Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2022/10/28
Update

擬音A FOLEY ARTIST|あらすじ感想と評価解説。台湾・中国映画の音を生み出すプロたちからその舞台裏と未来社会を覗く|映画という星空を知るひとよ124

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第124回

台湾映画界の音響効果技師・フー・ディンイーとその舞台裏を描き出したドキュメンタリー映画『擬音 A FOLEY ARTIST』。

監督を務めるのはワン・ワンロー、主役はフー・ディンイー。

台湾のアカデミー賞とも呼ばれる金馬奨で、フー・ディンイーが年度台湾傑出映画製作者賞受賞しています。

本作は金馬奨に多数ノミネートされ、台湾映画界のレジェンドであるフー・ディンイーの40年に及ぶフォーリー人生を記録したドキュメンタリー、と同時に1人のスタッフの目を通して見た台湾映画史でもある作品です。

映画『擬音 A FOLEY ARTIST』は、2022年11月19日(土)より K’s cinemaほか全国順次公開

映画公開に先駆けて、映画『擬音 A FOLEY ARTIST』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『擬音 A FOLEY ARTIST』の作品情報


(C)Wan-Jo Wang

【日本公開】
2022年(台湾映画)

【監督】
ワン・ワンロー

【製作総指揮】
チェン・ジュアンシン

【製作】
リー・ジュンリャン

【撮影】
カン・チャンリー

【編集】
マオ・シャオイー

【出演】
フー・ディンイー(胡定一)、台湾映画製作者たち

【概要】
フォーリーアーティストと呼ばれるさまざな道具を使ってあらゆる生の音を作り出す職人のフー・ディンイーにフォーカスし、その活動をフィルムに収めたドキュメンタリー。ワン・ワンロー監督が取りまとめました。

本作では、『風が躍る』(1982)のホウ・シャオシェン、『バナナパラダイス』(1989)のワン・トン、『牯嶺街少年殺人事件』(1992)のエドワード・ヤンなどの監督作品も登場。

当時の音の編集や吹き替えの苦労話なども盛り込まれ、台湾映画やその歴史を見出すことができる作品となっています。

映画『擬音 A FOLEY ARTIST』のあらすじ


(C)Wan-Jo Wang

フォーリーアーティストのレジェンドのフー・ディンイー。

彼は雑多なモノが溢れるスタジオで、映画の登場人物の動きやシーン、雰囲気を追いながら、想像もつかないような道具と技を駆使してあらゆる音を作り出しています。

フー・ディンイーのこれまでの70本を超える担当作品を中心に、彼の音へこだわりを言及していきます。

台湾映画が広く世界に認知されたニューシネマ、そしてそれ以前の台湾映画も登場し、音響製作、サウンドトラック、吹き替えのプロたちも登場して、作品へのエピソードを語ります。

映画『擬音 A FOLEY ARTIST』の感想と評価


(C)Wan-Jo Wang

『擬音 A FOLEY ARTIST』は、フォーリーアーティストのレジェンド、フー・ディンイーの40年に及ぶフォーリー人生を記録したドキュメンタリー

フォーリーアーティストとは、雑多なモノが溢れるスタジオで、映画の登場人物の動きやシーン、雰囲気を追いながら、想像もつかないような道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出す職人のこと。

実際に女性が歩く足音ひとつ創るにも、男性のフー・ディンイーが何種類ものパンプスを履いて飛んでみたり、そっと歩いてみたりと、試行錯誤して生み出している様子が映し出され、その繊細な仕事ぶりに目を見張ります。

これは決して表に出ない地味な裏の仕事ですが、映画には欠かせない大切なこと。いわば、映画に命を吹き込む大事な作業でした。

フォーリーアーティストばかりではありません。吹き替えを担当するキャストや映像の音を編集するスタッフなども同じです。

台湾映画のサウンドトラックを制作する伝説的な人物たちも、自分たちが担う仕事についてその大変さと遣り甲斐についてアツく語り、映画を愛し、映画を制作する喜びを知る編集のプロフェッショナルたちの仕事にかける熱意が伝わってきます。

また映画の音を取り巻く環境の変化、未来のフォーリーの存在についても語られ、本作は映画だけでない将来の台湾社会に通じる作品と、思うことでしょう。

まとめ


(C)Wan-Jo Wang

台湾映画界の生きるレジェンドであり、プロのフォーリーアーティストであるフー・ディンイーの40年に及ぶフォーリー人生を記録したドキュメンタリー『擬音 A FOLEY ARTIST』をご紹介しました。

何気なく見ている映画の裏で、音創りのプロたちがどんな仕事をしているのか。例えば、食事の場面では実際に自分も箸と茶わんを用意して、食事の音を創っているのです。

ガラクタのような材料から自分の求める音を生み出すフォーリーアーティストの神業のような仕事ぶりに、圧倒されることは間違いありません。

デジタル技術で作られた効果音はとても豊富です。けれども、ひとつひとつの動作や場面に合う音はそれぞれ異なっているのです。

鋭い聴覚と思いもよらないモノを使ってリアルな効果音を生み出すフォーリーの想像力を、ぜひ本作でお確かめください。

映画『擬音 A FOLEY ARTIST』は、2022年11月19日(土)より K’s cinemaほか全国順次公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

関連記事

連載コラム

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】⑦

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】(2020年1月下旬掲載) 【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら CONTE …

連載コラム

草彅剛映画『台風家族』あらすじと感想レビュー。市井昌秀監督が12年を経て放つ普遍的な家族の物語|シニンは映画に生かされて15

連載コラム『シニンは映画に生かされて』第15回 はじめましての方は、はじめまして。河合のびです。 今日も今日とて、映画に生かされているシニンです。 第15回にてご紹介する作品は、主演・草彅剛×監督・市 …

連載コラム

映画『ブレイブ・ロード 』あらすじネタバレと感想。実話「名もなき英雄」のトルコ軍兵士と戦災孤児の少女の交流|未体験ゾーンの映画たち2019見破録58

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第58回 ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。全上映作品を劇場で観て、連載コラムで紹介するこ …

連載コラム

映画『モーターギャング』あらすじネタバレと感想。アウトロー・バイカーの極道ムービーの系譜|未体験ゾーンの映画たち2019見破録44

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第44回 ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回はバイクを操る、危険な男たちを描いた映画が登 …

連載コラム

【短編映画無料配信】ミッドナイトチャレンジャー|あらすじ感想評価レビュー。我が子が巣立ちのときを迎えた“父親の静かな決心”を温かく見つめる《松田彰監督WEB映画12選 2023年3月》

「月イチ」企画の短編WEB映画第3弾『ミッドナイトチャレンジャー』が無料配信中 『つどうものたち』(2019)、『異し日にて』(2014)、『お散歩』(2006)などの作品で数々の国内外の映画賞を受賞 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学