連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第224回
鉄道と鉄道員の姿を記録した、台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』。
旅情豊かな路線台湾南部の鉄道路線「南廻線」が、2020年に全線で電化され、その模様は変化を遂げます。
台湾でドキュメンタリー監督として活躍するシャオ・ジュイジェン監督が、失われていく沿線の原風景と鉄路をカメラに収めました。
監督は4年の歳月をかけて、鉄道員やその家族、「南廻線」を愛する人々の想いを記録として映像化。全線電化を機に運行が中止となった、「藍皮(ランピー)」の愛称で親しまれたディーゼル機関車の普通列車をはじめ、蒸気機関車など懐かしの列車も登場します。
映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』は、2024年7月5日(金) 新宿武蔵野館、9月6日(金)より京都シネマ、9月14日(土)より元町映画館、9月27日(金)より扇町キネマほか全国公開です。
映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』の作品情報
【日本公開】
2024年(台湾映画)
【原題】
南方、寂寞鐵道
【英題】
On The Train
【監督】
シャオ・ジュイジェン
【編集】
チェン・ボーウェン、チェン・ユーツォン
【プロデユーサー】
チェン・ボーウェン、シェン・イーイン
【音楽】
チェン・ミンジャン、シェ・ユンヤー
【出演】
ウー・チータイ、ツェン・ヨンツァイ、ツェン・シェンユエン、チュウ・フェンイン、チャン・チーロン、ホアン・チュー ほか
【作品概要】
台湾南部の鉄道路線「南廻線」。蒸気機関車だったものが2020年に全線で電化され、その模様は変化を遂げます。
『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』は、ドキュメンタリー監督として活躍するシャオ・ジュイジェン監督が、失われていく沿線の原風景と鉄路、鉄道と共に生きる人々をカメラにおさめた作品です。
4年間で撮りためた莫大な映像の編集はチェン・ボーウェン。是枝裕和監督『幻の光』(1995)やホウ・シャオシェン監督『戯夢人生』(1993)などの音楽を手掛けたチェン・ミンジャンが作曲を担当しています。
映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』のあらすじ
台湾南部の枋寮駅から台東駅を結ぶ「南廻線」。
この鉄道は、パイナップル畑や線路の近くまで迫る海などが沿線に広がり、大自然のなかをSLやディーゼル列車がのんびりと走り抜ける旅情豊かな路線として知られています。
しかし、時代の流れとともに2020年に全線で電化され、その模様は大きく変容。
台湾のドキュメンタリー監督シャオ・ジュイジェンが、そんな南廻線を4年の歳月をかけてカメラに収めました。
失われていく沿線の原風景と鉄路の様子、南廻線に携わる鉄道員やその家族たち、そして南廻線を愛する人々の思いが記録に残ります。
映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』の感想と評価
作品では、台湾南部の枋寮駅から台東駅を結ぶ「南廻線」ののどかで美しい景色が撮影されています。そんな町に住み続けている人々にとって、鉄道は生活そのものだったことでしょう。
3世代そろって鉄道関係の仕事についているという家族たちや、鉄道の運転士たちが次々と自分たちの仕事について述べています。
みな鉄道とともに生き、鉄道を愛してこれまで過ごしてきた人々です。南廻線の移り変わりをカメラに収めるということは、そんな人々の生活も一緒に撮ることでした。
こんなところに、タイトルの奥深い思いもあるのでしょう。登場する人々からは列車への深い愛情が感じられ、心温まる作品となっています。
また本作の見どころとして、昔懐かしの列車が旅情あふれるのどかな風景を走るシーンが用意されていました。
R100型ディーゼル機関車+普通車や、DT650型蒸気機関車、DR2700型気動車、CT270型蒸気機関車、TEMU2000型(普悠瑪號)、DR3000型気動車など、日本の鉄道ファンも喜びそうなレジェンド列車の勇姿がスクリーン一杯に映し出されますので、お楽しみに。
まとめ
鉄道と鉄道員の姿を記録した映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』をご紹介しました。
本作は、台湾の美しくのどかな風景の中を走る鉄道の歴史と言えるドキュメンタリーです。
石炭で走る蒸気機関車から電化された電車への移り変わりの中で、鉄道とともに生きている人々の姿が映し出されます。
本土を走る鉄道は、時代の流れとともに姿形は変わっても、人と人との心を繋ぐ役割を担っているのです。
映画『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』は、2024年7月5日(金) 新宿武蔵野館、9月6日(金)より京都シネマ、9月14日(土)より元町映画館、9月27日(金)より扇町キネマほか全国公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。