闘に身を投じていきます。
まとめ
花街・吉原を舞台に物語が展開される「遊郭編」は、これまでの物語とは打って変わって雰囲気となっています。すでに公開中の第一弾PVの内容からもうかがえるように、繁華街である吉原はこれまでの物語の舞台と比べ、街の明かりが華やかであると共に蠟燭などの光が生み出す陰影が印象的です。
また市街地が舞台であるがゆえに、原作漫画では激しい戦闘により建物が次々と破壊される場面が多々存在。戦闘描写を一層迫力のあるへと演出しており、それもまたこれまでの物語には見られない点です。
そうした明かりによる陰影の演出、破壊される建物による演出が、アニメでの映像化にあたってどのように表現され、物語に深みを持たせるのかが注目です。
また、“音柱”宇髄天元を演じる小西克幸の演技も見逃せません。これまで多くのアニメに出演し、『天元突破グレンラガン』のカミナ役に代表される男気溢れる青年役を多く演じてきただけに、一見破天荒でありながらも粋な宇髄をどのように演じるのか楽しみです。