連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第278回
『痛くない死に方』(2020)『夜明けまでバス停で』(2022)の高橋伴明監督が、長尾和宏の同名小説を基に、毎熊克哉×大西礼芳で安楽死を描く衝撃の社会派ドラマの『安楽死特区』を手がけました。
映画『安楽死特区』は、2026年1月23日(金)新宿ピカデリーほか全国順次公開です。
本作の舞台は、「安楽死法案」が可決された近未来の日本。
国家主導で導入された「安楽死」制度のもと、安楽死を望む者とそれを見守る家族、安楽死に携わる医師、特区の様子を取材するライターを通して、人間の尊厳や生と死、そして愛が鋭く問われます。
映画『安楽死特区』の作品情報

(C)「安楽死特区」製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
長尾和宏『安楽死特区』(ブックマン社刊)
【監督】
高橋伴明
【脚本】
丸山昇一
【編集】
佐藤崇
【音楽】
林祐介
【主題歌】
『Oh JOE GIWA』(作詞:丸山昇一、gb/作曲・編曲:林祐介)
【キャスト】
毎熊克哉、大西礼芳、加藤雅也、筒井真理子、板谷由夏、下元史朗、鳥居功太郎、山﨑翠佳、海空、影山祐子、外波山文明、長尾和宏、くらんけ、友近、gb、田島令子、鈴木砂羽、平田満、余貴美子、奥田瑛二
【作品概要】
映画『安楽死特区』は、在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による同名小説が原作です。
『痛くない死に方』(2020)『夜明けまでバス停で』(2022)などの高橋伴明が監督を務めました。
脚本は、『野獣死すべし』(1980)『一度も撃ってません』(2020)などの丸山昇一。名匠たちが初タッグを組んだ作品となりました。
主人公のカップルの章太郎役を務めるのは、『「桐島です」』(2025)の毎熊克哉。パートナー・歩役には『夜明けまでバス停で』(2022)の大西礼芳。
シンガーソングライターのgb(ジービー)が毎熊克哉とラップを披露しています。
映画『安楽死特区』のあらすじ

(C)「安楽死特区」製作委員会
舞台は今から数年後の日本です。欧米に倣って日本でも「安楽死法案」が可決。それでも安楽死に反対の声が多いため、国は実験的に「安楽死特区」を設置することにしました。
「安楽死特区」とは、安楽死を希望する者が入居しケアを受けられる施設「ヒトリシズカ」のこと。この施設は、倫理と政治の最前線で物議を醸す存在となっていました。
日本中が安楽死問題で揺れている頃、回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎(毎熊克哉)と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩(大西礼芳)のカップルがいました。
章太郎は、進行する病に苦しみながらも、ヒップホップに救いを見出し、言葉を紡ぎ続けています。
安楽死法に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」への入居を決意。
施設には、末期がんに苦しむ池田(平田満)とその妻・玉美(筒井真理子)、認知症を抱える元漫才師の真矢(余貴美子)など、さまざまな境遇と苦悩を抱える入居者たちが暮らしていました。
そこでふたりが見たのは、安楽死を決意した人間たちの愛と苦悩でした。
その後、章太郎の身体は急速に衰え、言葉さえままならなくなります。章太郎は歩に相談もなく、「安楽死を望みます」と考えを一変。
歩は、池田の主治医の鳥居(奥田瑛二)の他、章太郎の主治医の尾形(加藤雅也)、三浦(板谷由夏)ら特命医それぞれの想いにも触れ、命と死に真摯に向き合うことを迫られます。
映画『安楽死特区』の感想と評価

(C)「安楽死特区」製作委員会
安楽死法案が認められた近未来の日本が舞台の作品です。
治る見込みのない難病や痛みと苦しみを伴う病気を抱えた人々は、その辛さから薬を飲むだけで眠るように死ねるという安楽死を望むのも無理はないでしょう。
患者が病気と闘う様子は見るに堪えないものがありますから、見守ることしか出来ない家族や恋人にとっては、愛する人を死なせたくない思いとのはざまに立って、悩むに違いありません。
では、余命宣告された病人たちが望むのは、本当に安楽死なのでしょうか。
本作の主人公・章太郎は最初は自分も含めて安楽死反対でした。ですが、病気の進行とともにその苦しみも深まり、「安楽死を望みます」と言います。
望んでもいなかったことを望むようになった章太郎。気持ちが変化していくのにはそうせざるを得ない厳しい現実があったのです。
一方では、本人は望んでも周囲で付き添う者にとってはとても賛成できるものではありませんから、パートナーの歩の怒りと失望はかなり大きいものでした。
また、病気治療に従事する主治医たちには安楽死への称賛もあり、本作でも安楽死の賛否両論を鋭く問いかけ、その在り方を問題視しようとしているようです。
安楽死特区という居住区での‟命の尊厳”の問いかけは、患者もその家族も医者までも巻き込んだ奥深い問題だったのです。
主人公のカップルは、毎熊克哉と大西礼芳が熱演。特に難病を患う章太郎に扮する毎熊克哉は、冒頭でラップを披露して、ラッパーとして生きて来た「章太郎」の矜持を表現しています。
まとめ

(C)「安楽死特区」製作委員会
安楽死を問う社会派ドラマ『安楽死特区』をご紹介しました。
本作は、在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による同名小説を、高橋伴明監督が映画化したものです。
日本ではまだ認められていない安楽死。安楽死についての賛否も別れるところです。
法律上安楽死が許可された近未来の日本を舞台にした本作では、その問題を鋭く問いかけます。果たして、映画を観た後と観る前とでは自分の考えは変わるのでしょうか。
安楽死について潔い決断を下す者、決断について家族の耐えられない想い、安楽死に手をかす医者の苦しみと、考え深い点はたくさんあります。
それぞれの立場にたって、安楽死問題を今一度考えてみてはいかがでしょうか。
映画『安楽死特区』は、2026年1月23日(金)新宿ピカデリーほか全国順次公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



































