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『レ・ミゼラブル(1995)』あらすじ感想と評価解説。ジャン=ポール・ベルモンド代表作の感動の大河ロマンが2Kリマスターで蘇る|映画という星空を知るひとよ208

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第208回

2021年9月6日に惜しくも世を去った、フランスの伝説的名優ジャン=ポール・ベルモンド。特集企画「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」では2020年〜2022年、3度にわたって彼の主演作を厳選・上映してきました。

その集大成ともいうべき最高のラインナップを揃えた「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ」が、2024年6月28日(金)より東京・新宿武蔵野館ほかで全国順次公開されます。

本記事では、「グランドフィナーレ」にて上映される《幻の3作》の一つにして、ビクトル・ユーゴーの名作小説を大胆にアレンジし、激動の20世紀を描き出した大河ロマン『レ・ミゼラブル(1995)』をご紹介します。

名匠クロード・ルルーシュと3度目となるタッグを組んだ本作。ジャン=ポール・ベルモンドはが主人公とその父、さらに劇中劇のジャン・ヴァルジャンの3役を熱演しています。

第53回ゴールデングローブ賞・最優秀外国語映画賞を受賞した『レ・ミゼラブル(1995)』。2Kリマスター版にて、日本では28年ぶりの劇場公開となる本作の見どころを解説します。

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映画『レ・ミゼラブル(1995)』の作品情報


(C)1994 / LES FILMS 13 – TF1 FILMS Production. All Rights Reserved

【日本初公開】
1996年(フランス映画、製作:1995年)

【原題】
Les Misérables

【原作】
ビクトル・ユーゴー『Les Misérables』

【監督・製作・脚本】
クロード・ルルーシュ

【キャスト】
ジャン=ポール・ベルモンド、ミシェル・ブジュナー、アレッサンドラ・マルティンヌ、サロメ・ルルーシュ、アニー・ジラルド、フィリップ・レオタール、クレマンティーヌ・セラリエ、フィリップ・コルサン、ジャン・マレー

【作品概要】
『あの愛をふたたび』(1970)『ライオンと呼ばれた男』(1988)の名匠クロード・ルルーシュが、ビクトル・ユーゴーの名作小説を大胆にアレンジし、激動の20世紀を舞台に描いた大河ロマン。

主演は、クロード・ルルーシュとは3度目のタッグとなったジャン=ポール・ベルモンド。本作では主人公とその父、さらに劇中劇のジャン・ヴァルジャンの3役を務めました。

映画『レ・ミゼラブル(1995)』のあらすじ


(C)1994 / LES FILMS 13 – TF1 FILMS Production. All Rights Reserved

映画が誕生した1895年。当時5歳だったアンリ・フォルタンは、父が無実の罪を着せられ獄中で無念の死を遂げ、母もその後を追って自殺しため、ノルマンディーの漁村で居酒屋を営む夫婦に育てられ、過酷な少年時代を過ごしました。

やがてフォルダンは、ボクシングのチャンピオンへと登りつめますが、1931年に引退し、運送業を始めました。

第二次世界大戦が始まり、フォルタンはユダヤ人の弁護士ジマンとその家族の引っ越しを請け負います。ところが、密告によって一家はスイスへの逃亡を余儀なくされ、フォルタンはそれも請け負うことに。

フォルタンは一家の娘サロメを修道院の寄宿学校に預け、夫婦を国境近くまで運んだものの、夫婦を待っていたのはなナチスの卑劣な罠でした。

フォルタンもナチスに協力する警察に逮捕されますがその後脱獄し、強盗団に参加。さらに終戦間近には、レジスタンスに加わりました。

ついに終戦を迎え、運命の糸で結ばれた様々な人々の人生が再び動きだそうとしていました……。

映画『レ・ミゼラブル(1995)』の感想と評価


(C)1994 / LES FILMS 13 – TF1 FILMS Production. All Rights Reserved

映画『レ・ミゼラブル(1955)』の原作にあたる同名小説は、パンを盗んで妹の飢えた子どもたちに食べさせた罪で19年の刑に服し、脱獄を企てた後普通の生活を送り、自らを償おうと奮闘する主人公ジャン・ヴァルジャンの半生を描いています。

犯罪者として知られ、仮釈放されても警察や世間から冷たい目でみられるジャン・ヴァルジャン。ですが、貧しさに虐げられる人々と知り合い、次第に道徳的に成長し、人間として最も美しく優しい心を持つようになります。

映画の主人公アンリ・フォルタンは「自分の境遇に似ている」と思い、ジャン・ヴァルジャンに憧れを持ちます。そのせいか、アンリ・フォルタンも警察に捕まったりするのですが、ジャン・ヴァルジャン同様、一人の少女の救い主の役割を果たしました。

映画の内容は原作小説とは異なりますが、同じ「レ・ミゼラブル(哀れな人々)」というタイトルの意味からも、「人としての生き方」を問われていることに変わりはありません

映画の主人公の人生、劇中劇として描かれる小説の物語、そして映画冒頭の彼の父親の話と、本作では3つの物語が展開されます。そのすべての主人公を、ジャン=ポール・ベルモンドがひとりで演じています。

罪を犯した男がその後の人生をかけて償いをする物語を、アクションスターを卒業したジャン=ポール・ベルモンドが慈愛に満ちた表情と確実な演技力で、心温まる大河ロマンに仕上げました

まとめ


(C)1994 / LES FILMS 13 – TF1 FILMS Production. All Rights Reserved

ビクトル・ユーゴーの同名小説『レ・ミゼラブル』を、激動の20世紀を舞台に大胆にアレンジして映画化した本作。

小説の主人公ジャン・ヴァルジャンに憧れるアンリ・フォルタンは、両親を早くに失い苛酷な少年時代を過ごしたのち、プロボクサーを経て運送業を営む中で、ナチスに追われるユダヤ人一家の逃亡を手伝います。

主人公とその父、さらに劇中劇のジャン・ヴァルジャンの3役を、ジャン=ポール・ベルモンドが見事に演じました。

映画『レ・ミゼラブル(1995)』は2024年6月28日(金)より、東京・新宿武蔵野館ほかで全国順次公開される特集企画「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ」で上映されます!

傑作選では『レ・ミゼラブル(1995)』のほか、1973年の初公開時以来VHSもDVD化もされず、51年ぶりのスクリーン上映となる『おかしなおかしな大冒険』(1973)、ジャン=ポール・ベルモンドに初のセザール賞主演男優賞をもたらした『ライオンと呼ばれた男』(1988)を上映。長らく権利上の問題で日本での上映が叶わなかった《幻の3作》です。

ジャン=ポール・ベルモンドの魅力を集結した「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ」は、彼のフィルモグラフィーにおける重要な作品をスクリーンで観る絶好のチャンスであり、ファンならずとも待ちに待った特集企画といえるでしょう。

スクリーンに蘇るジャン=ポール・ベルモンドの勇姿から、華麗なる彼の到達点を見極めてみてはいかがでしょうか

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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